1 / 31
第1章:偽りの聖女と婚約破棄
1話
しおりを挟む
夕暮れの赤い陽光が、王城の広々とした石畳の回廊を鮮やかに染め上げている。真紅の絨毯が敷かれた床を、ひとりの少女――公爵令嬢アストリッド・フォン・ラルディアが静かに歩いていた。
彼女は十七歳。光を受けるたび金色に煌めく長い髪を後ろでゆるやかに結い、その上品な佇まいと美貌から、周囲の誰もが「優雅さと気高さを兼ね備えた公爵令嬢」と評してきた存在だ。しかし、彼女にはもう一つの顔がある。
――“王国に仕える聖女”。
アストリッドは幼い頃から奇跡を起こせる力を示し、神殿により公式に「聖女」として任命された。以来、貴族でありながら王国のため、人々のために、祈りと癒しの奇跡を与え続けてきた。
その献身的な姿勢は国中から敬意を集めており、国王陛下も彼女を誇りに思い、第一王子ライナーとの婚約を認めた。王家と公爵家の結びつき――それは周囲からも「円満かつ理想的な婚約」と称賛されてきたのだ。
しかし、今日、王城に彼女が呼び出されたのは、おそらく“めでたい行事”のためではない。アストリッドの胸には、言葉にならない不安が渦巻いていた。
「……今日の“重大な発表”って、何なのかしら」
口には出さず、心の中で静かに問いかける。ほんの数日前、神殿の高司祭から、急に「王家主催の集会に出席せよ」と通知があった。
その呼び出し方が妙に物々しく、周囲も「単なる式典ではないらしい」と噂している。
ライナー殿下――彼女の婚約者である第一王子も、浮かない顔をしていたように思う。まるで何かを隠そうとしているかのように、どこかぎこちない態度だった。
アストリッドは、胸に薄い不安を抱きながらも、王城の奥にある“大広間”へと続く扉の前へ辿り着く。そこには近衛兵が二人厳めしい表情で立っていたが、彼女の姿を認めると肩にかけた槍を動かして扉を開き、通行を許す。
彼女は十七歳。光を受けるたび金色に煌めく長い髪を後ろでゆるやかに結い、その上品な佇まいと美貌から、周囲の誰もが「優雅さと気高さを兼ね備えた公爵令嬢」と評してきた存在だ。しかし、彼女にはもう一つの顔がある。
――“王国に仕える聖女”。
アストリッドは幼い頃から奇跡を起こせる力を示し、神殿により公式に「聖女」として任命された。以来、貴族でありながら王国のため、人々のために、祈りと癒しの奇跡を与え続けてきた。
その献身的な姿勢は国中から敬意を集めており、国王陛下も彼女を誇りに思い、第一王子ライナーとの婚約を認めた。王家と公爵家の結びつき――それは周囲からも「円満かつ理想的な婚約」と称賛されてきたのだ。
しかし、今日、王城に彼女が呼び出されたのは、おそらく“めでたい行事”のためではない。アストリッドの胸には、言葉にならない不安が渦巻いていた。
「……今日の“重大な発表”って、何なのかしら」
口には出さず、心の中で静かに問いかける。ほんの数日前、神殿の高司祭から、急に「王家主催の集会に出席せよ」と通知があった。
その呼び出し方が妙に物々しく、周囲も「単なる式典ではないらしい」と噂している。
ライナー殿下――彼女の婚約者である第一王子も、浮かない顔をしていたように思う。まるで何かを隠そうとしているかのように、どこかぎこちない態度だった。
アストリッドは、胸に薄い不安を抱きながらも、王城の奥にある“大広間”へと続く扉の前へ辿り着く。そこには近衛兵が二人厳めしい表情で立っていたが、彼女の姿を認めると肩にかけた槍を動かして扉を開き、通行を許す。
11
あなたにおすすめの小説
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
【完結】男装して会いに行ったら婚約破棄されていたので、近衛として地味に復讐したいと思います。
銀杏鹿
恋愛
次期皇后のアイリスは、婚約者である王に会うついでに驚かせようと、男に変装し近衛として近づく。
しかし、王が自分以外の者と結婚しようとしていると知り、怒りに震えた彼女は、男装を解かないまま、復讐しようと考える。
しかし、男装が完璧過ぎたのか、王の意中の相手やら、王弟殿下やら、その従者に目をつけられてしまい……
尽くしてきた婚約者に裏切られたので、婚約を解消しました〜彼が愛に気づいたのは、すべてを失ったあとでした〜
ともどーも
恋愛
「今回で最後だ。誓うよ」
これは二度目の『結婚式キャンセル』の時に言われた言葉。
四年間、愛する婚約者ディートリッヒのため尽くし続けてきたイリス。
だがディートリッヒは、イリスの献身を当然のものとし、やがて初恋の令嬢エレノアを優先するようになる。
裏切り、誤解、そして理不尽な糾弾。
心も身体も限界を迎えた夜、イリスは静かに決意した。
──もう、終わらせよう。
ディートリッヒが「脅しのつもり」で差し出した婚約解消の書類を、イリスは本当に提出してしまう。
すべてを失ってから、ようやく自分の愛に気づいたディートリッヒ。
しかしもう、イリスは振り返らない。
まだ完結まで執筆が終わっていません。
20話以降は不定期更新になります。
設定はゆるいです。
居候と婚約者が手を組んでいた!
