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2巻

2-3

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 さて、今度はコボルド達やエルフ達についてである。
 先日配下に加わったコボルド達は、喰わない事に決定した。
 いや、今喰ってもアビリティ的にも肉体強化的にも全然美味しくないし、忠誠心も本物の様だ。それにコボルド種がどんな風にランクアップするのか気になる、などなど色々と理由はあるが、自分の意思で自由に動かせる手駒が増えるのはプラスになるだろうってのが一番大きい。
 エルフと人間の戦争が始まれば、恐らく、というかほぼ間違いなく父親エルフから助力の依頼がある。きっとそろそろ使者がくるに違いない。
 そしてお願いされれば承諾するつもりだ。
 大規模な戦乱はそれだけで新しいアビリティの確保と自己強化に繋がるし、この世界の戦力の把握、戦術や戦闘方法などについて学ぶ事もできる。
 それに父親エルフとの繋がりを太くしておくことで、あのエルフ酒が手に入りやすくなるってのも、途轍とてつもなく重要なことだ。あの酒は、本当に美味かったなぁ。
 ってな訳で、戦争に参加するとなると、人間をめるトラップやら陣地構築やら奇襲やらも必要になる。手駒の数は多い方が戦略の幅を広げられるに違いない。
 そういった理由からコボルド達も殺さずに配下に加えたが、やつらが言う事全てをそのまま信じることはない。俺が全幅の信頼を寄せる相手は群れの中でも少ない。なのにぽっと出のコボルドを信頼する訳が無い。
 だから保険として、以前群れに配給したイヤーカフス型通信機と同じ三つの能力――自己治癒能力強化の【持続再生キュソワ】、身体能力を底上げする【下級筋力増大レッサー・ストレングス】と【下級俊敏力増大レッサー・デクスタリティ】――をエンチャントし、それに【隷属化】の能力を追加した改良版イヤーカフスをコボルド達全員に着用させる。
 これでコボルド達は俺に逆らえなくなった。例えその忠誠心が途切れたとしても、なんら問題なくコボルド達を使役できるはずだ。
 ついでとして、現在の性処理兼繁殖要員であるエルフ達にもイヤーカフスを配給する事に。ただしコッチは更に正体を分からなくする【隠蔽】を付加した優れモノだ。
【隷属化】で身も心も俺の配下に下ってもらい、【隠蔽】で他のエルフとの無用な衝突を避ける事が目的である。
 しかしどうもエルフ達には、耳に装飾を着けたり穴を開けたりするのは重大な禁忌タブーだという文化というか風習があるらしく、耳と一体化するイヤーカフスを装着するのは最後の抵抗とばかりに拒否する者が殆どだった。
 そんな事をすると、氏族から永久除名・領外退去等の重い罰を科せられるそうだ。その証拠にこの世界に出回るエルフ種の奴隷は、その特徴的な長い耳を半分程で切られるらしい。
 そんなの関係なしに無理に装着させてもよかったのだが、それでは『無理やりだったんだ、仕方なかったんだ』とか言いそうだったので、最後に残ったプライドをべリッと剥ぎ取る事に。
 そんな訳で。
 色々ジックリと時間をかけてそれぞれの肉体に聞いてみると、最後には自分からお願いしてくるようになった。何があったかは取りあえず言わないでおく。
 個人的には、やっぱり生物は素直に生きるのが良いと思うんだ。


