「平民との恋愛を選んだ王子、後悔するが遅すぎる」

鍛高譚

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第4章:新しい幸せの形――それぞれの未来へ

4-2.華やぐ式典とラウルの最後の足掻き

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2.華やぐ式典とラウルの最後の足掻き

 迎春の日。王宮の大広間と隣接する庭園には色とりどりの装飾が施され、新しい年を祝う人々の声で満ちている。マイラは純白のドレスに銀の刺繍を施した装いで列席した。昨年までの“王子の婚約者”という立場で纏(まと)っていた気負いは薄れ、今は“グランシェル侯爵家の代表の一人”として、堂々たる振る舞いを見せる。
 彼女の周囲には貴族だけでなく有力商人も多く集まってきた。ベルナール商会のルシアンも、鮮やかな青のタキシードで姿を見せ、マイラとともに商材のブースをチェックしている。侯爵家の使用人たちは、一足先に搬入した品々を丁寧に陳列し、試作品の紹介パネルなどを準備していた。
「……いいですね。農産加工品は香りと見た目のインパクトがあるし、金属細工もこの場で光を浴びると美しく映えます」
 ルシアンは感心した様子で展示の様子を眺める。
「ええ、私もこれなら成功すると信じています。ここで反応が良ければ、春以降に本格的な販路拡大が期待できるでしょう」
 マイラは一緒に視線を巡らせながら、手応えを感じていた。

 この新春祝賀は、昼から夕刻までさまざまな行事が催され、夜には晩餐会と舞踏会が続く一大イベントだ。マイラとルシアンは昼の時間帯に商談や顔つなぎを済ませ、夜の舞踏会では社交界の関係者との懇親を図るつもりでいる。
 周囲には華麗なドレスや礼装に身を包んだ貴婦人たち、そして武官の制服や華やかな衣装をまとった貴族の令息たちが行き交う。王子や王女たちも少しだけ顔を見せ、挨拶程度に回っているようだが、そこにラウル王子の姿はほとんど見当たらない。
(――やはり、ラウル殿下は今日も表立っては行動できないのかしら)
 そう思った矢先、遠くの通路でラウルの姿がちらりと視界に入る。だが、彼は随分とやつれた顔をしていた。横にリリアの姿はなく、王宮の奥へ向かう途中のようだ。周囲の貴族が距離を取っているのが一目でわかる。もはや、ラウルは社交界にとって“無用かつ厄介な存在”として扱われているのだ。

 マイラは後ろめたさなど感じていないが、ほんのわずかに胸がチクリと痛む。かつては婚約者として、どこへ行くにも周囲から祝福の目を向けられていた王子が、今やこんな扱いを受けているのだから。しかし、それも彼自身の行動が招いた結果だ。マイラはすぐに気持ちを切り替え、ルシアンとともに展示会場のほうへ足を運んだ。

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