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1巻
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うん、精霊石製のナイフの能力は面白いだけかと思っていたが、実は普通に凄かった事がココで判明した。
本体自体の切れ味は絶無でせいぜい紙くらいしか斬れそうにないのだが、今回持ってきた精霊石のナイフの素材に使われていたのが水精石だった為、ナイフを振れば刃から水が噴出される。
そんな代物を俺がちょっと真面目に振れば、高速で射出された水が圧によって切れ味鋭い水刃に変貌し、ズパッと冒険者を守る金属鎧とその中身を真っ二つに切り裂いていったのだ。
すげーすげー、って事でゴブ美ちゃんにもその快感をお裾分けって事で渡してみたら、うん、水は出るけど相手は斬れませんでした。ブシャッ、と全身を濡らすだけです。
どうやら相応の速度で振らないとダメみたいである。それでも凄い事には変わりないけどな。
こうして実験しつつ冒険者全員を殺した後、身ぐるみ剥いで俺が全員の上半身を、ゴブ吉くん達は下半身をそれぞれ喰いました。
[能力名【職業・暗殺者】のラーニング完了]
[能力名【職業・十字騎士】のラーニング完了]
[能力名【職業・守護騎士】のラーニング完了]
[能力名【職業・高位魔術師】のラーニング完了]
[能力名【職業・司祭】のラーニング完了]
[能力名【職業・付加術師】のラーニング完了]
[能力名【高速思考】のラーニング完了]
[能力名【並列思考】のラーニング完了]
[能力名【騎乗】のラーニング完了]
[能力名【対魔力】のラーニング完了]
[能力名【短縮呪文】のラーニング完了]
[能力名【騎士道精神】のラーニング完了]
[能力名【直感】のラーニング完了]
[能力名【気配遮断】のラーニング完了]
[能力名【慈愛の亜神の加護】のラーニング完了]
やはり人間の中でもそれなりに高レベルな冒険者だったのだろう。
装備品も上質なモノが多かったし、中にはかなり使える魔法の道具を発見。当然即座に喰いました。
[能力名【自己ステータス隠蔽】のラーニング完了]
[能力名【異空間収納能力】のラーニング完了]
喰ったのは自分の情報を隠す〝隠者の指輪〟と、それなりに希少であるらしい〝収納のバックパック(大)×6〟という二種類で合計七つの魔法の道具である。
冒険者一行の装備品は俺が得たアイテムボックスに全部収納――取り出す時は念じたらポンっと出ました。前世で日常的に普及していた転送機能のようで懐かしさがこみ上げる。ちなみに収納量は六つ喰ったので千二百種類の一種類九十九個まで収納可という反則ぶり――し、リターナに案内されて【ベルベットの隠し宝物殿】の出入り口に赴いた。
洞窟の最奥、という隠された場所にあった出入り口なので地形操作で天井を崩し、ゴブ江ちゃんが貫通させた場所以外の出入り口はコレで完全に閉鎖された。後はあの出入り口も封鎖すれば、全ては土の中に封印されるだろう。
その後宝物庫に案内され、俺達はそれを見た。
様々な金銀財宝に、先ほど手に入れた冒険者の装備品など霞むほどに強力なマジックアイテムの数々。そしてそんな品々が所狭しと置かれた宝物庫の最奥の玉座に鎮座する、白銀に輝く異形の左腕を持つミイラを。
リターナはミイラの事を主と呼んだ。つまりこのミイラがベルベットなのだろう。
その後はもう直ぐ時間が尽きると言うリターナと他愛も無い話を交わし、そしてそこで分かった事もあった。
俺達の現在の住処である採掘場でざっくざっくと採掘できた多種多様な精霊石は、このダンジョンの影響があってこそなんだとか。精霊石は属性に見合った場所――風精石なら風通しのいい場所、火精石なら火山の近くなど――で採取されるモノで、色んな属性の精霊石を一ヶ所で得る事は普通できないそうだ。
だが、ココのダンジョンが精霊の扱いに長けていたベルベットが建築した場所なので、寿命が存在しない精霊が今でもリターナと会話する為に滞在する事もあるとかなんとかで、その影響で多種多様な精霊石の採掘が可能だったらしい。
そして最後まで話を続け、時間を迎えたリターナは、最後は笑顔で消えていった。
身体が消えて、コロリ、と額の宝石だけがその場に取り残される。
それを俺は拾い、喰った。
[能力名【黄金律】のラーニング完了]
一同、リターナに黙祷を捧げ。
そして宝物庫の財宝全てを回収した。いや、アイテムボックスは本当に凄かった。
宝物庫に所狭しとあった財宝全て入れてもまだまだ余裕があるのだ。うん、これは先ほどの冒険者一行には感謝してもしたりないなぁ。
と思っていたら、伽藍と寂しくなった宝物庫には異形の左腕を持つミイラなベルベットだけになり、放置するには流石に忍びないと思ったので、宝石で装飾された玉座は回収させてもらい、ミイラはその場で燃やして火葬する事にした。
ミイラなので燃えが良く、轟々と舞い上がる紅炎と灰はキラキラと輝いた。
南無、と合掌して顔を上げたら、轟々と勢い良く燃えていた紅炎は消えていて、白銀色に輝く異形の義手だけがその場に残されている。
何だこれはと思い【物品鑑定】をしてみたら――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
名称‥【白銀の義腕】
分類‥【神迷遺産】
等級‥【伝説】級
能力‥【武装殺し】【魔法殺し】【自己進化】【属性反響】
備考‥前装着者ベルベットがとある神代ダンジョンの奥深くで発見した神製の義手。腕を失った者が装着すると以前と何ら変わりなく動く腕を手に入れる事ができる。また他の金属を取り込む事や装着者の意思によって形状変化も可能であり、進化するほど新しい能力を獲得していく。破壊は例外を除き、基本的に不可能。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
とあった。
ふむ、これは左腕が無い俺に『俺には必要ないから、お前にくれてやる』とベルベットが言っているのか? と考える事にし、拾って肘から先の無い左腕に近づける。
そしたらなんか、装着できました。
感想、凄く痛かったです。
