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15 ただ怒りのままに
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――《レゾナンス》結成から、1週間が経過した。
あたしたちはこの1週間、恐らく10個以上はクエストをクリアしたんじゃないだろうか。
うっかり石に躓いたアザミが死にかけたり、倒し漏らしたスライムに絡みつかれたアザミが死にかけたり、魔法の余波に当たったアザミが死にかけたりと様々な災難があったが、大体順調にこなすことができた。
そして今日、ついに――、
「2人とも! あと1個クエストクリアすればついに……」
「「ついに………」」
「Dランクに到達します!」
「「いえぇぇえぇぇええい!!!」」
「声が大きいッ、謹んで!!」
「「いえーい……」」
歓喜の声をあげるあたしとアザミを、ラズカが強めの語気で叱りつける。
ここはギルド内だから、一応静かにしなきゃっていうのは分かってるんだけど……それでも、嬉しさを抑えられなかった。
「というわけで今日頑張れば活動範囲が少し広がります! しまっていきましょう!」
「よーし! 今日も頑張って……」
張り切りの声を張り上げようとした、そのときだった。
チリン、チリンとベルが鳴り、受付のお姉さんが何かを叫んでいるのが見えた。
「すみませーん! 《レゾナンス》所属のアザミ・コ・フィンさーん! いらっしゃったら受付までお越し願いまーす!」
「わたし~~? ごめんね2人とも、少し待ってて~」
お姉さんに呼ばれたアザミは少し急ぎ足で、とことこと受付の方へ駆けていった。
粗相をやらかしたりしたんだろうか……心配だ。
「なんかまずいことでもあったのかしら……とにかく、少し待っててあげよ……」
「……ミラ」
「ん?」
ラズカが何かいつもより真剣な顔をしながら、あたしの名前を呼んだ。
何だろう……も、もしかして、あたしが知らないだけで、裏でアザミがとんでもないことをやらかしてたとか――!?
「まさか、盗み食い……?」
「え?」
「あ、いや何でもないわ……続けて」
「う、うん…………ミラ、何かあったの?」
「っ!?」
ドキリ、と、心臓が飛び跳ねるような感覚がした。
どうして気づかれたんだろう、いつも通りに振舞っているつもりだったのに。
「1週間ぐらい前から、なんか元気が無いような気がして……」
「そ、そんなわけないじゃない! ほら、今のあたしめちゃくちゃ元気!!」
あたしは世にも奇妙な動きでダンスをして見せ、元気であることをアピールしてみる。
それを見たラズカは目を細め、更に疑いの眼差しを強めてあたしの目を見てきた。
「………ほんとに?」
「ほっ、ほんと! 元気百倍よ! 何も心配いらないわ!」
ラズカはしばらく黙ってから、はぁ、と息を吐いて、少しだけ微笑んだ。
「ならいいけど……もし何かあったなら私やアザミに相談するんだよ、何でも聞くから」
「っ………う、うん……」
ズキリと、胸に響く痛みがより一層強くなる。
あの夜から未だに、吹っ切れたはずのこの胸の痛みが引くことはない。むしろ、ラズカと話すたび、潰れてしまいそうなほどに疼きが増していくばかりだ。
何かを隠すっていうのが、こんなにも苦しいことだなんて思ってもみなかった。
「ほ、ほんとに、大丈夫だから……」
嘘。大丈夫じゃない。今すぐにでも張り裂けそうなほど痛い。
けれど、話せない。話すわけには………。
「おぉっ! 《スカーレットローズ》だ!」
突如、周りがざわめきだし、はっとして顔を上げる。
ざわめきの発生源は、ギルドの入り口。豪華な装飾と、あたしより濃い真紅の髪の毛を持った美人のお姉さん、そして、いかにも重そうな青色の鎧を纏った大男が現れた。
無骨な装備や、あまり派手じゃない武器などを携えた大半のメンツの中で、彼女らの装いは非常に目立って見える。
「は~~、かっけぇよなぁ《スカーレットローズ》……」
「やっぱり風格が違うよな、Aランクパーティは!」
「ハァ……ハァ……カンパニュラ様お美しい……」
周りの反応を見て、得心がいく。
なるほど、あの人たちはAランク……つまり、最高ランクのパーティなのか。それなら、あの大物感溢れ出る雰囲気にも頷ける。
……というかカンパニュラって、どっかで聞いたことあるような…………。
「っ…………」
《スカーレットローズ》――長いから以後スカロって略そう――の面々を見て、ラズカが何やら難しそうな表情をしている。
やっぱり目指すべき高みだから、そういうライバル心みたいなのが湧くのかもしれない。
スカロの面々は、数々の羨望や尊敬の視線に一瞥もくれず、あたし達の横を通りすぎ――、
「………カンパ、ニュラ………」
――ようとしたところで、ピタリ、と止まった。
横にいたラズカが、リーダーらしき女性の名前を呼んだのだ。それも、少し震え声で。
「ら、ラズカ? 何を…………」
その時あたしは、ふと、初日のことを思い出した。
確か、この子が追い出されたパーティのリーダーの名前って――!
