欠陥だらけの完全無欠〜パーティ追放された二人が組んだら、最強のコンビになりました〜

侍兵士

文字の大きさ
14 / 21

13 『諦めない』と誓った

しおりを挟む
 その後時間がまだあったので、簡単なクエストを2、3個受けて、その日の活動は終わりを迎えた。
 アザミは、宿と別に泊まるあてがあると言っていたので、ギルド支部で一旦別れ、また次の日に落ち合うことになった。

 そして今、私たちはいつも宿泊している宿に来ていた。
 店主のおじさんからはすっかりお得意様扱いされているようで、もう既に名前まで覚えてくれている。

「ふぅ~、さっぱりした~、疲れた時は風呂よねやっぱ」
「そうだね、疲れが吹っ飛ぶよ……ふぁ、眠くなってきた……」

 現在、私たちはお風呂に入ってから、部屋にあるベッドの上でくつろいでいた。
 お金を節約しなきゃならないし、ミラがあまり散らかし過ぎたら宿の人に迷惑なので、昨日から2人とも同じ部屋で寝ることにしている。

「じゃあ今日はもう遅いし寝ようか、また明日頑張ろうね」
「うんそうね、おやすみ」

 それだけ言うと、私はランプを消して布団を被り、すぐさま寝る準備に入る。
 それと同時に、ミラも私の布団に入り……………はい?

「み、ミラ? 何してんの?」
「ねぇ、今日は一緒の布団で寝ましょうよ」
「ぇえっ!?」

 いやいや、いきなり過ぎるでしょ。
 さっきも言ったとおり、私たちは『同じ部屋で寝る』だけであって、『同じ布団で寝る』と決めたわけではない。

「いいじゃん女の子同士なんだし、そんなに意識しなくても」
「ま、まぁ、そりゃ、そうだけど……」

 それでも、家族でもないのに同じ布団で寝るというのは、なんだか気恥ずかしい。

「とにかく、今日は一緒に寝るの! はい決定! 異論は無し!」
「ご、強引すぎる……」

 我を押し通す能力に関して、果たしてこの子の右に出るものが存在するんだろうか。そう思えてしまうほどに、ミラは押しが強い。
 ……こうなってしまっては、多分聞く耳を持ってくれないだろう。

「……はぁ、わかったよ」
「えへへ、お邪魔しまーす」

 ミラはそういうと、私の布団の中にもぞもぞと体を埋める。密着と言って差し支えないほどに、ミラと私の距離が詰められた。

「ちょ、ちょっと近すぎない?」
「ふふふ、《共鳴レゾナンス》魔法使えちゃうわねこれ」
「いやそういうことじゃなくて……」

 私がアタフタしているのを見るのが楽しいのか、ミラは私の様子を見てクスリと笑みを零している。
 近くでみると、余計にその顔が可愛らしく思えてくる、ていうか匂いが………って何考えてんの私、余計なことを考えるな!

「ふふ、この前は私がアタフタさせられたからね、仕返しよ」
「あ、あれは悪気がなくて、その………」
「………ラズカ、1ついい?」

 突如、さっきまでのからかいの表情を潜めて、神妙な面持ちで私を見据えてきた。

「何か、悩んでるの?」
「っ……!?」
「昨日ロベリアとかいうやつに絡まれた時もそうだったけど、今日も何だか様子がおかしいわ……何かあったなら、あたしに話してみて?」

 ……ミラ、見ていないようで、他人のことをよく見ているんだな……正直、感心した。

「……よく、気づいたね」
「心の中を透かしあった仲だもん、それぐらい分かるわ」
「今は《共鳴レゾナンス》使ってないよ?」
「それでも、なんとなくわかるの」

 ――この子には、敵わないかもしれないなぁ。
 私は《共鳴レゾナンス》に頼らなきゃ、この子の気持ちを推し量ることなんて出来そうにない。
 ミラになら、話してもいいかもしれない……ミラなら、私の欲しい言葉をくれるかもしれない。
 甘え過ぎは良くないって心の中ではわかってるけど、その時の私は少しだけ、誰かに甘えたくなってしまっていた。

「……ロベリアが言ってたでしょ? 『偉大な魔法使いの子孫の癖にお前は魔法の1つも使えない』って」
「あぁ、そんなこと確か言ってたわね、ラズカの先祖って、そんな凄い人だったの?」

「…………《冒賢者ワイズマン》」
「っ!?」
「私のひいおじいちゃんは、《冒賢者ワイズマン》の1人だったんだ」

 
 4人の《冒賢者ワイズマン》の一柱、クロウリー・ハート。
 歴史上最強最大の魔法使いにして――私の曽祖父に当たる人だ。

「クロウリー……ひいおじいちゃんは伝承にも載ってるほど凄い魔法使いで、『完全なる魔法使い』って呼ばれるほどの人だったんだ……当然私も、その家系に生まれたからには、『完璧』を期待される……でも、現実は違う」

 いくら魔法の知識を持っていても、私にはそれを行使できる『力』が無い。
 故に、『完璧』だなんてほど遠い、文字通りの『欠陥品』。
 
「それに、時々思うの……私が『叡智の塔』に執着してるのも、もしかしたら《冒賢者ワイズマン》の血がそうさせてるのかもって……」
「…………」
「私自身の意思じゃなく、この体に流れる血が……本能的にそれを求めてるんだとしたら……」

