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フィーは雌なので、交尾がしたい
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フィーは2回は孕み産むことはできた。
どちらも難産で、そのあとはぱったり止まってしまっている。
それからは、交尾はするのにのめり込めないことも多く、一日の大半をぼんやり過ごしていた。
ぼーっとしていると思いきや、隙あらば飼育員の目を掻い潜って脱走する。
それを繰り返していた。
そんなつまらない日々を過ごしていた中でフィーはヴァルトに会う。
いつも機嫌が悪そうな男だと思った。
適当に話しかけると「あ?」とイラついた調子で返される。怖い顔だが、優しくないわけではなかった。フィーの適当な話も聞いてはくれるし、外に出たいといえば連れて行ってくれた。
自分は雌なのに、雌として見てないのも面白かった。普通に接してくる。必要以上に触れてこない。
最初はそれが楽で、よかったのに。
気づくと、フィーはヴァルトと会える日を楽しみにしていた。
自覚してしまった。
ヴァルトを思いながらする自慰は気持ちいいし、没頭できた。
でもそのあとは虚しさしか残らない。
ヴァルトといるときは、穏やかな時間を過ごしたいという気持ちと、めちゃくちゃに抱かれたいという気持ちが交互に現れて、どうすればいいかわからなかった。
その日だってヤりたくない日だった。どうしても気分が乗らなかったのに。
会った瞬間、すごくシたくなってしまった。
バレたら嫌われると思って耐えていたけど、雌の身体は言うことを聞かない。
前も後ろも大変なことになってしまっていて、こんなことならアナルプラグ入れておけばよかったし、コンドームでもなんでもしておけばよかったと後悔した。
嫌われる、帰ってしまう、と思った。
でも、そんなことはなかった。
いつも通りイラついている感じもしたけれど、ちゃんと交尾してくれた。他の雄が言うみたいに好きも可愛いも気持ちいいもなにも言われなかったけどそれでよかった。
そして、何回も子宮に射精してもらった。一回じゃなくて何回も。
「で、孕んだわけなのです」
「へぇ」
いつも通りとても冷たい。
お腹を大きくしているのだから、少しくらい優しくしてくれてもいいのに、いつも通りだった。
「それ、いつ産まれんだ?」
「気になっちゃいます?気になっちゃいますよねぇ?」
「ウゼー」
「あはは。いま1ヶ月なんで、もう1ヶ月くらいですかね。久々なんで、ちゃんと産めるか不安なんですけどね」
はぁ、とため息が降ってきた。
コートやら何やらを脱ぎ捨てるのでいつものようにそれを拾おうとする。
すると「いい」と声がかかった。
「皺になりますよ?」
「…………自分でやる」
すごい、譲歩してる。
笑うと、怖い顔で睨まれた。
雄の匂いが嗅ぎたくて、横になったヴァルトの側に寄った。
胸に頬擦りしていると、顎を指で擦られて口付けされて、甘いそれにくらくらした。
欲情しそう。
今日はたくさん飲んではいたのにお腹が空いてくる。
「なんだ?」
そわそわしているのに気づいたのか、ヴァルトに聞かれた。
「あのですね、僕は雌なんですよ」
「回りくどい。とっとと言え」
「フェラさせてください。精液飲ませて下さい」
ヴァルトは固まったが、すぐに薄く笑う。
やっぱり、この雄、すごく雄くさくて良い。
ヴァルトにベッドの際に座ってもらい、フィーは床のマットの上にぺたんと座り込んだ。
嫌な顔はされたが、この体勢が一番しやすい。
ヴァルトのペニスを口や指で扱いて大きくした。
じっと見下ろされて、すごく気持ちがいい。
たまに息を乱すのが、たまらなく良い。
「出すぞ」
「っ!」
掠れた声がダイレクトに来た。