「…………………」
カンパニュラと呼ばれた女性は、その声が聞こえたのか少しだけこちらを振り向き――ピクリ、と僅かに眉をしかめた。
「………カンパニュラ、久しぶり………」
「…………っ」
ラズカが挨拶をするも、カンパニュラは口を少しつぐんで、そのままあたしたちの横を通り過ぎて行った。
「……………やっぱり、ダメかぁ……」
ラズカはふふっ、と自重気味に笑い、くるり、と、スカロの進行方向とは逆――ギルドの入り口へ体を向けた。
「ら、ラズカ………」
「ミラ、私は大丈夫だよ、もうミラも、アザミも付いていてくれるから……私は何も後悔はない」
「っ………」
ズキリ、と、また一回り痛みが大きくなる。
信用、してるんだ。この子はすっかり、あたしを本当の仲間として信用しきってくれている。あたしはこんなにも、卑怯な子だっていうのに。
「………少しだけ、散歩してくる。すぐ、戻ってくるから……」
そう言ってラズカはタタッ、と、ギルドの外へと走っていった。
口では気丈に振る舞いつつも、かなり堪えたに違いない。
曰く、カンパニュラは、ラズカの幼馴染で、お姉ちゃんのような存在だったらしい。そんな、姉妹のような人から無視なんてされたら……あたしだったら、妹から無視されたらとても耐えることが出来ない。
いくらあたしでも、その辛さだけは分かってるつもりだ。――だからせめて、これぐらいは。
「………ねぇ、カンパニュラさん」
あたしの声に気づいたのか、再びカンパニュラがこちらを振り向いた。
あたしに出来るのは、ラズカを傷つけたこの人に、一言だけでもいいから物申すことだけだ。それなら、少しなりこの胸の疼きも治まることだろう。
「………アンタは?」
「あたしはミラ……ラズカの、今の仲間よ」
「………そうかい」
カンパニュラはつか、つかとヒールを鳴らしてこちらに歩いてきて……ポン、と、あたしの肩に手を乗せた。
「な、なに……?」
「ラズカのこと、よろしく頼むよ……あの子、ああ見えて案外脆い子だからさ……」
「……………………は?」
あたしは、カンパニュラの言ってることが、ちっとも理解出来なかった。
こいつ、なんで保護者ヅラしてるの? ラズカのこと、捨てたっていうのに。今更、罪悪感でも感じてるの?
「あと結構無茶をする子だからね、目を離さないように………」
「…………けないでよ……」
「えっ?」
「ふざけないでよッッッ!!!!!」
思わず、口から怒声が飛び出した。
カンパニュラの服の胸ぐらを、力一杯掴み上げる。
その時のあたしは、理性というものが何処かへ飛んで行ってしまったのだと思う。頭の中に浮かんだ言葉が、ブレーキが外れたように口から次々と吐き出てきたのだから。
「ラズカっ、アンタの役に立てなかったって、すっごくすっごく悲しんでたのよっ!? あたしと話してる時も泣きじゃくって、自分なんて、って自分のこといっぱい責めて!! ドラゴンに襲われた時も、『自分に価値なんて無いから犠牲になる』なんて言って!! そこまで追い詰められてたのよ! アンタが追い詰めたのよあの子の事を!! それなのに何!? 『よろしく』、ですって!? ふっざけんじゃないわよっ!! アンタが、あの子のことを傷つけておいてッ! 今更家族面で良い人取り繕ってるつもりなの!? ふざけんじゃないわよっっ!! ふざけんじゃないわよアンタァァァァッッッ!!!」
ギルドの中にいる数多の冒険者の数奇の目線が、人目もくれず叫んでるあたしを射抜く。しかし、そんなの関係ない。
今はただ、どこまでも自分勝手なこいつに、怒りの全てをぶちまけてやりたい気分だった。
当のカンパニュラはというと、ぽかん、としたような、困惑の表情を浮かべていた。
「ちょ、ちょっと待った、アンタ、あの子から何を聞いたんだい?」
「何って、ありのままよッ! とぼけてんじゃ……」
「アタイが追い詰めたっていうのは、どういうことだい? こっちは、あの子から脱退を申し出てきたって聞いてるんだけど……」
「……………は?」
ピタリ、と、カンパニュラを揺さぶる手を止める。なんだ、こいつは今になって何をほざいているんだ?
