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2巻
2-6
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こうして丸岩と毒矢では数が減らせなくなり、しばしの膠着状態に突入。
残り百名足らずで良くやるよ、と思いつつ、鈍鉄騎士に興味が湧いた。
できれば手駒にしたいと思ったので、止めに実行しようと思っていた魔術の連続爆撃による殲滅は一先ず取り止め、タワーシールドを構えたオガ吉くん率いる重武装部隊《アンガー》を坂の上から進撃させる。
誤射を防ぐために左右からの毒矢攻撃は止めさせ、オガ吉くん達の様子を見守る事に。
毒矢の攻撃が止んだ事を幸いとばかりに、敵陣からオガ吉くんに向けて赤や青など色とりどりの魔力光がまるで花火のように一斉に煌めいた。
赤い魔力光は炎の槍に、青い魔力光は水の棘に変化する。多種多様の魔術が高速で迸るが、炎の槍は火の粉と散り、水の棘は霧散し、その全てがマジックアイテムであるタワーシールドに阻まれて虚しく周囲に散っていく。
敵もオガ吉くんを狙うのは無駄と判断したのか、他のホブゴブリンやゴブリンに狙いを変えたが、その大半はオガ吉くんに防がれてしまった。
守り堅過ぎるぞ。思わず敵に同情してしまいそうなレベルである。
その後両者の距離が無くなり、一か八かとばかりに囲いから飛び出した人間軍は、しかし《アンガー》部隊員の重装甲の守りを突破できない。逆に、敵一人につき三体が連携して攻めて行く部隊員によって一人また一人とその数を減らしていく。
単騎でオガ吉くんと闘っている鈍鉄騎士も奮闘してはいるが、ここ最近のブラックスケルトン種との手合わせで更に戦闘技術が向上したオガ吉くんの敵ではなかった。
鈍鉄騎士が善戦できているのも、俺がオガ吉くんに殺さず捕えるように指示したからに他ならない。
約三十分後、存分に戦いを堪能したオガ吉くんによって鈍鉄騎士は気絶させられ、捕獲、という流れになった。そして喰うやつを選別してバリバリと。
[能力名【職業・妖術師】のラーニング完了]
[能力名【職業・盾戦士】のラーニング完了]
[能力名【職業・歩哨】のラーニング完了]
[能力名【盾打】のラーニング完了]
[能力名【戦技早熟】のラーニング完了]
[能力名【刀剣の心得】のラーニング完了]
[能力名【守り手の心得】のラーニング完了]
[能力名【職業・射手】のラーニング完了]
[能力名【職業・狩人】のラーニング完了]
[能力名【職業・魔道具製作師】のラーニング完了]
[能力名【盾壁】のラーニング完了]
[能力名【道具上位鑑定】のラーニング完了]
今回の戦果も上々と言えるだろう。
敵の死骸から使えそうな武装と金目の物を全て回収し、纏めて一ヶ所に埋葬。戦利品や使えそうな捕虜は以前と同じように拠点へ運んで行く。捕らえた女には薬を盛って牢屋に入れ、男は即座に奴隷の首輪を嵌めていく。
その後、父親エルフに今回の件を報告した。
捕虜とした女達が性欲を我慢できずに自分から求めてきたら、活躍した個体に褒美としてくれてやろう。
無理やりはしない、ってルールはどうなったのだとか聞かれそうだから言っておくが、薬を盛らず、そして無理やり犯さないのは敵ではない人物だけです。敵に薬盛るくらいは許容範囲内だろう。
さて、鈍鉄騎士とかを色々と尋問するか。と思っていたら、気恥ずかしそうに頬を染めたダム美ちゃんに裾を引っ張られた。そしてそっと耳元で囁かれる声。
え? 子供が欲しいな……だって?
