Re:Monster(リモンスター)――怪物転生鬼――

金斬 児狐

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3巻

3-6

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 そして、時は来た。
 バロールが勝ち誇った笑い声を上げ、見るからに危険そうな大魔術を行使する寸前、俺はその頭部を狙撃した。
 砲声が轟き、崖に反響して鼓膜を振わせる。
 銀腕内部で水素爆発を発生させて発射時の推進力を獲得。更にレールガンの要領で矢自体を加速させ、進行方向にように重力を操作。念には念をと、螺旋状の風を形成して弾道の安定性を高める。それ以外にも様々なアビリティを使って放たれた黒き閃光は、途中で七つの矢に枝分かれし、微かな抵抗さえも許さずにバロールの顎部を穿うがち、その先にあった崖さえもえぐってしまった。
 崩れ落ちる岩石がその下で倒れ伏している人間達に降り注ぐ。俺は慌てて岩石群の落下地点をずらしたりして、人間達を守った。
 折角の上質そうな人間達なのだ、潰されては困る。潰されてしまうと、俺が喰えないではないか。
 漁夫の利? そんなもんゲットするに決まっているだろう。
 助けたんじゃないのか? アホか、普通に戦うと面倒なやからは、弱った時に狙うのが常識だ。
 顎部を失ったバロールの巨躯が崩れ落ちるのと、俺が崖上から飛び降りて着地したのは、しくも同時だった。地面が激しく揺れ、積もっていた雪が舞い上がる。
 バロールが唐突に死んだ事に困惑する人間二人の視線が、降り立った俺に集まる。それを感じながら、俺は近くに転がっているバロールの死体と棍棒を、まるまる【異空間収納能力アイテムボックス】に収納した。
 これほどの巨体は手に入れた事が無かったので、ちゃんと入るのかどうかは実験的だったが、すんなりとできてしまった。
 その事に驚くと同時に、新しい戦法が脳裏をよぎる。
 しかし取りあえず今は思考を切り替えて、剣士の青年を殺し、聖職者の美少女を殺し、残り四名も殺して、装備をいで骨肉を喰って、フォモール達の死体を回収するのに専念しよう。それで気分良く帰還する事ができる。
 きっと新たなアビリティを多く得られるだろう。
 いやー、良いハンティングだった。と皮算用しつつ青年の方を振り返り、その瞳を正面から見たところで、俺は考えを変えた。
 何故そう感じたかは分からない。分からないが、目の前の弱り切った人間達を殺し、その骨肉を喰う踏ん切りがつかない。
 聖職者の美少女は突如起きた事態に反応できていない。バロールが唐突に死んで、敵が俺に代わったのかどうか、判断しかねているようだ。
 そもそも、聖職者である美少女は直接戦闘能力が低い。回避能力は比較的優れていたが、アビリティを発動させた状態でハルバードを振るえば、簡単に首を刎ねられるだろう。同じ人間が仮にあと十人居ても問題無い。
 問題は、剣士の青年の方だ。
 青年は前衛として、盾戦士と共に長時間フォモールとバロールの攻撃に晒され続け、必死に後衛を守り続けていた。
 その代償として鎧は所々砕け散り、衣服もボロボロだ。全身血だらけの泥だらけで、左手に至ってはいびつに捻じれており、骨が折れているようだ。小奇麗こぎれいだった姿は、今では見る影も無い。
 黄金に輝いてた両刃剣も血に濡れて輝きが失せ、やや刃零はこぼれしている。
 そんな満身創痍の状態で、俺を見つめてくる青年。一見すれば死ぬ寸前といえる有様だったが、血に濡れた金髪の隙間から見える目は、決して死んでいなかった。
 まるで燃えるような瞳だった。まだ戦意を衰えさせておらず、敵の喉笛を死んでも噛み千切ると決意した猛獣のようでもあった。
 普通に立っている事もままならないというのに、不用意に近づけば俺の首を切り落としそうなほどの気迫。もしかしたら、俺が手を貸さなくてもバロールを殺せたのかもしれない。そう感じさせる〝何か〟を、剣士の青年は発していた。
 その身を喰らおうとするには、いまだオーガの俺の力ではあまりにも不安が大き過ぎた。俺があと一回でも【存在進化ランクアップ】していれば、話は違ったかもしれないのだが。
 仕方ないので、ココは恩を売る方向に切り替えよう。
 今日はディアホワイトの双角と、バロールの肉体も得られたのだ。更に人間達も、と欲張り過ぎては思わぬしっぺ返しがありそうなので、ここら辺で妥協しておくべきだろう。
 取りあえず、敵意は無いよー、と言いながら近づき、まず青年をヒーリングスキルで回復させ、続いて美少女を治療した。そして今にも死にそうな盾戦士、その後に獣人二名を、錬金術師さん作【体力回復薬ライフポーション】などを併用しながら治療する。
 魔術師の美女は放置しておいても自然に回復するだろうが、取りあえず錬金術師さん作の【魔力回復薬マナポーション】を無理やり飲ませて症状を緩和させる。魔力欠乏症は体内魔力が枯渇こかつして起こる症状だから、外から補給してやれば案外簡単に回復するのだ。
【秘薬の血潮】を使えばもっと手っ取り早かっただろうが、この能力を知られると、その後面倒事に発展する臭いしかしないので、自重。
 治療中に空から落ちてきた岩を防いだ腕の皮膚が裂けてしまったが、それは放っておいても治るので問題無い。
 兎も角、治療を終えた俺は青年達に対して、自分はオーガ・メイジだから普通よりも知恵があるのだと説明し、やや疑問を持たれながらも無理やり納得してもらった。
 当然、バロールの死体を何処どこにやった? と問われた。
 俺のあるじがバロールを殺したので、その死体を回収に来たのだ、と嘘をく。死体はマジックアイテムで回収した、とも。
『横やりを入れるような状況になったが、君等を治療して救ったし、最終的にバロールを殺したのは俺の主なのだから、フォモールは兎も角、バロールの死体だけはもらっていく。主からすれば青年達が死んだ後にバロールを殺しても良かったんだから、これくらいは良いだろう。納得してくれないのなら、主も強硬手段をとるしかないので、慎重に考えて欲しい』なんてヌケヌケと。
 正に嘘八百。チャンチャラ可笑おかしい話である。
 しかし青年達にそれを否定する材料は無い。聖職者の美少女や魔術師の美女などは微妙に納得していなかったが、リーダーだという剣士の青年はそもそも根が純粋らしく、信じてくれた。最後には助けてくれて有難う、とお辞儀までしてきた。
 いえいえコチラこそー、と社交辞令を交わした後、平和的に別れる事となった。
 青年達は、フォモール達の死体から必要な素材を回収したら、このまま山脈を越えたところにある目的地に行くそうだ。
 あまり深く関わり過ぎると厄介事に巻き込まれそうだったので――既に手遅れかもしれないが――目的地は聞かず、さっさと立ち去る。
 ちなみに、結局俺はフォモール達の死体を喰わなかった。アレはあくまでも実際に倒した青年達の分であって、俺が触れてよいモノでは無いからだ。
 やがて六人の気配が感知圏外となるのを確認して、俺はため息を吐き出す。
 全く、今日は厄介な出来事が多過ぎる。その分収穫はあったが、後々何かに響きそうで不安が残る。
 さしあたって、周囲に誰も居ない場所を探し、バロールの死体を【異空間収納能力アイテムボックス】から取り出して喰う。
 巨大なだけあって、普通に喰っていては時間がかかり過ぎる。そう考えた俺は【形態変化メタモルフォーゼ】を使って全身をスライムのように変形させ、バロールの死体を包み込んで消化する事にした。これなら幾らか早いだろう。
 このやり方でもアビリティを得られるというのは既に実証済みだったので、問題は無かった。


