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マッサージ機

極楽コース

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男湯から部屋に戻ったが部屋はもぬけの殻。温子さんはまだ部屋に帰ってきていなかった。まだマッサージ機コーナーだろうか。

荷物を置いて、マッサージ機コーナーへ行く。






ゴウンゴウンとマッサージ機の機械音が近づいてくる。

ここか。



マッサージ機コーナーには、各種マッサージ機や器具が取り揃えられていた。
マッサージチェア、椅子に座って足を入れるレッグマッサージャー、足ツボ押しマット、乗馬の格好で跨るロデオ型の運動器具、懸垂もできそうなぶら下がり健康器具まで多種多様。

テレビもあるこのコーナーで年配の方がマッサージをしながら談笑しのんびり過ごしているが…

温子さんは…………いない…と。

部屋に戻ろうと踵を返すと、二台のマッサージチェアがフロアには背を向けて壁に向かって設置されていることに気づく。
そのマッサージチェアを使っている人がいるのかが自分の立つ位置からは分からない。

念のため、温子さんがいないかを見に近づくと、マッサージチェアはゴウンゴウンと音を立てている…



すーすー、すーすー


そこには寝息を立てた温子さんが、マッサージチェアに揺られていた。




「温子さん?起きてください」

すー、すー

気持ちよさそうに寝ている。起こすのも可哀想か。昼飯の時間ギリギリまでは寝させてあげよう。

横にあるもう一台のマッサージチェアに座って、待つことにする。せっかくだから、僕もマッサージチェアを使うとしよう。

マッサージチェアのリモコンを手に取る。なになに、お手軽コース、極楽コースが選べる。まぁたかだか機械のマッサージだが、極楽というネーミングに心惹かれる。これにしよう。




ゴウンゴウン、ゴウンゴウン

マッサージが始まると、気持ち良さに目を閉じた。



◆◆◆◆




「…みずか……ね……」

……?誰だ…

「水川くん?ねえってば」

ん?
マッサージチェアで寝ていたはずの温子さんが僕の浴衣をくいくいと可愛らしく引っ張っている。

頭がすっきりしないなか、辺りを見渡すと先ほどまで他のお客で賑わっていたマッサージ機コーナーには誰もおらず、僕たちだけが中央に立っている。

なんだか変だな。マッサージチェアに座っていたはずだし、周囲も昼間の旅館とは思えないほど静かだ。
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