妹に婚約者を奪われたので差し上げました。ですが、檻に入ったのはあの子のほうでした

鍛高譚

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第七話 舞踏会の宣告

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第七話 舞踏会の宣告

 夜会当日、フォルディア伯爵家の大広間は、まるで最初から何一つ歪みなど存在しなかったかのように整えられていた。

 高い天井から吊るされた燭台には、磨き上げられた光が幾重にも反射している。白薔薇を中心にまとめられた装花は、甘すぎず冷たすぎず、夜の始まりにふさわしい静かな華やぎを作っていた。床に映る灯りは柔らかく、壁際の楽師たちはすでに音を合わせ始めている。

 客は次々と到着していた。

 伯爵家、子爵家、男爵家、そしてそれらを取り巻く名家の親族たち。色とりどりの衣装が行き交い、笑い声が重なる。見た目だけなら、今宵のフォルディア伯爵家は完璧だった。

 その完璧さの中心に立つべき者として、セレナもまた整えられていた。

 今夜の彼女のドレスは、白に近い淡い銀青だった。真珠の刺繍が灯りの下で控えめに光り、必要以上に飾り立てることなく、彼女自身の静かな美しさを引き立てている。髪もすっきりとまとめられ、亡き母の形見だった小さな真珠の耳飾りだけが、かすかな存在感を見せていた。

 鏡の前で最後の確認をしていた時、侍女がそっと言った。

「とてもお綺麗です、お嬢様」

 セレナは微笑んだ。

「ありがとう」

 その一言だけなのに、侍女は泣きそうな顔になった。

 きっと皆、何かを察しているのだろう。今夜、この夜会がただの夜会では終わらないことを。セレナ自身も、もうそれを疑ってはいなかった。

 扉がノックされ、グレアムが姿を見せた。

「お嬢様、そろそろ」

「ええ」

 セレナは鏡から目を離した。

 不思議なほど落ち着いていた。怖くないわけではない。けれど、怯えても何も変わらないと分かってしまったあとの静けさが、胸の内にあった。

 広間へ降りる前、廊下の先でミレイユの笑い声が聞こえた。

 振り向けば、義妹は薔薇色のドレスに身を包み、上気した顔で継母に何かを話している。今夜のミレイユは明らかに装いすぎていた。伯爵家令嬢の夜会着としては華やかすぎるほど華やかで、主役を奪う気配を隠そうともしない。

 継母イザベルはそれを止めなかった。

 むしろ娘を見て満足そうに頷いている。

 セレナはそれを見て、胸の奥で最後の何かが静かに切れるのを感じた。

 この人たちは、本当に何も守る気がないのだ。

 家も、礼も、長女の婚約も。

 ただ、目の前で自分たちに都合よく輝いて見えるものに酔っているだけ。

「お姉様」

 ミレイユがセレナに気づいて声を上げた。

「まあ、ずいぶん地味なお色ですこと」

 継母がわずかに眉をひそめたが、やはり咎めない。

 セレナはただ答えた。

「伯爵家の夜会ですもの。主催側の娘が場を乱す色を選ぶわけにはいかないわ」

 一瞬だけ、ミレイユの笑みが引きつった。

 だがすぐにまた、何も分かっていない可愛らしい妹の顔になる。

「そう。私は少し華やかすぎたかしら」

 その声音には、まるで“でも似合っているでしょう?”とでも言いたげな甘さがあった。

 セレナはそれ以上言葉を交わさず、先に広間へ向かった。

 客たちへの挨拶は滞りなく進んだ。

 伯爵家の長女として、主催者側の娘として、セレナは微笑み、礼を尽くし、短い会話を交わしていく。誰にどの程度の親しさを見せるべきか、誰に距離を保つべきか、すでに身体に染みついていた。

「今夜はまた見事なお支度ですな、セレナ嬢」

「ありがとうございます」

「伯爵家の夜会は、いつも安心して参加できます」

 その言葉に、セレナは胸の内で小さく苦笑した。

 安心して参加できる夜会。

 それがどれほど多くの見えない手間の上に成り立っているのか、客たちは知らない。知る必要もない。だが今夜だけは、その“安心”が砂の上に立っているように思えた。

 やがて、ヴェルド侯爵家の到着が告げられた。

 広間の入口に視線が集まる。

 ルシアンは、今夜も完璧だった。

 深い黒に銀の刺繍を施した正装は彼の整った容姿をいっそう際立たせ、歩みには一寸の乱れもない。挨拶の角度、視線の動き、周囲へ向ける微笑み。そのすべてが「理想の婚約者」「理想の貴公子」として磨き抜かれている。