[能力名【見殺みころ魔眼まがん】のラーニング完了]
[能力名【圧殺超過あっさつちょうか】のラーニング完了]
[能力名【巨人王の覇撃】のラーニング完了]
[能力名【巨人王の威厳】のラーニング完了]
[能力名【巨人王の叡智】のラーニング完了]
[能力名【巨人王の血肉】のラーニング完了]
[能力名【巨人王の骨格】のラーニング完了]
[能力名【巨人族の常識外な生命力】のラーニング完了]
[能力名【巨人の鉄槌てっつい】のラーニング完了]
[能力名【巨人殺しジャイアントキリング】のラーニング完了]
[能力名【巨人の因子】のラーニング完了]
[能力名【貫く暴雨の左腕パルジャニヤ】のラーニング完了]
[能力名【轟く雷霆の右腕イラティキ】のラーニング完了]
[能力名【水氷完全耐性パーフェクトトレランス・アクア】のラーニング完了]
[能力名【雷光完全耐性パーフェクトトレランス・ライトニング】のラーニング完了]
[能力名【魔眼完全耐性パーフェクトトレランス・イーヴィルアイ】のラーニング完了]
[能力名【岩土完全耐性パーフェクトトレランス・アース】のラーニング完了]
[能力名【国を背負いし者】のラーニング完了]
[能力名【王者の圧政】のラーニング完了]
[能力名【下位巨人生成】のラーニング完了]
[能力名【異種族言語ジャイアント・ランゲージ】のラーニング完了]