口の中でちゃんと受け止めて、溢さずに飲み込んだ。
「……濃い」
「あ?」
「おいしぃ…」
「………」
「今、うわ、信じらんねぇ、とか思いましたよね?わかってるんですよ、僕は」
「うるせぇ、いつまでそこにいるんだ」
フィー困ったようにあははと笑った。
「性格悪いですね、立てないんですよ」
腿にぐりぐりと鼻を擦り付ける。
「欲しくてたまらないのに、交尾出来ないし、完全に勃起してるし、腰は抜けてるし、ずっと甘イキしてるし、散々なんですよもう。ちょっとくらい優しくしてください」
言ってしまった。全部。顔が見れない。
ややあって、髪をすかれた。気持ちが良い。
ヴァルトが、立ち上がるので、帰ってしまうのかと不安になるがへたり込んでいた自分を横抱きにしたので、そうではないらしい。
ベッドに横たわらせてくれた。
顔を触られて、口を撫でられる。甘噛みすると目を細めて見られた。
なにこれ、すごく気持ちいい。ふわふわする。
「ソレ、抜くか?」
ペニスからとろとろと精液が溢れる。
「見苦しくなければ、このままで良いです。僕、こっちでイクと、大体気ぃ失うんで」
ごつごつした手を舐めて咥えてとしてると交尾してる気分になってきた。
「どうしてほしい?」
そう聞かれる。
「口中、弄ってください。少し、強めに、お願いします」
雌の言うことを聞いてくれる雄は好きだ。
ヴァルトとの逢瀬はゆったりしていて好きだった。
他は抜いて抜かれて、即終了だけれど、ヴァルトはずっとふわふわさせてくれるので、甘えてしまう。やりたいことを聞いてくれるのもヴァルトだけだった。
相変わらず気難しい顔をしていることは多いし口数も多くないけれど、優しい。
今までは難産だったのに、今回はすんなり産まれた。
それどころか、信じられないくらいに気持ちよくて、すぐに孕みたくて産みたくなってしまう。
生まれたばかりの赤子なので誰に似ているとかは判断が難しいが。
「パパは誰でしょうねー?」
どことなく、なんとなく似ているような気がして嬉しくなってあやしながらお乳を与えた。
三日ほどしか一緒にいられないので寂しくなるが仕方がない。
そのかわり、雄にたくさん可愛がってもらうのだ。
事故のようにして交尾したので、躊躇いはしていたが、それに気づいた飼育員がヴァルトを呼んでくれた。
あんなに迷惑かけたのに、いつでも自分のことを気にかけてくれるが不思議で嬉しかった。今度ミルクもらうときサービスしてあげよう。
「元気そうじゃねぇか」
「第一声がそれですか。いや、まぁあなたに何か期待していたわけではないですけどね。むしろいつも通りで安心してます」
下半身を見るなり不躾に言ってきたヴァルトに、つい、いつも通り返してしまう。
そういえば、ヴァルトに会う時はヤりたくない時だったからいつも服を着てたっけ。そのあとも冷やさないようにガウンとか着てたし。
この人、雌の僕はじめてだ。
そう思うと、急に恥ずかしくなった。
「いやなら、服着ますよ。服って結構、擦れるので敏感になってる時は着たくないんですけどね」
「別に嫌じゃねぇ…というか、慣れた」
「慣れ」
「それで良い」
慣れてしまったかぁ、と感慨深くなるが、だめだ。慣れてしまっては。ちゃんとドキドキしてもらわないと困る。いやらしい目で見てもらわないと困る。困るのに。
「なに、お前、百面相してんだよ」
間近で見られて、止まった。アナルプラグを締め付けてしまう。
だめだ、自分、この雄に弱い。
「あの、あのですね。僕、こう仕事ですって感じの交尾しかあまりしてこなかったんですよね。だからですね、えっと」
口を塞がれた。舌を絡め取られて、気持ちよくなる。溺れる。
わけもわからずにしていると、脚を持ち上げられた。
「お前の口が無駄に回ってる時は身体の方が素直なんだよ」
アナルプラグを取られる。愛液が溢れる。
「おっしゃる、とおりですね」