 その後、今までは逃亡を防ぐために牢に入れていたエルフ達全員を外に出してやり、俺が担当として執り行う訓練にコボルド達と一緒に参加させた。
 折角の精鋭エルフなのだ、ただ性処理兼繁殖要員として費やすだけでは非常に勿体ない。それにエルフは種族的に人間よりもはらみ難いようだ。
 そんな訳で、イヤーカフスによって反乱の心配もなくなり、今後は効率も考えて戦闘面で働いてもらう事にした。
 繁殖には、人間の女の敵を捕獲すればいいだろう。
 久しぶりに牢から出られた為、エルフ達の多くは解放感に満ちた表情を見せていた。俺の目的の一つでもあった気分転換は、どうやら成功したようだ。
 今回の訓練では、素早く隊列を組ませたり一定時間ずっと走らせたりと、今までオガ吉くん達にもやらせていた戦闘時の基礎を教えた。
 コボルド達は兎も角、肉体面で優れた精鋭エルフ達については基礎をすっ飛ばしてもよかったのだが、最初が肝心ということで構わず行った。何であれ、基本を知っているのと知らないのとでは、当然知っている方が良い。
 訓練は普段通り、疲労で立てなくなるまで続けられました。
 そして休憩の後、性格的にも身体能力的にも戦闘に不向きと判断したコボルド達を選び、後方支援部隊《プレジャー》の仕事を覚えさせるために監督役のゴブリンを付けて散らばらせる。
 そして戦闘要員としてのコボルド達とエルフ達には、実戦形式の組み手をやらせた。これには、子供コボルドも含まれる。今から鍛えればいい兵士になるだろう。
 ただし、相手は俺でもオガ吉くんでも無い。もちろん他のホブゴブリンでもゴブリンでもないし、コボルド同士・エルフ同士でもない。
 この訓練は、とある実験も兼ねていたからだ。
 エルフとコボルド達を相手取るのは、俺の持つアビリティ【下位アンデッド生成】によって生み出されたスケルトン達である。
 スケルトンは俺の魔力が続く限りほぼ無制限に生成できるためリスクも無いし、倒せば経験値稼ぎにもなる。しかも俺の方も使う度に経験を積んでアビリティレベルを上げられるし、倒した後に残る骨は錬金術や鍛冶などの材料に転用できる、ってな具合にこの訓練は一石三鳥、四鳥とかなり美味しいのだ。
 昼間とはいえ洞窟なのでやや薄暗い大広間にてアビリティを発動させ、一体のアンデッド種を生み出す。ズブズブと地面から出現する、黒い影。
 俺は影から白骨体が出てくる様を幻視した。あの夜に数多く倒したスケルトン達の姿は今も鮮明に覚えている。
 しかし、そこで予想外な事が起きた。
 俺としては普通の骸骨兵士スケルトンが生まれるとばかり思っていたのだが、現れたのは半曲刀タイプのサーベルと紅蓮ぐれんに輝く逆三凧盾カイトシールドを携え、やや刺々しいデザインの漆黒の全身鎧フルプレートアーマーとマントを装備した、二メートル程の黒い骸骨だったのだ。
 白骨ではなく、黒い骨だ。黒い骨の騎士ナイト様。
 骨の太さからして違うし、どう見たって、スケルトンよりも上位種である。ボス級だったグレータースケルトンと同程度かそれ以上の能力はあるだろうか。
 スケルトン系は個体の能力によって身に纏う〝魂魄具こんぱくぐ〟の質が変化する。
〝魂魄具〟は【装具具現化】や【上位装具具現化】といったアビリティによって発現する武器の事で、発現者本人が殺害されたり武具を奪われたりした瞬間には霧のように消失してしまうので、本人以外には誰も扱う事ができない。
 身体を包む範囲が増えれば増えるほどその質も上がっていくので、ほぼ全身が覆われた黒いスケルトンは、今まで見たスケルトン系で一番強いはずだ。
 しばしの調査。
 それによると、どうも【下位アンデッド生成】は、自分よりも格下のアンデッドならある程度自在に生み出せるアビリティのようだ。アビリティの扱いは喰った時に大体分かるが、今回のように自分で思っていたのと微妙に違う時があるので、やはり実際に使うのが一番だなと再確認。
 そんな訳で、黒いスケルトンには〝ブラックスケルトン・ナイト〟と命名した。〝黒い骸骨の騎士〟、見たまんまである。
 さっそくミスラル製のショートソードとラウンドシールドを装備したエルフ達と戦わせてみたところ、そのほとんどがブラックスケルトン・ナイトの勝利で終わった。
 戦わせて初めて分かったのだが、ブラックスケルトン・ナイトは熟練の騎士程度の技量を持つようだ。サーベルで繰り出す怒涛の斬撃とカイトシールドの堅牢な防御は、見事だったという他ない。
 それに疲労や斬撃などに対しての耐性アビリティを持つため持久戦にも強く、技量的にはそこまで大きな差が無かったエルフでも、最終的には体力の差で負けてしまったのである。
 アンデッド系モンスターに対してダメージ値が上昇するミスラル製ショートソードを持っていたエルフは、最初こそ余裕そうにしていたが、時間が経つにつれて押し負けていった。その時の表情の変化には見学者も皆笑っていた。
 ところがそれだけでなく、負けたエルフ達もスッキリとした表情で笑っていた。
 以前なら高いプライドが邪魔をして、見下していたゴブリン達の前で自然な笑みなど浮かべなかっただろう。プライドを一度完璧に破壊し、その上で常識や倫理観を塗り替え、色々と再構築した現在、かなり素直な性格になっているらしい。
 これはかなり良い傾向だ。別に無理やり従わせてもいいが、やはり自然と仲良くなっていった方が色んな場面で都合がいい。仲間の窮地に際し、思わぬ力を発揮する可能性があるのだから。
 それにしても、うん、こいつは使えるな。
 ただし、ブラックスケルトン・ナイトでは戦闘日数がこなせなくて大した経験値が入らない。これをどうにかしなければ。ブラックスケルトン・ナイトに手加減させてみたが、それだと普通に倒した時よりも取得経験値が大幅に減っていたのだ。何故だか分からないが、そうなっていたのだからそうなのだろう。
 この日は夜になっても【下位アンデッド生成】についての実験を繰り返した。その結果、このアビリティは色々と使い道がある事が良く分かった。