いや、なんか近づけた瞬間に腕の装甲がブワッと展開して、その中から金属製の触手みたいなのが数十と伸びて俺の左腕を肩まで包んだ。そしたらなんか触手によって俺の肉が喰われるような感覚がして、余りの痛みで意識が飛びそうになった。
で、気合い入れて持ち直していたら俺の左腕は肩まで白銀の義腕になってました。拾った時は人間サイズだった銀腕はオーガである俺には遥かに小さかった筈なのだが、その長さや太さも何故か右腕と同じくらいのサイズに変化していて、俺にピッタリと適合していた。
これが【自己進化】の効果なのだろう。
五指を軽く握ったり開いたりしても、違和感は無い。気味が悪いくらいに、全く無かった。まるで最初から俺の腕だったかのように、しっかりと馴染んでいる。
それに物を触っている感触はあるのだが、壁を殴ってみても痛みは全く感じない。義腕なのだから痛覚が無いのは納得できるが、感触はどういう仕組みで伝わるのだろうか。
原理はこれも理解不能だが、そもそもアビリティ発動原理もさっぱり分かっていないのだから今更深く考える必要性を感じないので放置する。
色々と調べた結果、どうやら関節可動域がとんでもなく広く設定されている様で、所々にギミック盛り沢山であるようだ。手首や指はまるでドリルのように回転させる事ができたし、肘は勿論肩までもがオーガの骨格構成上不可能な角度ででも動かせたりした。
それと銀腕でもアビリティがちゃんと発動するのを確認した。鋭く尖った指先からは毒も糸も問題なく出す事ができた。義指でもどうにかできていたが、やはりしっかりとした基盤があるってのは何事も扱い易い。
その後、拠点に帰って宴会しました。
大戦果だったし、冒険者一行の所持品の中に酒瓶――コレ重要な――が幾つか入っていたので、こんな時やらずにいつやるんだと。
それにリターナとベルベットの魂を送り出すって意味合いも一応はあったりする。ベルベットは大昔に死んでいるのだから別にどうでもいいのかもしれないが、気分の問題だから気にするな。
赤髪ショートに鍛冶師さん達には、懇切丁寧に詳細を説明して納得してもらう。
頑張って説得しようとしても、欲深な人間には無意味だったってね。
しかし、うん、酒が美味ェ!!
《三十八日目》
午前訓練を終え、今日は鍛冶師さんの所で昨日手に入れた品々の鑑定・分類・整頓作業を行った。
流石に伝説の魔術師と言われているだけあって、ベルベットの遺産は殆ど全てがとんでもない代物ばかりだ。
俺ではまだ多くの事は読み取れなかったのだが、鍛冶師さんは流石旅商人の一員であり、かつ様々な武具を取り扱う【鍛冶師】だっただけあってか【物品鑑定】のレベルが高く、俺ではまだ見られないレベルの情報をスラスラと読み取って教えてくれるのだ。
それでもまだ全ては読み取れない部分が多々あるようだが、いや、本当に助かった。
今日一日は品を分別するのに費やしました。
《三十九日目》
午前訓練を終え、大量に手に入った武具をこのまま持っていても何だなと思ったし、しかし装備を充実させ過ぎると堕落するだろうとも判断したので、現在十ゴブしかいないホブゴブリンだけに先日手に入れたマジックアイテム――防具や武器、あとは効果持ちの指輪など多岐にわたる――を、一ゴブにつき二品ほど支給する事にした。
そしてそいつ等が使っていた装備の幾つかは下に流れ、全体の最低ライン装備はホーンラビットの角短槍に甲殻製の盾と革鎧、それからショートソードって感じになりました。
日々訓練しているので普通の群れでは考えられない程に個々のレベルが高く、それに加えてこのレベルの装備にこの数だと、以前のように毒矢による奇襲をせずとも真正面から襲えば、中堅どころの冒険者相手でも高確率で殺せるだろうとは、ゴブ爺談。
まあ、実力が拮抗か僅かに下のゴブリンの群れに襲われればそうだろうなと思うが。
この【小鬼の集落】では、現在が間違いなく歴代最強の軍団だそうだ。
午後は総数十のホブゴブリン全員と俺と、あとどうしても一緒に行きたいと言う事で赤髪ショートを連れて、以前言っていた灰色熊狩りに出かけた。
ちなみに俺の現在の主武器はベルベットの宝物庫で手に入れた【餓え渇く早贄の千棘】とかって名称の朱色の長槍だ。
防具はレッドベアーの革とオニグモの甲殻とその他の素材を使って造ったロングコートタイプの厚手革鎧と、余裕を持たせた赤いレザーパンツ。
生身の右手には、普段は黒銀の腕輪だけど、装着者の意思によって膂力上昇などのアビリティを発揮する頑丈な手甲に早変わりする【孤高なる王の猛威】とかって代物を装備している。
槍と腕輪と銀腕は、三つとも【伝説】級の【神迷遺産】だ。
それで、今更かもしれないが、まずは【神迷遺産】について簡単に説明する。
【神迷遺産】は世界中に幾つか存在する《神代ダンジョン》と言う、とても危険かつ特殊な場所で得られたアイテムを鑑定すると、必ず浮かび上がる言葉であるらしい。
そして鑑定によって閲覧できるアイテムデータに【神迷遺産】って表示が加わると、同じ名称のマジックアイテムの性能にも差が生じるそうだ。使い捨てのライフポーションでも、その効果の差が二倍から三倍以上はあるらしい。
一般的な製法で造られた普通のライフポーションはライフポイントが二〇回復。
【神迷遺産】のライフポーションはライフポイントが六〇回復。
みたいな感じだろう。道具類に関しては良質な物を見分ける基準になるって程度の認識でいい、と鍛冶師さんには言われた。
次に【伝説】級とかの話だ。これはアイテムの等級を表すモノである。
下から【粗悪】級、【通常】級、【希少】級、【固有】級、【遺物】級、【伝説】級、【幻想】級と、七段階に分類されているらしい。
例えを出すなら、コボルドを殺して得た刃毀れしたロングソードやゴブ吉くんが使っていた甲殻補強した俺製の巨大棍棒などは最低ランクの【粗悪】級であり、コボルド・メイジが持っていた魔杖はギリギリ【通常】級に分類される。
ベルベットの宝物庫で殺して得た冒険者の武器は大体【固有】級の品で、その中に数品だけだが【遺物】級が混じっていた程度だった。
つまり、高レベルの冒険者パーティーでも持てて【遺物】級までであり、ましてや【伝説】級や【幻想】級の品を得るのは相当に難しいらしい。
【固有】級の品が小国の国宝級の品である事もあるそうだ、といえばイメージし易いだろうか?