気分が高ぶっていた事もあり、色々と燃えた。
《七十四日目》
今日はホブゴブリンが八ゴブ増えた。
メイジが三ゴブに、クレリックが一ゴブ、そして今回初めてホブゴブリン・シャーマンに一ゴブ進化した。あと普通のホブゴブリンが三ゴブである。
昨日の待ち伏せの際にも活躍したメイジ系が増えたのは嬉しい。それにアンデッド種を使役したり強化したり、昼間でも活動時間を延ばせたりするシャーマンが加わったので、色々とできる事の幅が増える。
それに加え、コボルドが三体、足軽コボルドにランクアップした。
コボルドはランクアップして足軽になると、〝生体槍〟と呼ばれる武器もセットで発生する仕組みになっている。なので足軽に成った個体は、すでに槍を携えていた。
生体武器系の素材は本体の細胞の一部だそうで、そのため本体が成長すればそれに伴って武器も成長するらしい。三体とも槍を持つのは生まれて初めてのはずだが、生体槍は手足の延長と言えるものなので、その槍さばきはなかなか様になっていた。
しかしそれでも完璧、とはいかないので三体の足軽コボルド達は最初から足軽だったコボルドリーダーと同じく、槍の扱いを重点的に訓練する予定である。
それにしても、ここ最近の人間軍戦によって大量の経験値が順調に集まるため、ランクアップする個体が多くなってきた。また戦力にも労働力にもなる奴隷が増えて非常に助かる。
繁殖要員となる女も手に入ったので、これからは数を増やしていくべきか。
増やし過ぎると食糧事情とか面倒が増えるので調整するにしても、今後の戦いで仲間が減る可能性が高いので重要な事項だ。
ゴブ爺によると、ゴブリンの子は人間の女が妊娠すると約二十日、ゴブリンの雌が妊娠すると約二十五日で生まれ、ホブゴブリンの子は人間の女が妊娠して約四十日、ホブゴブリンの雌が妊娠すると約五十日で産まれるそうだ。
俺のようにホブゴブリン以上の種族となった個体の子ができるまでの期間は、流石のゴブ爺も知らなかった。
生まれるまでの期間にはばらつきがあるものの、この早さには驚きを禁じえない。
人間が定期的にゴブリン狩りをする理由が良く分かった。幾ら弱いとはいえこの繁殖力では被害が馬鹿にならないのだろう。
細かい話は置いとくとして、それぞれに祝い品を贈る。
実はオガ吉くんのように、与えるマジックアイテムの属性を偏らせて亜種に成るかどうかを見ているのだが、まだ俺とオガ吉くんとダム美ちゃん以外に亜種と成った個体はいない。やはり他の条件を満たさないと【加護】を得られず、亜種にはならないようだ。
これも今後の課題としていこう。
今日は午前訓練の後、【隷属化】の首輪を装着して牢屋に入れていた鈍鉄騎士を筆頭に、その他の指揮官職っぽい奴等を尋問した。先に捕らえていた女騎士達から聞きだしていた、今回の戦争の人間軍の目的について、多角的な情報による補完を試みる。
その結果、今回の戦争の裏も表も大体の事が理解できた。
この戦争は《シュテルンベルト王国》(以下、王国と呼称)の第一王女が非常に危険で珍しい病にかかった事に端を発する。
第一王女の病は人間だけが発症する《クリシンド病》と呼ばれるもの。まだ治療法が発見されていないので、助かる見込みの無い〝死病〟の一つとして認識されているそうだ。
クリシンド病の代表的な症状は、まず月日が経過するにつれて臓器がゆっくり腐っていく事が挙げられる。内から腐っていくのだから息も体臭も臭くなり、皮膚には膿胞が幾つもできるのだとか。
発病してから一年以内の死亡率は九十九パーセント以上に達する。最長で二年ほど生き残った例もあるが、それも治る事無く死んでいる。つまりクリシンド病にかかって治った者は一人も居ないそうだ。
幸い空気・飛沫感染ではない事に加え、そもそも発病例自体が少ない事が救いだそうな。治療法を研究する機会が少ないとも言えるかもしれないが。
当然、王国は第一王女のクリシンド病を何とか治そうと試みた。
発病したのが知性と気品に溢れた〝賢姫〟として名高く、また近日中に同盟国へ嫁ぐ事が決まっていた王女様だったから、尚更必死だったそうだ。政略結婚ではあるが、本人同士が好きあっているので恋愛結婚でもあるらしい。
王命により、王国中の医師や薬師などが忙しなく動きまわったが、結果は芳しくなかった。どうにか病気の進行を遅くする事はできたものの、第一王女の臓器は既に半分近くが腐っているそうだ。
普通ならそんな状態になる前に痛みで狂死しているはずだが、様々な魔法で強制的に眠らせて四六時中続く苦痛から解放し、腐っていく臓器を治療して延命させているらしい。
しかし病の力の方が強いので徐々に腐敗範囲は広がっており、遠からず死に至ると判断されていた。
しかし毎日祈りを捧げていた【職業・聖女】を持つとある女性に、かつて王国民であった【癒しの亜神】から一つの【天啓】が下された――クリシンド病を治すには、【深緑の亜神】の加護下にあるエルフの秘薬が必要である、と。
