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14 裏切りがもたらす痛み
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『おい……目を覚ましたぞ!』
『成功したんだ……《異界召喚》が! やったぞ!』
目が覚めたら、あたしは知らないところにいた。
無機質で真っ白な部屋、ローブを着た数人の男たちに囲まれ、あたしは拘束されるような形でベッドに寝かされていた。
『これほどの魔力・適正を持つ女だ……あの世界に置いておくには惜しすぎる』
『喜べ、お前には我々の駒として役に立ってもらうぞ』
最初、この男たちが何を言ってるのか理解できなかった。しかし、そこでしばらく居るうちに、少しずつ分かってきたことがある。
ここは、あたしの住んでた日本じゃなくて。
あたしは寝ている間に拉致監禁されて。
今から、良くないことに利用されるのだと。
『………何故だッ……!?』
男のうち1人が、ギリッと歯を噛み締めながら、机をドンッ、と力任せに叩く。
『この女、これほどの適正と魔力がありながら、何故一向に魔法が使えないッ!?』
『……脳回路の作りが根本的に我々と違う、この形は術式を組み立てるのに適していない』
『魔法を用いず別の技術により発展してきた種族だ……当然と言えば当然のことか』
拘束されてるあたしを睨みつけながら、男たちが何やら議論を交わしている。
なんでそんな目で見てくるの? あたし、何か悪いことした?
『これでは使い物にならんな……かといって元の世界への戻し方は分からん……』
『捨てればいいさ、何、また新しい方法を見つければいいだけのこと……』
捨てる? 捨てるって何よ、あたしはゴミじゃないんだけど!!
『用済みだ、消えろ』
あたしは髪を掴まれ、外に放り出された――――。
「――――っはぁっ! はぁっ、はぁっ……」
ガバッ、と勢いよく起き上がる。
体中から嫌な汗が吹き出ており、動悸もまるで風邪を引いてる時のように速い。
あたりを見回すが、僅かな月明かりで照らされているだけで、ほとんど何も見えない。
「…………夢か…………」
ぶるり、と、体が震える。
さっきの夢は、半年前、この世界に来た初日の記憶だった。
あの時の恐怖と来たら、思い出そうとすると吐き出しそうになるほどだった。
「…………?」
ふと、右手に違和感を感じて、そちらへ目を向ける。
あたしの右手を掴んでいる右手が見える。その主は――すぅ、すぅ、と安らかな寝息を立てて、幸せそうに眠っている。
「……ラズカ……」
その名を呼んでみても、起きる気配は無い。相当ぐっすり眠っているようだ。
そしてその目元には、さっき泣き腫らしたからだろう、涙の跡が残っている。
この子は、どうも色々と考えすぎる節がある。だからそれを諭してあげただけなんだけど、まさか泣いちゃうとは思わなかった。
全く、この子、あたしが居なくなったらどうなるんだか――――。
『ミラの願い……もしミラが叶えたい願いがあるならっ、私が全力で協力するから……あなたのこと、助けてみせるから……!』
「………っ」
ズキン、と、あたしの胸に疼くような痛みが走る。
あたしの叶えたい願い。それは元の世界へと戻って、妹と再会するということ。
そして、それを実現するためには、ラズカの目指す目標――『叡智の塔』の存在が、必要不可欠となる。
塔の最上階に辿り着けば、神さまに願いを叶えてもらえる……それを使えばきっと、元の世界へと戻れることだろう。
つまりそれは、本来ラズカの叶えるべき願いを横取りしてしまうということに繋がってしまう。
あたしのやろうとしていることは、どこまでも純粋なこの子の願いを踏みにじる行為だ。
「…………っ」
考えるほどにズキン、ズキンと、胸の痛みはより一層と増していく。
妹のことは、勿論大切だ。何よりも優先すべき事項と言っていい……はず、だった。
でも同時に、この数日過ごしていくうちに、この子のことを『放っておけない』と感じることが多くなってきた。
ラズカは、はっきり言って弱い。実力とかそういうのじゃなくて、心というか、そういう精神的な面がとても脆い。
もし、あたしの本当の目的を知ってしまった時……果たしてこの子は、正気を保っていられるんだろうか?
あたしがこの『裏切り』とも言える野望を終えて、そのまま何も言わずに元の世界へ帰ったとして――その後彼女は、生きることを諦めずにいられるんだろうか?