 だからこそ、その仮面の下にあるものが余計に不気味だった。

 彼はまず伯爵夫妻へ礼を取り、次いでセレナの前へ来た。

「今夜もお美しい」

 決まりきった、けれど十分に甘やかな言葉。

「ありがとうございます」

 セレナもまた、決まりきった礼を返す。

 彼の目を見た瞬間、胸の奥がひやりとした。

 穏やかな笑みのまま、彼はもう何かを決めている目をしていた。

「今夜は大切な夜になる」

 ひどく小さな声で、彼だけが分かるように言う。

 セレナは表情を崩さなかった。

「そうでしょうね」

 するとルシアンは、ほんのわずかに目を細めた。

 それが満足なのか、興味なのかは分からない。けれど彼はもう、後戻りしない位置まで来ているのだと分かった。

 開宴の挨拶は父が務めた。

 内容はいつも通りだった。来客への感謝、今後の親交、豊かな実りへの祈り。だが父の声は少しだけ上ずっていて、言葉の端に落ち着きのなさが滲んでいた。

 彼も何かを感じているのかもしれない。

 だとしても、もう遅い。

 最初の舞曲が始まる。

 本来なら、ここで婚約者同士が中央へ進み出るはずだった。

 広間の空気が自然とその流れを待つ。視線がセレナとルシアンへ集まる。何十もの目が、「伯爵家の長女と侯爵家嫡男」の絵になる瞬間を期待していた。

 セレナは一歩、前へ出ようとした。

 だが、その瞬間だった。

「お待ちくださいませ」

 甘く澄んだ声が、広間に響いた。

 空気が止まる。

 ミレイユが、ゆっくりと中央へ歩み出ていた。

 薔薇色のドレスが灯りを受けてきらめく。まるで最初から自分こそがこの場の主役だと信じて疑わない足取りだった。

 継母は息を呑み、父は顔色を変える。だが、誰もその場で止められない。

 セレナは動かなかった。

 ただ、ああ、始まったのだと理解していた。

「皆様に、お伝えしなければならないことがございますの」

 ミレイユは両手を胸の前で重ね、今にも泣き出しそうな目を作った。

 客たちがざわめく。

 何が起こるのか。好奇心と不安が一気に広間を満たした。

 その時、セレナはルシアンを見た。

 彼は止めない。

 止める気配すらない。

 ただ静かに、ことの進行を見守っている。

 それが答えだった。

「本当は、こんな大切な夜に申し上げるつもりはなかったのです」

 ミレイユの声が震える。

「でも、もうこれ以上、黙っていることはできませんの」

 何人もの視線がセレナへ向く。

 まだ何も始まっていないのに、すでに彼女が裁かれる側として配置されていくのが分かった。

「お姉様は……セレナお姉様は、ずっと私をお嫌いでした」

 息を呑む音が、あちこちで重なった。

「私はずっと、我慢してまいりました。家族ですもの、きっと分かり合えると信じて……でも、もう限界なのです」

 涙が一粒、頬を伝う。

 完璧だった。

 可哀想な妹の告白として、これ以上なく。

 セレナは立ったまま、それを見ていた。胸は痛む。けれど今さら驚きはない。予感していたものが、形を持って目の前に現れただけだ。

 父がかすれた声を上げる。

「ミレイユ……何を――」

「父上」

 そこで、ルシアンが一歩前に出た。

 低く、しかしよく通る声。

 その一言だけで、広間の空気はさらに張り詰めた。

 ルシアンは中央へ進み、ミレイユの隣に立つ。

 それだけで、もはや誰がどちら側に立っているのかは明白だった。

 セレナの指先が冷たくなる。

 けれど震えない。

 ルシアンは周囲を見渡し、穏やかな微笑みを保ったまま言った。

「今宵、皆様の前で申し上げるにはふさわしくない話かもしれません。ですが、だからこそ曖昧にしてはならないことでもあります」

 その言葉は整いすぎていて、かえって恐ろしかった。

 ああ、この人は本当に、この場を選んだのだ。

 大勢の目の前で。

 最も逃げ場のない形で。

「私は」

 ルシアンの視線がまっすぐセレナへ向けられる。

 その瞬間、広間中が息を止めたようだった。

「セレナ・フォルディア嬢との婚約を、ここで解消したいと思います」

 宣告だった。

 静かで、あまりにも落ち着いた声で告げられたそれは、だからこそ誰の耳にもはっきり届いた。

 ざわめきが爆発したように広がる。

「まあ……」 「婚約解消……?」 「こんな場で……」 「まさか……」

 継母が青ざめ、父が何か言おうと口を開く。だが声にならない。

 ミレイユは涙に濡れた顔のまま、ひどく小さく、しかし確かな勝ち誇りを唇の端ににじませていた。

 セレナは、何も言えなかったのではない。

 言う必要があるのかを、一瞬で考えてしまったのだ。

