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水曜日は授業も早く終わり、例の女の子と約束してた和カフェに行くことになった。
女の子は普段よりほんの少しメイクと服装に気を遣っている気がしたが瀧はそこには触れないでいた。
おしゃれに賑わう街中の少し外れた場所にそのカフェは有り、女子の話題になるだけあって店の前にも何人かの列が出来ていた。
瀧は楽しそうに女の子と雑談しながら席が開くのを待っていて気づかなかったが、そこに偶然ヒューが通りがかった。ヒューも美しい女性を連れている。
ヒューは午後から休みを貰い、金曜日の送別会で主役に渡すプレゼントを選びに来ていた。わざわざ自分が買い出し役を買ったのは、そのついでに──と、いうか本当は買い物がついでなのだが──同僚の女性たちから評価の高い和のスイーツを扱うカフェに足を運ぼうと思っていたからだ。
連れの女性はモデルで以前仕事の撮影で意気投合し連絡先を交換した仲だ。とても流行に詳しいタイプの気の利く女性で、仕事仲間や友達にプレゼントを送る時や食事に行く際に良いアドバイスをくれるので助かっている。今日も一緒にプレゼントを選んでもらう予定で(そのあと勿論、連れの彼女へのお礼の贈り物も探す予定だ)、その前にヒューの目的のカフェでお茶をすることになった。
ヒューはしばらく瀧を眺めていたが、女性の肩を掴むと違う場所でお茶をしようと店に背を向けた。
声を掛ける余裕がヒューにはなかったのだ。瀧の様子からして連れの女の子は単なる友達だろうと頭ではわかっていても、瀧を目の前にした時、自分が迂闊にも彼を傷つける態度を取ってしまうことを恐れた。
ヒューが踵を返したタイミングで瀧の連れている女の子がヒューに気づいて瀧に耳打ちした。
「ねえねえ、見て、すっごい格好いい外国人がいる」
瀧は言葉に釣られそちらを向いた。ちょうど背を向けるヒューの横顔がちらりと掠める。
隣にはヒューの横にいることがとても嬉しいと言わんばかりの笑顔の美人の女性を連れて。
なんだか怒りとは違うがぐっと胸を押し上げるような重苦しく強い感情が瀧の心に押し寄せた。
女の子は普段よりほんの少しメイクと服装に気を遣っている気がしたが瀧はそこには触れないでいた。
おしゃれに賑わう街中の少し外れた場所にそのカフェは有り、女子の話題になるだけあって店の前にも何人かの列が出来ていた。
瀧は楽しそうに女の子と雑談しながら席が開くのを待っていて気づかなかったが、そこに偶然ヒューが通りがかった。ヒューも美しい女性を連れている。
ヒューは午後から休みを貰い、金曜日の送別会で主役に渡すプレゼントを選びに来ていた。わざわざ自分が買い出し役を買ったのは、そのついでに──と、いうか本当は買い物がついでなのだが──同僚の女性たちから評価の高い和のスイーツを扱うカフェに足を運ぼうと思っていたからだ。
連れの女性はモデルで以前仕事の撮影で意気投合し連絡先を交換した仲だ。とても流行に詳しいタイプの気の利く女性で、仕事仲間や友達にプレゼントを送る時や食事に行く際に良いアドバイスをくれるので助かっている。今日も一緒にプレゼントを選んでもらう予定で(そのあと勿論、連れの彼女へのお礼の贈り物も探す予定だ)、その前にヒューの目的のカフェでお茶をすることになった。
ヒューはしばらく瀧を眺めていたが、女性の肩を掴むと違う場所でお茶をしようと店に背を向けた。
声を掛ける余裕がヒューにはなかったのだ。瀧の様子からして連れの女の子は単なる友達だろうと頭ではわかっていても、瀧を目の前にした時、自分が迂闊にも彼を傷つける態度を取ってしまうことを恐れた。
ヒューが踵を返したタイミングで瀧の連れている女の子がヒューに気づいて瀧に耳打ちした。
「ねえねえ、見て、すっごい格好いい外国人がいる」
瀧は言葉に釣られそちらを向いた。ちょうど背を向けるヒューの横顔がちらりと掠める。
隣にはヒューの横にいることがとても嬉しいと言わんばかりの笑顔の美人の女性を連れて。
なんだか怒りとは違うがぐっと胸を押し上げるような重苦しく強い感情が瀧の心に押し寄せた。
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