その【天啓】に従い王国が全力で探したところ、条件に適合したのが俺達の生まれたこの森――名を《クーデルン大森林》という――に住むエルフの作る秘薬だった。
そしてその秘薬を得る為、病に倒れた王女の婚約者である《キーリカ帝国》(以下、帝国と呼ぶ事にする)の若き次期皇帝がエルフと交渉を行った。
帝国の次期皇帝の頼みならば、すぐに交渉はまとまるだろう、と思われた。
しかしエルフは、秘薬が少量しか無く、昔からある掟で、〝人間〟に渡す事はできないと拒否。
再三にわたる交渉は、全て不発に終わったそうだ。
基本的にエルフは面倒で厄介な掟が多く、閉鎖的で排他的な性格をしているとも言える。種族的に元々プライドが高く、人間を見下しているので、掟が無くても渡さなかったのではないか、とも思うのだが。
結果として、秘薬が帝国と王国に渡る事は無かった。
この交渉が失敗に終わった事が戦争の切っ掛けになったのは間違いない。しかし話を聞いていくともっと人間らしい事情もあった。
まあ、細かい話を長々と語るのも面倒なのでズパっと言うと、こうなる。
『人間は欲深い』
この一言でもう十分ではないだろうか。
戦争を仕掛ける理由を大雑把に四つだけ述べるとこうなる。
一つ目、エルフはその殆どが美形なので性奴隷に最適。今も昔も衰えぬ人気を誇る大人気商品で、買おうと思ったら莫大な金が必要になる。
二つ目、エルフは種族的に人間よりも優れているので、護衛や兵士として優秀。
三つ目、エルフしか作れない魔法金属のミスラル、溜め込んだマジックアイテムや森から採れる希少素材など、宝の山を手に入れられる。
四つ目、エルフが住んでいる場所が、他国との戦争時に中継ポイントとして非常に重要。
といった具合で、話を聞いて、酷く現実的な理由だと思ったモノだ。
切っ掛けは確かに王女の病を治す秘薬の売買を拒否されたからであるが、そこに大勢の人間の欲や思惑が混ざり、本来の趣旨が色々と湾曲した末、今回の戦争になったようである。この世界でも人間という種族は厄介なのだな、と思わざるを得ない。
俺はいざとなれば隠れたり逃げたりできる立場なので、あまり困らないのだがな。
その他にも色々と聞きだしていく。特に今回の人間軍の構成については念入りに。現在の俺では勝てない相手がいるかもしれないからな。情報は重要である。
まず、人間軍は王国と帝国の連合軍だそうだ。鈍鉄騎士達は王国ではなく帝国に所属していたので、王国軍側の情報は殆どなかったのだが、それは王国軍に所属していた女騎士の方から聞いていたので問題はない。
鈍鉄騎士によると、今回用意された戦力は王国よりも巨大な帝国の方が兵の数も質も良いらしい。中でも、オーガや鬼人に竜人という強力な種族や、それに幾多のモンスターを掛け合わせて造られた〝合成魔獣〟などが所属する魔物部隊が強力だそうだ。
魔物部隊の構成員の殆どが奴隷であるらしく、主の命によっては強制的に命を賭して襲ってくる死兵になるらしい。
何とも面倒で、厄介な話である。
しかしその分、上手い事やれば簡単に転がりそうでもある。
とりあえず、部隊への命令権がある人物はピックアップした。どいつもこいつも貴族で、実戦経験もそれなりにある輩のようだ。
尋問を終えた後、俺以外のメンバーの指揮能力向上の為に、次のような戦闘訓練をする事にした。
プレイヤーは隊長格の役職についた個体で、それぞれの戦力がだいたい均等になるようゴブリンと男の捕虜を手駒として振り分ける。プレイヤーは手駒に指示を出して相手側の手駒を潰す、という実戦形式のゲームである。
手駒の武装は木剣に盾を装備した標準兵を筆頭に、リーチが長い槍兵、攻撃力が高い斧兵、離れた所から攻撃できる弓兵、盾のみを持つ防御兵、と差異を設けたので、手駒の武装に適した指示を出せるかが重要なポイントだ。
俺は審判役となったので今回のゲームには不参加。
結果、ダム美ちゃんとスペ星さんは勝ち星が多く、オガ吉くんとブラ里さんは負けがこんでいた。アス江ちゃんは丁度中間くらいだ。
これは脳筋とそれ以外の差、という事だろう。分かり易い事である。アス江ちゃんも脳筋よりだが、多分掘削時の経験が生きたのだろう。
人間軍から奪った食糧が大量にあるので全員狩りには行かず、拠点の中でこの訓練ばかりしていた。
いや、訓練というよりは皆遊び感覚だったが。
最近では訓練を通してゴブリンとコボルドとエルフに少なからず仲間意識が生まれているようなので、今後はそれを強めていきたいものだ。
奴隷となった人間達は、そもそも俺達が訓練している事に驚きを隠せていなかったのだが、時が経つにつれて段々と表情が深刻な事になっていった。その様子は思わず笑ってしまうほど愉快なモノだった。
そして夜、人間の女性達は嬉しそうに嬌声を上げてました。人間はエルフよりも欲が強いから堕ちるのが早かった上に、順応も早い様だ。
鍛冶師さん達は若干複雑そうな表情を見せていたが、ココに来たばかりの頃と比べて色々と考え方に変化があったらしく、前ほど忌避感はなくなっているそうだ。
