欠陥だらけの完全無欠〜パーティ追放された二人が組んだら、最強のコンビになりました〜

侍兵士

文字の大きさ
16 / 21

15 ただ怒りのままに

しおりを挟む
 ――《レゾナンス》結成から、1週間が経過した。

 あたしたちはこの1週間、恐らく10個以上はクエストをクリアしたんじゃないだろうか。
 うっかり石に躓いたアザミが死にかけたり、倒し漏らしたスライムに絡みつかれたアザミが死にかけたり、魔法の余波に当たったアザミが死にかけたりと様々な災難があったが、大体順調にこなすことができた。

 そして今日、ついに――、


「2人とも! あと1個クエストクリアすればついに……」

「「ついに………」」

「Dランクに到達します!」

「「いえぇぇえぇぇええい!!!」」

「声が大きいッ、謹んで!!」

「「いえーい……」」

 歓喜の声をあげるあたしとアザミを、ラズカが強めの語気で叱りつける。
 ここはギルド内だから、一応静かにしなきゃっていうのは分かってるんだけど……それでも、嬉しさを抑えられなかった。

「というわけで今日頑張れば活動範囲が少し広がります! しまっていきましょう!」

「よーし! 今日も頑張って……」

 張り切りの声を張り上げようとした、そのときだった。
 チリン、チリンとベルが鳴り、受付のお姉さんが何かを叫んでいるのが見えた。

「すみませーん! 《レゾナンス》所属のアザミ・コ・フィンさーん! いらっしゃったら受付までお越し願いまーす!」

「わたし~~? ごめんね2人とも、少し待ってて~」

 お姉さんに呼ばれたアザミは少し急ぎ足で、とことこと受付の方へ駆けていった。
 粗相をやらかしたりしたんだろうか……心配だ。
 
「なんかまずいことでもあったのかしら……とにかく、少し待っててあげよ……」

「……ミラ」

「ん?」

 ラズカが何かいつもより真剣な顔をしながら、あたしの名前を呼んだ。
 何だろう……も、もしかして、あたしが知らないだけで、裏でアザミがとんでもないことをやらかしてたとか――!?

「まさか、盗み食い……?」

「え?」

「あ、いや何でもないわ……続けて」

「う、うん…………ミラ、何かあったの?」

「っ!?」

 ドキリ、と、心臓が飛び跳ねるような感覚がした。
 どうして気づかれたんだろう、いつも通りに振舞っているつもりだったのに。

「1週間ぐらい前から、なんか元気が無いような気がして……」

「そ、そんなわけないじゃない! ほら、今のあたしめちゃくちゃ元気!!」

 あたしは世にも奇妙な動きでダンスをして見せ、元気であることをアピールしてみる。
 それを見たラズカは目を細め、更に疑いの眼差しを強めてあたしの目を見てきた。

「………ほんとに?」

「ほっ、ほんと! 元気百倍よ! 何も心配いらないわ!」

 ラズカはしばらく黙ってから、はぁ、と息を吐いて、少しだけ微笑んだ。

「ならいいけど……もし何かあったなら私やアザミに相談するんだよ、何でも聞くから」

「っ………う、うん……」

 ズキリと、胸に響く痛みがより一層強くなる。
 あの夜から未だに、吹っ切れたはずのこの胸の痛みが引くことはない。むしろ、ラズカと話すたび、潰れてしまいそうなほどに疼きが増していくばかりだ。
 何かを隠すっていうのが、こんなにも苦しいことだなんて思ってもみなかった。

「ほ、ほんとに、大丈夫だから……」

 嘘。大丈夫じゃない。今すぐにでも張り裂けそうなほど痛い。
 けれど、話せない。話すわけには………。


「おぉっ! 《スカーレットローズ》だ!」


 突如、周りがざわめきだし、はっとして顔を上げる。
 ざわめきの発生源は、ギルドの入り口。豪華な装飾と、あたしより濃い真紅の髪の毛を持った美人のお姉さん、そして、いかにも重そうな青色の鎧を纏った大男が現れた。
 無骨な装備や、あまり派手じゃない武器などを携えた大半のメンツの中で、彼女らの装いは非常に目立って見える。