押し倒される。
大丈夫だ。この雄、僕のことちゃんと雌として見てる。
「孕みたい、孕みたいよぉ……たくさん種付けしてくださいよぉ」
泣いて頼んだ覚えはあるし、それに舌打ちされたことも覚えてる。
嵌められたままで、何度もメスイキして、いつのまにか前からも漏らしていた。乳首からも母乳が出てしまって、散々だ。
「んんっん、はぁっあ…うぇ…すごぉい」
あとはもう言葉にできない。ただただ快楽に溺れて、喘ぐだけ。
もう少し雄を喜ばせてあげたいのに、子宮の口がペニスに吸い付いていて、ずっとメスイキしている。自分ばかりが気持ちよくなってしまう。ほんと、だめ。
しばらく夢現の状態が続いた。自分で何言っているかもわからない。
「………終わりだ、離せ」
ぼんやりしていたら、中がいっぱいになってることに気づく。
もしかしなくとも、トンでたみたいで、身体は大分満足しているのに、記憶が朧げ過ぎて心が満足してない。
僕のバカ。
両腕両足を巻き付けてしがみつく。
「嫌、です」
はぁ、とため息が降ってきた。そして、少し考えて腕をひとまとめに頭上で固定されて。深く口付けされる。足を肩に引っ掛けて大きく開かされて、ペニスを握られた。
「うーーーーーっっ!!!!???」
ぐりぐりと亀頭を責められる。そこ触られたらもう無理で、呆気なく射精する。
「ひ、ど」
限界を突破して、気を失った。
さらに酷いことに、湯船に入れられて隅々まで洗われた。
あってもなくても対して変わらない下着を脱がされて、アナルプラグも外されて、隅々まで。
雌の身体を洗うことが趣味みたいな雄もいるが、ヴァルトに限ってはそうではないだろう。
単に全身汚れていたから洗った以外ない。
「ひどい、交尾した形跡がない、すごくひどいです」
「目ぇ覚めたんなら、頭自分で支えろ」
髪を洗われる。
「うぅ…手慣れてませんかぁ…?」
「犬と一緒だろ」
犬と一緒にされる。
「僕ですね、行為中の、記憶がほとんどないのですが、変なこと言いませんでした?」
「……」
「そうですか、なんか言いましたか僕」
「覚えてねぇなら忘れてやる」
「優しいですね。優しいついでにもう一回しません?」
「しねぇよ」
「ですよねー…僕、身体全然動きませんもん」
泡だらけの身体をシャワーで流される。
涙も一緒に流してもらう。
タオルで隅々まで拭かれた。
「目が赤いが?」
「泡が目に染みたんですよ」
「嘘は下手くそだな」
涙が溢れる。
「僕ばかりがよくなってしまって、全然楽しめなかったでしょう?僕、ヴァルトさんに気持ちよくなってもらいたかったのに。幻滅しないでください」
「………………あ゛?」
「こわいかお、しないでくださいよ」
「……元からだ」
雑にドライヤーで髪を乾かされ、柔らかいガウンを着せてもらう。たくさんイった後なので、もう身体が満足しきっているのと、風呂の後なので感触が鈍い。このくらいであれば変に肌を刺激せずに済んだ。しかも、いつもと違って着心地が良い気がする。
ヴァルトもバスローブを着てからフィーを横抱きにした。フィーはだるい腕をヴァルトの首に巻きつける。
肩口でべそをかいた。
ベッドは情事のあとはなく、優秀な飼育員が綺麗に整えてくれたようだった。
「プラグ入れてください。いまは入ってないと落ち着かないし、すぐこう、出てしまうので」
自分で入れてもよかったが、甘えた。
若干嫌そうな顔をしながら、入れてくれる。
肩口に顔を埋める。
「落ち着いたか?」
「落ち着きましたがこのままがいいです」
「わかったから、寝ろ」
「眠いんですけどね。寝たらもったいないというか、時間の許すかぎり交尾したいというか」
「まだ言うのか、それ」
「だって」
ヴァルトは深くため息を吐く。
「“また、今度だ”」
フィーは顔をあげた。
「本当に?本当に、今度あります?」
「あぁ」
「シたい日に呼んでもきてくれます?」
