Re:Monster(リモンスター)――怪物転生鬼――

金斬 児狐

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2巻

2-12

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《八十四日目》

 昨日の戦いから得た経験値の量と質が良かったからか、大量にランクアップ者が現れた。
 ホブゴブリン・クレリックだったホブくんは【半聖光鬼ハーフ・セイントロード】と呼ばれる種族になった。
 身長は一七〇センチほどと【鬼人ロード】系種にしてはやや小さく、手足も引き締まっているというよりは、純粋に線の細いもやしっ子だ。やけに白い肌と両手の甲に刻まれた例の黒い刺青が目立つ。肩まで伸びた髪はやや銀色で、瞳の色は金色だった。
 スペ星さんのように額の中心には白い鬼珠オーブが埋まっていて、その両隣に生えた五センチほどの小さな二本角が特徴的である。
 戦闘に適した種族ではないので、肉体面のスペックはスペ星さんのように他の鬼人種よりも低いそうだが、その分守りと治癒に秀でているそうだ。
 試しに奴隷の怪我を治させてみたが、その治療速度は以前の比では無かった。傷口に向けた掌がパッと光ったかと思えば、既に治っていたのである。
 次は固有能力の一つである【聖力領域シェル・フィールド】――自身を取り囲む円状の薄い光の膜――を展開させて俺が殴ってみたら、アビリティを使わなかったとはいえ、二十撃も耐えられてしまった。
 最終的には砕けたが、一分くらいで再び展開できたので、相当頑丈な守りだと言える。二十撃も耐えられたのは、ちょっと悔しかった。
 名前はホブ治くんからセイくんに変更する事になった。


 ホブゴブリン・メイジで腐肉好きだったホブちゃんは、【死食鬼グール】になってしまった。
 最近では俺が生成したゾンビの腐肉を美味しそうに喰って処分してくれていたので、きっとこれに成るだろうとは思っていた。
 ゾンビのように身体の一部が腐っているという事は無く、黒髪と生気の抜けた青白い肌を持つので、パッと見では平凡な人間の女性にも見える。が、やはり腐肉を喰い続けてきて、霊魂まで喰えるようになった為か、何処か、非常に危険な雰囲気を纏っていた。ちなみに、やはり黒い刺青がある。
 しかし、俺とオガ吉くん、あるいは俺とセイ治くんを交互に見ては恍惚とした表情を見せ、グヘヘと下卑げびた笑い声を洩らし、時にはよだれを零すのはどういう事だろうか。
 その度に寒気が走るのでどうにかしてもらいたいのだが、言ってもあまり意味が無い様だ。
 名前はホブ浮ちゃんからグルちゃんに改めた。ちなみに「浮」が「腐」になっているのは誤字にあらず。


 ホブゴブリンの一人だったホブちゃんは、全身各所に無数の目を持つ【百々目鬼どどめき】になった。
 黒い長髪、身長一六〇センチ程の女性体で、(普段は閉じているが)全身にある目のせいで美人かどうかは正直見る人によるだろう。
 ちなみに最初から白い着物風の衣服を纏っていた。
 これは【足軽コボルド】などの〝生体槍〟の防具版――〝生体防具〟の一種だそうだ。軽く頑丈で、自動修復機能も付いているらしい。
 妖術を扱えるようになったが、種族的に肉体能力がかなり低いので総合的な戦闘能力は低い。しかしその分【遠隔視リモート・ビューイング】や【透視イントロスコピー】があるので情報収集能力が高い。
 なるほどなるほど。情報戦などで非常に活躍してくれそうなので期待しておこう。
 彼女はホブ芽ちゃんからドドちゃんに改名する事になった。