《六十五日目》

 昨日【下位アンデッド生成】を用いていて判明したのは、生成できるアンデッドは俺の意思で変えられるという事だ。
 戦斧せんぷと太い黒骨が特徴的なブラックスケルトン・アックス。短槍を持ち、攻撃速度に優れたブラックスケルトン・ランサー。精密な遠距離射撃を行えるブラックスケルトン・アーチャー。第二階梯までの魔術なら行使できるブラックスケルトン・メイジ。ブラックスケルトン・ナイトの派生型であるこれらを自在に生成できたし、魔力を抑えれば普通の白いスケルトン種も生成できた。
 それに動く腐乱死体である〝ゾンビ〟や、弱々しい霊魂の塊である〝ゴースト〟など、他のアンデッド種も生成可能だった。
 ゴーストを喰ってみようとも思ったのだが、非実体系モンスターだったので流石の俺でも喰えなかった。掴もうとしてもスカスカと透過し、ならば口で、といっても空気を食べているだけである。呼吸と変わらない。
 つまり現状、俺は非実体系モンスターを食べられない。魔力を伴う攻撃で簡単に消し飛ばせるのだが、喰う事だけはどうしてもできなかった。
 とはいえ諦めるのは早い。
 どうもこの世界では特定の条件を満たすとゴーストを喰えるようになるらしいので、その能力を持っている奴がいたらぜひそいつを喰ってやろうと心に決めた。もしゴーストを喰う事ができれば【物質透過】のような有用なアビリティを得られるに違いない。それに非実体系モンスターはどんな味がするのか、個人的にはとても気になるポイントだ。
 経験値稼ぎにはレベルに合わせて主にゾンビと普通のスケルトン達を生成し、それを倒させる事にした。
 ブラックスケルトン系の個体はオガ吉くんやダム美ちゃん達の相手役を務めさせたり、それぞれコボルドやエルフ達の訓練の指導役として使ってみた。カタカタと音を立てるだけで会話はできなかったが、身振り手振りで大体の意思疎通は可能だったからだ。大雑把に伝わるだけでも事は簡単に進みやすくなる。
 実力強化は、怖い位に順調である。
 ただ、アンデッドに関して問題が全く無かった訳ではない。
 アンデッド種に備わっている数々の特性――特に【陽光脆弱】などは、かなり面倒なかせになっていた。ダム美ちゃんは【神の加護】持ちの【亜種】だったからこそ問題ないのであって、他はそうはいかなかった。
 ブラックスケルトン・ナイトクラスのアンデッドだったら、陽光の下でも十分くらいなら全身から煙を上げながらとはいえ何とか耐えられた。しかし、その総合的な強さは本来のモノと比べるまでもなく、コボルド達ですら何とか倒せてしまえるほどにまで弱体化していた、と言えば想像し易いだろうか。とてもではないが、戦力として考えられたものではない。
 ブラックスケルトン・ナイトクラスでもそうなのだから、ゾンビやゴーストなどより低位のアンデッド達は数十秒と保たずに浄化されてしまう。
 ゾンビは浄化されても腐乱死体が残るので、敵地で疫病を流行らせたり、穴を死体で埋めて足場にしたり、腐肉大好きなホブゴブリンのホブ浮ちゃんに喰わせたりとまだ使い道がある。だが、何も残す事の無いゴーストとかだと日射しの下では全く使えない。
 他にも聖水やら聖光など、特定の方法で比較的簡単に浄化されてしまうのはとても痛い。炎というメジャーな攻撃方法に弱いのも難点だ。
 昼間でも戦える戦力として考えていたので、やや計算が狂ってしまった。どうすればそれを克服できるのか、と悩みつつ一旦放置。今日もエルフとコボルド達の訓練をミッチリと行った。
 エルフは元々精鋭揃いなので、ブラックスケルトン・ナイトやアックス達と一対一で戦わせていれば自然と技術が磨かれて強くなっていくだろう。どんどん実戦的な訓練を繰り返していけばいいので指導も楽だ。
 そんな訳で、主にコボルド達の指導に熱が入る。
 コボルド達は種族的にホブゴブリン達と同等かそれ以上の身体能力があるのだが、なにぶん現在の構成は――