「は~~、かっけぇよなぁ《スカーレットローズ》……」

「やっぱり風格が違うよな、Aランクパーティは!」

「ハァ……ハァ……カンパニュラ様お美しい……」

 周りの反応を見て、得心がいく。
 なるほど、あの人たちはAランク……つまり、最高ランクのパーティなのか。それなら、あの大物感溢れ出る雰囲気にも頷ける。
 ……というかカンパニュラって、どっかで聞いたことあるような…………。

「っ…………」

 《スカーレットローズ》――長いから以後スカロって略そう――の面々を見て、ラズカが何やら難しそうな表情をしている。
 やっぱり目指すべき高みだから、そういうライバル心みたいなのが湧くのかもしれない。
 スカロの面々は、数々の羨望や尊敬の視線に一瞥もくれず、あたし達の横を通りすぎ――、


「………カンパ、ニュラ………」



 ――ようとしたところで、ピタリ、と止まった。
 横にいたラズカが、リーダーらしき女性の名前を呼んだのだ。それも、少し震え声で。

「ら、ラズカ? 何を…………」

 その時あたしは、ふと、初日のことを思い出した。
 確か、この子が追い出されたパーティのリーダーの名前って――!

「…………………」

 カンパニュラと呼ばれた女性は、その声が聞こえたのか少しだけこちらを振り向き――ピクリ、と僅かに眉をしかめた。

「………カンパニュラ、久しぶり………」

「…………っ」

 ラズカが挨拶をするも、カンパニュラは口を少しつぐんで、そのままあたしたちの横を通り過ぎて行った。

「……………やっぱり、ダメかぁ……」

 ラズカはふふっ、と自重気味に笑い、くるり、と、スカロの進行方向とは逆――ギルドの入り口へ体を向けた。

「ら、ラズカ………」

「ミラ、私は大丈夫だよ、もうミラも、アザミも付いていてくれるから……私は何も後悔はない」

「っ………」

 ズキリ、と、また一回り痛みが大きくなる。
 信用、してるんだ。この子はすっかり、あたしを本当の仲間として信用しきってくれている。あたしはこんなにも、卑怯な子だっていうのに。

「………少しだけ、散歩してくる。すぐ、戻ってくるから……」

 そう言ってラズカはタタッ、と、ギルドの外へと走っていった。
 口では気丈に振る舞いつつも、かなり堪えたに違いない。
 曰く、カンパニュラは、ラズカの幼馴染で、お姉ちゃんのような存在だったらしい。そんな、姉妹のような人から無視なんてされたら……あたしだったら、妹から無視されたらとても耐えることが出来ない。
 いくらあたしでも、その辛さだけは分かってるつもりだ。――だからせめて、これぐらいは。

「………ねぇ、カンパニュラさん」

 あたしの声に気づいたのか、再びカンパニュラがこちらを振り向いた。
 あたしに出来るのは、ラズカを傷つけたこの人に、一言だけでもいいから物申すことだけだ。それなら、少しなりこの胸の疼きも治まることだろう。

「………アンタは?」

「あたしはミラ……ラズカの、今の仲間よ」

「………そうかい」

 カンパニュラはつか、つかとヒールを鳴らしてこちらに歩いてきて……ポン、と、あたしの肩に手を乗せた。

「な、なに……?」

「ラズカのこと、よろしく頼むよ……あの子、ああ見えて案外脆い子だからさ……」

「……………………は?」

 あたしは、カンパニュラの言ってることが、ちっとも理解出来なかった。
 こいつ、なんで保護者ヅラしてるの? ラズカのこと、捨てたっていうのに。今更、罪悪感でも感じてるの?

