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2-3 アルヴィンの凋落
しおりを挟む隣国で自立への一歩を踏み出したフェリシア。
だがその頃、王国では――皮肉なことに、彼女を追い出した当人たちの評判が信じられない速度で失墜していた。
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◆宮廷に走る不協和音
「愛のために身分を超えた婚約!」
そんな美辞麗句に酔っていたのも最初だけだった。
アルヴィンの新しい婚約者クラリスは、たしかに美しい。
だが……それ“だけ”だった。
「王太子妃候補が礼儀作法すら覚えようとしないなんて」
「正直、恥ずかしいレベルですわ」
宮廷では毎日のようにため息が漏れていた。
しかもクラリスは慣れない宮廷で緊張するどころか、逆に好き放題。
「この食器って、もっとキラキラしたのないの? 安っぽいんだけど~」
――その場にいた貴族夫人たちが、一斉に顔をこわばらせたのは言うまでもない。
クラリスの振る舞いは“自由奔放”ではなく、“ただの無知”。
そしてその無知を指摘されると、彼女は決まってこう言った。
「だってアルヴィン様は、私の好きにしていいって言いましたもの!」
(……言っているだろうね、あの甘やかし王子なら)
貴族たちは心の中で同時にため息をついた。
---
◆浪費癖、爆発
クラリスの浪費癖は、さらに火に油を注いだ。
高級ドレス、宝石、嗜好品――
彼女が欲しいと言えば、アルヴィンはすべて購入。
「これ、新作の宝飾ですよね? 全部くださいな♪」
「くら、クラリス様!? さすがに“全部”は……!」
「足りない分は寄付金を減らせば良いでしょう? 平民には我慢していただけばいいのよ」
――その発言が宮廷中に広まった瞬間、クラリスの評判は底を抜けた。
「民を見下す王太子妃など前代未聞だ」
「殿下も止められないのか?」
しかし当のアルヴィンはクラリスの肩をかばい続けるばかり。
「クラリスを侮辱するな! 彼女は王妃になるべき女性だ!」
……その言葉が、さらに貴族たちの心を冷めさせていった。
---
◆王家への不信と、第二王子の台頭
「もう殿下についていけません」
「次期国王は第二王子の方が適任では?」
王宮内でひそかに動き始めた“第二王子支持派”。
第二王子は冷静で聡明、外交も得意。
王太子の粗相を黙って尻ぬぐいしてきた人物だ。
ついに宮廷内では、
「アルヴィン殿下では国が危うい」
そんな声が表立って囁かれるようになっていた。
---
◆隣国に届く報せ
エーバーハルト公爵邸。
リヒトと共に報告書を確認していたフェリシアは、眉をひそめた。
「まさか……ここまで評判が落ちているなんて」
報告には、クラリスの浪費、アルヴィンの独断、貴族たちの反発……
かつての婚約者の“転落劇”が淡々と記されていた。
フェリシアは目を閉じ、静かに息を吐く。
「……これが、私を追い詰めた人たちの末路なのね」
胸がすっとするかと思った。
しかし湧いてきたのは意外にも“虚しさ”だった。
(彼らが落ちても、私の名誉は戻らない――)
そんな当たり前の事実が、皮肉にも心を冷やしていく。
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◆庭園での会話
その夜。
庭園の道を並んで歩きながら、フェリシアはぽつりと口を開いた。
「彼らの評判が落ちても……心が晴れるわけではないの。
でも、あの時の自分が間違っていなかったことだけは、少し救いになる気がするわ」
リヒトは彼女の横顔を見つめ、静かに言った。
「フェリシア。
君が完全に過去と決別するには――“真実”を明らかにする必要がある」
「真実……」
「偽造された証拠、君を陥れた陰謀。それらを暴くことが、君自身を取り戻す道だ」
フェリシアの心が揺れた。
アルヴィンたちの失墜は“自業自得”。
だが――彼らが落ちただけでは、自分は報われない。
(私自身で、終わらせなければ)
ゆっくりと、フェリシアは頷いた。
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◆フェリシアの決意
その夜。
月明かりの差す窓辺で、フェリシアはそっと呟いた。
「私は……もう誰かのために生きるのではない。
自分の未来を取り戻すために進むのよ」
彼女の瞳に宿るのは、かつての純粋さでも弱さでもない。
“覚悟”だった。
こうしてフェリシアは、ついに過去と向き合う決意を固める。
アルヴィンの凋落は序章に過ぎない。
真実を明かし、自らの名誉を取り戻す戦いが、ここから始まる――。
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