魔族のペット(ネコちゃん)の調教記録

えい

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9.しあわせ

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その男は騎士だった。
厳格な家に生まれ、友人を作る暇もなく育ち、ただただ戦闘に明け暮れる日々。
騎士というよりは、人間の形をした兵器だった。
温情はない、感情もいらない、ただただ国の為に剣をとって敵を滅していた。
その男の、歳の離れた弟は、騎士の家に生まれたにも関わらず、剣を持たされることがなかった。
細く筋力も弱い、可憐なだけの弟はそのうち養子に出されることになっていた。
その弟に剣を教え、武術を教え、自分の持てる全てを教え込んだ。
男が思っていた通り、弟はそれらを素直に覚えて、男を敬愛した。弟にとって男は全てだった。
可憐な微笑みを浮かべながら、男に言われたとおりに敵を屠る狂戦士。それが弟だった。





その弟シィロは、今やレースがたっぷりついた濃い緑のワンピースを着て、同じ色の小さな帽子を被っている。長い髪は編み込まれて結いあげられ、薄化粧をしていた。ヒールのあるブーツを履いて日傘を差す。
しばらく手紙のやりとりしかしていなかった弟が、飼い主であるヤシャに連れられてやって来たのだ。

「いらっしゃい。“妹”ぶりに拍車がかかっていてお兄様は少し驚いたよ」
「お褒めいただきありがとうございます。お兄様も、お元気そうでなによりです!」

微笑む弟の隣には美人なネコ、和の雰囲気はあるがネコらしく背中や脚を露わにさせた服を着て下駄を履いた、シィロのお気に入りが、ちまっと立っていた。
目尻に朱を入れて、爪も紅色に塗られている。
「そして君が、ノラだね?」
「うむ。シィロにはよくしてもらっておる」
礼儀正しい子のようでお辞儀をした。
元々弟は自分に愛情を向ける相手には弱く、一度こうだと決めると突っ走るところがあるので、おそらくこのノラもシィロに気に入られてからは、まぁ大変だっただろう。
ずっと繋がれている手がそれを物語っていた。


ヤシャはソファに座り、扇を広げた。
ベルは向かいに座り、端末をネコたちに向けながら、会話をする。
「良き良き。お嬢も里帰りができて喜んでおるわ。連れて来て正解だったな。この日のため、ここ数日あーでもないこーでもないと家の中でファッションショーが開催されておってな、家臣たちが大変そうにしておったぞ。ノラは、どれでも変わらんぞ、と言って怒らせていたが」
「楽しそうでなによりよ。アンタが、ネコに大してそんなになるなんてね。お姫さまのお姫さまっぷりが板についているようだし、顔色も毛艶も良いし、悔しいけれどアンタに渡して正解だったわ。あんな巣窟に行かせるなんてと思っていたけれど」
「あんな巣窟でもうまくやっている。今はあれがウチで一番強い。いろんな意味でな。ノラもうまく守ってくれてる。お前が心配するようなことはないと思うぞ?」
「うまくやれていて、ちゃんと可愛がってもらっているなら文句はないわよ」
「目に入れても痛くないほどに可愛がっているぞ。最近あれらを連れ出すのが楽しくて仕方がない」
「変なことさせてないでしょうね?」
「オレがあれらを見せびらかせてるだけだ。周りのネコやら男やらが涎を垂らして見てくるのは、とても良き。まぁ指一本触れさせやしないがな」
「刺されてもしらないわよ?その気持ちはとてもわかるけれどほどほどにして」
シィロはノラに戯れついているのが見えて、兄であるクロトはそれをニコニコと見ている。その手はしっかり弟の尻を触っていた。
「アレはいいのね?」
「アレは、今更だろう」



「お兄様は入れちゃだめです!」
「何故?こんなに可愛いのに、入れてはいけないの?お兄様の言うこと、聞いてくれないの?」
「…あーわしを挟んで、そういうことで、喧嘩せんで、ほしいんじゃが?」
クロトとシィロに後腔を遊ばれながら、ノラは呆れた。
「ノラのここは繊細なんです!それに、お兄様に入れられてしまったらボクよりお兄様の方がよくなっちゃうかもしれないじゃないですか。そしたらボクは耐えられませんし、ノラに何をしてしまうかわかりません」
早口で一気に捲し立て、うるっとした目をするが言っていることは全く可愛くない。
仕方がないので。
「それは、ないと、思うがのぅ」
と視線を外しながら言えば、「ノラぁ」と口を塞がられ甘えて来て、露わにさせたペニスをそのまま突っ込んだ。
「すごい。弟甘やかすとこうなるんだね。少し“待て”を覚えさせた方がいいよ?」
「やぁ、ま、またんか、ばか、ぅ、あっ」
「んん、きもち、ぃよ。ノラの中気持ちいいね?お兄様ボクちゃんとできてる?」
「出来てるね。さすが俺の弟」
「うれしぃっうれし。終わったらお兄様にもしてもらおうね?お兄様にいれられちゃってもノラはボクのだもんね?」
あ、これは失敗した。簡単にひっくり返した。ノラは青褪める。
「お兄様はお上手だもの安心して?ノラのココもゆっくりしてもらえれば大丈夫だものね?ボクのお願いノラは聞いてくれるもんね?」
お願い、と言われるとほとほと弱い。今回は仕方がない。そう、シィロが兄にノアを見せることを楽しみにしていた。なので、仕方がない、と諦めるしかない。
ただ、帰ったら「待て」を覚えさせる。ノラは心に決めた。