 それとかつて奴隷だった例の五ゴブを含む七体のホブゴブリンが、オーガになっている。
 七体のうち二体はメスなのだが、その姿は何と言うか、色々と凄い。何だろう、妙に迫力があるのだ。
 俺と同じくらいの大きさで、茶色い肌に刻まれた黒い刺青と、筋肉隆々の身体。ワハハハと大きく口を開けて豪快に笑う姿は、どこかの戦場の姐さんという雰囲気を撒き散らしていた。
 きっと誰でも一目見れば、迷彩服を着て大型銃器を掲げ、戦場を駆け巡っては屍を量産していく様を想像してしまうに違いない。実際、使う武器も大剣など大型だ。
 オガせんやオガみつなど、それぞれ改名した。
 次いでコボルド達は、【足軽コボルド】が六体増え、元々足軽だったリーダーは【武士コボルド】になった。
 リーダーの見かけは、三白眼で厳つい、東洋系の顔立ちの三十代後半男性に犬耳と尻尾を取り付けた様な姿である。
 黒を基調とした着物と朱色の手甲具足を装備し、腰に黒鞘の太刀と白鞘の小太刀をいている。足軽時よりも顔や肉体などが明らかに人間寄りになっていたが、三十代後半のむさ苦しいおっさんに犬耳尻尾とは。コレは酷い。
 俺の感覚からすると、暴力系の仕事をしている男性のコスプレにしか映らない。思わず顔を背けてしまうのも仕方が無いのではないだろうか。
 足軽だった時に『殿、殿』と甲斐甲斐しくしてくれたのはちょっと可愛らしくも思えたのだが、コスプレ893の様になった今やられると、色々と唸らされる。
 まあ、外見は置いといて。
 今まで足軽リーダーと呼んでいたので今後は武士リーダーとでも呼ぼうと思ったのだが、どうもこの世界ではある程度以上の存在になると【真名マナ】というモノを授かるらしい。
 それによると武士リーダーの【真名】は【秋風之辻あきかぜのつじ】、と言うそうだ。
 ちなみに、本来なら他人に【真名】を教えるなんて馬鹿がする事らしい。
 その理由は、真名を知られると、呪いの効力や威力やら、色んな術技の被強制力が上昇するからである。真名を知られるというのは、首筋にナイフを添えられるようなものなのだろう、この世界では。
 そんな重要な真名を明かしたのは、生涯をかけて仕える意を示すための簡単な儀式だったからだそうな。
 なるほど、と頷いておく。
 でも結局、普段使う名前は俺が考える事になった。ほら、普段【真名】は使えないだろ。
 悩んだ結果、秋風之辻改め、『秋田犬』と呼ぶ事になった。いや、以前の顔つきが似ていたので、無意識にそう選択してしまったのかもしれない。
 まあ、本人は納得しているようだから、問題ないだろう。
 そしてランクアップした全員の体にやはり刺青があった。一体どんな意味があるのだろうか。いずれ調べる必要があるな。
 だが今は置いといて、とりあえずそれぞれに祝い品を贈った。


 さて、次は元奴隷部隊員について。
 半数以上はそれぞれの故郷か親戚が居る場所に帰ると決めたらしいが、先立つ物がほとんど無い状態である。
 その為、拠点の整地や外部演習場製作に使う木の伐採などのアルバイトをしてもらい、働きに見合った分だけ人間軍から略奪した食糧や調理道具、金などを渡す事にした。
 ちなみに脱走兵であるが故に武器は自前のモノを持っている。
 五、六日もすれば旅費分くらいは貯まるだろう。単純に労働力として優秀だというのもあるが、コチラとしてもさっさと出て行ってもらいたいので、時給は非常に高いのだ。その分だけこき使うが。
 そんな訳で、帰郷選択組について語る事はあまり多くない。
 多いのは、残る事を決めた、つまりは傭兵団《戦に備えよパラベラム》に入団する事にした五十名についてである。
 入団理由としては、既に帰る場所が無い、生まれてずっと奴隷だったので自由と言われてもどうやって生きていけばいいか分からない、これからも血湧き肉躍る戦場で生きたい、恩を返さねば納得がいかん、などなど、様々である。
 大まかな種族の分類と数は――


 鬼人ロード‥三
 半鬼人ハーフ・ロード‥五
 竜人ドラゴニュート‥四
 半竜人ハーフ・ドラゴニュート‥六
 大鬼オーガ‥十
 巨鬼トロル‥一
 蜥蜴人リザードマン‥五
 矮人ドワーフ‥五
 首なし騎士デュラハン‥一
 猿人オロリン‥三
 半吸血鬼ダムピール‥一
 赤帽子レッドキャップ‥三
 虎人ワータイガー‥二
 半人馬ケンタウロス‥一