すみ 小桜(sumitan)
恋愛
グリンマトル伯爵家の一人娘のレネットは、前世の記憶を持っていた。前世は体が弱く入院しそのまま亡くなった。その為、病気に苦しむ人を助けたいと思い薬師になる事に。幸いの事に、家業は薬師だったので、いざ学校へ。本来は17歳から通う学校へ7歳から行く事に。ほらそこは、転生者だから!
って、王都の学校だったので寮生活で、数年後に帰ってみると居候がいるではないですか!
父親の妹家族のウルミーシュ子爵家だった。同じ年の従姉妹アンナがこれまたわがまま。
アンアの母親で父親の妹のエルダがこれまたくせ者で。
最悪な事態が起き、レネットの思い描いていた未来は消え去った。家族と末永く幸せと願った未来が――。
子育てが落ち着いた20年目の結婚記念日……「離縁よ!離縁!」私は屋敷を飛び出しました。
さくしゃ
恋愛
アーリントン王国の片隅にあるバーンズ男爵領では、6人の子育てが落ち着いた領主夫人のエミリアと領主のヴァーンズは20回目の結婚記念日を迎えていた。
忙しい子育てと政務にすれ違いの生活を送っていた二人は、久しぶりに二人だけで食事をすることに。
「はぁ……盛り上がりすぎて7人目なんて言われたらどうしよう……いいえ!いっそのことあと5人くらい!」
気合いを入れるエミリアは侍女の案内でヴァーンズが待つ食堂へ。しかし、
「信じられない!離縁よ!離縁!」
深夜2時、エミリアは怒りを露わに屋敷を飛び出していった。自室に「実家へ帰らせていただきます!」という書き置きを残して。
結婚20年目にして離婚の危機……果たしてその結末は!?
王太子妃専属侍女の結婚事情
蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。
未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。
相手は王太子の側近セドリック。
ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。
そんな二人の行く末は......。
☆恋愛色は薄めです。
☆完結、予約投稿済み。
新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。
ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。
そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。
よろしくお願いいたします。
~春の国~片足の不自由な王妃様
クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。
春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。
街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。
それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。
しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。
花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??
婚約者を奪った妹と縁を切り、辺境領を継いだら勇者一行がついてきました
藤原遊
ファンタジー
婚約発表の場で、妹に婚約者を奪われた。
家族にも教会にも見放され、聖女である私・エリシアは “不要” と切り捨てられる。
その“褒賞”として押しつけられたのは――
魔物と瘴気に覆われた、滅びかけの辺境領だった。
けれど私は、絶望しなかった。
むしろ、生まれて初めて「自由」になれたのだ。
そして、予想外の出来事が起きる。
――かつて共に魔王を倒した“勇者一行”が、次々と押しかけてきた。
「君をひとりで行かせるわけがない」
そう言って微笑む勇者レオン。
村を守るため剣を抜く騎士。
魔導具を抱えて駆けつける天才魔法使い。
物陰から見守る斥候は、相変わらず不器用で優しい。
彼らと力を合わせ、私は土地を浄化し、村を癒し、辺境の地に息を吹き返す。
気づけば、魔物巣窟は制圧され、泉は澄み渡り、鉱山もダンジョンも豊かに開き――
いつの間にか領地は、“どの国よりも最強の地”になっていた。
もう、誰にも振り回されない。
ここが私の新しい居場所。
そして、隣には――かつての仲間たちがいる。
捨てられた聖女が、仲間と共に辺境を立て直す。
これは、そんな私の第二の人生の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる