婚約破棄されたので隣国に逃げたら、溺愛公爵に囲い込まれました

鍛高譚

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4-5 エピローグ

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隣国エーバーハルト公爵領に根を下ろしてから、いくつもの季節が過ぎた。

フェリシアとリヒトは、互いを支え合いながら穏やかで温かい毎日を紡ぎ、そして――気がつけば隣国の人々にとって欠かせない存在へと成長していた。

フェリシアは公爵夫人として領地を導き、さらには事業家として国の経済を押し上げたことで、「未来を切り開く女性」と呼ばれ、尊敬と憧れを集めていた。

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◆事業のさらなる飛躍
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フェリシアが手がける特産品事業は、年々規模を拡大していた。
伝統工芸品は彼女のアレンジで華やかに、食料品は斬新な手法でブランド化され、今や隣国の主要な輸出品目にまで成長している。

成功を祝うディナーで、商人たちは感謝の言葉を惜しまなかった。

「フェリシア様のおかげで、私たちの品が世界へ羽ばたきました!」
「あなたの目と感性は、この国の宝です。」

フェリシアは微笑みながら首を振る。

「成功は皆さんの努力の結果よ。私はその背中を少し押しただけ――これからも一緒に発展させていきましょう。」

その言葉に、会場はあたたかな拍手で満たされた。
公爵夫人でありながら、誰よりも誠実で、そして誰よりも先を見ている――
それが、今のフェリシアだった。

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◆愛に満ちた家庭
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公爵邸には、さらに賑やかな声が響くようになっていた。
フェリシアとリヒトの間に二人の子どもが生まれたのだ。

長女のエリーナは母に似て聡明で、父に似て穏やか。
フェリシアが書類を整理していると、小さな声で言った。

「お母様、エリーナもお手伝いします!」

「まぁ、ありがとう。あなたのおかげで仕事がはかどりそうだわ。」

そのやりとりを眺めていたリヒトは、目を細めながら言った。

「フェリシア。君と子どもたちがいてくれることが、僕の人生を何倍にも豊かにしてくれたよ。」

フェリシアはそっと彼の手を握る。

「私もよ、リヒト。あなたのおかげで、ここが“家”になったの。」

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◆王国からの知らせ
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ある日、公爵邸に王国からの使者が訪れた。

かつてフェリシアを陥れたアルヴィンとクラリスは、完全に失脚し、誰にも顧みられることのない地方暮らしを送っている――
そう聞かされても、フェリシアの心は何も揺れなかった。

「彼らには彼らの人生があるわ。私はもう、振り返るつもりはないの。」

使者はさらに続けた。

「王国は正式な謝罪と共に、あなたへ名誉勲章を授与したいと――」

だがフェリシアは静かに、しかしはっきりと首を振った。

「私が欲しいのは名誉ではありません。
今の生活が、何よりも大切なのです。」

横で聞いていたリヒトは、誇らしげに彼女を見つめていた。

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◆未来へ光を灯す存在
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フェリシアの働きは隣国中に希望を与えた。

雇用は増え、若者たちは夢を抱き、文化は花開き――
彼女の活動はまるで国に新しい光を灯したかのようだった。

ある日の集会で、若い女性が目を輝かせて声をかけた。

「フェリシア様、私もあなたのように夢を追いかけたいです!」

フェリシアはその肩にそっと手を置く。

「あなたにはあなたの道があるわ。
大切なのは、自分の力を信じて歩くことよ。」

その言葉は、かつて弱かった自分自身にも向けるような、優しい励ましだった。

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◆星空の下で
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その夜。
フェリシアは庭のベンチで星空を見上げていた。
隣にはリヒトが静かに座り、二人の指は自然と絡む。

「リヒト……ここまで来られたのは、あなたのおかげよ。」

「いや、フェリシア。君自身が切り開いてきた道だ。
僕はその隣にいただけだよ。」

ふたりの間を、優しい夜風が通り抜ける。

この世界に来てから、たくさん傷つき、たくさん泣いた。
それでも今、フェリシアは胸を張って言える。

――私は幸せだと。

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◆新たな始まり
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フェリシアは静かに目を閉じ、言葉を紡ぐ。

「私はもう過去には囚われないわ。
これからも、自分の力で未来を築いていく。」

その横顔は、美しく、強く、そして温かかった。

こうして彼女の物語はひとまず幕を下ろす。
だが、フェリシアが見つけた“真実の愛”と“幸せ”は、
これから先もずっと続いていく――。

彼女の未来は、星空よりも眩しく輝いていた。
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