 ――となっている。
 正直、現在の構成員の大部分であるホブゴブリンよりも強い種族ばかりだ。
 俺個人としては別に入団させても問題ないのだが、一度にこれだけの数を入れるのは弊害も多い。というのは、皆そうそう納得しないだろうからだ。
 レッドキャップやリザードマン、ケンタウロスやドワーフ辺りのモンスターならうちのホブゴブリンでも大半のヤツが勝てるだろうが、それ以上のクラスとなるとオガ吉くんなど一部を除いてほぼ全員が勝てない。
 種族として上位である鬼人ロードは勿論、鬼人と同列の竜人ドラゴニュートもホブゴブリンとはケタ違いの強さだからだ。幾ら訓練しているとて、それを覆せる程ではない。
 だから、何も考えずに入れてしまえば現在の序列が著しく変わってしまう。
 同族の俺が頂点に成り上がった時ならば兎も角、いきなり知りもしない奴等が大量にやってきて、今までの地位を奪われて上に立たれたら、どうしたって不満が溜まる。
 俺だったら我慢ならん。
 結果として、内部分裂しかねない。というか、ほぼ確実だろう。
 せっかくココまで鍛えたのだ、それは些か勿体ない。いや、むしろ将来性を期待するならホブゴブリン達の確保の方こそが必須だ。信頼性も、ホブゴブリン達の方が高い。
 イヤーカフスなどで強制的に離反させないすべも多々あるが、自主的に動いてくれた方がやはり色々と楽だ。
 なので、とりあえず、元奴隷部隊員五十名は仮入団扱いとして、信頼を得るまでは一番下の雑用係にする事にした。ゴブリンよりもさらに低い地位、見習いのような扱いだ。
 そうすると、今度は元奴隷部隊員から不満が出た。
 当然と言えば当然だが、要約すると『我等が率いてやる』的な事を言う様になったのである。
 そうわめいているのは三体居る鬼人の内の直接戦闘系種二名と、ハーフを含む竜人十名。そしてゴリラのように毛深くて筋骨隆々なボス系の猿人オロリン一名に、軽薄そうな半吸血鬼ダムピール一名の、総数十四名だ。
 巨躯虎頭の虎人ワータイガーや、美丈夫の頭部を小脇に抱えた首なし騎士デュラハン辺りも言って来るかと思ったのだが、『受けた恩をあだで返す訳にはいかん』そうです。どちらも武人気質かたぎな性格の様だ。
 物分かりが良く、非常に楽なので、こいつ等はちょっとだけ優遇しようと思う。見習いから二等兵になったぐらいの差だが。
 さて、『我等が率いてやる』的な妄言を吐き出した十四名には、取りあえず立場というモノを教える事にした。
 まず、鬼人二名を同時に相手取った。
 手加減はせず、鈍鉄騎士にしてあげたように各種強化エンチャントも一切施さなかった。
 なぜなら、疾風を纏い攻撃速度に優れた【疾風鬼ゲイルロード】と、炎熱を纏い攻撃力が高めな【灼熱鬼フレイムロード】である二名の能力の相性が良いので、戦闘力は中々のものだから……というのは実はどうでもいい事で、十四名の中で一番調子に乗っていたからである。
 俺が同じ【鬼】系統で二名よりも下の種族であるオーガだからと楽しそうに喚いていたので、ちょっとプライドとか色々なモノを潰しておこうかと思ったのだ。
 ――後で聞いた話だが、俺は不気味にわらっていたそうだ。
 今や、二名はギリギリ生きている、といったていで地面に転がっている。
 かかった時間は大体三分くらいだろうか。一分が経過した辺りから二名は鬼珠オーブの力を解放し始め、疾風鬼ゲイルロードはエメラルド色の装甲を持ち風を纏ったロングブーツを、灼熱鬼フレイムロードはルビー色の炎が噴き出すフランベルジュをそれぞれ装備した。
 両者とも固有能力が解放され、戦闘能力が飛躍的に上昇したのは間違いない。
 だが、俺もそれに合わせて糸や毒などの使用を解禁して動きを封じてやった。最終的には銀腕の能力の一つである【武装殺しアームブラスト】でそれぞれの武装を砕いてやったので、ろくにダメージを受ける事なく終了した。
 今回判明したのが、オーブの力を解放して出現させた武装を壊されると、本体であるオーブに亀裂が入ってしばらくの間能力を使用できなくなるという事だ。
 そしてオーブを壊された鬼人もまた、その反動で身体が麻痺したようにしばらく動けなくなる事も分かった。
 本人達によれば、時間が経過すればオーブも身体も自然と治るそうなので、心配はしていない。
 とりあえず早速仕事ができたセイ治くんに治療させる事にした。
 次いで、竜人ドラゴニュートの四名である。
 半竜人ハーフ・ドラゴニュート達六名は自分よりも実力が上の鬼人ロード二名がボロクソになった様を見て、心変わりしてくれた。楽な事である。