「あぁ」
「呼ばなくても、来てくれます?」
「…あぁ」
身体の力が一気に抜けて、へらりと笑った。
どちらも難産で、そのあとはぱったり止まってしまっている。
それからは、交尾はするのにのめり込めないことも多く、一日の大半をぼんやり過ごしていた。
ぼーっとしていると思いきや、隙あらば飼育員の目を掻い潜って脱走する。
それを繰り返していた。
そんなつまらない日々を過ごしていた中でフィーはヴァルトに会う。
いつも機嫌が悪そうな男だと思った。
適当に話しかけると「あ?」とイラついた調子で返される。怖い顔だが、優しくないわけではなかった。フィーの適当な話も聞いてはくれるし、外に出たいといえば連れて行ってくれた。
自分は雌なのに、雌として見てないのも面白かった。普通に接してくる。必要以上に触れてこない。
最初はそれが楽で、よかったのに。
気づくと、フィーはヴァルトと会える日を楽しみにしていた。
自覚してしまった。
ヴァルトを思いながらする自慰は気持ちいいし、没頭できた。
でもそのあとは虚しさしか残らない。
ヴァルトといるときは、穏やかな時間を過ごしたいという気持ちと、めちゃくちゃに抱かれたいという気持ちが交互に現れて、どうすればいいかわからなかった。
その日だってヤりたくない日だった。どうしても気分が乗らなかったのに。
会った瞬間、すごくシたくなってしまった。
バレたら嫌われると思って耐えていたけど、雌の身体は言うことを聞かない。
前も後ろも大変なことになってしまっていて、こんなことならアナルプラグ入れておけばよかったし、コンドームでもなんでもしておけばよかったと後悔した。
嫌われる、帰ってしまう、と思った。
でも、そんなことはなかった。
いつも通りイラついている感じもしたけれど、ちゃんと交尾してくれた。他の雄が言うみたいに好きも可愛いも気持ちいいもなにも言われなかったけどそれでよかった。
そして、何回も子宮に射精してもらった。一回じゃなくて何回も。
「で、孕んだわけなのです」
「へぇ」
いつも通りとても冷たい。
お腹を大きくしているのだから、少しくらい優しくしてくれてもいいのに、いつも通りだった。
「それ、いつ産まれんだ?」
「気になっちゃいます?気になっちゃいますよねぇ?」
「ウゼー」
「あはは。いま1ヶ月なんで、もう1ヶ月くらいですかね。久々なんで、ちゃんと産めるか不安なんですけどね」
はぁ、とため息が降ってきた。
コートやら何やらを脱ぎ捨てるのでいつものようにそれを拾おうとする。
すると「いい」と声がかかった。
「皺になりますよ?」
「…………自分でやる」
すごい、譲歩してる。
笑うと、怖い顔で睨まれた。
雄の匂いが嗅ぎたくて、横になったヴァルトの側に寄った。
胸に頬擦りしていると、顎を指で擦られて口付けされて、甘いそれにくらくらした。
欲情しそう。
今日はたくさん飲んではいたのにお腹が空いてくる。
「なんだ?」
そわそわしているのに気づいたのか、ヴァルトに聞かれた。
「あのですね、僕は雌なんですよ」
「回りくどい。とっとと言え」
「フェラさせてください。精液飲ませて下さい」
ヴァルトは固まったが、すぐに薄く笑う。
やっぱり、この雄、すごく雄くさくて良い。
ヴァルトにベッドの際に座ってもらい、フィーは床のマットの上にぺたんと座り込んだ。
嫌な顔はされたが、この体勢が一番しやすい。
ヴァルトのペニスを口や指で扱いて大きくした。
じっと見下ろされて、すごく気持ちがいい。
たまに息を乱すのが、たまらなく良い。
「出すぞ」
「っ!」
掠れた声がダイレクトに来た。
口の中でちゃんと受け止めて、溢さずに飲み込んだ。
「……濃い」
「あ?」
「おいしぃ…」
「………」
「今、うわ、信じらんねぇ、とか思いましたよね?わかってるんですよ、僕は」
