妹に婚約者を奪われたので差し上げました。ですが、檻に入ったのはあの子のほうでした

鍛高譚

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第八話 帰る場所

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第八話 帰る場所

 大広間を出た瞬間、音が遠くなった。

 楽師たちの旋律も、ざわめく客たちの声も、分厚い扉一枚でひどく曖昧になる。けれど完全には消えない。その中途半端さが、かえって現実味を帯びて耳に残った。

 セレナは廊下の中央で立ち止まらなかった。

 止まれば、たぶん誰かが追ってくる。

 慰める顔をした侍女かもしれない。困惑した父かもしれない。あるいは、何か言い訳めいた言葉を並べる継母かもしれない。

 どれも今は聞きたくなかった。

 彼女はまっすぐ、自室ではなく伯爵家の執務棟へ向かった。

 こんな時に何を、と自分でも少し思った。けれど、こういう時だからこそ、足がそこへ向いたのだろう。泣くより先に、確かめなければならないことがある。

 フォルディア伯爵家の長女として。

 この家を、ずっと見てきた者として。

 執務棟へ続く回廊には人が少ない。夜会の間、表に出るべき使用人はほとんど大広間に詰めている。廊下の灯りも最低限で、かえってその静けさがありがたかった。

 帳簿室の扉を開けると、そこにはすでにグレアムがいた。

 老執事は立ち上がりかけて、すぐにその動きを止めた。セレナの顔を見て、何を言うべきかを一瞬で考え、そして余計な慰めを飲み込んだらしい。

「お嬢様」

「……少し、ここを使わせて」

「もちろんでございます」

 それだけだった。

 だから救われる。

 今のセレナには、哀れみも励ましもいらない。ただ、いつも通りの場所が必要だった。

 帳簿室はほの暗く、紙と蝋の匂いが静かに漂っていた。机の上には、昼に確認した領地報告書と、夜会後に父へ見せるつもりだった簡単な収支一覧が置かれている。

 ついさっきまで“婚約者を伴って夜会を締めくくる長女”として立っていた自分が、今は一人でここに立っている。その落差はおかしなほど大きいのに、机も椅子も、紙の束も、何一つ変わっていない。

 セレナはゆっくり椅子に腰を下ろした。

 両手を膝に置く。

 震えていない。

 そのことに、少しだけ驚いた。

「湯を持ってまいりましょうか」

 グレアムが問う。

「お願い」

 老執事は静かに一礼して出ていった。

 一人になると、帳簿室の静けさが一層深くなる。遠くで鳴る音楽だけが、現実がまだ続いていると教えてくる。

 セレナは目を閉じた。

 婚約解消。

 あまりにも大勢の前で、あまりにも明確に告げられた。あれで後戻りはない。たとえ明日になって父が弁解しようと、継母が涙を見せようと、ミレイユが「そんなつもりでは」と言おうと、もう社交界は聞き入れないだろう。