というか、そもそも【遺物】級以上のマジックアイテムの殆ど全ては【神迷遺産】なのだそうだ。
だから、欲しけりゃ神代ダンジョンに潜れと言う事だな。
余談だが、神代ダンジョンなどを取り囲むように城壁ができて、迷宮都市なるモノもあるのだとか。面白そうなので行ってみるのもいいかもしれん。
俺の銀腕や朱槍や腕輪はどれも【伝説】級なのは、生前のベルベットがどれほど凄かったかって事の証明だろう。
【伝説】級のマジックアイテムは一つ得るだけでも国が動くそうだから、ベルベットさんマジ凄いと尊敬せざるを得ない。
一番上の【幻想】級だとどうなるのかなどは、想像を絶するので止めておこう。情報が不足し過ぎて良く分からないし。
さて、本題に戻るが、ハインドベアー狩りは順調に終わりました。
ハインドベアーは確かに強かったけど、マジックアイテムで武装し、連携も問題なく行えるようになった今の俺達相手では、ハインドベアーは強敵だったけどそこ止まりの相手でしかなかった。
銀腕と朱槍と腕輪の能力が反則過ぎて、アビリティを使うまでも無く、真正面から殴り合っても殺せるって事も多少は理由としてあるのだろうが、今回俺はあくまでも補助に徹した。
だから高品質のマジックアイテムで武装した現在のゴブ吉くんやゴブ美ちゃんとかが、ホブゴブリンのレベルじゃない強さを発揮したってのが主な理由である。
今回のハンティングでそれぞれ大きくレベルが上昇した様で何よりだ。
うん、熊鍋うまー。
ちなみに、酒をもっと飲みたくて仕方が無いってのが、最近の悩みだ。
酒が、欲しいです……
《四十日目》
雨だった。
丁度いいので再び階級を決める総当たり戦を行った。元ホブゴブリン・リーダーの穴を埋めるのに最適だしな。人数が増え過ぎない間は、細かくこういう事を行って全体のやる気アップにつなげていくつもりだ。
命令系統の改善は、今の段階なら幾らでもできるのでやっといて損はないだろう。
ただゴブリンとホブゴブリンではやる前から勝敗は決まっている様なものだし、オーガである俺と他では話にもならないので、ゴブリンはゴブリンの中で階級を決め、ホブゴブリンはホブゴブリンの中で階級を決めるやり方に変更は無い。
今回ので階級が落ちた者もいれば上がった者もいたりと、皆一喜一憂してました。
うん、全体のレベルも上がってきたし、そろそろ赤髪ショートとかを連れて街に乗り出すのもいいかもしれんな。
でもそれは後で聞こうと思う。
外に出たら傭兵団を結成するのも面白いかもしれない。今俺達が活動している近辺では、もう俺に殺せないモンスターは居ないのでレベルもなかなか上がらないのだ。
山の主を殺してしまえば、そうなってしまうのは仕方が無い。
うむ、外には遅かれ早かれ出なければならんようだ。
色々思いながら、ぐっすり寝ました。
《四十一日目》
太陽が昇ったばかりの早朝、今まで喰った事の無い獲物を求め、単身で行った事のなかった場所――俺が未踏破区画と呼ぶ事にした脳内地図の空白地帯を散策中である。
午前訓練は既に俺がいなくともゴブ吉くん達だけで回せる段階にまでなったので、直接訓練を担当する機会が非常に少なくなってしまった。
つまりだ、朝は暇になってしまったのである。組み手が無くなった、てのが特に大きい。
今まではそれでも何かあったら大変だろう、特に怪我したりした場合には、って事で洞窟にいてやり自分の基礎訓練を終えた後は服や防具、それに寝袋などを作る事で暇を潰していたのだが、全員に寝袋や甲殻製の胴鎧が着替え分も含めて配給出来てしまったので、取りあえず急いでやっといた方がいい案件が無くなってしまった。
だからどうせなら、新しいアビリティを得た方が有意義だ、と言う事で現在に至る。
本日の最初の獲物は、黄金色の艶やかな甲殻が特徴的な二メートル級の〝コガネグモ〟だった。
カサカサと蜘蛛だけに動きは機敏、噴出する糸はやたらと頑丈な上に量が多く、黄金色の甲殻はオニグモのそれと比較できない程に高硬度。と三拍子揃って殺すのにやや手古摺ったが、コチラも糸で応戦したり火でコガネグモを直接焙ったりして、最終的には銀腕でコガネグモの甲殻をぶち抜いて仕留める事に成功。
殺した後はその使えそうで、かつ森の外では高額で売買できそうな黄金色の甲殻を綺麗に剥いで、残りはボリボリと食んでみた。
オニグモよりも美味かったので、調子に乗って合計八匹見つけて喰いました。
[能力名【黄金糸生成】のラーニング完了]
[能力名【金剛蜘蛛の堅殻】のラーニング完了]
結果、糸の強度と防御力が上昇するアビリティをラーニングできました。
今回のアビリティで凄く綺麗な糸――というかアビリティ名そのままな黄金色で、天然の金糸か? かなり派手だ――が生成できる様になったので、これでゴブ美ちゃんとか赤髪ショートとかにプレゼントでも作ろうかと思う。
流石にこの糸で編んだ黄金の服ってのはセンスを疑うので、以前ゴブ美ちゃんにあげた民族品的アクセサリー辺りが妥当だろうな。
コガネグモの次に見つけた獲物は薄いピンク色を帯びた紅水晶で出来ているかのような美しい双角と、四つの赤瞳に四つの尖った耳が特徴的な〝アカシカ〟だった。
気品すら感じる見かけに反し、どうやらアカシカは気性が荒いようで。真正面からその鋭利かつ綺麗な角を突き出し、邪魔な木々をまるでドリルのように削りながら突っ込んできたが、そこはその程度では傷一つつかない銀腕でもって頭を押さえつけ、銀腕の鋭い爪先から毒を注入。
四秒程でアカシカは泡を吹きながら死んだ。
綺麗で高く売れそうな角は当然として、目立った損傷がなく毛並みの良い毛皮もあれば役に立つだろうと一応剥いで角と一緒に俺のアイテムボックスに放り込み、その後は肉を美味しく頂いた。
残念な事にアビリティは確保できなかったが、あと二、三頭も喰えば何かをラーニングできそうな手応えがあるし、身体の強化ができたのでよしとしとこう。
そしてその後も森の中を彷徨っていた俺は、陽光を浴びる彼女と出会う事になった。
この世界には〝ドライアド〟と呼ばれる種族が存在する。
