欠陥だらけの完全無欠〜パーティ追放された二人が組んだら、最強のコンビになりました〜

侍兵士

文字の大きさ
18 / 21

17 全ての元凶

しおりを挟む
 試練とかなんだとか、ロベリアの言ってることは皆目見当がつきそうもない。
 だけど、ただ一つわかることは……本気で私を殺そうとしているってことだ。

 それを遂行するために呼び出したであろう怪物を見上げて観察してみる。
 この前、《レゾナンス》結成前に出会った黒いドラゴンとは違い、今度のは全身が赤色の皮膚で覆われている。
 俗に《レッドドラゴン》と呼ばれるそれは、黒い通常種のドラゴンに比べ耐性や再生能力は劣るが、攻撃力に関してはこちらの方に軍配が上がる。おまけに、通常種に比べてかなり凶暴ときた。

 どちらにせよ、ドラゴンなんて生物は決して街中で呼び出していいものではない。
 間違いなく、この街を滅ぼしかねない。なんとかして、隙をついてミラを呼びに行かないと……!

「適当に遊んでやんな……どう暴れても構わねェぞ」

「グゥォォ…………!!」

 ロベリアが指示を出すと、ドラゴンは口を開く。するとその中に、莫大の熱を秘めた光球が、キィィィン……という耳鳴りがするほど高い音を立てて収束していく。
 2秒ほどしてから、それは私目掛けて凄まじい速度で発射される。

「うわっ………!」

 私は咄嗟に横に跳び退いて、それを躱す。
 刹那、さっきまで私がいたその場所に、爆音を立てながら熱球が着弾した。石造りの地面がゴゥゴゥと音を立てながら燃え盛り、黒い煙が立ちのぼっている。
 危なかった……! 当たれば間違いなく即死だ。つくづくドラゴンという種の圧倒的な性能には震え上がらざるを得ない。
 パチパチパチ、とロベリアがわざと音を大きく立てるように大仰な拍手をする。

「うめぇうめぇ、流石に逃げんのは得意だなへっぴり腰、その調子で頑張れや」

「くっ………! ロベリア、もうやめ……」

「誰に口答えしてンだ? あァ?」

「ぅっ………!」

 ロベリアの鋭い視線に、思わず身がすくみあがる。やっぱり、いくら見てもあいつのあの目だけは慣れない。人をとことん人として見ていないかのような、あの腐った目が……!

「ほらほら、まだまだ続くぞ、死にたくなけりゃ避けな」

 ハッ、として、すかさず左方向へ転がるように飛ぶ。その一瞬あとに、再びドラゴンの吐いた炎が地面に激突した。先程より近くに感じた熱量に、思わず顔を覆ってしまう。

「あっ………つ………」

 私は急いで立ち上がり、顔を上げる。
 早く逃げる体制に入らないと、次の一撃が――!

「………っ!?」

 顔を上げた先に見えたものに、私は思わず息を呑む。

「うぇぇん……パパァ………」

 女の子が、倒れてる。転んで怪我をしたのか、立ち上がれずに泣いている。逃げ遅れたのか………!

「んン~~~~~?」

 ロベリアがぐるり、と私が見ている方向へと首を向ける。
 そしてニタァ、と、嫌らしい笑みを浮かべた。

「っ、まさかっ………!!」

 冷や汗が頬を伝うと同時に、私はその場から全速力で女の子の元へ駆け出す。

「やれ」

 ロベリアが言うと、ドラゴンは予想通りというか、女の子の倒れてる所へ向かって特大の火炎を放った。
 
 間に合え――ッッ!!!!

 私は女の子を抱き抱え、受け身を取りながら地面に倒れこむ。
 間一髪、炎が命中する前に助けることができた。よかった……!

