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008 果物でも太るんデス

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 そう。夜ご飯のカロリーこそ押さえた方がいいのは分かってるけど、夫婦水入らずの時間にまでダイエット持ち込みたくないのよね。

 だいたい、ランドは太ってないから付き合わせるのも申し訳ないし。

 だからこそ、出来る時に出来るだけ。テキトーにだけど、毎日続けることが大事になってくるのよ。
 飽きたり嫌になることが一番ダメだから。

「それにしてもせめて、デザートとかいかがですか?」
「それが一番太るのよ」
「では果物でも」
「果物って、意外に太るのよね。果糖っていって、果物にも糖分……砂糖みたいな成分が含まれてるから」

 本当はお菓子なんかよりも私は果物の方が好きなんだけど、あれも結局量を食べてしまったら結構なカロリーとか糖分摂取になっちゃうのよね。

 しかも確か栄養とかは、ほとんど皮と実の隙間にあるとかないとか。
 皮ごと食べられるのモノはいいけど、皮捨てちゃう系は栄養もほぼないとか昔なにかで見たなぁ。

 この世界の仕組みは全然知らないけど、食べたら太る。
 これだけはどこも共通なのよね、悲しいことに。

「奥様、この酸っぱい実でもですか?」

 奥にいたシェフの一人がおずおずと、私に籠いっぱいの果実を見せてきた。

 濃い青紫色で丸いその果実は、食べたことも見たこともある。
 この世界ではよくジャムやパイの上に乗せてある甘酸っぱい果実で、前の世界で言えばブルーベリーって感じかな。

 これなら皮ごと食べれるけど、一個が小さいから数食べちゃうのよね。甘酸っぱくて美味しいし。
 パクパク食べ出すと止まらない。
 これは危険だわ。でも見ると食べたくはなる。

「そうね。それも危険だわ」
「と言いつつ、心が揺れてる、と」
「シェナ、私の心の中を読むのは禁止よ」
「勘です!」
「もっとダメ」

 それが当たってるからダメなんじゃない。
 だって今のお口はアレを食べた時になってるんだもの。

 口に入れた瞬間甘酸っぱく、そして瑞々しい。
 噛んだ瞬間にプチっという音を立てながら、その実と果汁が口いっぱいに広がっていく。

 そしてその味と共に香りが鼻を抜け、ついもう一つと手が伸びていく。
 それはもう美味しさの無限ループ。

「だってミレイヌ様、よだれ……」
「ぐはっ。ダメよ。想像も恐ろしいわ」
「妄想ですね」
「ひどぉぉぉぉい」

 美味しいものって基本的にカロリーが高いものが多いのよね。

「でも確かに食べたいし、量さえ加減すれば果物は栄養価もあるからなぁ」
「やめられない、止まらない?」
「辞めて、そのフレーズは音楽付きで脳内再生されるから」

 向こうの知識なんてシェナはないのに、私が口ずさんだり何かの拍子でポロっと言ったことを覚えてるから困るのよね。
 迂闊に口を滑らせるものじゃないわね。気を付けよう。

「んー。効率よく摂取しつつ食べ過ぎず、ダイエットかぁ。難しいなぁ」

 自由自適に過ごすのは簡単なのに、こういろんなことを考えなきゃいけないのって結構大変なのね。

 丁寧な生活なんてしたことないから、余計なのかな。
 そう思うと、過去の自分が思い出されるようだった。
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