ドライアドは曲者が多い〝自然精霊〟の一種で、樹齢数百年といったそれなりに歴史のある樹木に発生/宿り、宿った木が死ぬと共に死んでしまうという面倒な特徴を持っている。
それ故に宿った木を守る為、伐採しようとしたり燃やしたりする害なす存在を能力によって呪い殺す事が多々あり、木を切って生活している木こり達からは蛇蝎の如く嫌われている存在だ。
だがそれよりも人間や獣人など、それなりに知性のある種族の雄が近くを通ればその優れた美貌――ドライアドには雌体しか存在しない――で誘惑し、誘惑した雄を気に入れば行為が終わってから、気に入らなければ行為せずに二度と覚めぬ夢の中に捕らえて離さず、最終的には木の養分にしてしまう、という特徴の方が厄介だ。
ドライアドは例外なく美貌の持ち主のいい女なので捕われれば死ぬと分かっていても抗えない男は多く、呪いよりも魅了されて死ぬ割合が高いらしい。
今までにもその美貌に釣られ、過去のゴブリン達の中からもそれなりの数の哀れな犠牲者――この場合は良い思いをする間もなくただの養分にされた馬鹿達――が出ており、流石のゴブ爺でも死ぬ直前までは出逢いたくないと言っていた。
死ぬ前にいい思いをしたいという欲望がハッキリと見える考え方だが、きっとそのまま養分にされるに違いない、と俺は思っている。
それでそのドライアドが、実は今俺の目の前に居たりする。
「わぁ、凄い筋肉ね。ちょっとだけ触っても、いい?」
そう言いながら既に俺の胸筋を美しい細指でツツツと撫でている美女――ドライアド。
ドライアドは局所を枝や葉で作った衣服のようなモノで隠しているが、ほぼ全裸といっていい姿をしている。サラサラと風に靡く金糸のような髪、性欲を刺激する甘い匂い、透き通る様な碧眼、ピンク色のプックリとした唇、なかなか出会えないだろう優れた美貌、穢れの無い純白の肌、俺の腕に押し付けてその形を変えているたわわに実った柔らかい胸。
なるほど、確かにこんな美女に迫られれば犠牲となった男達の数も納得できるというモノだ。
普通の男がドライアドの誘惑を断ち切るのは、それはもう並々ならない精神力を持っていないと不可能に違いない。ただ近くに居るだけで、脳の一部が心地よい熱を発してくる。
自然と熱く早くなる自分の呼吸を知覚した。
視線一つ、吐息一回、汗一滴に至るまで【魅了】の魔力を秘めていそうなドライアドという種族はこれほどまでに厄介なモノなのか。
「触れる度に、君の力強さが伝わってくるみたい。ああ、本当に、凄いよぉ……ダメェ、我慢できない、かも」
欲に染まった熱い吐息を出し、ドライアドは俺の胸筋に今度はその小さな舌を這わせた。
その行動は艶めかしく、舌が皮膚の上を舐めるその感触は心地よい。唾液に濡れる感触、舐められた場所が自然と熱くなる。それに僅かにだがクチュクチュと聞こえる液体の音とドライアドの不自然に動く手が、脳を淫らに刺激した。
次第に反応する身体の一部。前世の時は経験があるが、現在の身体での経験は無いので仕方ないと思う。
「正直、想像以上に大きいな」
大きくそそり立つそれの感覚を紛らわす様に、俺は何故このような状況になっているのか思い返す事にした。
俺がこの過激なアプローチをしてくるドライアドと出会ったのは、獲物を求めて森の中を散策中、陽光を一身に浴びていた立派な大樹を発見した時の事だ。
周囲の木々よりも明らかに二回り以上は大きい大樹の周囲を【気配察知】で獲物が居ないか探したが発見できず、しかたなく周囲の植生を調べて使える物が無いかと探っていたら、背後から『この森にオーガ亜種が居るなんて、珍しい事もあるのね』と声をかけられたのである。正確に言えば希少種だが、それは置いといて。
【気配察知】は常に発動させていたのに背後をとられた俺は慌てて振り返ったのだが、振り返ると大樹の中からゆっくりと出てくるこのドライアドと目があった。
ドライアド、という種族の特性やらはゴブ爺から既に聞いていたので即座に特定できたが、特に殺意や害意を感じ無かった俺はドライアドを問答無用で殺す、という選択肢を選ばなかった。
出てきた彼女が『ああ、そんなに警戒しないで。何もしないから、ちょっと私と話をしてくれればいいの。ね、お願い』と手を重ね合わせ、懇願する姿が可愛らしかった事も原因かもしれない。
とはいえ会話している最中にドライアドが殺意を持ち、俺に襲いかかってくれば即座に殺せるように警戒は解かなかった。
大樹の近くにある半分埋まった岩の上に腰かけ、ドライアドと会話する事しばし。
俺はドライアドさん――会話している最中にこう呼ぶようになった。本名はまだ教えてもらっていない――から植物などに関してかなり多くの情報を得る事ができた。
例えばココから少し離れた場所で【痺毒の棘木】という木が生えている。
【痺毒の棘木】は高木の一種で、その名称通りの特性を備えている。幹には長さ一センチほどの棘が無数に生え、棘の先端から生物を麻痺させる樹液を分泌し、動けなくなった生物を今度はクリの様にトゲトゲした実を浴びせて殺害。
最終的にはドライアドのようにその死体を養分にしてしまうらしい。
ただトドメを刺す実の棘には致死性の毒があるが、一度に大量に摂取しなければ死なない。だからトゲトゲした実が沢山落ちている場所には特に気を付けろ、と言われた。
他にも近づいた動物に襲いかかる【締め付ける鋼蔦】など、話を聞いた時には何とも面倒で凶悪な植物があるものだと思ったが、この世界には危険な植物だけでなく便利な植物も多数あるようだ。
例えば衝撃を与えれば弾けて硬い種を撒き散らす【弾けの実】は武器に転用できるだろうし、睡眠性の芳香を撒き散らす【睡香草】も奇襲・鎮圧戦で有用そうである。解毒効果のある【バッテラ】の樹液や、匂いで生物を混乱状態にしてしまう【錯乱茸】などなど、特性と繁殖している場所を知れたのはとても大きいだろう。
本体自体の切れ味は絶無でせいぜい紙くらいしか斬れそうにないのだが、今回持ってきた精霊石のナイフの素材に使われていたのが水精石だった為、ナイフを振れば刃から水が噴出される。