「う、嘘! だって……」
「嘘じゃないさ、『もうカンパニュラの顔は見たくないと言ってた』って、ロベリアのやつが…………っ!!」
カンパニュラが、まるで何かに気付いたかのように言葉を詰まらせる。
それと同時に、あたしもまるで閃光が走ったような感覚に襲われた。『ロベリア』という名前には、生憎悪いイメージしか無かった。
おそらく、あたしと彼女の頭には、同じ考えが浮かんでいるんじゃなかろうか。
「まさか、ロベリアの野郎っ……!」
「ロベリアって、確かアンタと同じパーティじゃないの!? 今居ないの!?」
「今日は用事があるからって………」
――そんな会話と、ほぼ同時のタイミングだった。
ドカァァアァァン、と外からすさまじい爆発音が響き、つんざくような悲鳴がギルドの中まで聞こえてきた。
「なっ、なんだいこの音っ!?」
カンパニュラが驚きの声を上げて、外へと目をやる。
その時、あたしは血の気が引くような感覚がした。だって、今外には――、
「――ラズカッ!!」
「あっ、おいッ!? 危ないぞ!」
近くにいた冒険者の制止の声を振り切って、あたしは外へ飛び出した。
さっきまでの怒りも、疑問も吹き飛んで、今はただ、大切な仲間の無事を願うだけだった。
あたしたちはこの1週間、恐らく10個以上はクエストをクリアしたんじゃないだろうか。
うっかり石に躓いたアザミが死にかけたり、倒し漏らしたスライムに絡みつかれたアザミが死にかけたり、魔法の余波に当たったアザミが死にかけたりと様々な災難があったが、大体順調にこなすことができた。
そして今日、ついに――、
「2人とも! あと1個クエストクリアすればついに……」
「「ついに………」」
「Dランクに到達します!」
「「いえぇぇえぇぇええい!!!」」
「声が大きいッ、謹んで!!」
「「いえーい……」」
歓喜の声をあげるあたしとアザミを、ラズカが強めの語気で叱りつける。
ここはギルド内だから、一応静かにしなきゃっていうのは分かってるんだけど……それでも、嬉しさを抑えられなかった。
「というわけで今日頑張れば活動範囲が少し広がります! しまっていきましょう!」
「よーし! 今日も頑張って……」
張り切りの声を張り上げようとした、そのときだった。
チリン、チリンとベルが鳴り、受付のお姉さんが何かを叫んでいるのが見えた。
「すみませーん! 《レゾナンス》所属のアザミ・コ・フィンさーん! いらっしゃったら受付までお越し願いまーす!」
「わたし~~? ごめんね2人とも、少し待ってて~」
お姉さんに呼ばれたアザミは少し急ぎ足で、とことこと受付の方へ駆けていった。
粗相をやらかしたりしたんだろうか……心配だ。
「なんかまずいことでもあったのかしら……とにかく、少し待っててあげよ……」
「……ミラ」
「ん?」
ラズカが何かいつもより真剣な顔をしながら、あたしの名前を呼んだ。
何だろう……も、もしかして、あたしが知らないだけで、裏でアザミがとんでもないことをやらかしてたとか――!?
