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第二章 世界樹の枝と外の状況

21. 世界樹の精霊

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 ホーフーンの声が木魂すると、世界樹の枝がざわめき始める。
 やがて巨木が輝きだしその中からローブをまといフードをかぶった人が現れた。
 フードを目深にかぶっているため顔が見えず、老いているのか若いのか、男女どちらなのかさえ判別不能だ。
 この方が世界樹の精霊様なのだろうか?

『よく来ましたね、猫の賢者よ。今日はどのような用件ですか?』

 ローブの人物から響いてきたのは清らかさすら感じさせる女性の声だ。
 やはりこの方が世界樹の精霊様らしい。

「はい、精霊様。吾輩はいまこちらにいるバオアとともに世界樹の森で農業をさせていただいておりますのにゃ。今日は初めての作物が出来たので献上にまいりましたのにゃ」

『ほう、そちらの少年も確かにこの森に招き入れました。ですが、農業を始めましたか。大変だったのではないですか?』

「バオアのスキルは『農業機器』という農業に関する様々な道具を作り出すスキルでしたのにゃ。そのおかげで畑の開墾から麦の収穫、小麦粉への製粉までかなり楽が出来ましたのにゃ。小麦も30日ほどで刈り入れが出来るほど早く生長しましたのにゃ」

『なるほど。小麦の生育が早かったのはこの森の影響を受けてでしょう。それで、バオアといいましたね。あなたはどう感じましたか?』

 世界樹の精霊様から僕に質問がきた。
 失礼にならないよう、しっかりと答えなくちゃ。

「はい。話だけしか知りませんが、僕の知っている農業とは段違いに素早く簡単に農作業ができました。草を刈り、畑をおこすのも麦の刈り取りも『農業機器』スキルで生み出した機器を使えばすぐです。それに、世界樹の森のおかげで短期間に小麦が育ちました。感謝しています」

『感謝などいりません。小麦が早く成熟したことにこの森が関係しているのであれば、世界樹の森が勝手に行っているだけのことです。それで、そのパンが収穫できた小麦粉から作った物ですか?』

「はい。昨日、実った小麦から小麦粉を作りそれをパンに焼きました。どうぞお納めください」

『ええ。それではいただきましょう。あなた方も一緒に召し上がりなさい』

 世界樹の精霊様にすすめられて一緒に食事を取ることになってしまった。
 ホーフーンのカバンから取り出したばかりのパンは、まだ温かく柔らかい。
 ここまで歩き通しだったのでお腹もすいているしどんどん食べられるよ。

『うん。やはり、ケットシー族の焼いたパンは美味しいですね。もっちりとした食感がたまりません』

「お褒めいただき光栄ですにゃ。でも、小麦粉も品質がよいからこその出来ですにゃ」

『確かに。甘みがあって大変素晴らしい出来映えですよ、バオア』

 やった、世界樹の精霊様からお褒めの言葉をいただけた!
 なんだか報われた感じがするよ。
 農作業を頑張ってきてよかった。
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