というか、『戦争なのだからこんな事も仕方ない、あって当然だとは思う。それに経緯はどうあれ無理やりされて壊れていくのではなく、自分から求めているのだから、まあ、ありじゃないかな、ヒトの幸せはそれぞれだし、他人が口出しする事でも無い様な気がする』とのこと。
理解力のある、良い女達である。俺には勿体ないくらいだ。
あと、性欲発散は人間の女性達が担当しているのだが、現在強制的ではない女エルフ達もそれを羨ましそうに見ていたので、足軽に成ったコボルド達とホブゴブリン達に宛がってみた。
かなり嬉しそうでした、どちらも。
一度プライドをへし折ると、エルフを従えるのは比較的楽であるらしい。まあ、だからといってわざわざ自分からエルフ達を襲撃するつもりはないのだけど。今の状態で十分満足しているし。無駄に敵を作る必要はない。
《七十五日目》
オガ吉くんと午前訓練をしていると、ブラックスケルトン・ナイトと戦わせていた鈍鉄騎士――既に鈍鉄色の全身鎧は着ていない――が俺との手合わせを願ってきた。
一緒に捕らえた他の人間は、プライドが木っ端微塵になって現実逃避したり、壁に頭を何度も打ち付けて自殺しようとしたりしている。そんな中、ただ黙々と俺が課す訓練を行い、奴隷になっても真っ直ぐ俺を見てくるその視線には好感が持てたので、手合わせを承諾してやった。
そして、鈍鉄騎士はやはり強いのだなと実感した。
俺には遥かに及ばないものの、今まで出逢った人間の中で一番の格闘技術を持ち、それに加えて肉体性能はそこまで大差無いように感じられた。
アビリティを使っていないとはいえ、【オーガ・希少種】に迫る肉体性能とは、恐れ入る。
手合わせしながらその要因を聞いてみると、鈍鉄騎士はレベル〝100〟の【職業・戦士】、レベル〝100〟の【職業・騎士】、レベル〝62〟の【職業・修道士】、レベル〝25〟の【職業・聖堂騎士】、と四つの戦闘職を保有しているそうで、それ等の補正と今までの訓練の賜物だそうだ。
鈍鉄騎士の拳は速くて重く、身体は柔軟でありながら硬く、無駄のない動きで俺の急所を正確に容赦なく狙ってくる。
それに淡い光を伴って繰り出される、【戦技】と呼ばれる人間しか使えない様々な技も駆使してきた。
しかし、野性を剥き出しに襲ってきたあのレッドベアー程ではなかったので、もちろん俺が勝った。
繰り出してくる戦技も、言ってしまえば攻撃に様々な効果を付与するアビリティのようなモノでしかないので、対応は比較的楽だった。
とはいえ結構ギリギリの勝利だったので、やり様によっては勝てる相手だと思われて侮られるのも癪だ。
その為今度はアビリティを使用した状態で対峙する事に。その為には、準備が必要だった。
【職業・付加術師】を使って鈍鉄騎士が装着している麻製の半袖長ズボンに、肉体強化・回復力強化・防御力強化を付加してやる。青い燐光が全身を包み、効果が発揮された事を示した。
鈍鉄騎士が驚いた顔でコチラを見てくるが、俺は俺で【職業・守護騎士】と【山の主の堅牢な皮膚】で防御力を、【職業・修道士】と【山の主の強靭な筋肉】で攻撃力をそれぞれ大幅に上昇させた。
というかこのレベルのアビリティを訓練で使おうと思ったら、最低ソレくらいは相手に付加しないと死なせてしまう怖れがある。流石に訓練でバラバラ死体を作りたくはない。発動するアビリティ数もこれくらいで抑えないと、相手に施した強化すら貫通してしまう。
結果だけ述べると、鈍鉄騎士はボロボロな姿で床に転がっています。
いや、なかなか根性があったので、思わずやり過ぎてしまった。まあ、結構満足そうな面で気絶しているので大丈夫だとは思うけど。
鈍鉄騎士を介抱していると、オガ吉くんがジッと俺を見てくるのに気がついた。
その視線には、俺も戦いたい、という思いが込められている。なるほど、鈍鉄騎士と素手で戦いたいのかオガ吉くん。
確かに素手のオガ吉くんと鈍鉄騎士なら、拮抗した勝負になるだろう。
オガ吉くんが戦場で鈍鉄騎士をあそこまで圧倒できたのは、技量云々などよりもマジックアイテムの存在が大きかった。
【黒鬼の俎板】という名を持つあのタワーシールドの防御力は尋常ではないのだ。鈍鉄騎士が繰り出す戦技の悉くを、まるで児戯であるかのように容易く跳ね返していたのがその証拠である。
だから今度は道具の性能に頼らず、己の身体一つで勝ちたいのだろう。
偽りのない完璧な勝利が欲しいのだろう。
でも、もうちょっと待て、と言い聞かせる。流石にこの状態では、ハンデがあり過ぎるからだ。
時が経つのを待ち、覚醒した鈍鉄騎士を回復させた後、望み通りオガ吉くんと戦わせた。
予想通りいい勝負となったが、最終的には尽きる事の無い体力が決め手となって、オガ吉くんが何とか勝ちをもぎ取った。
かなりギリギリな戦いだったが、二人ともいい顔を見せているので問題は無いと思われる。
というか、鈍鉄騎士。なんの違和感も無く交ざってくるその適応力はなんなのだ?