そんな代物を俺がちょっと真面目に振れば、高速で射出された水が圧によって切れ味鋭い水刃に変貌し、ズパッと冒険者を守る金属鎧とその中身を真っ二つに切り裂いていったのだ。
すげーすげー、って事でゴブ美ちゃんにもその快感をお裾分けって事で渡してみたら、うん、水は出るけど相手は斬れませんでした。ブシャッ、と全身を濡らすだけです。
どうやら相応の速度で振らないとダメみたいである。それでも凄い事には変わりないけどな。
こうして実験しつつ冒険者全員を殺した後、身ぐるみ剥いで俺が全員の上半身を、ゴブ吉くん達は下半身をそれぞれ喰いました。
[能力名【職業・暗殺者】のラーニング完了]
[能力名【職業・十字騎士】のラーニング完了]
[能力名【職業・守護騎士】のラーニング完了]
[能力名【職業・高位魔術師】のラーニング完了]
[能力名【職業・司祭】のラーニング完了]
[能力名【職業・付加術師】のラーニング完了]
[能力名【高速思考】のラーニング完了]
[能力名【並列思考】のラーニング完了]
[能力名【騎乗】のラーニング完了]
[能力名【対魔力】のラーニング完了]
[能力名【短縮呪文】のラーニング完了]
[能力名【騎士道精神】のラーニング完了]
[能力名【直感】のラーニング完了]
[能力名【気配遮断】のラーニング完了]
[能力名【慈愛の亜神の加護】のラーニング完了]
やはり人間の中でもそれなりに高レベルな冒険者だったのだろう。
装備品も上質なモノが多かったし、中にはかなり使える魔法の道具を発見。当然即座に喰いました。
[能力名【自己ステータス隠蔽】のラーニング完了]
[能力名【異空間収納能力】のラーニング完了]
喰ったのは自分の情報を隠す〝隠者の指輪〟と、それなりに希少であるらしい〝収納のバックパック(大)×6〟という二種類で合計七つの魔法の道具である。
冒険者一行の装備品は俺が得たアイテムボックスに全部収納――取り出す時は念じたらポンっと出ました。前世で日常的に普及していた転送機能のようで懐かしさがこみ上げる。ちなみに収納量は六つ喰ったので千二百種類の一種類九十九個まで収納可という反則ぶり――し、リターナに案内されて【ベルベットの隠し宝物殿】の出入り口に赴いた。
洞窟の最奥、という隠された場所にあった出入り口なので地形操作で天井を崩し、ゴブ江ちゃんが貫通させた場所以外の出入り口はコレで完全に閉鎖された。後はあの出入り口も封鎖すれば、全ては土の中に封印されるだろう。
その後宝物庫に案内され、俺達はそれを見た。
様々な金銀財宝に、先ほど手に入れた冒険者の装備品など霞むほどに強力なマジックアイテムの数々。そしてそんな品々が所狭しと置かれた宝物庫の最奥の玉座に鎮座する、白銀に輝く異形の左腕を持つミイラを。
リターナはミイラの事を主と呼んだ。つまりこのミイラがベルベットなのだろう。
その後はもう直ぐ時間が尽きると言うリターナと他愛も無い話を交わし、そしてそこで分かった事もあった。
俺達の現在の住処である採掘場でざっくざっくと採掘できた多種多様な精霊石は、このダンジョンの影響があってこそなんだとか。精霊石は属性に見合った場所――風精石なら風通しのいい場所、火精石なら火山の近くなど――で採取されるモノで、色んな属性の精霊石を一ヶ所で得る事は普通できないそうだ。
だが、ココのダンジョンが精霊の扱いに長けていたベルベットが建築した場所なので、寿命が存在しない精霊が今でもリターナと会話する為に滞在する事もあるとかなんとかで、その影響で多種多様な精霊石の採掘が可能だったらしい。
そして最後まで話を続け、時間を迎えたリターナは、最後は笑顔で消えていった。
身体が消えて、コロリ、と額の宝石だけがその場に取り残される。
それを俺は拾い、喰った。
[能力名【黄金律】のラーニング完了]
一同、リターナに黙祷を捧げ。
そして宝物庫の財宝全てを回収した。いや、アイテムボックスは本当に凄かった。
宝物庫に所狭しとあった財宝全て入れてもまだまだ余裕があるのだ。うん、これは先ほどの冒険者一行には感謝してもしたりないなぁ。
と思っていたら、伽藍と寂しくなった宝物庫には異形の左腕を持つミイラなベルベットだけになり、放置するには流石に忍びないと思ったので、宝石で装飾された玉座は回収させてもらい、ミイラはその場で燃やして火葬する事にした。
ミイラなので燃えが良く、轟々と舞い上がる紅炎と灰はキラキラと輝いた。
南無、と合掌して顔を上げたら、轟々と勢い良く燃えていた紅炎は消えていて、白銀色に輝く異形の義手だけがその場に残されている。
何だこれはと思い【物品鑑定】をしてみたら――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
名称‥【白銀の義腕】
分類‥【神迷遺産】
等級‥【伝説】級
能力‥【武装殺し】【魔法殺し】【自己進化】【属性反響】
備考‥前装着者ベルベットがとある神代ダンジョンの奥深くで発見した神製の義手。腕を失った者が装着すると以前と何ら変わりなく動く腕を手に入れる事ができる。また他の金属を取り込む事や装着者の意思によって形状変化も可能であり、進化するほど新しい能力を獲得していく。破壊は例外を除き、基本的に不可能。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
とあった。
ふむ、これは左腕が無い俺に『俺には必要ないから、お前にくれてやる』とベルベットが言っているのか? と考える事にし、拾って肘から先の無い左腕に近づける。
そしたらなんか、装着できました。
感想、凄く痛かったです。
いや、なんか近づけた瞬間に腕の装甲がブワッと展開して、その中から金属製の触手みたいなのが数十と伸びて俺の左腕を肩まで包んだ。そしたらなんか触手によって俺の肉が喰われるような感覚がして、余りの痛みで意識が飛びそうになった。