「逃げてっ、早くッ!!」

「ひっく……あ、ありがとうお姉ちゃん……」

 女の子は涙を拭いながらお礼を言うと、子供ながらに全力で、街の門へ向かって走り出した。
 ホッ……としたのも、束の間だった。
 顔の右側面に、異様なほどの熱量を感じる。同時に激しい眩さが右目を襲い、思わず目を開けていられない。
 反射的に、右方向を振り向く。
 するとそこには、私のすぐ頭上で炎を構えるドラゴンと……その背に立っているロベリアが居た。

「今度は死ぬかもなァ?」

 嘲笑うようなロベリアの声と共に、私の眼前で、ドラゴンの一撃が放たれる。


 『死』


 頭の中にその一文字が浮かぶと同時に、私は思わず目を閉じた。
 ……ミラ、アザミ――カンパニュラッ!

 無慈悲の光炎は私の全身を覆い尽くし、遂には五体を焼き尽くす――!!




『――《絶対防域アブソリュートゾーン!!』


 ――はずだった。

 炎が直撃する刹那、全身を緑色の『膜』のようなものが包む。
 それにより、私の全身を焼き尽くすはずだった炎は阻まれ、霧散する。

「こ、これって……それに、今の声……」

「………来やがったか」

 ロベリアがチラリと、横目で見つめる先に居たのは…………ハァ、ハァと肩で息をしているミラ。
 そして…………。

「か、ンパニュラ………?」

「無事かいッ、ラズカ!?」

 魔道書を左手に構え、右手の杖をこちらに向けて構えたカンパニュラが、慌てた様子で私に問いかける。
 あの様子から見ると…さっきの防御魔法は、カンパニュラが? でも、なんで……。

「ら、ラズカっ!! 多分、アンタのこと追い出したの、カンパニュラさんじゃないわッ!!」

 ミラが切らした息を整えながら、私に向かって叫ぶ。
 え? 待って、どういうこと? なんでミラがそんなことを? そもそもカンパニュラじゃないって……そんな訳ない。だってあそこで見た姿は、カンパニュラそのもの………。

「………アタイを謀るなんて、やってくれるじゃないか……」

 カンパニュラは上空を睨みつけ、恨みを込めた声でつぶやく。

「………………まさか」

 上空と脳裏に浮かぶ『そいつ』を、私はおそるおそる見上げる。
 そういえば、あいつの得意魔法って……『変身』、だったっけ………。

「…………あなたなの、ロベリアッ……!?」

「……ちっとばかし気づくのが遅かったな、ノータリン」

 ロベリアは悪びれるどころか、ニタッと笑いながらトントン、と頭部左側面を指で叩く。

「だーいせーいかーい、だよォ……ラズカちゃんをカンパニュラのアネさんの姿に変身、追い出して、アネさんに偽りの脱退報告を伝えちゃったのはこのアタシでーした☆」

「な、んで、そんなこと………」

「言っても分からねぇだろうが………強いて言えば、『愛』のため、かなァ?」

 それを聞いて、頭が真っ白になる。
 『愛』。彼女の愛する人間なんて……『アネさん』と呼び慕う、カンパニュラのことしか思いつかない。
 それって、つまり。

「……カンパニュラとの時間を邪魔されたくなかったから、私のことを追い出した、ってこと……?」

「……くっく、さァ、どうだろなぁ?」


 ……そうだとしたら、それだけのために……カンパニュラを偽って……私を追い出して……。


「………解せないね」

「あァ?」

 カンパニュラがボソリ、と呟いた一言に、ロベリアがドスの効いた反応を返す。

「アネさん、解せねぇってのはなんだい?」

「仮にそうだとしたら、何故アタイに報告する時にラズカに変身せず、あんたの姿のまま『ラズカが脱退することだけ』伝えにきた? 変身したほうが、騙すなら確実だと思うんだがね」