残り百名足らずで良くやるよ、と思いつつ、鈍鉄騎士に興味が湧いた。
できれば手駒にしたいと思ったので、止めに実行しようと思っていた魔術の連続爆撃による殲滅は一先ず取り止め、タワーシールドを構えたオガ吉くん率いる重武装部隊《アンガー》を坂の上から進撃させる。
誤射を防ぐために左右からの毒矢攻撃は止めさせ、オガ吉くん達の様子を見守る事に。
毒矢の攻撃が止んだ事を幸いとばかりに、敵陣からオガ吉くんに向けて赤や青など色とりどりの魔力光がまるで花火のように一斉に煌めいた。
赤い魔力光は炎の槍に、青い魔力光は水の棘に変化する。多種多様の魔術が高速で迸るが、炎の槍は火の粉と散り、水の棘は霧散し、その全てがマジックアイテムであるタワーシールドに阻まれて虚しく周囲に散っていく。
敵もオガ吉くんを狙うのは無駄と判断したのか、他のホブゴブリンやゴブリンに狙いを変えたが、その大半はオガ吉くんに防がれてしまった。
守り堅過ぎるぞ。思わず敵に同情してしまいそうなレベルである。
その後両者の距離が無くなり、一か八かとばかりに囲いから飛び出した人間軍は、しかし《アンガー》部隊員の重装甲の守りを突破できない。逆に、敵一人につき三体が連携して攻めて行く部隊員によって一人また一人とその数を減らしていく。
単騎でオガ吉くんと闘っている鈍鉄騎士も奮闘してはいるが、ここ最近のブラックスケルトン種との手合わせで更に戦闘技術が向上したオガ吉くんの敵ではなかった。
鈍鉄騎士が善戦できているのも、俺がオガ吉くんに殺さず捕えるように指示したからに他ならない。
約三十分後、存分に戦いを堪能したオガ吉くんによって鈍鉄騎士は気絶させられ、捕獲、という流れになった。そして喰うやつを選別してバリバリと。
[能力名【職業・妖術師】のラーニング完了]
[能力名【職業・盾戦士】のラーニング完了]
[能力名【職業・歩哨】のラーニング完了]
[能力名【盾打】のラーニング完了]
[能力名【戦技早熟】のラーニング完了]
[能力名【刀剣の心得】のラーニング完了]
[能力名【守り手の心得】のラーニング完了]
[能力名【職業・射手】のラーニング完了]
[能力名【職業・狩人】のラーニング完了]
[能力名【職業・魔道具製作師】のラーニング完了]
[能力名【盾壁】のラーニング完了]
[能力名【道具上位鑑定】のラーニング完了]
今回の戦果も上々と言えるだろう。
敵の死骸から使えそうな武装と金目の物を全て回収し、纏めて一ヶ所に埋葬。戦利品や使えそうな捕虜は以前と同じように拠点へ運んで行く。捕らえた女には薬を盛って牢屋に入れ、男は即座に奴隷の首輪を嵌めていく。
その後、父親エルフに今回の件を報告した。
捕虜とした女達が性欲を我慢できずに自分から求めてきたら、活躍した個体に褒美としてくれてやろう。
無理やりはしない、ってルールはどうなったのだとか聞かれそうだから言っておくが、薬を盛らず、そして無理やり犯さないのは敵ではない人物だけです。敵に薬盛るくらいは許容範囲内だろう。
さて、鈍鉄騎士とかを色々と尋問するか。と思っていたら、気恥ずかしそうに頬を染めたダム美ちゃんに裾を引っ張られた。そしてそっと耳元で囁かれる声。
え? 子供が欲しいな……だって?
