欠陥だらけの完全無欠〜パーティ追放された二人が組んだら、最強のコンビになりました〜

侍兵士

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09 嫌なやつと再会した

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「ほんっっっっっ…………と疲れたんだけど………」
「あたしも…明日絶対全身筋肉痛だわ、いたた……」

 アンスラ退治に明け暮れた後、私たちはクエスト完了の報告をするべく、ギルドへ向かっていた。
 夕食時ということもあって、街中ではさまざまな食べ物屋台が立ち並んでおり、昼間に勝るとも劣らない活気を魅せている。

「ああいうの見るとお腹空いてくるわね……めっちゃ美味しそうなんだけど」
「我慢だよ、少しずつ節約していかなきゃ」

 再三言っているが、冒険に出るにはどうしても大量の金が必要になってくる。
 職に合った装備を買わなくてはならないし、万が一の時のための解毒薬などの薬も揃えておかねばならない。
 冒険者が「世界一金を使う職業」と呼ばれるが所以だ。

 グゥ~……と、ミラのお腹の虫が鳴いてる音が耳に入る。

「あかん、お腹めっちゃなってる……もう明日クエストする気力沸いてこないわ……」
「いずれAランクになれば、あんなのガッツガツ食べられるようになるよ」
「ほんと!? なら明日も死ぬ気で頑張らなきゃね! 残業バンザイよ!」

 食べ物の話になると、ミラは途端に元気になる傾向がある。お子様だなぁ、とは思いつつも、微笑ましいのであえて何も言わない。

「さ、そうと決まれば早く行きましょ! 明日に備えて早く報告終わらせて休まなきゃ!」
「もー、走るとまた人にぶつか……………ッ!?」

 私はそこで、言葉を詰まらせた。
 前方から、私の見知った人物が歩いてくるのが見えた。しかし、旧知の仲とか、生き別れの家族とか、そんなハートフルなものじゃあない。
 それは、私にとってもう二度と会いたくない人物だった。

(ロベリア………ッ!まだこの街にいたのか……!)

 ロベリアは、私が 《レゾナンス》を作る前に加入していたパーティ……つまり、カンパニュラのパーティに所属していた私の元・仲間だ。
 超一流の獣使いで、かつ精神に干渉する魔法や変身魔法などのトリッキーな魔法の使い手でもある。
 カンパニュラの信頼も厚かったし、とても美人で男の人達からも好かれている。現に、今もパーティメンバーとは別に3人、取り巻きの男を引き連れて歩いていた。

 しかし、私は彼女のことが好きじゃない。というか、死ぬほど嫌いだ。いつも、カンパニュラが見ていないところで私に嫌がらせをしたり、執拗に蹴ったり殴ったりしてきたのは忘れられない。
 トラウマにさえ、なっているほどだ。彼女の顔を見るたびに、胃の中から酸っぱいものが込み上げてくるのを感じる。

「ラズカ? なにして……」
「ご、ごめん、す、す、少し、し、静かにしてて……」

 できれば関わりたくない、というか、もう話したくない。
 頼む。そのまま通り過ぎて。お願いだから。
 10m、5m、3m。
 普通、周りの活気溢れる音で掻き消されるはずの靴の音が、やけに鮮明に耳に入る。
 距離が近くなるたびに、心臓の音がひとまわり、ふたまわりと早くなっていくのを感じる。

「ッ………」

 目を、伏せる。こんなことしたら余計気づかれるかもしれないけど、臆病な本能が、万に一つでも彼女と顔が合うかもしれないという可能性を拒絶してしまっているようにも思えた。

 気づくな気づくな気づくな気づくな気づくな気づくな気づくな――――!!

 そして、ロベリアと私たちの間を隔てている距離が限りなく0に近くなり、あと一歩ですれ違う、という状況になった。
 位置でいえば隣に来ている状態になり、一瞬で終わるはずのその時間が何倍にも引き伸ばされているようにも感じた。



 次の瞬間、耳に再び、辺りの喧騒が際立って聞こえるようになった。
 恐ろしくゆっくりと流れているように感じた時間も、普通のスピードを取り戻していた。


(…………やっ、たの………?)

 通り、すぎた。ロベリアに気づかれることなく、私はこの時間をやり過ごせたのだ。

「ねぇ、ラズカ?」
「あっ……ご、ごめんね! さ、行こうか」

 とにかく、これでもう会うことは無いだろう。
 きっと今のも、そろそろ旅立つ準備のために徘徊していた、とかそんな理由で、もう間もなく彼女らはこの街から出て行くことだろう。
 もう私はロベリアやカンパニュラに縛られることなく、ミラと共にゆっくりと冒険の準備をできるんだ。

 勝ち取った。ロベリアにとっては蝿が飛んでいるぐらいの認識だったかもしれないが、私はたしかに今、一つの戦いに勝利したのだ。



「おォい………ラァズカちゃ~~~ん?」



 背筋が、石化したように固まる。
 背後から、ねっとりと私を呼ぶような声が聞こえた。まるで首筋を舐められるかのように、体中を一筋の電撃が伝っていくのを感じる。

 嫌だ、振り返りたくない、振り向くな、私、振り向くな、ラズカ――!!

 そう心で拒絶するも、首がギギギ、と強制的に後ろを振り向かせる。
 それはまるで、自分自身の過去と向き合え、と、そう言ってるようで。
 到底抗えない強制力を以ってして、私の理性を踏み躙り、視線を後方へと引っ張っていく。

 待て、絶望するのはまだ早い。もしかしたら、声をかけたのは私の知り合いというだけであって、ロベリアではないかもしれない。
 そうだ、違いない。あのロベリアが、私にすすんで声をかけるなんてあり得ないのだから。きっとそうだ。頼む、そうであってくれ。

 私の心を埋め尽くす一筋の、あまりにも細すぎるその希望の糸は――。


「なぁにスルーしてんだよ……大事な元・仲間との再会をさぁ……?」


 彼女の憎たらしいにやけ顔を見た瞬間、完全に切って断たれてしまった。
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