婚約破棄ですか。別に構いませんよ

井藤 美樹

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これって、乙女ゲームのサブストーリーでしょうか

ゴミはゴミ箱に。生きのいい生ゴミは?

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 ゴミはゴミ箱に捨てましょう。

 これ常識ですよね。

 生ゴミは指定された日に。これもまた常識ですよね。

 では、生きた生ゴミはどうしましょう。

「どうしたらいいと思います? 騎士様」

「……俺に訊くな!!」

 真剣に悩んで相談しているのに、そんな風に突っ張られたら少し悲しくなりますよ。もしかしたら、こういう生ゴミを処理した事がないから分からないのかも。なら、幾つか提示しましょう。何度か処理してますから。

「そうですね……幾つか処理方法があるんですけど……」

「処理なのか……?」

 もしかして、怒ってます? ああ……彼はそのタイプの人間なんですね。理解しましたわ。まぁ騎士様に多いタイプですね。俗に言う、人類皆平等というやつですね。罪人にも権利があるって、ほざく輩たちです。

 訊いた私が馬鹿でした。

「騎士様はそのまま護衛をして下さい。代わりの侍女と一緒に」

「その必要はないだろ。俺にも交代が来たからな。最後まで付き合う」

 結構です。横からごちゃごちゃ言われるに決まってますから。さも、自分の正義感が正しいと押し付けてくるに決まってますから。なので、ここは丁重にお断りしましょう。

「いえ、結構です」

「いや、付き合う」

 折れませんね。押し問答が続いている間に、交代に来た仲間は行ってしまったし。人目が付かない場所であっても長居は出来ませんね。生きた生ゴミは、生きがいいですし。

 しょうがないですね。ここは私が折れましょう。但し、

「口を挟まないで下さいね」

「非倫理的な事をするなら、口を挟む」

 険しい表情で言われても、特に何にも感じませんよ。ただ面倒臭いだけです。鬱陶しいだけです。

「そうですか? 好きになされば宜しいですわ。但し、聞く耳は生憎と持ち合わせていないのでご了承を。
 それとも、力尽くでいうことをきかします?
 騎士である貴方が女である私を」

 少し意地悪な言い方をしてしまったようだけど、本心なのであしからず。

 大き目な麻袋が異様な形に変形します。本当に生きがいいですね。ちょっと静かにしてもらえます。軽く蹴ると大人しくなりました。初めからそうすればいいのに。頭悪いですね。

「おい!!」

「声が大きいですよ。人が来たらどうするんです?」

 言わなきゃ分かんないの? 心底面倒臭い。今この状況見られたら、私たち完全な人攫いでしょ。

 私は麻袋を肩に担ぐと歩き出す。身体強化しているので、これくらい屁でもありません。

「ちゃんと付いて来て下さいよ。付いて来れなかったら、置いて行きますので。もしはぐれたら、城の地下牢に来て下さい」

 私にしてはかなり遅いスピードだったんだけど……後ろを振り返ると、騎士様の姿はどこにもなかった。鍛え方、ぬるいんじゃないですか? まぁでも、行き先を伝えているので大丈夫ですね。
 
 地下牢に着くと、乱暴に麻袋を石畳に置く。

 呻き声が聞こえたけど無視。

「生きがいい生ゴミだな」

 スミスさんがポツリと感想を述べた。

「ですよね。どうします?」

「速やかに、廃棄する」

 それがいいですね。

「で、何処に廃棄します?」

「それなら心当たりがある」

 スミスがそう告げるとほぼ同じ時間、コツンコツンと階段を降りる足音がした。どうやら、回収者が来たみたいですね。

 現れたのは、独特な服装をした方たちでした。おそらく彼らは……聖教会の。

 男たちは麻袋の中を確認すると、軽く頷き合う。その様子に、スミスさんは満面な笑顔で応えています。威圧込みで。

「では、確かにお渡ししましたので、速やかに退出して頂けると有り難いのですが」

「分かった」

 へぇ~~この人出来ますね。スミスさんの威圧に耐えてる。

 長居は無用とばかりに、男の一人がそう短く答えると、軽々と麻袋を持って出て行った。残りはそれに付いて行きます。

 その直後に、騎士様到着。やけにゆっくりでしたね。スミスさんは騎士様を一瞥しただけで、さして興味なさそうですね。

「……不満か?」

 騎士様を無視して、ぽつりとスミスさんが尋ねた。そんなに表情に出てたかな。

「不満か不満でないかと訊かれたら、不満ですね。セリア様の恩賞を反故にされたのですよ。然るべき罰が必要だったのではありませんか」

「苦痛は人それぞれだ。そもそも、あの女がシオン様に近付いた最大の目的は、聖教会からの離脱が目的。目を覚ましたら、さぞかし絶望するだろうな」

「確かにそうですね。一生涯、傀儡としての監禁生活が待ってますからね」

「傀儡って、おい!!」

 騎士様が怒鳴ってますが、当然、私もスミスさんも完無視です。

「では、我々も仕事に戻りましょうか」

「そうですね」

 湿った地下牢にこれ以上いると、侍女服に匂いが付きそうだからね。

「おい、待て!!」

 さっきから煩いですね。

「騎士様も持ち場に戻られたらどうです? それとも、聖教会の方を追われますか? もし追うのであれば、この場で粛清しますが、それでも宜しければどうぞ」

 ニッコリと微笑みながらそう告げると、騎士様は押し黙った。

 ほんと、中途半端な奴ね。正義感を振りまくだけで、それを押し通そうとはしない。まぁ、こういう奴に限って大概そうなんだけどね。

 だから、騎士って奴は嫌いなのよ。

 一体誰にその剣を捧げてるのよって、言ってやりたいわ。ほんと、騎士様と組むのは懲り懲りだわ。



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