 カンパニュラの疑問に、ロベリアはふぅ、と溜息をついて、やれやれ、と言わんばかりに首を振り肩をすくめる。

「分かってねぇなぁアネさん、最初の試練から難易度激高じゃ始まんねェだろ? わざと気付きやすくしてやったのさ」

「はぁ? アンタ、何を言って……」

「あーめんどくせ、説明すんのダルい、それよかいいのかよボーっとしてて」

 ロベリアの言葉に、カンパニュラはハッ、として彼女の横に浮く生き物へ顔を向ける。
 ドラゴンはまた性懲りもなく、口を開けて次なる砲撃の準備に入っている。

「チッ……なんだってこんな街中でこんなヤツ……!」

 カンパニュラは舌を打ちながら、杖と魔道書を構え、詠唱の準備に入る。
 しかし、一歩間に合わない。カンパニュラへと向けて、ドラゴンが今に火球を吐き出そうとする。

「くっ、詠唱してたんじゃ間に合わない、こうなりゃ破棄してでも……!」

「カンパニュラ、下がってて」

 私は制止するように、カンパニュラの前に右手を突き出す。
 カンパニュラはギョッ、とした顔で私を見て、直後、キッと眉を上げて怒り顔になる。

「どきなラズカッ!! あれはアンタの手に負えるやつじゃ……」

「確かに《私》じゃ、絶対あいつには勝てない………けど」

 恐らく今の私の顔は、自信に満ち溢れていることだろう。
 だって、今の私の右手には……ミラの左手が、握られているのだから。

「《私達》なら、絶対勝てるから」

 直後、ドラゴンの口から火球が吐き出され、私達3人に襲いかかる――!


「《共鳴レゾナンス》」

「《魔法反転スペルリフレクターッ!!》》」

 
 ――しかしその一撃は私たちを焦がす事なく、逆に火を吐いたドラゴン自身へと数百倍の威力で跳ね返り、強靱の肉体を焼き尽くした。

「グゥッ!? グゥルァオァァァァァァァァッッッッ………!!」

 ドラゴンはその一撃によって黒ずんだ塊になり、ズドン、と音を立てて、地に堕ちた。

「……………な、にが………」

 カンパニュラはポカン、として目をパチクリさせながら、私たち2人を見ている。
 驚くのも無理は無い、だって数日前まで攻撃魔法の1つも使えなかった私が……否、私達が、ドラゴンを倒してみせたのだから。

「助けてくれてありがとう、カンパニュラ……後でまた、じっくりお礼とお話はするから……」

 私はカンパニュラに背を向け、ミラの手を握ったまま、ギン、とあるモノを睨みつける。
 それは、今しがた倒されたはずの切り札の死骸を見て、動揺するどころか……ニヤニヤと、依然変わらぬ不気味な笑顔を浮かべている。
 その名はロベリア……私とカンパニュラの元・仲間で、カンパニュラを偽って、私たちの仲を引き裂いた……つまり。


「一発、アイツをぶん殴らせて………!!」

 
 絶対に、許しちゃいけない存在だッ!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

Sランクパーティーを追放された鑑定士の俺、実は『神の眼』を持ってました〜最神神獣と最強になったので、今さら戻ってこいと言われてももう遅い〜

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティーで地味な【鑑定】スキルを使い、仲間を支えてきたカイン。しかしある日、リーダーの勇者から「お前はもういらない」と理不尽に追放されてしまう。 絶望の淵で流れ着いた辺境の街。そこで偶然発見した古代ダンジョンが、彼の運命を変える。絶体絶命の危機に陥ったその時、彼のスキルは万物を見通す【神の眼】へと覚醒。さらに、ダンジョンの奥で伝説のもふもふ神獣「フェン」と出会い、最強の相棒を得る。 一方、カインを失った元パーティーは鑑定ミスを連発し、崩壊の一途を辿っていた。「今さら戻ってこい」と懇願されても、もう遅い。 無能と蔑まれた鑑定士の、痛快な成り上がり冒険譚が今、始まる!

処理中です...