気分が高ぶっていた事もあり、色々と燃えた。
《七十四日目》
今日はホブゴブリンが八ゴブ増えた。
メイジが三ゴブに、クレリックが一ゴブ、そして今回初めてホブゴブリン・シャーマンに一ゴブ進化した。あと普通のホブゴブリンが三ゴブである。
昨日の待ち伏せの際にも活躍したメイジ系が増えたのは嬉しい。それにアンデッド種を使役したり強化したり、昼間でも活動時間を延ばせたりするシャーマンが加わったので、色々とできる事の幅が増える。
それに加え、コボルドが三体、足軽コボルドにランクアップした。
コボルドはランクアップして足軽になると、〝生体槍〟と呼ばれる武器もセットで発生する仕組みになっている。なので足軽に成った個体は、すでに槍を携えていた。
生体武器系の素材は本体の細胞の一部だそうで、そのため本体が成長すればそれに伴って武器も成長するらしい。三体とも槍を持つのは生まれて初めてのはずだが、生体槍は手足の延長と言えるものなので、その槍さばきはなかなか様になっていた。
しかしそれでも完璧、とはいかないので三体の足軽コボルド達は最初から足軽だったコボルドリーダーと同じく、槍の扱いを重点的に訓練する予定である。
それにしても、ここ最近の人間軍戦によって大量の経験値が順調に集まるため、ランクアップする個体が多くなってきた。また戦力にも労働力にもなる奴隷が増えて非常に助かる。
繁殖要員となる女も手に入ったので、これからは数を増やしていくべきか。
増やし過ぎると食糧事情とか面倒が増えるので調整するにしても、今後の戦いで仲間が減る可能性が高いので重要な事項だ。
ゴブ爺によると、ゴブリンの子は人間の女が妊娠すると約二十日、ゴブリンの雌が妊娠すると約二十五日で生まれ、ホブゴブリンの子は人間の女が妊娠して約四十日、ホブゴブリンの雌が妊娠すると約五十日で産まれるそうだ。
俺のようにホブゴブリン以上の種族となった個体の子ができるまでの期間は、流石のゴブ爺も知らなかった。
生まれるまでの期間にはばらつきがあるものの、この早さには驚きを禁じえない。
人間が定期的にゴブリン狩りをする理由が良く分かった。幾ら弱いとはいえこの繁殖力では被害が馬鹿にならないのだろう。
細かい話は置いとくとして、それぞれに祝い品を贈る。
実はオガ吉くんのように、与えるマジックアイテムの属性を偏らせて亜種に成るかどうかを見ているのだが、まだ俺とオガ吉くんとダム美ちゃん以外に亜種と成った個体はいない。やはり他の条件を満たさないと【加護】を得られず、亜種にはならないようだ。
これも今後の課題としていこう。
今日は午前訓練の後、【隷属化】の首輪を装着して牢屋に入れていた鈍鉄騎士を筆頭に、その他の指揮官職っぽい奴等を尋問した。先に捕らえていた女騎士達から聞きだしていた、今回の戦争の人間軍の目的について、多角的な情報による補完を試みる。
その結果、今回の戦争の裏も表も大体の事が理解できた。
この戦争は《シュテルンベルト王国》(以下、王国と呼称)の第一王女が非常に危険で珍しい病にかかった事に端を発する。
第一王女の病は人間だけが発症する《クリシンド病》と呼ばれるもの。まだ治療法が発見されていないので、助かる見込みの無い〝死病〟の一つとして認識されているそうだ。
クリシンド病の代表的な症状は、まず月日が経過するにつれて臓器がゆっくり腐っていく事が挙げられる。内から腐っていくのだから息も体臭も臭くなり、皮膚には膿胞が幾つもできるのだとか。
発病してから一年以内の死亡率は九十九パーセント以上に達する。最長で二年ほど生き残った例もあるが、それも治る事無く死んでいる。つまりクリシンド病にかかって治った者は一人も居ないそうだ。
幸い空気・飛沫感染ではない事に加え、そもそも発病例自体が少ない事が救いだそうな。治療法を研究する機会が少ないとも言えるかもしれないが。
当然、王国は第一王女のクリシンド病を何とか治そうと試みた。
発病したのが知性と気品に溢れた〝賢姫〟として名高く、また近日中に同盟国へ嫁ぐ事が決まっていた王女様だったから、尚更必死だったそうだ。政略結婚ではあるが、本人同士が好きあっているので恋愛結婚でもあるらしい。
王命により、王国中の医師や薬師などが忙しなく動きまわったが、結果は芳しくなかった。どうにか病気の進行を遅くする事はできたものの、第一王女の臓器は既に半分近くが腐っているそうだ。
普通ならそんな状態になる前に痛みで狂死しているはずだが、様々な魔法で強制的に眠らせて四六時中続く苦痛から解放し、腐っていく臓器を治療して延命させているらしい。
しかし病の力の方が強いので徐々に腐敗範囲は広がっており、遠からず死に至ると判断されていた。
しかし毎日祈りを捧げていた【職業・聖女】を持つとある女性に、かつて王国民であった【癒しの亜神】から一つの【天啓】が下された――クリシンド病を治すには、【深緑の亜神】の加護下にあるエルフの秘薬が必要である、と。
