欠陥だらけの完全無欠〜パーティ追放された二人が組んだら、最強のコンビになりました〜

侍兵士

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16 思い出に耽った

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「………はぁ」

 ミラが見たら『幸せが逃げる』と言われそうなほど深い溜息をついて、私は町を散歩――もとい、徘徊する。

 カンパニュラのことは、ある程度は覚悟していた。現に、ああ言った反応をされても、予想を上回るダメージを受けることは無かった。
 以前の私だったら、その場で泣きじゃくっていたかもしれないけど――今は、何よりミラの存在が大きかった。
 1週間前、あの夜、彼女は『私の側に居て、私を支えてくれる』と言っていた。
 だからもうカンパニュラが居なくても平気、彼女に拒絶されても何の問題もない。今の私には、手を繋いで一緒に走ってくれる仲間がいるから。

 そう、思ってたんだけど。

「……やっぱ、ショックなもんはショック……」

 どんな罵倒でも、仮に暴力を振るわれるとしても、耐えられるつもりではいた。当然、無視されることも視野に入れていた。
 けれど、いざやられると流石に多少なりは落ち込んでしまう。どれだけ覚悟してても、やっぱりああいうのには弱いのが私だ。
 それも、相手がカンパニュラなら尚更そう。彼女は、私が4歳くらいの時から付き合いのある幼馴染で、歳も3つくらい離れてる。友達、仲間、そのどちらも否。言わば、姉とでも呼ぶべき立場の存在だった。
 私の頭の中に、小さい頃共に過ごしてきた記憶が蘇る。


『うぁぁぁん、お姉ちゃぁあぁん! トードがめっちゃ足にくっついてくる~~!』

『うぁぁぁん、お姉ちゃぁぁあん! 男子が私に石投げてくる~~!』

『ぅぁぁあん、お姉ちゃぁぁあん! 犬に噛まれたぁぁぁあ!』


 ……泣いてばっかだな、私!
 まだ物心ついて間もない頃とはいえ、泣いてカンパニュラに頼りきる思い出しか浮かんでこないのはどういうことだ。逆にカンパニュラの方から泣きついてきた記憶は………ダメだ、どれだけ記憶を探っても出てこない。

 ……思えばこの頃は私、カンパニュラのこと『お姉ちゃん』って呼んでたんだなぁ。パーティ結成してから、さすがに甘えっぱなしじゃダメだと思って、呼び捨てに変えたんだよなぁ。
 ちょうどその日からカンパニュラが謎の体調不良で3日寝込んだっけなぁ。今となっては懐かしい記憶だけど。
 関係ないけど、今私が頭につけてるカチューシャも、パーティ結成祝いでカンパニュラに貰ったものだ。『銀髪には黒が似合うから』って理由をつけて、カンパニュラが髪を結んでるリボンと同じ色の黒いカチューシャを買ってもらったっけ。
 
 パーティを結成してからのクエストでも、戦闘でもてんで役には立ててなかった私を、カンパニュラが必死にカバーしてくれたっけ。
 カンパニュラは、治療から攻撃まで幅広い魔法を人の倍以上使いこなせる本当に優秀な魔法使いだった。
 私と来たらそれと大違いで、治療とかおつかいとかそんなことぐらいしか出来ず、大した役には立ててなかった。
 けれどカンパニュラはそんな私を、一言も責めることは無かった。足手まといなはずの私の頭をポン、と叩いて言ってくれたあの言葉は、私にとって何よりの励みになっていた。

『大丈夫、あんたはアタイが守ってやるからさ』

 私が魔法を使えないのに魔法にこだわった理由も、身体能力が貧弱なのも勿論あるが、何よりカンパニュラに憧れたのが大きい。
 彼女のようにカッコいい魔法を使いたい、彼女のように強くなりたい。
 その一心で魔法の勉強を続けてきたものの、結果はお察しだった。
 ……まぁそのおかげで、今はミラと一緒なら、という条件つきで魔法を使うことが出来るんだけど。

 今なら、カンパニュラに少しなりとも、恩返しが出来るかもしれない。
 そう思って話しかけたけど、まぁ駄目だった。殴る蹴るをされなかっただけマシ、といったところだろうか。

