偽聖女と断罪された私、帝国で真の力に目覚めました  ――王国はもう、救いません

鍛高譚

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第3章:帝国境への道――刻まれる宿命の足音

24話

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4.帝国へ抜けるための“手続き”

 ランフレアの町の中心部には、大きな掲示板が設置されている。そこには国境通行の手続きや、冒険者向けのクエスト情報などが貼り出されていた。
 アストリッドたちは道行く人の邪魔にならないよう端に寄り、掲示板を熟読する。
 ――帝国へ渡るには、いくつかの方法があるらしい。

1. 正式ルート:王国の出国許可証(通行証)を取得し、国境の関所で帝国側の入国審査を受ける。税金や審査料がかかるが、合法的に国境を越えられる。


2. 商隊に混ざる:大きな商隊は手続きを一括で行うため、個人よりスムーズに越境できることが多い。ただし信用のある商人と契約する必要がある。


3. 裏ルート:密輸や不正通行を斡旋する闇商人もいるようだが、危険が大きい上に法を破ることになる。



 追放されているアストリッドにとって、王国の正式な手続きはやや不安がある。身分を詳細に調べられた場合、偽りの聖女=アストリッド・フォン・ラルディアだとバレる可能性があるからだ。
 しかし、裏ルートに手を出すのはリスクが高すぎる。帝国の検問に捕まってしまえば、そこでも詰む。
 ――となると、“商隊に紛れ込む”方法が比較的安全かもしれない。大きな商隊であれば個々人を深く詮索しないことが多いし、帝国側も商人の信用を重んじるため、スムーズに通るケースが多いと聞く。

「……問題は、商人さんが見つかるかどうか、ですね。わたしたちのような正体不明の二人組を信用してくれるでしょうか」
「お金さえ払えば、あまり深くは問わない商人もいるわ。逆に堅物の商人だと審査が厳しいかもしれないけど……」

 二人は市場へ向かい、商人たちが店を構える区画へ足を運んだ。そこには色とりどりの布や香辛料、帝国の珍しい工芸品などが並んでいて、まるで異国の風が吹き込んでいるようだ。
 あちこちの露店を覗きつつ情報収集していると、「もうすぐ帝国へ向かう大きな商隊がある」という噂が耳に入った。
 ――噂の出所は、ミカトという名の行商人。やや肥満気味の中年男性で、がらがらと荷車を引きながら行き来している。

「帝国に行く商隊? ああ、知ってるぜ。もうすぐこの町を出る予定だが、かなり多くの荷を運ぶらしい。人数も多いから護衛も兼ねて、いろんな奴らを雇っているみたいだ。隊列の規模はそこそこ大きいはずだ」
「その商隊の主(あるじ)はどなたかご存知ですか?」
 クラリッサが丁寧に訊ねると、ミカトは「ファーレン商会だな」と答える。
「ファーレン商会は帝国との取引で大きくなったとこだ。比較的誠実と言われているが……ま、商人に誠実も何もねえさ。結局はカネ次第だ。金さえ払えれば、余計な詮索はしないんじゃないか?」

 商会の信用度がそこそこ高いなら、逆に身元を厳しく見られる可能性もある。しかし、今は選んでいる余裕はないし、不誠実な商人に騙される危険性の方が大きいかもしれない。
 アストリッドは顎に手を当て、しばし考え込む。――できれば、ファーレン商会の隊列に参加を申し込んで、早めに帝国へ向かいたい。ここで例のならず者集団に見つかったら面倒だ。

「ありがとう、ミカトさん。ファーレン商会はどこに行けば会えるのかしら?」
「ああ、町の西側に大きな倉庫がある。そこに商隊をまとめているはずだ。……お嬢ちゃんたち、気をつけろよ? ランフレアは賑わってるが、奴ら“追跡屋”って連中も結構うろついてる。噂によれば、金髪の女を捜しているそうだが」
「そ、そうなんですね。情報ありがとう」

 クラリッサが慌ててお礼を言い、アストリッドとともにその場を立ち去った。――やはり動向が筒抜けになっている可能性は高い。
 急いでファーレン商会へ向かおうと決めた二人は、通りの人波に紛れ込むように歩く。途中でさっと外套のフードを深く被り、さらに目立たないよう気を配った。
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