で、気合い入れて持ち直していたら俺の左腕は肩まで白銀の義腕になってました。拾った時は人間サイズだった銀腕はオーガである俺には遥かに小さかった筈なのだが、その長さや太さも何故か右腕と同じくらいのサイズに変化していて、俺にピッタリと適合していた。
これが【自己進化】の効果なのだろう。
五指を軽く握ったり開いたりしても、違和感は無い。気味が悪いくらいに、全く無かった。まるで最初から俺の腕だったかのように、しっかりと馴染んでいる。
それに物を触っている感触はあるのだが、壁を殴ってみても痛みは全く感じない。義腕なのだから痛覚が無いのは納得できるが、感触はどういう仕組みで伝わるのだろうか。
原理はこれも理解不能だが、そもそもアビリティ発動原理もさっぱり分かっていないのだから今更深く考える必要性を感じないので放置する。
色々と調べた結果、どうやら関節可動域がとんでもなく広く設定されている様で、所々にギミック盛り沢山であるようだ。手首や指はまるでドリルのように回転させる事ができたし、肘は勿論肩までもがオーガの骨格構成上不可能な角度ででも動かせたりした。
それと銀腕でもアビリティがちゃんと発動するのを確認した。鋭く尖った指先からは毒も糸も問題なく出す事ができた。義指でもどうにかできていたが、やはりしっかりとした基盤があるってのは何事も扱い易い。
その後、拠点に帰って宴会しました。
大戦果だったし、冒険者一行の所持品の中に酒瓶――コレ重要な――が幾つか入っていたので、こんな時やらずにいつやるんだと。
それにリターナとベルベットの魂を送り出すって意味合いも一応はあったりする。ベルベットは大昔に死んでいるのだから別にどうでもいいのかもしれないが、気分の問題だから気にするな。
赤髪ショートに鍛冶師さん達には、懇切丁寧に詳細を説明して納得してもらう。
頑張って説得しようとしても、欲深な人間には無意味だったってね。
しかし、うん、酒が美味ェ!!
《三十八日目》
午前訓練を終え、今日は鍛冶師さんの所で昨日手に入れた品々の鑑定・分類・整頓作業を行った。
流石に伝説の魔術師と言われているだけあって、ベルベットの遺産は殆ど全てがとんでもない代物ばかりだ。
俺ではまだ多くの事は読み取れなかったのだが、鍛冶師さんは流石旅商人の一員であり、かつ様々な武具を取り扱う【鍛冶師】だっただけあってか【物品鑑定】のレベルが高く、俺ではまだ見られないレベルの情報をスラスラと読み取って教えてくれるのだ。
それでもまだ全ては読み取れない部分が多々あるようだが、いや、本当に助かった。
今日一日は品を分別するのに費やしました。
《三十九日目》
午前訓練を終え、大量に手に入った武具をこのまま持っていても何だなと思ったし、しかし装備を充実させ過ぎると堕落するだろうとも判断したので、現在十ゴブしかいないホブゴブリンだけに先日手に入れたマジックアイテム――防具や武器、あとは効果持ちの指輪など多岐にわたる――を、一ゴブにつき二品ほど支給する事にした。
そしてそいつ等が使っていた装備の幾つかは下に流れ、全体の最低ライン装備はホーンラビットの角短槍に甲殻製の盾と革鎧、それからショートソードって感じになりました。
日々訓練しているので普通の群れでは考えられない程に個々のレベルが高く、それに加えてこのレベルの装備にこの数だと、以前のように毒矢による奇襲をせずとも真正面から襲えば、中堅どころの冒険者相手でも高確率で殺せるだろうとは、ゴブ爺談。
まあ、実力が拮抗か僅かに下のゴブリンの群れに襲われればそうだろうなと思うが。
この【小鬼の集落】では、現在が間違いなく歴代最強の軍団だそうだ。
午後は総数十のホブゴブリン全員と俺と、あとどうしても一緒に行きたいと言う事で赤髪ショートを連れて、以前言っていた灰色熊狩りに出かけた。
ちなみに俺の現在の主武器はベルベットの宝物庫で手に入れた【餓え渇く早贄の千棘】とかって名称の朱色の長槍だ。
防具はレッドベアーの革とオニグモの甲殻とその他の素材を使って造ったロングコートタイプの厚手革鎧と、余裕を持たせた赤いレザーパンツ。
生身の右手には、普段は黒銀の腕輪だけど、装着者の意思によって膂力上昇などのアビリティを発揮する頑丈な手甲に早変わりする【孤高なる王の猛威】とかって代物を装備している。
槍と腕輪と銀腕は、三つとも【伝説】級の【神迷遺産】だ。
それで、今更かもしれないが、まずは【神迷遺産】について簡単に説明する。
【神迷遺産】は世界中に幾つか存在する《神代ダンジョン》と言う、とても危険かつ特殊な場所で得られたアイテムを鑑定すると、必ず浮かび上がる言葉であるらしい。
そして鑑定によって閲覧できるアイテムデータに【神迷遺産】って表示が加わると、同じ名称のマジックアイテムの性能にも差が生じるそうだ。使い捨てのライフポーションでも、その効果の差が二倍から三倍以上はあるらしい。
一般的な製法で造られた普通のライフポーションはライフポイントが二〇回復。
【神迷遺産】のライフポーションはライフポイントが六〇回復。
みたいな感じだろう。道具類に関しては良質な物を見分ける基準になるって程度の認識でいい、と鍛冶師さんには言われた。
次に【伝説】級とかの話だ。これはアイテムの等級を表すモノである。
下から【粗悪】級、【通常】級、【希少】級、【固有】級、【遺物】級、【伝説】級、【幻想】級と、七段階に分類されているらしい。
例えを出すなら、コボルドを殺して得た刃毀れしたロングソードやゴブ吉くんが使っていた甲殻補強した俺製の巨大棍棒などは最低ランクの【粗悪】級であり、コボルド・メイジが持っていた魔杖はギリギリ【通常】級に分類される。
ベルベットの宝物庫で殺して得た冒険者の武器は大体【固有】級の品で、その中に数品だけだが【遺物】級が混じっていた程度だった。
つまり、高レベルの冒険者パーティーでも持てて【遺物】級までであり、ましてや【伝説】級や【幻想】級の品を得るのは相当に難しいらしい。
【固有】級の品が小国の国宝級の品である事もあるそうだ、といえばイメージし易いだろうか?
