空っぽの私は嘘恋で満たされる

井藤 美樹

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君は自己評価が低すぎます

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 夜八時頃、スマホの着信音が鳴った。

 音の種類でラインだってわかる。当然、誰が送ってきたのもね。別に約束はしてないんだけど、この時間にラインをすることが多くて、いつの間にか、互いにこの時間にラインをするようになっていた。

〈今日の、あれ、何だったんだ?〉

 相変わらず、蓮君からのラインは絵文字もスタンプもないね。いきなり要点突いてくる当たり、蓮君らしい。

〈さぁ? でも、まけたんだから大丈夫だよ〉

 あれから、蓮君が周囲を警戒してくれながら、早々にモールを脱出したの。その後は、私たちの駅の近くのゲーセンに行ったりして遊んだ。気になっていたぬいぐるみ、蓮君がゲットしてくれたよ。

 あの子たちの姿は、あれから見ていない。

 もう少し早くモールを出てたら、水族館もありだったねって話したりして、とっても楽しい時間を過ごして帰って来た。勿論、蓮君が家まで送ってくれたよ。

〈確かにそうだけど……〉

 蓮君、なんか納得してなさそう。まぁ、気持ち悪いっていうか、モヤモヤ感はどうしても残るよね。ランチの間も待っていたようだし。

〈しばらくは、モールに近付かなきゃいいんじゃない? さすがに、最寄り駅は知らないと思うし。で、本当に蓮君の知り合いじゃないんだよね。もしかして、蓮君のファン?〉

〈いや、それはまずねーよ〉

 間髪淹れずに戻って来る。その返信に、私は少しイライラしてきた。

〈どうして、言い切れるのよ〉

〈俺はモテねーよ〉

 いつも、いつも、行き着く先はそこ。あ~イライラ度が上がってきたよ。なら、ぶつけるしかないよね。

〈前から思っていたけど、蓮君って、自己評価かなり低いよね。いい!! 蓮君は優しくて包容力があって、イケメンなの。パーツはいいんだよ!! パーツはね!! ただ、目付きが鋭いだけなの。カフェでも注目されてたんだからね。自分をさげすむのは、蓮君自身でも許さないんだから!! わかった〉

 常日頃から、言葉にしてるんだけど、蓮君は一向に信じてくれないんだよね。その度に、悲しくなるの。

 怒りながら打ってるけど、蓮君のファンの可能性は低いと思う。ファンならファンで、かなり怖いけどね。だって、モールで蓮君を見めたってことだよね。それで、その行動力だよ。

 それとも、前から?

 なら、ストーキングに蓮君が気付いてないのはおかしい。ラキさんもそばにいてくれるし、ストーキングされていれば、どちらかがすぐに気付いたはずだよ。気付いていて黙っていた様子はなかったし、もしそうなら、こんなライン送って来ないよね。

 それがなかったってことは、モールが最初の接触になるって考えるのが自然だよね。

〈お前だとは考えねーのかよ〉

 文字だと、蓮君の照れ顔見れないのが残念。耳まで真っ赤になって可愛いんだよね。

〈いやいや、それこそないから。私は平凡中の平凡だからね〉

 全てにおいて平均値だからね、私は。身体が弱いのを加味かみしたらマイナスだよ。

〈あぁ!? 何寝言言ってんだ、お前〉

 不機嫌モードになる蓮君。自然と口元が緩んだ。

〈蓮君、女子にお前は駄目だよ。私はいいけどね〉

 これは、これから先のためのアドバイス。

 蓮君の魅力を口にするのも、これから先の蓮君の幸せのため。自信を取り戻して欲しいから。それに、自分で自分を下げてほしくはないからね。

 自分を少しでも愛せたら、絶対、蓮君は幸せになれると思うの。蓮君にしたら、勝手なお節介だと思うかもね。そうだよ、勝手に私がそう考えてるだけなんだよ。でも、焼きたいの。

〈……とにかく、しばらくは警戒しとけよ。何かあれば、いつでも連絡しろ〉

 学校行ってるのにね……ほんと、優しいな。

〈ありがとう、蓮君〉

 心配性の一面が出てきたあとで、散々警戒しろって言われて、今日のラインは終わった。



 そして、次の日――

 朝の十時頃。玄関のチャイムが鳴った。両親なら、合鍵を持っているから勝手に入って来るはず。だけど入っては来ない。

 また、チャイムが鳴った。

 隣の人か販売員かな? 

 居留守を使っても鳴り続けるので、仕方なく、私は玄関に向かいドアを開けた。そして固まる。

 そこに立っていたのは、昨日モールで、私と蓮君を付けていた子たちだった。


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