裏切りの蜜は甘く 【完結】

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SIDE 璃一

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優しく頭を撫でてくれるこの手は晶かな?

大きくて、いつもいい匂いがする

いつも香水をつけてるから、理由を聞いたら「雄臭いから」って言われた

雄臭いって何だろ?って思ったけど、初めて抱かれた時に分かった


晶は優しげな見た目と違って、絶倫のドSだった


僕を抱いてる時の顔は雄全開で、優しげな匂いと共に雄の匂い…というかフェロモンが凄くて、それだけで僕はノックアウト


普段の匂いとのギャップに完全に雄の晶にも落ちてしまった


優しい晶も、ドSな晶もどっちも大好き


だってドSの晶も僕に触れる手はとても優しいんだ




意識が浮上する


「んっ…………」


目を開けると、晶の寝顔のドアップが飛び込んできた


「あ………」


そうだ

僕は全てを思い出したんだ


覚悟はしてたけど、なかなかな人生を歩んできたと思う


今と180度違う生活だった数ヶ月前


数ヶ月しか経っていないのに、過去の自分が別人のように思えた

もちろん、自分自身が体験した事だし全て思い出した

けど…何ていうのか……今の僕は、璃一であってシエルじゃない

親から貰った大切な名前だけど、晶に助けられた時にシエルは死んだんだと思う

気持ちの問題なんだけど…実際は死んでないしさ


だからこそ過去を受け入れれた気がする

流石に思い出して行く時は恐怖で叫んだり、逃げ出しそうになったけど、ずっと右手が暖かくて大きな手に握られていて、僕が叫ぶとギュッと力を入れてくれた


その度に、あぁ…僕には晶が付いていてくれてるんだって正気に戻れた


それに僕が思い出したくない所へ辿り着くと、語りかけてくる人の声が代わった

あれはしず君の声だ

時に厳しく、時に優しく、僕が乗り越えて行けるよう、声で言葉で誘導してくれた


まるで僕の記憶が見えてるみたいだった


全てを思い出した時ちょっとパニックになった

今までの優しい世界は僕の妄想か夢だったんだって

だからつい英語で話しちゃったけど、晶も、しず君も当たり前のように英語で答えてくれた


その優しさに夢でも妄想でもない?って思ってたらちゃんと夢でも妄想でもないと否定してくれた


安心したら一気に熱が上がってぶっ倒れちゃったけどね


晶の匂いがあると安心して眠れた


途中セイ君の声がした気がした

僕を心配してくれてる声に、あぁ…僕って幸せ者だなって思えた




晶の腕の中は安心感があって暖かくて、抜け出すには勿体無くてスリスリと胸にすり寄る


「………んっ…………り………と?」


寝ぼけているのか、力加減なしにギュッと抱き締められる


痛い!!く…苦しい……息できない……


ますます力が込められる


今背中ボキッていった!!


「ちょっ…。晶……力緩めて…」


「んー……………」


返事はするものの緩まない


うー…この手は使いたくなかったけど……このままじゃ窒息する!


顔を上げ唇の上らへんにある晶の鎖骨に思いっきり噛み付いた


「痛っ!!」


あまりの痛さに目が覚めたようだ


腕の力が緩んだ


「………璃一?」


「ごめんね?力強くて息できなかったから…」


歯型がついて少し出血してしまった所に舌を這わす


「っん……待って…待って璃一………」


身動ぎした晶の下半身が足に当たった


「あ………硬い……………」


つい呟くと晶が腰を引く


「…朝の生理現象だから……」


恥ずかしそうにする晶を可愛いなぁと思いながら自分から足を絡めて悪戯する


「晶、生理現象はどうするの??」


「璃…一………悪戯は止めなさい………トイレ行ってくる」


「僕が居るのにトイレ行くの?」


「璃一は熱あるだろ?大人しくしときなさい」


「もうないもん。スッキリしたし。だから……ね?」


欲情しつつも耐えてる晶が愛しくてたまらない


「お前は本当、俺を煽るのが天才的だな…」


晶はフッと笑ってキスをくれた


どんどん深くなるキスに、また幸せを噛み締めた





そのままひたすらイチャイチャして、夕方前にハッと気付いた


「晶!!あれから何日たった!?皆はどこ!?」


「今日は2日目だ。どこって、この屋敷の中には居る筈だぞ。」


「皆に集合かけなきゃ!!」


「こらこら、病み上がりなんだからゆっくりしとけ」


「そんな悠長な事してらんない!思い出したからこそ、アイツを追い詰めれるんだ!!その為には時間が足りなくなっちゃう!」


「…何をそんなに慌ててるんだ?」


「アイツが日本に居るのは半年だけ。あと少ししたら、南アフリカへ向かうって言ってたんだよ!だからほら!用意して!!」


晶を急かし、僕のお風呂と着替えを手伝って貰った

晶は特に準備することが無かったから……




僕がトイレに行ってる間にみんなに連絡を入れてくれてたのか、会議室へ向かうと皆揃っていた


海外に行っていた樹さんも戻ってきていた



「もう大丈夫なの?」

セイ君が駆け寄ってきてくれた


「うん、大丈夫だよ!心配かけてごめんね?」


「ううん、無理はしないでね?」


「うん!ありがとう!!」


晶に促されソファに座ると、皆心配気な顔をして僕を見ていた


こんなにも皆が心配してくれるなんて、僕の人生にはなかったことだ


蹴落とし蹴落とされるのが当たり前で、弱みを見せれば襲われる


この人達は僕の大切な人達だ


アイツに傷つけさせたりなんか絶対にしない!



「皆、心配かけてごめんなさい!無理を言って一日で催眠療法をしてもらったお陰で全部思い出しました!」



僕が頭を下げるとポンっと頭を撫でられる


「身体は大丈夫なのか?静流が記憶がゴチャついてるから、数日は記憶の整理が必要でその間高熱が出るって言ってたけど。まだ2日しか経ってないぞ?」


顔をあげると隣りに座っていた光君が眉を垂らしている


「うん、もう記憶の整理もできてるよ。治療も順を追って思い出させて貰ったし、心が折れかけたら晶としず君が助けてくれたから。まぁ、治療が終わった時は過去の記憶に引きずられちゃったけどもう平気。
なんかね、記憶を取り戻したけど、過去の記憶はシエル…僕の元の名前なんだけど、シエルの記憶で今の僕とはちょっと違うって言うか……うまく言えないんだけど、前世の記憶を持って生まれ変わった感じなんだ。
だから記憶の整理も早く終わったんだと思う。」



「そっか」



皆がホッとした顔をした



「それでね、急いで皆に話さなきゃいけないことがあるの」


早くしないとアイツは次の事件を引き起こしてしまう


「分かった。話してくれ」


しず君に頷いて僕は、思い出したことを話した


順序も何もなく支離滅裂になってしまったが、皆根気よく聞いてくれた






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