その【天啓】に従い王国が全力で探したところ、条件に適合したのが俺達の生まれたこの森――名を《クーデルン大森林》という――に住むエルフの作る秘薬だった。
そしてその秘薬を得る為、病に倒れた王女の婚約者である《キーリカ帝国》(以下、帝国と呼ぶ事にする)の若き次期皇帝がエルフと交渉を行った。
帝国の次期皇帝の頼みならば、すぐに交渉はまとまるだろう、と思われた。
しかしエルフは、秘薬が少量しか無く、昔からある掟で、〝人間〟に渡す事はできないと拒否。
再三にわたる交渉は、全て不発に終わったそうだ。
基本的にエルフは面倒で厄介な掟が多く、閉鎖的で排他的な性格をしているとも言える。種族的に元々プライドが高く、人間を見下しているので、掟が無くても渡さなかったのではないか、とも思うのだが。
結果として、秘薬が帝国と王国に渡る事は無かった。
この交渉が失敗に終わった事が戦争の切っ掛けになったのは間違いない。しかし話を聞いていくともっと人間らしい事情もあった。
まあ、細かい話を長々と語るのも面倒なのでズパっと言うと、こうなる。
『人間は欲深い』
この一言でもう十分ではないだろうか。
戦争を仕掛ける理由を大雑把に四つだけ述べるとこうなる。
一つ目、エルフはその殆どが美形なので性奴隷に最適。今も昔も衰えぬ人気を誇る大人気商品で、買おうと思ったら莫大な金が必要になる。
二つ目、エルフは種族的に人間よりも優れているので、護衛や兵士として優秀。
三つ目、エルフしか作れない魔法金属のミスラル、溜め込んだマジックアイテムや森から採れる希少素材など、宝の山を手に入れられる。
四つ目、エルフが住んでいる場所が、他国との戦争時に中継ポイントとして非常に重要。
といった具合で、話を聞いて、酷く現実的な理由だと思ったモノだ。
切っ掛けは確かに王女の病を治す秘薬の売買を拒否されたからであるが、そこに大勢の人間の欲や思惑が混ざり、本来の趣旨が色々と湾曲した末、今回の戦争になったようである。この世界でも人間という種族は厄介なのだな、と思わざるを得ない。
俺はいざとなれば隠れたり逃げたりできる立場なので、あまり困らないのだがな。
その他にも色々と聞きだしていく。特に今回の人間軍の構成については念入りに。現在の俺では勝てない相手がいるかもしれないからな。情報は重要である。
まず、人間軍は王国と帝国の連合軍だそうだ。鈍鉄騎士達は王国ではなく帝国に所属していたので、王国軍側の情報は殆どなかったのだが、それは王国軍に所属していた女騎士の方から聞いていたので問題はない。
鈍鉄騎士によると、今回用意された戦力は王国よりも巨大な帝国の方が兵の数も質も良いらしい。中でも、オーガや鬼人に竜人という強力な種族や、それに幾多のモンスターを掛け合わせて造られた〝合成魔獣〟などが所属する魔物部隊が強力だそうだ。
魔物部隊の構成員の殆どが奴隷であるらしく、主の命によっては強制的に命を賭して襲ってくる死兵になるらしい。
何とも面倒で、厄介な話である。
しかしその分、上手い事やれば簡単に転がりそうでもある。
とりあえず、部隊への命令権がある人物はピックアップした。どいつもこいつも貴族で、実戦経験もそれなりにある輩のようだ。
尋問を終えた後、俺以外のメンバーの指揮能力向上の為に、次のような戦闘訓練をする事にした。
プレイヤーは隊長格の役職についた個体で、それぞれの戦力がだいたい均等になるようゴブリンと男の捕虜を手駒として振り分ける。プレイヤーは手駒に指示を出して相手側の手駒を潰す、という実戦形式のゲームである。
手駒の武装は木剣に盾を装備した標準兵を筆頭に、リーチが長い槍兵、攻撃力が高い斧兵、離れた所から攻撃できる弓兵、盾のみを持つ防御兵、と差異を設けたので、手駒の武装に適した指示を出せるかが重要なポイントだ。
俺は審判役となったので今回のゲームには不参加。
結果、ダム美ちゃんとスペ星さんは勝ち星が多く、オガ吉くんとブラ里さんは負けがこんでいた。アス江ちゃんは丁度中間くらいだ。
これは脳筋とそれ以外の差、という事だろう。分かり易い事である。アス江ちゃんも脳筋よりだが、多分掘削時の経験が生きたのだろう。
人間軍から奪った食糧が大量にあるので全員狩りには行かず、拠点の中でこの訓練ばかりしていた。
いや、訓練というよりは皆遊び感覚だったが。
最近では訓練を通してゴブリンとコボルドとエルフに少なからず仲間意識が生まれているようなので、今後はそれを強めていきたいものだ。
奴隷となった人間達は、そもそも俺達が訓練している事に驚きを隠せていなかったのだが、時が経つにつれて段々と表情が深刻な事になっていった。その様子は思わず笑ってしまうほど愉快なモノだった。
そして夜、人間の女性達は嬉しそうに嬌声を上げてました。人間はエルフよりも欲が強いから堕ちるのが早かった上に、順応も早い様だ。
鍛冶師さん達は若干複雑そうな表情を見せていたが、ココに来たばかりの頃と比べて色々と考え方に変化があったらしく、前ほど忌避感はなくなっているそうだ。