パチン、と、自身の頰を両手で強く叩く。
――余計なことは考えるな、五味 美良。
あたしはただ、日本へ帰るということだけ考えてればいいんだ。妹が、寂しがってるんだぞ。
世界さえ超えてしまえば、もうラズカと会うことはない。罪悪感なんて、感じる必要もないんだ。
あたしはもう一度、もぞりと布団の中に潜る。
横目にラズカの顔を見て、もう一度決意する。
ラズカ、あたしは絶対に、元の世界へ帰る。
あんたが泣いたって、怒ったって知らない。たとえあんたを裏切ることになったとしても、必ず妹の元へと帰ってみせる。
そのために、あんたの夢を利用させてもらうから。文句も、異論も言わせない。
心の中で勝手にそう呟いて、私は再びまどろみに身をまかせる。
言いたいことは、全て心の中で言った。そのはずなのに、胸を疼かせる痛みは、一切消えることはなかった。
『成功したんだ……《異界召喚》が! やったぞ!』
目が覚めたら、あたしは知らないところにいた。
無機質で真っ白な部屋、ローブを着た数人の男たちに囲まれ、あたしは拘束されるような形でベッドに寝かされていた。
『これほどの魔力・適正を持つ女だ……あの世界に置いておくには惜しすぎる』
『喜べ、お前には我々の駒として役に立ってもらうぞ』
最初、この男たちが何を言ってるのか理解できなかった。しかし、そこでしばらく居るうちに、少しずつ分かってきたことがある。
ここは、あたしの住んでた日本じゃなくて。
あたしは寝ている間に拉致監禁されて。
今から、良くないことに利用されるのだと。
『………何故だッ……!?』
男のうち1人が、ギリッと歯を噛み締めながら、机をドンッ、と力任せに叩く。
『この女、これほどの適正と魔力がありながら、何故一向に魔法が使えないッ!?』
『……脳回路の作りが根本的に我々と違う、この形は術式を組み立てるのに適していない』
『魔法を用いず別の技術により発展してきた種族だ……当然と言えば当然のことか』
拘束されてるあたしを睨みつけながら、男たちが何やら議論を交わしている。
なんでそんな目で見てくるの? あたし、何か悪いことした?
『これでは使い物にならんな……かといって元の世界への戻し方は分からん……』
『捨てればいいさ、何、また新しい方法を見つければいいだけのこと……』
捨てる? 捨てるって何よ、あたしはゴミじゃないんだけど!!
『用済みだ、消えろ』
あたしは髪を掴まれ、外に放り出された――――。
「――――っはぁっ! はぁっ、はぁっ……」
ガバッ、と勢いよく起き上がる。
体中から嫌な汗が吹き出ており、動悸もまるで風邪を引いてる時のように速い。
あたりを見回すが、僅かな月明かりで照らされているだけで、ほとんど何も見えない。
「…………夢か…………」
ぶるり、と、体が震える。
さっきの夢は、半年前、この世界に来た初日の記憶だった。
あの時の恐怖と来たら、思い出そうとすると吐き出しそうになるほどだった。
「…………?」
ふと、右手に違和感を感じて、そちらへ目を向ける。
あたしの右手を掴んでいる右手が見える。その主は――すぅ、すぅ、と安らかな寝息を立てて、幸せそうに眠っている。
「……ラズカ……」
その名を呼んでみても、起きる気配は無い。相当ぐっすり眠っているようだ。
そしてその目元には、さっき泣き腫らしたからだろう、涙の跡が残っている。
この子は、どうも色々と考えすぎる節がある。だからそれを諭してあげただけなんだけど、まさか泣いちゃうとは思わなかった。
全く、この子、あたしが居なくなったらどうなるんだか――――。
『ミラの願い……もしミラが叶えたい願いがあるならっ、私が全力で協力するから……あなたのこと、助けてみせるから……!』
「………っ」
ズキン、と、あたしの胸に疼くような痛みが走る。
あたしの叶えたい願い。それは元の世界へと戻って、妹と再会するということ。
そして、それを実現するためには、ラズカの目指す目標――『叡智の塔』の存在が、必要不可欠となる。
塔の最上階に辿り着けば、神さまに願いを叶えてもらえる……それを使えばきっと、元の世界へと戻れることだろう。
つまりそれは、本来ラズカの叶えるべき願いを横取りしてしまうということに繋がってしまう。
あたしのやろうとしていることは、どこまでも純粋なこの子の願いを踏みにじる行為だ。
「…………っ」
考えるほどにズキン、ズキンと、胸の痛みはより一層と増していく。
妹のことは、勿論大切だ。何よりも優先すべき事項と言っていい……はず、だった。
でも同時に、この数日過ごしていくうちに、この子のことを『放っておけない』と感じることが多くなってきた。
ラズカは、はっきり言って弱い。実力とかそういうのじゃなくて、心というか、そういう精神的な面がとても脆い。
もし、あたしの本当の目的を知ってしまった時……果たしてこの子は、正気を保っていられるんだろうか?
あたしがこの『裏切り』とも言える野望を終えて、そのまま何も言わずに元の世界へ帰ったとして――その後彼女は、生きることを諦めずにいられるんだろうか?
パチン、と、自身の頰を両手で強く叩く。
――余計なことは考えるな、五味 美良。
あたしはただ、日本へ帰るということだけ考えてればいいんだ。妹が、寂しがってるんだぞ。
世界さえ超えてしまえば、もうラズカと会うことはない。罪悪感なんて、感じる必要もないんだ。
あたしはもう一度、もぞりと布団の中に潜る。
横目にラズカの顔を見て、もう一度決意する。
ラズカ、あたしは絶対に、元の世界へ帰る。
あんたが泣いたって、怒ったって知らない。たとえあんたを裏切ることになったとしても、必ず妹の元へと帰ってみせる。
そのために、あんたの夢を利用させてもらうから。文句も、異論も言わせない。
心の中で勝手にそう呟いて、私は再びまどろみに身をまかせる。
言いたいことは、全て心の中で言った。そのはずなのに、胸を疼かせる痛みは、一切消えることはなかった。
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