 ちなみに竜人と蜥蜴人リザードマンの簡単な見分け方は、外見が人間寄りか爬虫類寄りかだ。竜人は人に角や尻尾など竜の部分的な特徴が加えられた姿形で、蜥蜴人はパッと見で爬虫類の部分が多い。半竜人はその中間、やや竜人よりだ。
 なんて事は置いといて。
 正確な種族分類では四名とも【雷竜人サンダー・ドラゴニュート】だそうだ。
 角から雷を発生させられるし、亜竜種の一部と竜種が扱える強力な攻撃【息吹きブレス】の一種である【雷の息吹きライトニング・ブレス】を使えるらしい。更に鬼人並の高い身体能力も特徴だ。
 が、それでも全く問題ないので四名同時に相手した。
 こちらは鬼人二名よりも容易かった。既に【雷電攻撃無効化】のアビリティを得ていたが故に、雷による攻撃の一切を俺が受け付けなかったからだ。【雷の息吹きライトニング・ブレス】を撃ち込まれようが、大電流の雷槍を撃ち込まれようが、俺の体表に触れるか触れないかの内に、パッと瞬いて雷は消滅してしまったのである。
【雷】という雷竜人最大の能力は無効化した。が、優れた肉体能力まで無くなった訳ではない。マトモな戦闘技能があれば俺を殺せる可能性もあっただろうが、四名の技術は総じてつたなく、単調で、先読みし易かった。
 これまでは持って生まれた力を深く考えもせずに振るってきただけなのだろう。数多のアビリティで強化され、竜人の肉体能力を凌駕した俺の敵ではなかった。
 ちなみに、鬼人の〝鬼珠オーブ〟のように、竜人ドラゴニュートにも〝竜玉スフィア〟と呼ばれるモノがある。竜玉は鬼珠と同じような能力を有していたのだが、これもほぼ無効化できたので、あまり意味は無かったと追記しておく。
 コチラの治療は、医療部隊員に実戦経験を積ませる為にそっちに振った。
 さて、今度はボス猿についてだが、コチラは竜人戦が終わり、治療の指示を終えたその瞬間を見計らって、死角である背後から奇襲を仕掛けてきた。
 それも【直感インチュイション】で悟っていたので避けられたのだが、奇襲、という意味では、この攻撃はほぼ完璧だったので、あえて受ける事にした。
 気配の殺し方、機の見切り、足さばき、身体の効率的な運用法などの総合的な評価から、ボス猿の実力の高さが窺える。
 種族的な肉体能力では鬼人や竜人よりも劣るのだろうが、それ故に培われたのだろう戦闘技術を見るに、ボス猿は入団希望者五十名の中ではかなり高い水準にあると思われた。
 岩さえ砕くであろう一撃が脇腹に入り、俺の身体は岩壁に向かって飛んで、めり込んだ。
 それを見てドラミングをし始めたボス猿。周囲にはその音だけがしばらくの間響いた。
 何事も無かったかのように復活してもいいのだが、奇襲には奇襲で返してやろうという悪戯心が芽生え、しばらく様子を見る。
 そしてボス猿が『今日から俺がココのボスだ――』と言い始めたくらいで、岩壁から抜け出し、そのままボス猿の背後から、全く同じ奇襲をしてみた。
 一切察知できなかったのだろう、無防備だった脇腹に深々と拳がめり込む。骨が砕ける音を響かせながらボス猿は吹っ飛び、俺と同じく壁にめり込んだ。
 確認してみると、ギリギリ生きていた。ふむ、案外頑丈である。速さだけではないらしく、バランスは良さそうだ。
 重傷を負ったボス猿の治療は急を要するので、セイ治くんに任せた。
 残る半吸血鬼ダムピールだが、コイツは待ち時間の間ダム美ちゃんを口説こうとしていたので、ちょっと余計に力が入った。吸血鬼ヴァンパイア系は総じて生命力が高いので、よほどの事をしなければ大丈夫だろうし。
 開始早々【魅了の魔眼】を仕掛けてきたが、同性なので威力は半減、そもそもコイツレベルの魅了では俺に効果は無い。
【装具具現化】で造った大型ナイフで地面に四肢を縫い付け、内臓が幾つか破裂するまで殴って終わらせました。
 致命傷と呼べるほどのダメージを与えたが、血を飲めば大抵の怪我は治るそうなので、俺の血を飲ましてやる。
 俺としては分体を体内に入れる為、というくらいの考えだったのだが、どうやら俺の血は相当美味しいらしい。一滴飲んだ瞬間から恍惚とした表情を見せ、赤い瞳が爛々と輝いた。恐らく【秘薬の血潮】とかが関係しているのだろう。
 飲ませた量はお猪口ちょこ一杯分程度だったのだが、飲み終えた瞬間『おお、我が愛しの君よ』『我が身、我が魂は全て愛しの君の物』とか気持ちの悪い事を言い出して手の甲にキスしようとしたのには、本気で引いた。
 反射的に殴り飛ばしたのはきっと正常な反応だ。殴られて喜んでいる風に見えたのは、気のせいだと思っておこう。追及するのは精神衛生上、よろしくない。気持ちが悪いので、深く関わらない様にしようと即決した。