 婚約は壊れた。

 しかも最も見世物にしやすい形で。

 胸の奥にようやく痛みがじわじわ広がってきた。遅れてやってくる痛みだった。傷ついたことに気づくまで、少し時間がかかるような。

 ルシアンの顔が浮かぶ。

 穏やかで整ったまま、自分の婚約を切り捨てた男。

 ミレイユの涙を受け止め、自分の言葉でそれを正義に変えた男。

 そして何より――最初から、その場へ持っていくつもりだった男。

 セレナは机の端をそっと握った。

 怒りより先に、冷たい理解がある。

 この人は、本当に自分を守るつもりがなかった。

 それどころか、自分がどこまで取り乱さずに立っていられるかを見ていた。

 そう思うと、胸が焼けるように痛むのに、どこかで妙に納得している自分もいた。

 違和感はずっとあったのだ。

 見たくなかっただけで。

 扉が軽く叩かれ、グレアムが湯の入ったカップを持って戻ってきた。置かれた湯気は優しく、室内の冷えた空気に少しだけ温度を足した。

「ありがとうございます」

「もったいないお言葉です」

 グレアムは少しだけ間を置いてから、低く言った。

「今夜のこと、屋敷の者どもは皆、見ておりました」

「……ええ」

「見ていて、何もできなかった」

 セレナはカップに手を添えたまま、顔を上げた。

 老執事の表情は変わらない。だがその声には、長年仕えてきた者の悔しさがにじんでいた。

「誰もお嬢様が悪いと思ってはおりません」

 その一言が、予想外に胸に響いた。

 セレナは一瞬だけ言葉を失った。

 今夜、大広間で自分に向けられた視線の多くは、もう“婚約を切られた女”を見るものだった。そこに善悪はない。あるのは見世物への好奇心だけだ。

 だからこそ、グレアムの言葉は救いだった。

「……ありがとう」

 かすれた声になった。

 老執事はそれ以上何も言わなかった。静かに一礼し、帳簿室の隅へ下がる。その距離感がありがたい。

 やがて、廊下の向こうが少し騒がしくなった。

 急ぎ足の音。

 次いで、戸惑ったような女の声。

「お姉様、こちらにいらっしゃいますか?」

 ミレイユだ。

 セレナの指先が、カップの縁で止まる。

 来るだろうとは思っていた。あの女が、勝ち誇りを胸にそのまま眠れるはずがない。必ず顔を見に来る。奪ったことを確かめに来る。

 グレアムが一歩出ようとしたが、セレナは首を振った。

「いいわ。通して」

「しかし――」

「大丈夫」

 老執事が渋々扉を開けると、ミレイユは待っていたと言わんばかりに入ってきた。薔薇色のドレスはまだ少しも乱れていない。頬は上気し、瞳は灯りを受けて勝利の色を帯びていた。