「……いたっ!」

 などと考えながら歩いていたら、ボーっとしてしまっていたのだろう、ドンっ、と前から歩いてきた人にぶつかってしまった。

「あっ……ごめんなさ………」

 その相手を見て、私は凍りついた。

「ろ、ロベリアっ………」

「…………あァ?」

 ロベリアはギロリと、まるで悪魔でも宿ってるのかと思うほど厳つい目で私を睨みつける。
 よりにもよって、古今東西全て含めたとしても右に並ぶものがいないほど私が苦手とする人物にぶつかってしまった。体から血の気が引く。
 前も言ったが、パーティにいた頃からロベリアは私に執拗な嫌がらせ……いや、それ以上の行為を行ってきた。いつ頃から居たかは忘れたが、とにかく入ってきたからずっとだ。いくらミラのおかげで自信がついても、苦手なやつは苦手だ。
 それに今回に限っては、ボーっとしててぶつかった私の方が悪いし、ここは謝るしかない。

「ごっ、ごめんロベリア、じゃあ……」

「待てやコラ」

 そそくさと去ろうとするも、呼び止められた。ヒィッ、やっぱり!! 殺される!!
 い、いやでも、流石に天下の往来でそこまでやるほどロベリアも馬鹿じゃないだろうし……。とにかく謝ろう!

「ごっ、ごめんなさいっ! 慰謝料と命だけは………」

「ちょうど良かった……探してたんだ、アンタを」

「……へぇっ?」

 ポカン、と、驚愕に口を開いてしまう。
 ロベリアが、私を? 私から話すことはあっても、こいつから話しかけてくることなんて今まで無かったのに。も、もしかして、この間のお礼参りとか?

「な、なんで私を……」

「やっと完成したんだよ……テメェらが街を出て行く前で助かったぜ、間に合わないかと思ってた」

「え?」

「御誂え向きに1人で居やがるし、絶好のタイミングだ……アタシらの復讐のためだ、悪く思うんじゃねェぞ」

 ロベリアはそう言うと、服の右ポケットから拳より大きな黒いクリスタルを、そして服の内ポケットから魔道書を取り出し、それを左手に持った。

「っ……………!?」

 それを見て、私の頬を冷や汗がつたった。
 未来のためとか、完成したとか、正直よくわからない。
 けど、彼女が今握りしめているものについては、よく知っている。
 あれは、《封獣のクリスタル》……凶悪なモンスターを封印するのに使う、超高級魔道具だ!

「ロッ、ロベリア、何を考えてっ!?」

「《主たる我が名を以って命ずる 我が手よ 我が足よ 最愛なる我が僕よ 今こそ戒めを解き放ちて 我に害なす不遜の穢れに 従順なるちからを突き立てろ》……!」

 ロベリアは魔道書を開き、魔法発動に必要なその文言を詠う。
 すると、彼女の右手に持ったクリスタルが不気味に光り輝き、ピシピシと音を立ててひび割れていく。
 間違いない、あの魔法は……!

「やめてっ! こんなところで――」

「《従獣召喚リリースレイヴ》ッ!!」

 口をニヤァ、と不気味に歪め、ロベリアはクリスタルを宙高くに放り投げる。
 そして、詠唱が完了したその瞬間、クリスタルが完全に砕け散り、中から眩しいのにドス黒い、という矛盾した《ひかり》が溢れ出る。

「うわっ、なんだ………おっ、おいアレッ!?」

「えっ………? ……キャァァアァアァァアァアァアァァァアッッッ!!!」

 爆音と光と共に現れたモノを見て、街中が阿鼻叫喚に包まれる。
 今まで普通に生活していた人々は、雪崩のような勢いでその場から一目散に逃げ出した。冒険者と見受けられる装備を纏った人たちさえ、足を震わせながら一般人に紛れて逃走していく。
 無理もない、そこに現れたのは……人間とは、あまりにもレベルが違いすぎる存在なのだから。

「グゥルル…………」

 バサ、バサと翼をはためかせ、高いところからこちらを見下しているその巨大な存在は――ドラゴン。
 100人単位の冒険者の力を用いなければダメージを与えることすら困難なその《恐怖》は、我が物顔で空中へ鎮座している。

「なっ、なんで………」

 なんで、いくら私に恨みを持ってるとしても、こんなところで、こんな、人を大量に虐殺しかねない怪物を――!?
 ロベリアはクックッと肩を震わせ、更に不気味に口元を歪ませる。

「さァ、第一試練開始だ――頑張って耐えろよ、手を繋げるまで」
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