 所詮私は、《冒賢者ワイズマン》から魔力を引いて、無謀な野望だけ残した、単なる抜け殻なんじゃないか。
 そう思うと、自分という存在がどこまでも価値の無いように思えてきて………。

「だからロベリアの言うことは、案外……むぎゅ」

 話してる途中、突然ミラが、右手の親指と中指を使って私の頬を掴んできた。

「にゃにしゅるの……」
「あんた、誰よ」
「ふぇ?」
「いいから、あんたの名前言ってみなさいよ、ほら、ほっぺ離してあげるから」

 ……散々言ってきてるし、この子も知ってると思うんだけど……。

「ラズカだよ、知ってるでしょ?」
「うん、知ってる……ていうか、分かってるじゃない」
「???」

 ミラの言ってることが、分からない。そりゃ、自分の名前は知ってるに決まってるじゃん。
 ミラは優しく微笑んで、諭すように言った。

「そうよ、あんたはラズカ……髪を梳くのが上手くて、几帳面で、お人好しで、あとちょっと本オタク入ってる……他の誰でもない、ラズカ・ハートじゃない」
「………っ!」
「クロウリー? だかなんだか知らないけど、あんたは《冒賢者ワイズマン》でも何でも無いんだから、あんたには関係ないじゃない……それに、あんた、冒険嫌いなの?」
「そっ、そんなわけ……」

 そんなわけ、ない。
 世界中の冒険は、あの本を読んだ時からずっと、私の持っている一番の夢で……!

「ほら、それが答えよ、血筋なんてどうでもいい、『叡智の塔』を目指すっていうことは、あんた自身が選んだ立派な夢なんだから」
「っ………!」
「分かんないなら何度でも言ってあげるけどね……あたしはラズカの夢をすごいって思ってるし、ラズカが夢を叶えるところを見たいって思ってる」

 じわり、と、目頭が熱くなる。
 この子以外に、私の夢を肯定してくれる人なんて居なかった。見果てぬ夢を見るぐらいなら、少しでもひいおじいちゃんに近づいてみろって、みんなそんなことばかり言っていた。
 でも、この子は違う。私の夢を、立派だと言ってくれている。私の夢を、本気で応援してくれている。

「だから、夢を諦めないで……どうしても不安なら、あたしが支えてあげるから」

 果たして、ここまで嬉しいことはあるだろうか。

「……ミラっ……!」
「わっぷ……ふふ、まるで子供ね」
「ありがとぅっ……! ミラ、あり、がとう……!! 大好き……! 大好き……!」
「よしよし、いい子いい子……なんつって」

 年甲斐もなく、恥も捨てて。
 ただ、この時だけは、私と夢を共に見てくれると言ってくれたこの子のことを、力いっぱい抱きしめたかった。

「ラズカ……あたし、あんたが『完璧』じゃなくて良かったって思うよ……だってあんたが『完璧』だったら、あたしたち今頃こうやって出会えてないもの」
「うんっ……うんっ……!」
「人間は完璧じゃない、だからこそ寄り添って、分かち合って、助け合って、完璧以上に――無限大になれるんだよ」
「うんっ……!」
「完璧なんて、超えてやりましょう……あたしたちが手を繋げば、《冒賢者ワイズマン》にだって、きっと負けやしないわ」

 この子は、私が今欲しい言葉を。
 私以上に理解していて。
 私が期待してるより遥かに大きな形で返してくれる。
 私が思ってるよりずっとずっと――この子は、途方も無く素敵な人間だ。

「ミラっ……私にも、何か言ってね……!」
「何かって?」
「ミラの願い……もしミラが叶えたい願いがあるならっ、私が全力で協力するから……あなたのこと、助けてみせるから……!」

 だから、せめてこの子の隣に居られるように。
 この子のために尽くしたいって、心の底から思ってしまう。

「…………そっ、か……」

 ミラは少し暗げな声で顔を伏せたかと思うと――すぐに顔を上げ、ニッコリと笑ってみせた。

「その時には、がっつり手伝って貰うから」
「うんっ、もちろんっ、もちろんだよ!!」

 何度も、何度も、ミラを抱きしめたままに肯定する。
 この子から離れたくないから、この子の願いを叶えたいから。
 ミラのためなら何だって出来る、そう心に誓うことが出来る。

 そして、もう一つ誓える。
 私はもう、自分の夢を恥じない。
 誰よりも私を応援してくれる、私を信じてくれているミラがいる限り。

 私はもう、絶対に夢を諦めない。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

Sランクパーティーを追放された鑑定士の俺、実は『神の眼』を持ってました〜最神神獣と最強になったので、今さら戻ってこいと言われてももう遅い〜

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティーで地味な【鑑定】スキルを使い、仲間を支えてきたカイン。しかしある日、リーダーの勇者から「お前はもういらない」と理不尽に追放されてしまう。 絶望の淵で流れ着いた辺境の街。そこで偶然発見した古代ダンジョンが、彼の運命を変える。絶体絶命の危機に陥ったその時、彼のスキルは万物を見通す【神の眼】へと覚醒。さらに、ダンジョンの奥で伝説のもふもふ神獣「フェン」と出会い、最強の相棒を得る。 一方、カインを失った元パーティーは鑑定ミスを連発し、崩壊の一途を辿っていた。「今さら戻ってこい」と懇願されても、もう遅い。 無能と蔑まれた鑑定士の、痛快な成り上がり冒険譚が今、始まる!

処理中です...