偽聖女と断罪された私、帝国で真の力に目覚めました  ――王国はもう、救いません

鍛高譚

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第4章:復讐の果てに待つ、煌めきの新世界

31話

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 復讐の果てに――始まる新たな道

 帝国の大都市――リューベル。その外れに設けられたファーレン商会の拠点にて、アストリッドたちはようやく一息つくことができた。
 長い道のりを護衛した商隊はここで荷を降ろし、帝国の市場や各地へ転売を進める。ファーレン自身は帝国の有力者との面会に忙しいらしく、もはやアストリッドたちのことまで構ってはいられない。
 だが、それで構わない。すでに契約は完了し、彼女たちは無事に帝国へとたどり着いたのだから。

「ここからは、私たちの自由だわ。王都にいた頃よりずっと、自由に動ける気がする」
「ええ……。お嬢様がしたいことを、思う存分やってください」
 クラリッサの笑顔には安堵の色が濃い。長かった逃亡の旅が、ようやく一区切りついたのだ。

 ――もっとも、アストリッドの旅はこれで終わりではない。
 むしろ、ここからが本番と言える。帝国で新たな地位を築き、王国に復讐を果たすための足がかりを見つける。そのためには情報収集が欠かせないし、自分の力の謎も解明しなければならない。

 そこへ、いつの間にか近づいていたジークが声をかける。
「俺は、まずは帝都近郊の学術院か大図書館を回りたい。あの古い文書の手がかりを探すためにな」
「……そう。それで、私に何を求めるの?」
「君の力が、もし古い聖女伝説と関わりがあるなら、解読の糸口になるかもしれない。俺としては協力を願いたいが……まあ、君には君の目的があるだろう」

 ジークの瞳に揺れるのは、好奇心と淡い期待。それはアストリッドにも共有するところがある。自分の“歪んだ奇跡”の正体を知れば、さらに大きな力を得ることができるかもしれない。

「分かったわ。私も、自分の力の正体を知りたい。――もしその答えが見つかれば、いつか王国を跪(ひざまず)かせることもできるかもしれないし」
「はは、物騒だな。でも、君ならやりかねない。……じゃあ、一緒に行動しよう。学術院や図書館は、一般人が簡単に入れる場所じゃない。多少腕の立つ者が必要になるかもしれないからな」

 そうして、二人――いやクラリッサを含めた三人の帝国での新生活が始まった。

 アストリッドの目には、燃えるような決意が宿っている。かつて王国に捨てられ、屈辱を味わったあの日からずっと胸に滾(たぎ)り続けている復讐心。それを果たすには、まだ多くの準備が必要だ。
 ――王国は、いずれ彼女を求めて頭を下げるだろう。いや、もっと悲惨な状況になるかもしれない。ミレーユやライナー、そして神殿が自分を追放したことを血の涙で悔やむような結末さえ、あり得る。

 帝国の澄んだ空気を吸い込みながら、アストリッドは小さく口の端を吊り上げる。完全復讐という野望は、この地で花開かせるのだ。
 “偽りの聖女”などという烙印は、もはや通用しない。――今こそ彼女は、真の力を取り戻し、堂々たる復讐の舞台へと歩み始める。

――その先に待つのは、滅びゆく王国を見下ろす時。
アストリッドは新天地に一歩を踏み出し、静かに囁いた。

「覚悟なさい……私を捨てた王国。次に会うときは、あなたたちがその身分を捨てて私に跪く番よ」

 昇り始めた帝国の朝日は、残酷なまでに美しく、彼女の金髪を照り返していた。
 そして、それは王国の破滅への序曲でもある――。


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