「うるせぇ、いつまでそこにいるんだ」
フィー困ったようにあははと笑った。
「性格悪いですね、立てないんですよ」
腿にぐりぐりと鼻を擦り付ける。
「欲しくてたまらないのに、交尾出来ないし、完全に勃起してるし、腰は抜けてるし、ずっと甘イキしてるし、散々なんですよもう。ちょっとくらい優しくしてください」
言ってしまった。全部。顔が見れない。
ややあって、髪をすかれた。気持ちが良い。
ヴァルトが、立ち上がるので、帰ってしまうのかと不安になるがへたり込んでいた自分を横抱きにしたので、そうではないらしい。
ベッドに横たわらせてくれた。
顔を触られて、口を撫でられる。甘噛みすると目を細めて見られた。
なにこれ、すごく気持ちいい。ふわふわする。
「ソレ、抜くか?」
ペニスからとろとろと精液が溢れる。
「見苦しくなければ、このままで良いです。僕、こっちでイクと、大体気ぃ失うんで」
ごつごつした手を舐めて咥えてとしてると交尾してる気分になってきた。
「どうしてほしい?」
そう聞かれる。
「口中、弄ってください。少し、強めに、お願いします」
雌の言うことを聞いてくれる雄は好きだ。
ヴァルトとの逢瀬はゆったりしていて好きだった。
他は抜いて抜かれて、即終了だけれど、ヴァルトはずっとふわふわさせてくれるので、甘えてしまう。やりたいことを聞いてくれるのもヴァルトだけだった。
相変わらず気難しい顔をしていることは多いし口数も多くないけれど、優しい。
今までは難産だったのに、今回はすんなり産まれた。
それどころか、信じられないくらいに気持ちよくて、すぐに孕みたくて産みたくなってしまう。
生まれたばかりの赤子なので誰に似ているとかは判断が難しいが。
「パパは誰でしょうねー?」
どことなく、なんとなく似ているような気がして嬉しくなってあやしながらお乳を与えた。
三日ほどしか一緒にいられないので寂しくなるが仕方がない。
そのかわり、雄にたくさん可愛がってもらうのだ。
事故のようにして交尾したので、躊躇いはしていたが、それに気づいた飼育員がヴァルトを呼んでくれた。
あんなに迷惑かけたのに、いつでも自分のことを気にかけてくれるが不思議で嬉しかった。今度ミルクもらうときサービスしてあげよう。
「元気そうじゃねぇか」
「第一声がそれですか。いや、まぁあなたに何か期待していたわけではないですけどね。むしろいつも通りで安心してます」
下半身を見るなり不躾に言ってきたヴァルトに、つい、いつも通り返してしまう。
そういえば、ヴァルトに会う時はヤりたくない時だったからいつも服を着てたっけ。そのあとも冷やさないようにガウンとか着てたし。
この人、雌の僕はじめてだ。
そう思うと、急に恥ずかしくなった。
「いやなら、服着ますよ。服って結構、擦れるので敏感になってる時は着たくないんですけどね」
「別に嫌じゃねぇ…というか、慣れた」
「慣れ」
「それで良い」
慣れてしまったかぁ、と感慨深くなるが、だめだ。慣れてしまっては。ちゃんとドキドキしてもらわないと困る。いやらしい目で見てもらわないと困る。困るのに。
「なに、お前、百面相してんだよ」
間近で見られて、止まった。アナルプラグを締め付けてしまう。
だめだ、自分、この雄に弱い。
「あの、あのですね。僕、こう仕事ですって感じの交尾しかあまりしてこなかったんですよね。だからですね、えっと」
口を塞がれた。舌を絡め取られて、気持ちよくなる。溺れる。
わけもわからずにしていると、脚を持ち上げられた。
「お前の口が無駄に回ってる時は身体の方が素直なんだよ」
アナルプラグを取られる。愛液が溢れる。
「おっしゃる、とおりですね」
押し倒される。
大丈夫だ。この雄、僕のことちゃんと雌として見てる。
「孕みたい、孕みたいよぉ……たくさん種付けしてくださいよぉ」
泣いて頼んだ覚えはあるし、それに舌打ちされたことも覚えてる。
