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エルヴァン王国の未来
第九話 プレゼントの中身は絶対零度の視線と侮蔑の笑み
しおりを挟む脂ぎったゲス男は、なぜこうも、汗をかくのでしょうか? 汗をかくことが悪いとはいいませんわ。むしろ健康的ですもの。でも、太り過ぎですわね。国がこのような時期に。
そのせいか、夏でもないのに、タラタラと垂らすのはどうかと思いますわ。服にも多数の汗染みが。近寄りたくはありませんね。匂いが移りそうですわ。せっかく、側にシオン様がいるのに。
「近寄らないでくださいます。ゲス臭が移りますから」
この時の私の目は、生ゴミを見るものだったと思いますわ。実際、生ゴミですものね。
「酷い言い様ですな、セリア皇女殿下。外交問題を気になさらないとは、噂は当てにはなりませんね」
ゲスに相応しい醜い笑みを浮かべながら、ゲス男は言います。その視線の先は私とお母様。ケルヴァン殿下は完全無視ですわね。そもそも、眼中にないようですわ。というか、そもそも気付いてます?
「口開けないでくれます、口臭がここまでしそうですわ」
ゲス男の相手なぞしたくはありません。同じ空気を吸うのも嫌ですわ。だって、狂王子の味方をしている時点で、同罪ですもの。
「なっ!? 小娘が!!」
これぐらいの挑発でキレるなんて、その程度の男ですね。
宰相の真似事をするのは、まだまだ早いですわ。悪役としても小物の中での親大将、もしくは、大将気取りの小物でしょうか。どう見ても、小物には間違いありませんね。
小物をいたぶるのは趣味ではありませんが、目の前にいるゲス共は別です。なので、少し威圧を放ちながら言い捨てます。
「この場には、コンフォート皇国として来国していないことを感謝しなさい。もし、コンフォート皇国として来国していたら、今頃、貴方がたの首は胴体から離れてましたわ」
もしからは、さらに威圧の段階を上げましまわ。
情けない。
その一言につきますわ。まさか、これくらいの威圧で、騎士が膝を付くとは。ゲス男も腰を抜かしてますわ。さらに、汗をかいてますわね。文句を言いたそうですけど、口をパクパクして声さえ出ていませんわね。まるで、餌を待つ魚のようですわ。あら失礼、魚が可哀想ですわね。
それにしても、一国の皇女相手に、抜刀寸前の構えで待ち構えた者たちには、到底見えませんわね。
「行こうか、セリア」
とても良い笑顔で、シオン様は先を促します。
「そうですわね。挨拶も済みましたから参りましょうか」
にっこりと微笑みながら答えます。
そして、後ろにいるケルヴァン殿下たちに視線を移してから、私はシオン様と一緒に、まだ動けないでいる騎士たちと、腰を抜かしているゲス男の脇を通ります。
「ゲスにはお似合いの格好ですわね」
去り際、絶対零度の視線と侮蔑の笑みをゲス男たちにプレゼントしてから去りました。
動けるようになって狂王子に伝えるのが先か、それとも、私たちが到着するのが先か、私としてはどちらでも構いませんけどね。
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