 その後ろに継母イザベルの姿も見える。だが彼女は中へは入らず、廊下で不安そうに立ち尽くしていた。どうしたらよいか分からないのだろう。

「お姉様」

 ミレイユは痛ましげな顔を作った。

「こんなところにおいでだったのね。皆さま、心配していらしてよ」

 嘘だ。

 いや、嘘ですらないのかもしれない。心配という言葉で言い換えられた好奇心なら、たしかにあるだろう。

「心配なら、そっとしておいてくださる?」

 セレナが淡々と言うと、ミレイユはまるで傷ついたように眉を下げた。

「そんな……私、本当はこんなことになるなんて思っていなかったの」

 グレアムの指が微かに動いた。おそらく、無礼を咎めたいのだろう。だがセレナは動じなかった。

「思っていなかった?」

「ええ。私、ただ……」

 ミレイユは一歩、二歩と部屋の中へ進み、机の前で立ち止まった。

「ただ、もう我慢できなかっただけなの」

 言葉を選ぶふりをしている。

 その一つひとつが、どれほど綺麗に並べられていても、セレナにはもう何の意味もない。

「ルシアン様が、私の話を聞いてくださって」

 その時、ミレイユの唇の端がわずかに吊り上がった。

「私のことをちゃんと見てくださって」

 やはり、それが嬉しいのだ。

 可哀想な妹として守られたことが。姉の婚約者を奪えたことが。

「……それを、わざわざ伝えに来たの」

 セレナは静かに尋ねた。

 ミレイユは少しだけ首をかしげる。

「だって、お姉様にはちゃんと分かっていてほしいもの」

「何を?」

「選ばれたのは、私だということ」

 帳簿室の空気が凍りついた。

 廊下で控えていた継母が小さく息を呑む。さすがに、その露骨さは止めるべきだと思ったのかもしれない。けれど遅い。もう何もかも遅い。

 セレナはミレイユを見上げた。

 この女は今、自分が勝者だと信じきっている。姉の婚約者を奪い、夜会の中心で涙を見せ、男に選ばれる。それを幸福の完成だと思っている。

 そして、セレナにはもう一つ分かっていた。

 ミレイユは何も知らない。

 ルシアンが自分をどう見ているかを。

 あの男が、気の強い女を折る瞬間にしか興味を持っていないことを。

 今のミレイユは、勝ったと思って檻へ自分から足を踏み入れたにすぎない。

 その事実が、ひどく冷たく胸に落ちた。

「そう」

 セレナはただそれだけを言った。

 ミレイユの眉がわずかに寄る。

 もっと痛がる顔が見たかったのだろう。泣くか、怒るか、縋るか。そういうものを期待していたのに、返ってきたのはただの短い相槌だ。

「お姉様、悔しくないの?」

 ついに本音が零れる。

「私は嬉しいわ。ずっと、お姉様ばかりが持っているものを見てきたもの。皆がお姉様を褒めて、頼って、そして一番いいものはいつだってお姉様のところへ行く」

 声が次第に熱を帯びる。

「でも、とうとう違ったでしょう? 一番大切なものが、私のところへ来たのよ」

 継母が「ミレイユ」と小声で咎める。だがもう止まらない。

「お姉様って、本当に上手に我慢するのね」

 ミレイユは笑った。

「その顔を見ると、昔から安心するの。ああ、ちゃんと私が勝ってるんだって」

 セレナは静かに彼女を見た。

 ここまで来ると、怒りというより虚しさが先だった。自分の痛みを娯楽にする人間に、どれほど誠実に向き合おうとしても無駄だったのだ。

「帰って」

 ようやくそれだけ言う。

 ミレイユは目を丸くする。

「何ですって?」

「もう十分でしょう。帰って」

「お姉様――」

「あなたが何を言っても、もう今さら何も変わらないわ」

 セレナの声は低く、しかし不思議なほど安定していた。

「だから帰って。これ以上ここで勝ち誇っても、あなたが手に入れたものの価値は変わらない」

 その一言で、ミレイユの顔色が変わった。

 価値。

 その言葉に何かを感じたのかもしれない。けれど彼女はすぐにそれを振り払うように唇を歪めた。

「ええ、そうね。価値ならこれからいくらでも証明されるわ」

 吐き捨てるように言って、踵を返す。

 継母は慌ててその後を追った。去り際、一度だけセレナを振り返るが、そこにあるのは心配より困惑だった。娘を止めることも、長女を庇うこともできず、ただ事態に振り回されるだけの顔。

 扉が閉まる。

 しばらく帳簿室には沈黙だけが残った。

 やがてグレアムが低く言う。

「……あまりにも」

 言葉の続きを、老執事は飲み込んだ。

 セレナはそれに首を振る。

「いいの。よく分かったから」

「何がでございますか」

 セレナは少しだけ目を伏せた。

「もう、あの子は私から何かを奪いたいわけじゃないの。奪ったと信じたいだけ」

 その言葉が口から出た時、自分でも少し驚いた。

 そうだ。

 ミレイユは幸福が欲しいのではない。勝ったと感じたいだけなのだ。だから、相手が本当に何を失うのかも、自分が何を拾うのかも見ていない。

 ただ、姉が空になったと信じられれば満足する。

「お嬢様……」

「だから、あの子はまだ何も分かっていない」

 ルシアンの目を思い出す。

 穏やかで、静かで、冷たい、あの目。

 あれは恋する男の目ではなかった。

 所有する前に値踏みする目。

 抵抗するものがどこで折れるかを待つ目。

 ミレイユはそんな男に“選ばれた”ことを喜んでいる。

 その愚かさが、妙に胸を冷やした。

 だが同時に、セレナの中で何かがはっきりした。

 あの婚約は、もう失ったものではない。

 切り離されたものだ。

 アルベルトの言葉が遅れて胸の底へ落ちる。

『あなたは奪われたのではない。切り離されたのです』

 その意味が、ようやく分かる気がした。

 夜も更けて、帳簿室を出る頃には、楽師の音も止み、大広間のざわめきもだいぶ静まっていた。夜会はもう終わりへ向かっているのだろう。客たちは帰り支度を始め、今日の出来事は明日から一斉に社交界へ広がる。

 セレナは扉の前で一度だけ立ち止まった。

 これまでなら、明日の噂を思って怖くなったかもしれない。けれど今は不思議なほど静かだった。

 失うものは、もう失った。

 いや、違う。

 失ったと思わされていたものが、本当にそうだったのかを、これから見極める時間が始まるのだ。

 回廊の先に、小さく灯る壁灯が並んでいる。ひとつひとつは頼りないのに、続いていると道になる。

 セレナはその灯りの列を見つめ、ゆっくりと歩き出した。

 帰る場所は、まだある。

 少なくとも今夜は。

 そしてたぶん、自分が思っていたよりずっと遠くに、別の帰る場所もあるのだろう。まだ見えないだけで。
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