嵌められたままで、何度もメスイキして、いつのまにか前からも漏らしていた。乳首からも母乳が出てしまって、散々だ。
「んんっん、はぁっあ…うぇ…すごぉい」
あとはもう言葉にできない。ただただ快楽に溺れて、喘ぐだけ。
もう少し雄を喜ばせてあげたいのに、子宮の口がペニスに吸い付いていて、ずっとメスイキしている。自分ばかりが気持ちよくなってしまう。ほんと、だめ。
しばらく夢現の状態が続いた。自分で何言っているかもわからない。
「………終わりだ、離せ」
ぼんやりしていたら、中がいっぱいになってることに気づく。
もしかしなくとも、トンでたみたいで、身体は大分満足しているのに、記憶が朧げ過ぎて心が満足してない。
僕のバカ。
両腕両足を巻き付けてしがみつく。
「嫌、です」
はぁ、とため息が降ってきた。そして、少し考えて腕をひとまとめに頭上で固定されて。深く口付けされる。足を肩に引っ掛けて大きく開かされて、ペニスを握られた。
「うーーーーーっっ!!!!???」
ぐりぐりと亀頭を責められる。そこ触られたらもう無理で、呆気なく射精する。
「ひ、ど」
限界を突破して、気を失った。
さらに酷いことに、湯船に入れられて隅々まで洗われた。
あってもなくても対して変わらない下着を脱がされて、アナルプラグも外されて、隅々まで。
雌の身体を洗うことが趣味みたいな雄もいるが、ヴァルトに限ってはそうではないだろう。
単に全身汚れていたから洗った以外ない。
「ひどい、交尾した形跡がない、すごくひどいです」
「目ぇ覚めたんなら、頭自分で支えろ」
髪を洗われる。
「うぅ…手慣れてませんかぁ…?」
「犬と一緒だろ」
犬と一緒にされる。
「僕ですね、行為中の、記憶がほとんどないのですが、変なこと言いませんでした?」
「……」
「そうですか、なんか言いましたか僕」
「覚えてねぇなら忘れてやる」
「優しいですね。優しいついでにもう一回しません?」
「しねぇよ」
「ですよねー…僕、身体全然動きませんもん」
泡だらけの身体をシャワーで流される。
涙も一緒に流してもらう。
タオルで隅々まで拭かれた。
「目が赤いが?」
「泡が目に染みたんですよ」
「嘘は下手くそだな」
涙が溢れる。
「僕ばかりがよくなってしまって、全然楽しめなかったでしょう?僕、ヴァルトさんに気持ちよくなってもらいたかったのに。幻滅しないでください」
「………………あ゛?」
「こわいかお、しないでくださいよ」
「……元からだ」
雑にドライヤーで髪を乾かされ、柔らかいガウンを着せてもらう。たくさんイった後なので、もう身体が満足しきっているのと、風呂の後なので感触が鈍い。このくらいであれば変に肌を刺激せずに済んだ。しかも、いつもと違って着心地が良い気がする。
ヴァルトもバスローブを着てからフィーを横抱きにした。フィーはだるい腕をヴァルトの首に巻きつける。
肩口でべそをかいた。
ベッドは情事のあとはなく、優秀な飼育員が綺麗に整えてくれたようだった。
「プラグ入れてください。いまは入ってないと落ち着かないし、すぐこう、出てしまうので」
自分で入れてもよかったが、甘えた。
若干嫌そうな顔をしながら、入れてくれる。
肩口に顔を埋める。
「落ち着いたか?」
「落ち着きましたがこのままがいいです」
「わかったから、寝ろ」
「眠いんですけどね。寝たらもったいないというか、時間の許すかぎり交尾したいというか」
「まだ言うのか、それ」
「だって」
ヴァルトは深くため息を吐く。
「“また、今度だ”」
フィーは顔をあげた。
「本当に?本当に、今度あります?」
「あぁ」
「シたい日に呼んでもきてくれます?」
「あぁ」
「呼ばなくても、来てくれます?」
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