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エルヴァン王国の未来
第十六話 教えて差し上げますわ
しおりを挟むまず、ケルヴァン殿下が狂王子に飛び掛かります。
当然、狂王子はケルヴァン殿下を魔法障壁で弾き飛ばすでしょう。体力馬鹿に体力勝負を仕掛けるわけはありませんからね。なんせ、ここには魔力が溢れてますもの。
禍々しい魔力と同化、適合している狂王子にとって、この【竜石の間】は、無限大に使える魔力貯蔵庫ですわ。そんな場所での戦い、負けるはずないと確信しているはず。
事実、その考えは間違いありませんわ。
でも、そんな魔力を自分の身に入れ続けるとどうなるかは、わかっていなかったようね。いや、承知した上でかしら。
魔法障壁で弾き飛ばされたケルヴァン殿下は、うまく受け身をとって着地します。
いわば、ケルヴァン殿下はおとり。
狂王子がケルヴァン殿下に視線を移した瞬間、気配を完全に消していた侍女たちが、四方から一気に仕掛けます。
侍女たちの役目は、狂王子を倒すことではありません。魔法障壁に綻びを入れることですわ。
馬鹿の一つ覚えのように、魔法障壁で侍女たちを弾き飛ばそうとしてますが、なかなかできないようですね。当然ですわ。本気を出した侍女たちは強いのですよ。魔法耐性もずば抜けてます。それに、お母様からの魔法、物理の耐性強化の魔法を掛けて貰っていますからね、ケルヴァン殿下のようにはいきませんよ。
「……なんなんだ……アレは…………」
ケルヴァン殿下が、啞然とした表情で呟く声が聞こえました。
「人をやめた者の姿ですわ。これだけの禍々しい魔力を取り込んだのですもの、人の形態を保てるものではありませんわ」
社交界で常に中心にいた華やかな王子の姿は、そこにはありませんでした。
肌の色は灰色に変色し、髪と瞳の色も黒へと変化していきます。角と羽が生えたら、伝説の魔物、悪魔族とそっくりですわね。まぁ、偽物ですけど。
そろそろ、頃合いですね。
シオン様が一歩前に出ました。剣を構え振り被ります。振り下ろすと同時に、四人は端に逃げました。
シオン様の覇気が刃となって、狂王子に襲い掛かります。脆くなった魔法障壁など、簡単に突破し、狂王子を魔法陣から弾き飛ばしました。
さすがですわ!!
ここが戦いの場ではなかったら、抱き付いてキスしてますわ。
「セリア!!」
「わかってますわ!!」
お母様が私の名前を呼ぶ前にすでに移動し、魔法陣に両手を付いています。
「始めるわよ!!」
「はい!!」
同時に作業を始めます。
「ククク……できるはずないだろ!! 無駄な足掻きだ。書き換えられた魔法陣を元に戻せる人間なんているか!!」
わずかにめり込んだ背中を引き離すように立ち上がりながら、狂王子は喚き散らした。
「いたらどうします?」
私はニヤリと嗤いながらそう言うと、魔法陣に魔力を流し込みます。
さっきまで紫色の魔法陣が、私の魔力に反応して光出します。そして、書かれている文字と絵柄が変わっていきました。
と同時に、狂王子の中に同化していた魔力が、魔水晶へと逆流していきます。
狂王子は断末魔のような悲鳴を上げながら、胸を掻きむしります。口からはヘドロのような液体を吐き出し、徐々に人の姿へと戻って行きます。
「……なぜだ!! なぜ、そんな真似ができるんだ!!」
残っていた魔力を魔弾に変え、狂王子は私を攻撃して来ました。
しかし、その攻撃が私に当たることはありませんわ。だって、私には、最強且つ最愛のシオン様が護ってくださるんですもの。
「教えて差し上げますわ。私には、最高の師匠がいたからですわ!!」
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