婚約破棄されたので隣国に逃げたら、溺愛公爵に囲い込まれました

鍛高譚

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3-4 リヒトの想い

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 アルヴィンとクラリスの陰謀が暴かれてから数日。
フェリシアの名誉は完全に回復し、王都では彼女を称える声が広がっていた。

だが、当の本人は――
きらびやかな賛辞の中で、ひっそりと静けさを求めていた。

(名誉が戻ったことは嬉しい。でも……私が求める未来は、それだけじゃないわ。)

そんな思いを胸に、フェリシアは王宮の庭園を一人歩いていた。


---

◆静かな月夜の再会

「フェリシア、少し話せるかい?」

穏やかで、聞き慣れた声が背後から届いた。

振り返れば、月明かりの下でリヒトが立っていた。
夜風に揺れる黒髪と、どこか緊張を含んだ表情。

「もちろんよ。リヒト。」

フェリシアが微笑むと、彼はわずかに肩の力を抜いて並び立った。

「静かな時間を邪魔してしまったなら謝るよ。でも……どうしても伝えたいことがあってね。」

普段よりも少し真剣な声。
フェリシアの心臓が、どくりと小さく跳ねた。


---

◆リヒトの真剣な眼差し

庭園の中心にある噴水の前で、リヒトは歩みを止めた。
水面に映った月が揺れ、二人を包むような優しい光を落とす。

「フェリシア。君が王国に戻ってから、ずっと見てきた。
自分の力で真実と向き合い、堂々と立ち続ける君の姿に……心を奪われたんだ。」

フェリシアは目を瞬かせた。

「リヒト……私はただ、やらなければならないことをしただけよ。」

「それでもだ。」
リヒトはゆっくりと首を振った。
そして、真っ直ぐにフェリシアを見つめる。

「君は強くて、優しくて……誰よりも美しい。
フェリシア、僕は――」

夜の静寂に、彼の声が溶け込む。

「――君を愛している。」

その言葉が響いた瞬間、フェリシアの心臓が大きく跳ねた。


---

◆フェリシアの戸惑いと、本音

「リヒト……」

胸の奥がじんわりと熱くなる。
彼がそばにいてくれたことへの感謝はずっとあった。
だが“愛”という言葉は、あまりにも突然で――。

「私はあなたのことを信頼しているわ。
あなたがずっと支えてくれたことにも、本当に感謝してる。」

フェリシアは静かに続けた。

「でも……私はまだ自分の気持ちを整理しきれていないの。
すぐに答えを出すことはできないわ。」

リヒトは驚くどころか、むしろ優しい笑みを浮かべた。

「分かっているよ、フェリシア。
君の心が決まるまで、僕は待つつもりだ。
焦らせるつもりなんて、まったくない。」

その言葉に、フェリシアは胸がじんと熱くなるのを感じた。

(リヒトは……どうしてこんなにも優しいの?)


---

◆未来への約束

しばらく二人は噴水のそばをゆっくり歩いた。
夜風が心地よく、どこか現実から離れたような静かな時間が流れる。

「フェリシア。」
リヒトがふと立ち止まる。

「君がどんな未来を選んでも、僕はそのそばにいる。
君が笑える道を、いつでも支えたいと思っている。」

フェリシアはそっと目を伏せた。

「……ありがとう。リヒトがいてくれるだけで、私は本当に心強いわ。」

彼は微笑み、そっと彼女の手を取った。
優しく包み込むような温もり。

フェリシアの心の奥に、静かに灯がともる。

(この手を……いつか私からも握り返せる日が来るのかもしれない。)


---

◆夜空に芽生える新しい想い

フェリシアが部屋に戻ると、窓から差し込む月の光が淡く彼女を照らした。
その光に照らされながら、彼女はそっと胸に手を当てた。

「……リヒトの想いに、いつか応えられるようになりたい。」

その小さな呟きは、確かな未来への一歩だった。

リヒトの告白は、フェリシアの心に新たな風を吹かせ、
過去ではなく未来を見る力を与えてくれた。

そしてその夜――
二人の関係は、静かに、しかし確かに変わり始めたのだった。

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