 種族格差と喰った量によるモノか、アビリティを一気に二十一個も得てしまった。これには驚きを隠せない。
 しかもなんだこれ! と思うようなモノも多い。
 効果を確認するには、実際に使ってみた方が良いのだろうが、今日は時間が時間である。既に陽も沈んでいるのだ。
 オーロとアルジェントの事も気になるので、一旦戻らなくては。
 洞窟に向かう帰り道、雪の中から飛び出た〝スノーラビット〟に向けて【巨人の鉄槌】を使ってみた。すると俺の腕部を中心にボンヤリした巨大な腕の幻影が発生。それでスノーラビットを殴るように動かしてみたら、ブチっと潰せた。
 積雪の上に赤い花が咲いた。
 何これ怖い。
 でも使い勝手は大変宜しいようで。


 洞窟に帰ると、オーロとアルジェントは、弱々しいながらも既に立って動けるようにまで成長していた。思わず抱きしめると、耳元で『パーパー』などと言われる。どうも姉妹さん達が、言葉を教えていたようだ。
 何この子ら、可愛過ぎる。
 そうだ、古き良き単純な構造のカメラならば、もしかしたらこの世界でも作れるかもしれないので研究してみよう。取りあえず、イヤーカフスを使って拠点のドワーフと護衛エルフさん達に連絡を入れた。
 ちなみにこの異常とも言える成長速度については、俺の子だから、という事で。
 オーロとアルジェントとしばしたわむれた後、持ち帰ったディアホワイトの双角の一部を粉末状にし、姉妹さん達の母乳に混ぜて飲ませてみる。
 飲み終えた瞬間、オーロとアルジェントの身体はほのかに発光し、全身の刺青が脈動した。威圧感が膨れ上がる。恐らくは能力値が大幅に上昇したのだろう、それぞれの鬼珠オーブの輝きが一段違っている。
 ディアホワイトの角すげー、オーロとアルジェントは将来凄い事になりそうだ。ついでに俺と赤髪ショートも角を試食してみる。二人で親指一本分サイズの量を喰った程度では、まだまだ尽きはしない。角を獲得した時は喰うのを我慢したが、どうやら少量でも十分効果があるらしい。今後新しい子供ができた時の分も足りるだろう。


[能力名【■獣の守護領域】のラーニング完了]
[能力名【■■■の寵児ちょうじ】のラーニング完了]

 どうやら俺はディアホワイトとの力量差を見誤っていたらしい。この程度食べただけで二つもアビリティが手に入った事など今まで無かった。バロールを喰った時以上にあり得ない事だ。
 これだけで分かる。俺とディアホワイトの間には、計り知れないほどの力量差があったのだと。
 勝率は三割などではなく、ぜろだったらしい。戦っていれば、間違いなく殺されていただろう。それも数秒足らずでだ。
 恐らく対峙した時、奴は力を抑えていたのだろう。それを見抜けなかった己の未熟さを反省しつつ、更に鍛え上げて何時いつかはディアホワイトを殺して喰うのだと誓う。
 再び遭遇した時の為にも、俺はもっと強くならねばならないようだ。
 ディアホワイトは美味そうだ。どのような味がするのか、楽しみである。
 それにしても、角を喰って得たアビリティの内、前者は大体使い方が分かるから良いとして、もう一つはどんな効果があるのかさっぱり分からない。この異常事態はどうすればいいのだろうか。
 こんな事は初めてである。が、分からないものは分からない。以前得た能力――【■■■の眷属】――のようなモノだろうか? 
 いずれにしても効果不明なアビリティは封印しておいた方が良いだろう。
 どんな威力があるのか自分でも分からない爆弾を、誰が使いたいと言うのか。
 ちなみに赤髪ショートは【聖獣喰いスティルマ・イーター】という新しい職業を得たそうだ。お転婆姫や少年には聞かれないようにコソコソっと教えてくれた。
 聞くからにヤバそうなので、秘匿ひとくしておいた方が無難だという結論に至る。
 オーロとアルジェントも当然同じ職業を得ただろうから、言葉が分かるくらいに成長したら、人には黙っておくように教えないとな。
 赤髪ショートの言葉を聞く限り、【■獣の守護領域】の■は聖ではないのか? と思えてならないが、それが表示されないのは何故だろうか。
 まあ、後々分かると期待しておこう。今の状況では解明しようとしても手掛かりがなさすぎる。無駄に時間を使うのは不毛である。
 今日は色々あって疲れたので、グッスリと眠れそうだ。