「まさか、盗み食い……?」
「え?」
「あ、いや何でもないわ……続けて」
「う、うん…………ミラ、何かあったの?」
「っ!?」
ドキリ、と、心臓が飛び跳ねるような感覚がした。
どうして気づかれたんだろう、いつも通りに振舞っているつもりだったのに。
「1週間ぐらい前から、なんか元気が無いような気がして……」
「そ、そんなわけないじゃない! ほら、今のあたしめちゃくちゃ元気!!」
あたしは世にも奇妙な動きでダンスをして見せ、元気であることをアピールしてみる。
それを見たラズカは目を細め、更に疑いの眼差しを強めてあたしの目を見てきた。
「………ほんとに?」
「ほっ、ほんと! 元気百倍よ! 何も心配いらないわ!」
ラズカはしばらく黙ってから、はぁ、と息を吐いて、少しだけ微笑んだ。
「ならいいけど……もし何かあったなら私やアザミに相談するんだよ、何でも聞くから」
「っ………う、うん……」
ズキリと、胸に響く痛みがより一層強くなる。
あの夜から未だに、吹っ切れたはずのこの胸の痛みが引くことはない。むしろ、ラズカと話すたび、潰れてしまいそうなほどに疼きが増していくばかりだ。
何かを隠すっていうのが、こんなにも苦しいことだなんて思ってもみなかった。
「ほ、ほんとに、大丈夫だから……」
嘘。大丈夫じゃない。今すぐにでも張り裂けそうなほど痛い。
けれど、話せない。話すわけには………。
「おぉっ! 《スカーレットローズ》だ!」
突如、周りがざわめきだし、はっとして顔を上げる。
ざわめきの発生源は、ギルドの入り口。豪華な装飾と、あたしより濃い真紅の髪の毛を持った美人のお姉さん、そして、いかにも重そうな青色の鎧を纏った大男が現れた。
無骨な装備や、あまり派手じゃない武器などを携えた大半のメンツの中で、彼女らの装いは非常に目立って見える。
「は~~、かっけぇよなぁ《スカーレットローズ》……」
「やっぱり風格が違うよな、Aランクパーティは!」
「ハァ……ハァ……カンパニュラ様お美しい……」
周りの反応を見て、得心がいく。
なるほど、あの人たちはAランク……つまり、最高ランクのパーティなのか。それなら、あの大物感溢れ出る雰囲気にも頷ける。
……というかカンパニュラって、どっかで聞いたことあるような…………。
「っ…………」
《スカーレットローズ》――長いから以後スカロって略そう――の面々を見て、ラズカが何やら難しそうな表情をしている。
やっぱり目指すべき高みだから、そういうライバル心みたいなのが湧くのかもしれない。
スカロの面々は、数々の羨望や尊敬の視線に一瞥もくれず、あたし達の横を通りすぎ――、
「………カンパ、ニュラ………」
――ようとしたところで、ピタリ、と止まった。
横にいたラズカが、リーダーらしき女性の名前を呼んだのだ。それも、少し震え声で。
「ら、ラズカ? 何を…………」
その時あたしは、ふと、初日のことを思い出した。
確か、この子が追い出されたパーティのリーダーの名前って――!
「…………………」
カンパニュラと呼ばれた女性は、その声が聞こえたのか少しだけこちらを振り向き――ピクリ、と僅かに眉をしかめた。
「………カンパニュラ、久しぶり………」
「…………っ」
ラズカが挨拶をするも、カンパニュラは口を少しつぐんで、そのままあたしたちの横を通り過ぎて行った。
「……………やっぱり、ダメかぁ……」
ラズカはふふっ、と自重気味に笑い、くるり、と、スカロの進行方向とは逆――ギルドの入り口へ体を向けた。
「ら、ラズカ………」
「ミラ、私は大丈夫だよ、もうミラも、アザミも付いていてくれるから……私は何も後悔はない」
「っ………」
ズキリ、と、また一回り痛みが大きくなる。
信用、してるんだ。この子はすっかり、あたしを本当の仲間として信用しきってくれている。あたしはこんなにも、卑怯な子だっていうのに。
「………少しだけ、散歩してくる。すぐ、戻ってくるから……」
そう言ってラズカはタタッ、と、ギルドの外へと走っていった。
口では気丈に振る舞いつつも、かなり堪えたに違いない。
曰く、カンパニュラは、ラズカの幼馴染で、お姉ちゃんのような存在だったらしい。そんな、姉妹のような人から無視なんてされたら……あたしだったら、妹から無視されたらとても耐えることが出来ない。
いくらあたしでも、その辛さだけは分かってるつもりだ。――だからせめて、これぐらいは。
「………ねぇ、カンパニュラさん」
あたしの声に気づいたのか、再びカンパニュラがこちらを振り向いた。
あたしに出来るのは、ラズカを傷つけたこの人に、一言だけでもいいから物申すことだけだ。それなら、少しなりこの胸の疼きも治まることだろう。
「………アンタは?」
「あたしはミラ……ラズカの、今の仲間よ」
「………そうかい」
カンパニュラはつか、つかとヒールを鳴らしてこちらに歩いてきて……ポン、と、あたしの肩に手を乗せた。
「な、なに……?」
「ラズカのこと、よろしく頼むよ……あの子、ああ見えて案外脆い子だからさ……」
「……………………は?」
あたしは、カンパニュラの言ってることが、ちっとも理解出来なかった。
こいつ、なんで保護者ヅラしてるの? ラズカのこと、捨てたっていうのに。今更、罪悪感でも感じてるの?