というか、『戦争なのだからこんな事も仕方ない、あって当然だとは思う。それに経緯はどうあれ無理やりされて壊れていくのではなく、自分から求めているのだから、まあ、ありじゃないかな、ヒトの幸せはそれぞれだし、他人が口出しする事でも無い様な気がする』とのこと。
理解力のある、良い女達である。俺には勿体ないくらいだ。
あと、性欲発散は人間の女性達が担当しているのだが、現在強制的ではない女エルフ達もそれを羨ましそうに見ていたので、足軽に成ったコボルド達とホブゴブリン達に宛がってみた。
かなり嬉しそうでした、どちらも。
一度プライドをへし折ると、エルフを従えるのは比較的楽であるらしい。まあ、だからといってわざわざ自分からエルフ達を襲撃するつもりはないのだけど。今の状態で十分満足しているし。無駄に敵を作る必要はない。
《七十五日目》
オガ吉くんと午前訓練をしていると、ブラックスケルトン・ナイトと戦わせていた鈍鉄騎士――既に鈍鉄色の全身鎧は着ていない――が俺との手合わせを願ってきた。
一緒に捕らえた他の人間は、プライドが木っ端微塵になって現実逃避したり、壁に頭を何度も打ち付けて自殺しようとしたりしている。そんな中、ただ黙々と俺が課す訓練を行い、奴隷になっても真っ直ぐ俺を見てくるその視線には好感が持てたので、手合わせを承諾してやった。
そして、鈍鉄騎士はやはり強いのだなと実感した。
俺には遥かに及ばないものの、今まで出逢った人間の中で一番の格闘技術を持ち、それに加えて肉体性能はそこまで大差無いように感じられた。
アビリティを使っていないとはいえ、【オーガ・希少種】に迫る肉体性能とは、恐れ入る。
手合わせしながらその要因を聞いてみると、鈍鉄騎士はレベル〝100〟の【職業・戦士】、レベル〝100〟の【職業・騎士】、レベル〝62〟の【職業・修道士】、レベル〝25〟の【職業・聖堂騎士】、と四つの戦闘職を保有しているそうで、それ等の補正と今までの訓練の賜物だそうだ。
鈍鉄騎士の拳は速くて重く、身体は柔軟でありながら硬く、無駄のない動きで俺の急所を正確に容赦なく狙ってくる。
それに淡い光を伴って繰り出される、【戦技】と呼ばれる人間しか使えない様々な技も駆使してきた。
しかし、野性を剥き出しに襲ってきたあのレッドベアー程ではなかったので、もちろん俺が勝った。
繰り出してくる戦技も、言ってしまえば攻撃に様々な効果を付与するアビリティのようなモノでしかないので、対応は比較的楽だった。
とはいえ結構ギリギリの勝利だったので、やり様によっては勝てる相手だと思われて侮られるのも癪だ。
その為今度はアビリティを使用した状態で対峙する事に。その為には、準備が必要だった。
【職業・付加術師】を使って鈍鉄騎士が装着している麻製の半袖長ズボンに、肉体強化・回復力強化・防御力強化を付加してやる。青い燐光が全身を包み、効果が発揮された事を示した。
鈍鉄騎士が驚いた顔でコチラを見てくるが、俺は俺で【職業・守護騎士】と【山の主の堅牢な皮膚】で防御力を、【職業・修道士】と【山の主の強靭な筋肉】で攻撃力をそれぞれ大幅に上昇させた。
というかこのレベルのアビリティを訓練で使おうと思ったら、最低ソレくらいは相手に付加しないと死なせてしまう怖れがある。流石に訓練でバラバラ死体を作りたくはない。発動するアビリティ数もこれくらいで抑えないと、相手に施した強化すら貫通してしまう。
結果だけ述べると、鈍鉄騎士はボロボロな姿で床に転がっています。
いや、なかなか根性があったので、思わずやり過ぎてしまった。まあ、結構満足そうな面で気絶しているので大丈夫だとは思うけど。
鈍鉄騎士を介抱していると、オガ吉くんがジッと俺を見てくるのに気がついた。
その視線には、俺も戦いたい、という思いが込められている。なるほど、鈍鉄騎士と素手で戦いたいのかオガ吉くん。
確かに素手のオガ吉くんと鈍鉄騎士なら、拮抗した勝負になるだろう。
オガ吉くんが戦場で鈍鉄騎士をあそこまで圧倒できたのは、技量云々などよりもマジックアイテムの存在が大きかった。
【黒鬼の俎板】という名を持つあのタワーシールドの防御力は尋常ではないのだ。鈍鉄騎士が繰り出す戦技の悉くを、まるで児戯であるかのように容易く跳ね返していたのがその証拠である。
だから今度は道具の性能に頼らず、己の身体一つで勝ちたいのだろう。
偽りのない完璧な勝利が欲しいのだろう。
でも、もうちょっと待て、と言い聞かせる。流石にこの状態では、ハンデがあり過ぎるからだ。
時が経つのを待ち、覚醒した鈍鉄騎士を回復させた後、望み通りオガ吉くんと戦わせた。
予想通りいい勝負となったが、最終的には尽きる事の無い体力が決め手となって、オガ吉くんが何とか勝ちをもぎ取った。
かなりギリギリな戦いだったが、二人ともいい顔を見せているので問題は無いと思われる。
というか、鈍鉄騎士。なんの違和感も無く交ざってくるその適応力はなんなのだ?
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