[レベルが規定値を突破しました。
 特殊条件《大軍虐殺》《疑似神性ぎじしんせい》《地主殺害じぬしさつがい》《巨人王殺害》《■■宣言》をクリアしているため、【使徒鬼アポストルロード絶滅種エクスピシーズ】に【存在進化ランクアップ】が可能です。
【存在進化】しますか? 

《YES》《NO》]

 睡魔によって意識を失う寸前、脳内に表示された選択肢の中から《YES》を選び、俺の意識は闇に落ちた。


[オガ朗は特定階位にまで【存在進化】した為、※※※より〝真名マナ〟が与えられます]
[オガ朗は【真名・夜天童子やてんどうじ】が与えられました]
[真名・夜天童子には固有能力ユニークスキルが設定されています]
[夜天童子は固有能力【百鬼夜行ひゃっきやこうの頭領】を獲得した!!]
[夜天童子は固有能力【逢魔時おうまがとき鬼喰おにくらい】を獲得した!!]

 [夜天童子は特定条件種、特定条件行動、特定条件個体をクリアしている為、※※※から特殊能力スペシャルスキルが五つ与えられます]

[エラーが検出されました]
[五つの特殊能力の内、解放条件を満たしていないモノが二つあります]
[未解放である二つの特殊能力は解放条件をクリアし次第、順次解放されるようになりました]
[夜天童子は特殊能力スペシャルスキル異教天罰ヘレシー・ネメシス】を獲得した!!]
[夜天童子は特殊能力【運命略奪フェイト・プランダー】を獲得した!!]
[夜天童子は特殊能力【神話的主要人物ミソロジィ・メインキャスト世界詩篇ワールドエピック黒蝕鬼物語こくしょくきものがたり〕】を獲得した!!]
[特殊能力【■■■■】は未解放です]
[特殊能力【■■■■】は未解放です]

 [夜天童子が【運命略奪】を獲得した事により、配下の運命は夜天童子の支配下に置かれました]

[夜天童子が【神話的主要人物・世界詩篇〔黒蝕鬼物語〕】を取得した事により、効果は自動発動されました]
[夜天童子の配下の中から【八陣ノ鬼将はちじんのきしょう】が選抜されました]
[夜天童子の配下の中から【■■の正妻せいさい】が選抜されました]
[夜天童子の配下にまだ【■■■■】の条件を満たす者が少ない為、【■■■■】は揃い次第選抜されます]
[【八陣ノ鬼将】並びに【■■の正妻】に選出された個体は、【存在進化ランクアップ】後に恩恵が与えられます]