 半鬼人ハーフ・ロード種‥三
 オーガ‥二
 ダムピール‥一
 ホブゴブリン‥十
 ホブゴブリン・メイジ‥五
 ホブゴブリン・クレリック‥二
 ゴブリン‥三十
 年寄りゴブリン‥八
 エルフ‥男十、女七
 人間‥女五
 足軽コボルド‥一
 コボルド‥三十二
 年寄りコボルド‥三
 総数百十九体


 これにペットを含めて考えると――


 トリプルホーンホース‥五
 ハインドベアー‥三
 ブラックウルフリーダー‥一
 ブラックウルフ‥八
 総数百三十六体


 となっている。
 つまり、この大所帯にあって、コボルド達の地位がかなり低いのである。
 地位が低いままだと部隊内のパシリにされる事が殆どで、配給される食事の量も他より少ない。
 食料は皆が狩った獲物を持ち帰らせたモノが主だ。果物や山菜なども大量にあるので、姉妹さんや料理担当のゴブリン達が作る料理も美味く、栄養バランスも悪くない――ゴブリンやオーガに栄養バランスを考えた食事が本当に必要かどうかはさて置いて。
 皆が最低限、喰えるようにはしている。
 だが、激しい運動の後は腹一杯食いたくなるのが生物な訳で、地位が低いままだと腹半分ほどしか喰えず、なかなか体ができあがっていかない。
 更に大きいのは武装面だろう。
 弱肉強食な自然界では、強力な武器を持つ事はそのまま生き残る可能性につながる重要な要素だ。鋭い牙や爪、毒や攻撃を通さない硬い外皮など、例を挙げればキリがない。
 そしてコボルドなどの人間型怪物ヒューマノイドモンスターは、武器を持った方が何かと楽になる。
 肉体はか弱い人間でも武器を持つ事で強靭な肉体を持つモンスターを殺せるのだ。当然、武器の性能は高い程良い。
 しかし俺が決めたルールにより、弱い者には粗悪な武器しか配給されない。
 そうなると他よりも倒し易い存在だと思われ、敵から狙われる可能性が高くなる。ただでさえ弱いというのにだ。どうしたって生き残れる確率はガクンと下がる。
 このルールを変えればいいのではないか? と思うかもしれないが、弱いまま優れた武具を渡しても宝の持ち腐れでしかないし、何より不相応の品を持つのは余計に破滅を呼びこむ可能性もある。
 ――自分の実力を常に把握しておく。
 そのために、今後もこのルールが変更される事はない。だから血反吐ちへどを吐くまで訓練して、死ぬ気で地力を上げるしかない。
 まあ、そろそろレベルが一〇〇になりそうなコボルドもいるので、上手く【存在進化ランクアップ】できさえすればそれなりの立場に食い込めるだろう。
 それに若くて成長期の子供達には何気に期待している。
 コボルドは種族的に素早さに秀でているので、それを伸ばす方針で訓練を課していく事にした。