というか、そもそも【遺物】級以上のマジックアイテムの殆ど全ては【神迷遺産】なのだそうだ。
だから、欲しけりゃ神代ダンジョンに潜れと言う事だな。
余談だが、神代ダンジョンなどを取り囲むように城壁ができて、迷宮都市なるモノもあるのだとか。面白そうなので行ってみるのもいいかもしれん。
俺の銀腕や朱槍や腕輪はどれも【伝説】級なのは、生前のベルベットがどれほど凄かったかって事の証明だろう。
【伝説】級のマジックアイテムは一つ得るだけでも国が動くそうだから、ベルベットさんマジ凄いと尊敬せざるを得ない。
一番上の【幻想】級だとどうなるのかなどは、想像を絶するので止めておこう。情報が不足し過ぎて良く分からないし。
さて、本題に戻るが、ハインドベアー狩りは順調に終わりました。
ハインドベアーは確かに強かったけど、マジックアイテムで武装し、連携も問題なく行えるようになった今の俺達相手では、ハインドベアーは強敵だったけどそこ止まりの相手でしかなかった。
銀腕と朱槍と腕輪の能力が反則過ぎて、アビリティを使うまでも無く、真正面から殴り合っても殺せるって事も多少は理由としてあるのだろうが、今回俺はあくまでも補助に徹した。
だから高品質のマジックアイテムで武装した現在のゴブ吉くんやゴブ美ちゃんとかが、ホブゴブリンのレベルじゃない強さを発揮したってのが主な理由である。
今回のハンティングでそれぞれ大きくレベルが上昇した様で何よりだ。
うん、熊鍋うまー。
ちなみに、酒をもっと飲みたくて仕方が無いってのが、最近の悩みだ。
酒が、欲しいです……
《四十日目》
雨だった。
丁度いいので再び階級を決める総当たり戦を行った。元ホブゴブリン・リーダーの穴を埋めるのに最適だしな。人数が増え過ぎない間は、細かくこういう事を行って全体のやる気アップにつなげていくつもりだ。
命令系統の改善は、今の段階なら幾らでもできるのでやっといて損はないだろう。
ただゴブリンとホブゴブリンではやる前から勝敗は決まっている様なものだし、オーガである俺と他では話にもならないので、ゴブリンはゴブリンの中で階級を決め、ホブゴブリンはホブゴブリンの中で階級を決めるやり方に変更は無い。
今回ので階級が落ちた者もいれば上がった者もいたりと、皆一喜一憂してました。
うん、全体のレベルも上がってきたし、そろそろ赤髪ショートとかを連れて街に乗り出すのもいいかもしれんな。
でもそれは後で聞こうと思う。
外に出たら傭兵団を結成するのも面白いかもしれない。今俺達が活動している近辺では、もう俺に殺せないモンスターは居ないのでレベルもなかなか上がらないのだ。
山の主を殺してしまえば、そうなってしまうのは仕方が無い。
うむ、外には遅かれ早かれ出なければならんようだ。
色々思いながら、ぐっすり寝ました。
《四十一日目》
太陽が昇ったばかりの早朝、今まで喰った事の無い獲物を求め、単身で行った事のなかった場所――俺が未踏破区画と呼ぶ事にした脳内地図の空白地帯を散策中である。
午前訓練は既に俺がいなくともゴブ吉くん達だけで回せる段階にまでなったので、直接訓練を担当する機会が非常に少なくなってしまった。
つまりだ、朝は暇になってしまったのである。組み手が無くなった、てのが特に大きい。
今まではそれでも何かあったら大変だろう、特に怪我したりした場合には、って事で洞窟にいてやり自分の基礎訓練を終えた後は服や防具、それに寝袋などを作る事で暇を潰していたのだが、全員に寝袋や甲殻製の胴鎧が着替え分も含めて配給出来てしまったので、取りあえず急いでやっといた方がいい案件が無くなってしまった。
だからどうせなら、新しいアビリティを得た方が有意義だ、と言う事で現在に至る。
本日の最初の獲物は、黄金色の艶やかな甲殻が特徴的な二メートル級の〝コガネグモ〟だった。
カサカサと蜘蛛だけに動きは機敏、噴出する糸はやたらと頑丈な上に量が多く、黄金色の甲殻はオニグモのそれと比較できない程に高硬度。と三拍子揃って殺すのにやや手古摺ったが、コチラも糸で応戦したり火でコガネグモを直接焙ったりして、最終的には銀腕でコガネグモの甲殻をぶち抜いて仕留める事に成功。
殺した後はその使えそうで、かつ森の外では高額で売買できそうな黄金色の甲殻を綺麗に剥いで、残りはボリボリと食んでみた。
オニグモよりも美味かったので、調子に乗って合計八匹見つけて喰いました。
[能力名【黄金糸生成】のラーニング完了]
[能力名【金剛蜘蛛の堅殻】のラーニング完了]
結果、糸の強度と防御力が上昇するアビリティをラーニングできました。
今回のアビリティで凄く綺麗な糸――というかアビリティ名そのままな黄金色で、天然の金糸か? かなり派手だ――が生成できる様になったので、これでゴブ美ちゃんとか赤髪ショートとかにプレゼントでも作ろうかと思う。
流石にこの糸で編んだ黄金の服ってのはセンスを疑うので、以前ゴブ美ちゃんにあげた民族品的アクセサリー辺りが妥当だろうな。
コガネグモの次に見つけた獲物は薄いピンク色を帯びた紅水晶で出来ているかのような美しい双角と、四つの赤瞳に四つの尖った耳が特徴的な〝アカシカ〟だった。
気品すら感じる見かけに反し、どうやらアカシカは気性が荒いようで。真正面からその鋭利かつ綺麗な角を突き出し、邪魔な木々をまるでドリルのように削りながら突っ込んできたが、そこはその程度では傷一つつかない銀腕でもって頭を押さえつけ、銀腕の鋭い爪先から毒を注入。
四秒程でアカシカは泡を吹きながら死んだ。
綺麗で高く売れそうな角は当然として、目立った損傷がなく毛並みの良い毛皮もあれば役に立つだろうと一応剥いで角と一緒に俺のアイテムボックスに放り込み、その後は肉を美味しく頂いた。
残念な事にアビリティは確保できなかったが、あと二、三頭も喰えば何かをラーニングできそうな手応えがあるし、身体の強化ができたのでよしとしとこう。
そしてその後も森の中を彷徨っていた俺は、陽光を浴びる彼女と出会う事になった。
この世界には〝ドライアド〟と呼ばれる種族が存在する。
ドライアドは曲者が多い〝自然精霊〟の一種で、樹齢数百年といったそれなりに歴史のある樹木に発生/宿り、宿った木が死ぬと共に死んでしまうという面倒な特徴を持っている。