 《百十三日目》

 目を覚ますと、今までに無いほどの急激な変化があってちょっと困惑気味だが、順を追ってまとめようと思う。
 本当に色々な変化があったのだ。


 まずは俺の肉体について。
 俺はどうも【使徒鬼アポストルロード絶滅種エクスピシーズ】と呼ばれる、なんだこれ? と思わず小首を傾げてしまう種族になったようだ。
 二メートル五〇センチあった身長は二メートルほどにまで縮み、巨大な四肢も一回りか二回り細くなっている。ただ細くなったというより、より密度を上げた、と言った方が適切だろう。
 溢れる力はオーガの頃とは比べ物にならない。肉体のスペックは数十倍だろうか。オーガだった頃が子供のように思えるほどである。
 そしてランクアップに伴い、アビリティも大幅に成長していた。特に銀腕は【呪詛射ちカーズ・シュート】という新たな能力が発現している。こいつはこれからも成長していくようなので、期待大だ。
 体表の黒さはそのままだが、刺青が赤から黄金色こがねいろに変化した。
 それに角は三本に増えた。額の中央に一本、側頭部に二本、いずれもやや湾曲しながら天を突くように力強く伸びる鋭角だ。以前よりも太くなり、下手な刃物よりも切れ味が鋭い。試しに岩に頭突きしてみると、砕けるどころかスパッと切れてしまった。
 頭髪は銀に近い灰色で、腰付近にまで伸びていた。鬱陶うっとうしかったのでバッサリ切ろうとしたのだが、錬金術師さんに止められたので、黄金糸でくくって尻尾のように背後に流す事にした。今後錬金術師さんとかの玩具にされそうな予感がヒシヒシするのだが、それは一先ず置いといて。
 瞳はダム美ちゃんと同じ血のような紅色。笑った時に見える刃物のような牙と、やや鋭い目つきが特徴的だ。ダム美ちゃん達曰く、オーガの時より格好良いそうだ。自分ではまだ無駄に迫力があり過ぎだと思っているが。
 鬼人ロード種の特徴とも言える〝鬼珠オーブ〟は俺の胸部と両肘両膝にそれぞれ埋まっていて、黒と赤と金が混ぜ合わさったような色だった。何が出てくるかは解放するまで分からないが、何やらヤバそうなので機会を見つけて早めに確認しておくつもりである。
 それと、オーガの時に肉体と合成していた鬼珠が消えていたので、その能力は使えなくなったのか? と思ったが、ダメ元で使ってみると以前の武具の強化版を出現させられたので一安心だった。
 そして使徒鬼アポストルロード百々目鬼どどめきのように生体防具せいたいぼうぐを扱えるようで、下着とズボンを発現させる事ができた。
 着物のはかまとニッカポッカを混ぜ合わせたような独特なフォルムのズボンは、動きを全く阻害しないし、通気性も良く、なかなか悪くない。
 試しに精霊石製ナイフで切り裂こうとしてみたが、全く歯が立たなかった。むしろナイフの方が刃零れしてしまった。なかなかの防刃性だ。
 防具越しに風鬼さんに蹴らせてみても、衝撃はほとんど吸収された。軽く炎などもぶつけてみたが、汚れる事すらなかった。色々と高性能な防具であるらしい。
 不満があるとすれば、下着とズボンだけしか出せない為、素足のままだし、上半身もき出しのままだという事か。割れた腹筋やらが晒されているので、赤髪ショート達が面白そうにペタペタと触ってくる。露出の趣味はないのだが。
 まあ、寒くはないし、特に恥ずかしくもないので、街に入る時はポンチョでも羽織ればいいか。


 姉妹さん達も、目が覚めると、新しい職業を得ていたそうだ。
【職業・鬼子の聖母モーニング・マドンナ】というモノだそうで、肉体面が色々と強化され、鬼系統の子を産み易いような能力補正が発生するらしい。
 取得条件に、本当に愛した鬼の子を産む、とあったらしい。これを聞いた時、思わず二人を抱きしめてしまったのも仕方あるまい。
 ちなみにオーロとアルジェントは更に言葉を憶え始めている。『パーパ、パーパ、だいすきー』とか、もうね。
 いやもう可愛いなこの子ら。
 まあ、それは置いといて。


 次の話は、お転婆姫と少年に、俺が【加護】持ちだとバレた、という事だ。
 いや、ランクアップした拍子に体色が元の黒に戻っていたのだが、それを隠す前に目撃されたのである。隠す暇など全く無かった。だからもう仕方ないと諦める。


 体色などを自在に変えられる事まで知られるのは更に不味いので、今後は基本的に黒いままでいく。
【加護】持ちだからという理由で面倒事に巻き込まれるのなら、その時はその時。最終的に、無理やりにでも解決すればそれでいい。
 ちなみにどんな系統の神の加護かは体色で判別できるが、その階位は色の濃さで予想するしかないらしく、本人が説明しない限り分からない。取りあえず、それなりに強力な力を保有しているという【死海しかいの神の加護】だと噓をいた。
 すると赤髪ショート達にも、そうなんだー、と納得された。
 あれ? ……ああ、そうか。俺がどの神の【加護】持ちなのかは誰にも言ってなかったっけ、と振り返りつつ、今後も言わないだろうなぁ、と思ったのであった。
 いや、秘匿ひとくしておくべき情報だろう、これは。


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