「あと結構無茶をする子だからね、目を離さないように………」
「…………けないでよ……」
「えっ?」
「ふざけないでよッッッ!!!!!」
思わず、口から怒声が飛び出した。
カンパニュラの服の胸ぐらを、力一杯掴み上げる。
その時のあたしは、理性というものが何処かへ飛んで行ってしまったのだと思う。頭の中に浮かんだ言葉が、ブレーキが外れたように口から次々と吐き出てきたのだから。
「ラズカっ、アンタの役に立てなかったって、すっごくすっごく悲しんでたのよっ!? あたしと話してる時も泣きじゃくって、自分なんて、って自分のこといっぱい責めて!! ドラゴンに襲われた時も、『自分に価値なんて無いから犠牲になる』なんて言って!! そこまで追い詰められてたのよ! アンタが追い詰めたのよあの子の事を!! それなのに何!? 『よろしく』、ですって!? ふっざけんじゃないわよっ!! アンタが、あの子のことを傷つけておいてッ! 今更家族面で良い人取り繕ってるつもりなの!? ふざけんじゃないわよっっ!! ふざけんじゃないわよアンタァァァァッッッ!!!」
ギルドの中にいる数多の冒険者の数奇の目線が、人目もくれず叫んでるあたしを射抜く。しかし、そんなの関係ない。
今はただ、どこまでも自分勝手なこいつに、怒りの全てをぶちまけてやりたい気分だった。
当のカンパニュラはというと、ぽかん、としたような、困惑の表情を浮かべていた。
「ちょ、ちょっと待った、アンタ、あの子から何を聞いたんだい?」
「何って、ありのままよッ! とぼけてんじゃ……」
「アタイが追い詰めたっていうのは、どういうことだい? こっちは、あの子から脱退を申し出てきたって聞いてるんだけど……」
「……………は?」
ピタリ、と、カンパニュラを揺さぶる手を止める。なんだ、こいつは今になって何をほざいているんだ?
「う、嘘! だって……」
「嘘じゃないさ、『もうカンパニュラの顔は見たくないと言ってた』って、ロベリアのやつが…………っ!!」
カンパニュラが、まるで何かに気付いたかのように言葉を詰まらせる。
それと同時に、あたしもまるで閃光が走ったような感覚に襲われた。『ロベリア』という名前には、生憎悪いイメージしか無かった。
おそらく、あたしと彼女の頭には、同じ考えが浮かんでいるんじゃなかろうか。
「まさか、ロベリアの野郎っ……!」
「ロベリアって、確かアンタと同じパーティじゃないの!? 今居ないの!?」
「今日は用事があるからって………」
――そんな会話と、ほぼ同時のタイミングだった。
ドカァァアァァン、と外からすさまじい爆発音が響き、つんざくような悲鳴がギルドの中まで聞こえてきた。
「なっ、なんだいこの音っ!?」
カンパニュラが驚きの声を上げて、外へと目をやる。
その時、あたしは血の気が引くような感覚がした。だって、今外には――、
「――ラズカッ!!」
「あっ、おいッ!? 危ないぞ!」
近くにいた冒険者の制止の声を振り切って、あたしは外へ飛び出した。
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