それ故に宿った木を守る為、伐採しようとしたり燃やしたりする害なす存在を能力によって呪い殺す事が多々あり、木を切って生活している木こり達からは蛇蝎の如く嫌われている存在だ。
だがそれよりも人間や獣人など、それなりに知性のある種族の雄が近くを通ればその優れた美貌――ドライアドには雌体しか存在しない――で誘惑し、誘惑した雄を気に入れば行為が終わってから、気に入らなければ行為せずに二度と覚めぬ夢の中に捕らえて離さず、最終的には木の養分にしてしまう、という特徴の方が厄介だ。
ドライアドは例外なく美貌の持ち主のいい女なので捕われれば死ぬと分かっていても抗えない男は多く、呪いよりも魅了されて死ぬ割合が高いらしい。
今までにもその美貌に釣られ、過去のゴブリン達の中からもそれなりの数の哀れな犠牲者――この場合は良い思いをする間もなくただの養分にされた馬鹿達――が出ており、流石のゴブ爺でも死ぬ直前までは出逢いたくないと言っていた。
死ぬ前にいい思いをしたいという欲望がハッキリと見える考え方だが、きっとそのまま養分にされるに違いない、と俺は思っている。
それでそのドライアドが、実は今俺の目の前に居たりする。
「わぁ、凄い筋肉ね。ちょっとだけ触っても、いい?」
そう言いながら既に俺の胸筋を美しい細指でツツツと撫でている美女――ドライアド。
ドライアドは局所を枝や葉で作った衣服のようなモノで隠しているが、ほぼ全裸といっていい姿をしている。サラサラと風に靡く金糸のような髪、性欲を刺激する甘い匂い、透き通る様な碧眼、ピンク色のプックリとした唇、なかなか出会えないだろう優れた美貌、穢れの無い純白の肌、俺の腕に押し付けてその形を変えているたわわに実った柔らかい胸。
なるほど、確かにこんな美女に迫られれば犠牲となった男達の数も納得できるというモノだ。
普通の男がドライアドの誘惑を断ち切るのは、それはもう並々ならない精神力を持っていないと不可能に違いない。ただ近くに居るだけで、脳の一部が心地よい熱を発してくる。
自然と熱く早くなる自分の呼吸を知覚した。
視線一つ、吐息一回、汗一滴に至るまで【魅了】の魔力を秘めていそうなドライアドという種族はこれほどまでに厄介なモノなのか。
「触れる度に、君の力強さが伝わってくるみたい。ああ、本当に、凄いよぉ……ダメェ、我慢できない、かも」
欲に染まった熱い吐息を出し、ドライアドは俺の胸筋に今度はその小さな舌を這わせた。
その行動は艶めかしく、舌が皮膚の上を舐めるその感触は心地よい。唾液に濡れる感触、舐められた場所が自然と熱くなる。それに僅かにだがクチュクチュと聞こえる液体の音とドライアドの不自然に動く手が、脳を淫らに刺激した。
次第に反応する身体の一部。前世の時は経験があるが、現在の身体での経験は無いので仕方ないと思う。
「正直、想像以上に大きいな」
大きくそそり立つそれの感覚を紛らわす様に、俺は何故このような状況になっているのか思い返す事にした。
俺がこの過激なアプローチをしてくるドライアドと出会ったのは、獲物を求めて森の中を散策中、陽光を一身に浴びていた立派な大樹を発見した時の事だ。
周囲の木々よりも明らかに二回り以上は大きい大樹の周囲を【気配察知】で獲物が居ないか探したが発見できず、しかたなく周囲の植生を調べて使える物が無いかと探っていたら、背後から『この森にオーガ亜種が居るなんて、珍しい事もあるのね』と声をかけられたのである。正確に言えば希少種だが、それは置いといて。
【気配察知】は常に発動させていたのに背後をとられた俺は慌てて振り返ったのだが、振り返ると大樹の中からゆっくりと出てくるこのドライアドと目があった。
ドライアド、という種族の特性やらはゴブ爺から既に聞いていたので即座に特定できたが、特に殺意や害意を感じ無かった俺はドライアドを問答無用で殺す、という選択肢を選ばなかった。
出てきた彼女が『ああ、そんなに警戒しないで。何もしないから、ちょっと私と話をしてくれればいいの。ね、お願い』と手を重ね合わせ、懇願する姿が可愛らしかった事も原因かもしれない。
とはいえ会話している最中にドライアドが殺意を持ち、俺に襲いかかってくれば即座に殺せるように警戒は解かなかった。
大樹の近くにある半分埋まった岩の上に腰かけ、ドライアドと会話する事しばし。
俺はドライアドさん――会話している最中にこう呼ぶようになった。本名はまだ教えてもらっていない――から植物などに関してかなり多くの情報を得る事ができた。
例えばココから少し離れた場所で【痺毒の棘木】という木が生えている。
【痺毒の棘木】は高木の一種で、その名称通りの特性を備えている。幹には長さ一センチほどの棘が無数に生え、棘の先端から生物を麻痺させる樹液を分泌し、動けなくなった生物を今度はクリの様にトゲトゲした実を浴びせて殺害。
最終的にはドライアドのようにその死体を養分にしてしまうらしい。
ただトドメを刺す実の棘には致死性の毒があるが、一度に大量に摂取しなければ死なない。だからトゲトゲした実が沢山落ちている場所には特に気を付けろ、と言われた。
他にも近づいた動物に襲いかかる【締め付ける鋼蔦】など、話を聞いた時には何とも面倒で凶悪な植物があるものだと思ったが、この世界には危険な植物だけでなく便利な植物も多数あるようだ。
例えば衝撃を与えれば弾けて硬い種を撒き散らす【弾けの実】は武器に転用できるだろうし、睡眠性の芳香を撒き散らす【睡香草】も奇襲・鎮圧戦で有用そうである。解毒効果のある【バッテラ】の樹液や、匂いで生物を混乱状態にしてしまう【錯乱茸】などなど、特性と繁殖している場所を知れたのはとても大きいだろう。
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そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
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