 ここで否定すればどうなる。

 きっとミレイユはさらに泣くだろう。ルシアンは穏やかな顔で「これ以上彼女を傷つけたくない」とでも言うだろう。継母は娘を庇い、父は場を収めることしか考えまい。

 この場は、もう最初から自分に勝ち目のある場所ではなかった。

 その時、ミレイユが震える声で言った。

「お姉様を悪く言いたいわけではありませんの……でも、私、もう……」

 そこでわざと声を詰まらせる。

 何人かの婦人たちは、すでに彼女を庇う目で見ていた。

 ルシアンが一歩だけミレイユの側へ寄った。

 その動作が、決定打になった。

 守る側に立つ男。

 涙を見せる可哀想な妹。

 静かに立ち尽くす、冷たい姉。

 絵が完成してしまう。

 セレナはその光景を、まるで少し離れた場所から眺めているような気分で見ていた。痛みがあるのに、妙に遠い。

「セレナ嬢」

 ルシアンが呼ぶ。

「あなたにも言い分はおありでしょう。ですが、私はもう見過ごせない」

 見過ごせない。

 その言葉に、セレナはようやく小さく息を吸った。

 では、この人は何を見ていたのだろう。

 ミレイユが侍女を追い詰めたことを。

 形見を壊したことを。

 涙を武器にして人を陥れることを。

 全部見て、それでもなおこちらへその言葉を向けるのか。

 胸の奥で、何かが静かに焼けるようだった。

「……そうですか」

 口から出たのは、驚くほど落ち着いた声だった。

 広間のざわめきが一瞬だけ薄れる。

 セレナはまっすぐルシアンを見た。

「それが、あなたのお決めになったことなのですね」

 ルシアンはわずかに目を細める。

 ミレイユは、期待したような取り乱しが起きなかったことに、ほんの少し不満そうだった。

「ええ」

 ルシアンが答える。

「私の決断です」

「分かりました」

 その一言に、今度は客たちのほうが戸惑ったようにざわついた。

 もっと何かあると思ったのだろう。否定、抗弁、涙、怒り。

 だがセレナはどれも見せなかった。

 見せたくなかったのではない。

 ここで何かを見せても、この人たちはそれを自分の望む形にしか受け取らないと、もう分かっていたからだ。

 ミレイユが一瞬だけ顔を歪めた。

 その場で泣き崩れる姉が見たかったのだろう。大勢の前で惨めに縋る姿を期待していたのかもしれない。

 けれどセレナはただ静かに立っていた。

 それがかえって、ミレイユを苛立たせた。

「お姉様……」

 彼女は潤んだ目でセレナを見る。

「私、こんなことになってしまって、本当に悲しいの」

 その言葉が、ついに胸の奥に残っていた何かを完全に冷えさせた。

 悲しい。

 この女は本気で、自分が悲劇の中心だと思っている。

 ルシアンが選んだのはミレイユだ。

 父も継母も止めない。

 そして広間の大半は、もうミレイユを可哀想な妹として見始めている。

 ならばもう、この場にしがみつく意味は何もない。

 セレナはゆっくりと礼をした。

「今夜は伯爵家の夜会です。これ以上、場を乱すつもりはありません」

 その言葉に、父がようやくはっとした顔をする。

 場を乱しているのは誰なのか。

 今になって気づいても、遅い。

 セレナは顔を上げた。

「皆様、失礼いたします」

 そして、中央の灯りから一歩、二歩と離れる。

 視線が刺さる。

 哀れみ、好奇心、困惑、冷笑。

 けれどそのどれも、もう今のセレナには遠かった。

 背後でミレイユの小さな声がした。

「……これで」

 たぶん、セレナにだけ聞こえるように。

「やっと全部、私のもの」

 足を止めなかった。

 止めたところで、もう何も取り戻せはしないと分かっていたから。

 広間を出る直前、ふと視線の先にアルベルトの姿が見えた。

 少し離れた柱のそばに立ち、こちらを見ている。

 彼だけが、好奇心でも哀れみでもない目をしていた。

 ただ、事実を見ている目。

 その静かな視線に、セレナはほんのわずか救われる思いがした。

 扉の外へ出ると、楽師たちの音が一度止まり、やがて何事もなかったかのようにまた流れ始めた。

 夜会は続くのだ。

 伯爵家の夜は、彼女の婚約が壊れたくらいでは止まらない。

 セレナは廊下の冷えた空気の中で、ようやく一度だけ目を閉じた。

 終わった。

 そう思うと、胸の奥には悲しみと同じくらい、ひどく静かな感覚が広がっていった。

 終わったのだ。

 そしてたぶん、何か別のものが、ここから始まる。
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