服は汚すものであり脱がすものではある。
あれだけ完璧に装っていた姿は今や見る影もない。
大好きなお兄様に後ろから犯されながら、大好きなノラの後腔を舐める。
お兄様の精液とノラの愛液が混ざったそこは美味しいのか。夢中になっているので、ノラがもうほとんどトンでいた。
「たすけ、隠居…やしゃ、たすけて」
よほどなのか。
ノラが助けを求めるのはほんとない。それこそどれだけ痛ぶられてもなかったのだが。
よほど二匹に可愛がられたと見える。
シィロと自分だけならまだしも、ここは視線が多い。シィロにとっては家族みたいなものなのであまり気になってはいないようだが、初々しいネコたちが、顔を赤らめて遠巻きに見ていたりもするので、耐えられないのだろう。
伸ばされた手を掴んでやり、引き上げる。
股が誰のものかもわからないもので濡らされた。
「満腹なようだな」
「もう、いらぬ…シィロが、ふたりいるようじゃ、よりタチが、悪い」
一つ一つ良いところを丁寧に探られて、良ければ良いと言わないと余計ひどくされた。良いと言ってもひどくされた。何をしても攻められる。シィロも喜んで別のところを攻める。終わりがない。
中だけでずっとイかされる。保たない、

「ご隠居さま、ノラを取らないで…ノラ返して?」
「お嬢、これはオレのモノでもあるだろう?お前は兄弟水入らずで“世間話”でもしてると良い。しばらくはまた会えぬのだからゆっくりな」

シィロは口を尖らせるが、わかったと頷く。兄の方も身体を反転させて、本格的に攻め始めた。
それを見届けて、ノラを抱えたままソファに座る。ノラはまだ身体をひくひくと震わせて、ヤシャの胸にしなだれる。

「不感症には見えないわよ?」
「お嬢に対してはな。お嬢がいれば感じるし、勃つは勃つ。時間をかけてな」
「気持ちの問題かしらね。それかよほど肌が合うか…あとはテクニックかしら。あの子たち努力家で完璧主義だもの。まぁでも前は勃たなくても後ろはちゃんと良さそうじゃない」
ヤシャが腫れぼったくなって捲れたところを弄ると、ノアがいやいやと手を抑える。
「これもお嬢が根気よく慣らした。元々は中ですら感じるほうではなかったがな。小さいからなかなか入らんし」
「精神的な起因だと治すのは荒療治ね。そのままでもいいんじゃない?アンタとシィロはそれほど困ってないでしょ?よほど、あの子たちみたいに、前でも遊びたいというなら別だけど」
ノアが慌てて声をあげる。
「い、いらぬ!あれには、なりとうない」
「だそうだ」
「そうね。シィロの手紙に治せないかってあったから見てあげただけよ。気にしないで」
ノラが複雑な顔をして、ヤシャの指を甘噛みした。ヤシャに甘えるのは苦手だが、構っては欲しい時にこうなる。大体、それはシィロに構われ倒されて疲れ切っているときなので身体は触られたくないようだ。
そして大体噛みながら寝る。
「アンタその子もちゃんと気に入ってるのね。シィロのオマケかと思ったわよ」
「心外だな。二匹ともオレなりに可愛がってはいる」
「そう。ならいいわ」
ベルは眠り始めたノアに端末を向けた。





クロトにもシィロにも、今更語り合う思い出はなかった。
ただの人間であった頃は毎日が戦のためのもの。最初は教師と生徒の関係から始まり、次は上司と部下だ。戦いと争いの中でしかお互いを知らない。
クロトはここで初めて戦以外のことを知った。傷つけず、傷付かずにいられることを知った。
シィロはここで初めて兄に、剣以外で触れ合うことができた。兄以外のヒトと関わることを知った。
ここではほとんどセックスしかしていない。
だから、話せることはあまりない。
クロトは尋ねる。
「今はしあわせ?」
シィロは答える。
「はい、とてもしあわせです」
それならいい。クロトはシィロの頭を撫でた。
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感想 1

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みんなの感想(1件)

くぅ
2021.09.04 くぅ

ノラめっちゃ可愛い❣
このままどんどん開発されていってほしいですね(*^^*)
とってもおもしろかったです。

2021.09.06 えい

感想ありがとうございます!
とてもうれしいです😭
ノラもこの先ずっとみんなに可愛がられることでしょう……!

解除

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