「あと結構無茶をする子だからね、目を離さないように………」

「…………けないでよ……」

「えっ?」

「ふざけないでよッッッ!!!!!」

 思わず、口から怒声が飛び出した。
 カンパニュラの服の胸ぐらを、力一杯掴み上げる。
 その時のあたしは、理性というものが何処かへ飛んで行ってしまったのだと思う。頭の中に浮かんだ言葉が、ブレーキが外れたように口から次々と吐き出てきたのだから。

「ラズカっ、アンタの役に立てなかったって、すっごくすっごく悲しんでたのよっ!? あたしと話してる時も泣きじゃくって、自分なんて、って自分のこといっぱい責めて!! ドラゴンに襲われた時も、『自分に価値なんて無いから犠牲になる』なんて言って!! そこまで追い詰められてたのよ! アンタが追い詰めたのよあの子の事を!! それなのに何!? 『よろしく』、ですって!? ふっざけんじゃないわよっ!! アンタが、あの子のことを傷つけておいてッ! 今更家族面で良い人取り繕ってるつもりなの!? ふざけんじゃないわよっっ!! ふざけんじゃないわよアンタァァァァッッッ!!!」

 ギルドの中にいる数多の冒険者の数奇の目線が、人目もくれず叫んでるあたしを射抜く。しかし、そんなの関係ない。
 今はただ、どこまでも自分勝手なこいつに、怒りの全てをぶちまけてやりたい気分だった。
 当のカンパニュラはというと、ぽかん、としたような、困惑の表情を浮かべていた。

「ちょ、ちょっと待った、アンタ、あの子から何を聞いたんだい?」

「何って、ありのままよッ! とぼけてんじゃ……」

「アタイが追い詰めたっていうのは、どういうことだい? こっちは、あの子から脱退を申し出てきたって聞いてるんだけど……」

「……………は?」

 ピタリ、と、カンパニュラを揺さぶる手を止める。なんだ、こいつは今になって何をほざいているんだ?

「う、嘘! だって……」

「嘘じゃないさ、『もうカンパニュラの顔は見たくないと言ってた』って、ロベリアのやつが…………っ!!」

 カンパニュラが、まるで何かに気付いたかのように言葉を詰まらせる。
 それと同時に、あたしもまるで閃光が走ったような感覚に襲われた。『ロベリア』という名前には、生憎悪いイメージしか無かった。

 おそらく、あたしと彼女の頭には、同じ考えが浮かんでいるんじゃなかろうか。

「まさか、ロベリアの野郎っ……!」

「ロベリアって、確かアンタと同じパーティじゃないの!? 今居ないの!?」

「今日は用事があるからって………」

 ――そんな会話と、ほぼ同時のタイミングだった。

 ドカァァアァァン、と外からすさまじい爆発音が響き、つんざくような悲鳴がギルドの中まで聞こえてきた。

「なっ、なんだいこの音っ!?」

 カンパニュラが驚きの声を上げて、外へと目をやる。
 その時、あたしは血の気が引くような感覚がした。だって、今外には――、

「――ラズカッ!!」

「あっ、おいッ!? 危ないぞ!」

 近くにいた冒険者の制止の声を振り切って、あたしは外へ飛び出した。
 さっきまでの怒りも、疑問も吹き飛んで、今はただ、大切な仲間の無事を願うだけだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

Sランクパーティーを追放された鑑定士の俺、実は『神の眼』を持ってました〜最神神獣と最強になったので、今さら戻ってこいと言われてももう遅い〜

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティーで地味な【鑑定】スキルを使い、仲間を支えてきたカイン。しかしある日、リーダーの勇者から「お前はもういらない」と理不尽に追放されてしまう。 絶望の淵で流れ着いた辺境の街。そこで偶然発見した古代ダンジョンが、彼の運命を変える。絶体絶命の危機に陥ったその時、彼のスキルは万物を見通す【神の眼】へと覚醒。さらに、ダンジョンの奥で伝説のもふもふ神獣「フェン」と出会い、最強の相棒を得る。 一方、カインを失った元パーティーは鑑定ミスを連発し、崩壊の一途を辿っていた。「今さら戻ってこい」と懇願されても、もう遅い。 無能と蔑まれた鑑定士の、痛快な成り上がり冒険譚が今、始まる!

処理中です...