 そんな訳で、下っ端として働く事になった新入り全員にイヤーカフスを装着させ、恒例の基礎訓練を行わせた。
 皆それなりのレベルはあるので、今までにない位にハードなモノにしてみました。気兼ねなくできる訓練は、充実したものになった。


 午後からは、ドワーフ五名を鍛冶師さん達の所で働かせる事にした。
 ドワーフの鍛冶の腕は全種族中一、二を争うらしい。腕力があるので兵士として前線でも十分使えるが、俺としては鍛冶に集中してもらった方が都合がいい。
 鍛冶の腕だけなら鍛冶師さん達の方が劣るのでドワーフ達に教わるように指示し、最も腕が良いというドワーフを鍛冶長に任命する。鍛冶師さん達は職人気質の頑固親父のようなドワーフ達がちょっと苦手そうだったが、それは時間が解決してくれるだろう。鍛冶師さんにもドワーフの頑固さに似た所があるし。
 ドワーフがミスラルでどんな作品を造ってくれるのか、今から楽しみである。


 午後の訓練は、まだ文句を垂れる新入りに、オガ吉くんが毎日行っている内容をさせてみた。
 戦闘中毒バトルジャンキーであるオガ吉くんの訓練は、ブラックスケルトン十体を一度に相手取る事から始まる。十体全てを打倒できるまで休憩は一切無い。そしてクリアしたら次は二十体を相手にし、更に三十体……と増えていく仕様なので、相当厳しいだろう。
 とりあえず死なない様に、かつ足腰が立たなくなるまでやるように言っておく。
 こうして手が空いたので、俺は【合成】を使ってみる事にした。
 最初からアビリティ同士を合成するのは怖かったので、まずは先日の戦場で死んだ鬼人ロード竜人ドラゴニュート達から回収していたオーブとスフィアを、俺の身体と【合成】させてみる。
 戦場で回収したのはあえて十個だけにとどめておいた。その理由は、人間軍が被った損害を少しでも軽減させる為だ。損害が多過ぎては、引くに引けない状態になる恐れがあった。例え欲していた薬が手に入っても、である。
 オーブとスフィアは非常に高額で取引されるし、強力なマジックアイテムにもなる。
 戦場から回収できれば人間軍の損害も多少軽減できるに違いない。とはいえ今までも奴隷の鬼人や竜人が死んだら回収されていたそうなので、今更な話かもしれないが。
 取りあえずエメラルドのような二個のオーブを、自身の両膝と合成。
 結果、成功した。
 疾風鬼ゲイルロードのオーブの能力を解放すると、先ほどの鬼人との戦いで見たロングブーツをちょっと黒くした豪華版、のようなモノが発現した。
 何度か動きを試してみたが、特に問題はなかった。能力も問題なく使用できる。拒絶反応があるかもと思っていたが、それもない。
 これ幸いと、俺はいくつかの【合成】に勤しんだ。
 ついでに【混沌の亡者】の実験をしてみると、コチラも面白い結果が出た。


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