《六十六日目》

 今日はハインドベアーのクマ次郎にまたがり、コボルド達が暮らしていたという洞窟にやってきている。それぞれの《使い魔ファミリア》に乗ったダム美ちゃんと赤髪ショートとアス江ちゃん、そして後ろから歩いてついてくる足軽コボルドを含む戦闘要員のコボルド十七頭も一緒だ。
 目的は洞窟の奥にあるというベルベットのダンジョンに繋がった穴を塞ぐ事と、コボルド達の僅かな荷物や蓄え等を確保する事だ。
 コボルドの洞窟は、俺達の拠点から四十分程歩いた所にあった。
 パパっと荷物を運び出した後、地形の扱いに関しては一番けているアス江ちゃんに洞窟を完全に崩してもらう。ウォーピックの一撃で洞窟は崩れて完全に埋まったので、もうここからスケルトン達が出てくる事はなさそうだ。
 これで今日の目的の一つは終わった。
 その後、コボルド達に狩りをさせる。
 ヨロイタヌキ等を狩って食料として持ち帰るという意味もあるが、本命はブラックウルフである。
 これはもっと《使い魔》の数を増やしたいという狙いに加え、群れを成すブラックウルフ達に対してコチラも一つの集団として衝突する事で連係の経験を積みたい、という意味合いがあった。
 訓練も重要だが、やはり命を懸けた実戦を積んだ方が色々と良い。
 一応基礎の基礎はこの二日間で教えているので、それを多少なりとも活かせるかどうかが重要だ。まあ、無茶ぶりだとは自覚しているが、やらなきゃ何も始まらん。
 イヤーカフスの補助もあるし、死なない程度に頑張ってもらうか。死なれても、まだまだ代えは効く存在だし。
 そう思ってあまり期待はしていなかったのだが、コボルド達は予想以上に頑張った。
 俺が言うとおりに動き、十二頭のブラックウルフの群れを罠が敷かれている区画になんとか追い込んだのだ。
 ブラックウルフを殺してはならない、という条件を課したので皆無茶をして大なり小なりの怪我を負っていたが、イヤーカフスに付加された【持続再生】が容易く治癒するので大した問題では無かった。
 案外良い拾い物かもしれんな、コボルド達は。忠実だし、群れとしての動きも悪くは無い。
 こうして捕まえたブラックウルフは俺の能力で脳をいじって即行で《使い魔》にした。
 それから、別のブラックウルフの群れを同じように追い込む事に成功する。
 これで今日《使い魔》にできたブラックウルフは二十頭。なかなか纏まった数になったので、戦力の底上げは期待以上に早くできそうだ。
 ただ、今回捕獲した二つの群れのトップが、どちらも〝リーダー〟と呼べる程の能力を有していなかったのは残念である。
 まあ、十分な数を確保できたのだから、一先ずは良しとしておこう。
 そうして今日の功績に意気揚々と帰途についたが、その道中で硬い毛皮とアイロンのような形をした巨大な鼻が特徴的な〝スタンプボア〟を見つけた。
 力試しに丁度いいッ! とやる気をみなぎらせながら、アス江ちゃんが愛馬トリプルホーンホースから降りて真正面から突撃。その巨大な鼻で敵を押し潰して死骸を喰らうという習性を持つスタンプボアも、逃げることなく突き進む。
 高速で接近した両者は間にあった障害物をぎ倒しながら接触。
 そして右から左に振り抜かれたアス江ちゃんの【大地母神の戦鎚ウォーピック】がスタンプボアに触れると同時に、その身を粉砕した。岩と同じぐらい頑丈なスタンプボアの肉体の前半分が、アス江ちゃんの一撃に耐えきれず吹き飛んでしまったのだ。
 周囲には濃い血の匂いと臓腑が撒き散らされ、肉片が枝に引っかかったりして猟奇的殺戮現場を演出していた。
 これでも加減したつもりだったそうだが、まあ、そうなるだろうな。スタンプボアの肉体がというのであれば、岩を素手で簡単に砕いてしまうアス江ちゃんにとっては非常に容易い相手だという訳だ。特に何も言わず、返り血がこびり付いた顔を水球で洗ってあげる。
 スタンプボアの死体は貴重な食料になるのでアイテムボックスに収納し、拠点に戻って鍋にして喰いました。


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