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次々に運び込まれる荷物のために、玄関の扉をあけたままにしていると、不意に大きな馬車が横付けされるのが見えた。馬車はかなりな豪華な物で、公爵家の家紋が書かれている。
「マルク様の馬車?」
でもそれにしては大きいし、前に見たのとは違う気がする。そんなことをぼんやり考えながら眺めていると、開いたドアから人が下りて来た。
中から出て来たのは侍女らしき使用人が数名と、男性の使用人が数名。
「んんん? うちの使用人ではないわよね」
あんなに豪華な馬車なんて手配していないし、制服だけ見てもうちの使用人とは明らかに違う。マルクが来ると思っていたのに、また別の馬車なのかしら。
「えっと、あなた方は?」
「この度はご婚約おめでとうございます。マルク様より、お荷物の片づけをするように仰せつかっております。また、こちらは、公爵家の料理長と修繕などを携われる使用人でございます」
馬車から降りるなり、にこやかな笑みを浮かべながら使用人たちは屋敷へとやってきた。その中でも侍女頭とも思える、やや年上の女性が私に丁寧に挨拶をする。
皆、マルクからよく言われてるのかな。初対面なのに、とてもおだかやで親切そうに見受けられた。
「こんなにたくさんの荷物だけではなく、人手まで連れてきてくださるなんて。とてもありがたいわ。うちの使用人たちの到着は夕方予定だから困っていたの」
「きっとそうだと言うことで、公爵家でも古くから仕えさせていただいている者たちで参った次第です」
「まぁ。それはすごいわね。でもいいのかしら。まだ婚約とは言っても、文書で正式に結ばれてもいないというのに。マルク様にここまでしていただいて」
「もちろんですオリビア様。全てはマルク様の、お嬢様を思う気持ちになります」
「そう……。それならば、あとでちゃんとお礼を言わないとね」
「はい。きっと喜ばれると思います」
「あなたたちも大変だろうけど、よろしく頼むわね」
「もちろんです」
うちにはいないタイプの、ある意味しっかりと教育された侍女だと思う。いつもユノンや他の侍女たちと気ままに軽口をたたいていたから少し緊張はするけど、せっかく手伝いに来てくれたのだからその言葉に甘えてしまおう。
「では申し訳ないのだけど、まずドレスなどを私の部屋に運んで欲しいの。ユノン、部屋の場所を教えてあげて?」
「はいお嬢様」
「で、男の方たちは家具を運んで欲しいわ。外の柵とかの修繕はもうすぐ他に頼んでいた人たちがくるはずだから、部屋の中の不備がないかとか、そういった方をお願いね」
「「はいオリビア様」」
幾人もの声が重なり、みんなが細かい指示を出さずともテキパキと動き出す。さてさて、こっちは任せても大丈夫そうね。
「料理長は私と一緒に来てくれるかしら。動いたみんながあとでお腹を空かせると思うから、大人数の料理を用意したいの」
「大人数ですか。それなら簡単に摘まめるものがいいですね」
「そうね。結構大人数になるだろうから、手分けしてやってしまいましょう」
「え、オリビア様手分けというのは……」
「ああ、もちろん私も手伝うわ」
「いえいえ、そういうわけにはいきません」
「大丈夫よ、いつものことだから気にしないで。それに今他の料理人たちもいないし、私たち二人しかいないから手分けしてやらないと時間がなくなってしまうわ」
「ですがしかし……」
まぁ普通の貴族令嬢はキッチンに立つとか、お手伝いなんてしないでしょうね。でもそんなことを気にしていたら回らないんだもの。
簡単な下ごしらえや、盛り付けなんかは私でも出来るし。身分とかそういうのは気にせず、どんどんこなしていかないと。
「気にしないで。さ、とっとと取り掛かりましょう」
「お、オリビア様~」
私に手伝わせる罪悪感からか、やや涙目になりつつある大柄な体型の料理長を連れ、私はキッチンへ急いだ。
「マルク様の馬車?」
でもそれにしては大きいし、前に見たのとは違う気がする。そんなことをぼんやり考えながら眺めていると、開いたドアから人が下りて来た。
中から出て来たのは侍女らしき使用人が数名と、男性の使用人が数名。
「んんん? うちの使用人ではないわよね」
あんなに豪華な馬車なんて手配していないし、制服だけ見てもうちの使用人とは明らかに違う。マルクが来ると思っていたのに、また別の馬車なのかしら。
「えっと、あなた方は?」
「この度はご婚約おめでとうございます。マルク様より、お荷物の片づけをするように仰せつかっております。また、こちらは、公爵家の料理長と修繕などを携われる使用人でございます」
馬車から降りるなり、にこやかな笑みを浮かべながら使用人たちは屋敷へとやってきた。その中でも侍女頭とも思える、やや年上の女性が私に丁寧に挨拶をする。
皆、マルクからよく言われてるのかな。初対面なのに、とてもおだかやで親切そうに見受けられた。
「こんなにたくさんの荷物だけではなく、人手まで連れてきてくださるなんて。とてもありがたいわ。うちの使用人たちの到着は夕方予定だから困っていたの」
「きっとそうだと言うことで、公爵家でも古くから仕えさせていただいている者たちで参った次第です」
「まぁ。それはすごいわね。でもいいのかしら。まだ婚約とは言っても、文書で正式に結ばれてもいないというのに。マルク様にここまでしていただいて」
「もちろんですオリビア様。全てはマルク様の、お嬢様を思う気持ちになります」
「そう……。それならば、あとでちゃんとお礼を言わないとね」
「はい。きっと喜ばれると思います」
「あなたたちも大変だろうけど、よろしく頼むわね」
「もちろんです」
うちにはいないタイプの、ある意味しっかりと教育された侍女だと思う。いつもユノンや他の侍女たちと気ままに軽口をたたいていたから少し緊張はするけど、せっかく手伝いに来てくれたのだからその言葉に甘えてしまおう。
「では申し訳ないのだけど、まずドレスなどを私の部屋に運んで欲しいの。ユノン、部屋の場所を教えてあげて?」
「はいお嬢様」
「で、男の方たちは家具を運んで欲しいわ。外の柵とかの修繕はもうすぐ他に頼んでいた人たちがくるはずだから、部屋の中の不備がないかとか、そういった方をお願いね」
「「はいオリビア様」」
幾人もの声が重なり、みんなが細かい指示を出さずともテキパキと動き出す。さてさて、こっちは任せても大丈夫そうね。
「料理長は私と一緒に来てくれるかしら。動いたみんながあとでお腹を空かせると思うから、大人数の料理を用意したいの」
「大人数ですか。それなら簡単に摘まめるものがいいですね」
「そうね。結構大人数になるだろうから、手分けしてやってしまいましょう」
「え、オリビア様手分けというのは……」
「ああ、もちろん私も手伝うわ」
「いえいえ、そういうわけにはいきません」
「大丈夫よ、いつものことだから気にしないで。それに今他の料理人たちもいないし、私たち二人しかいないから手分けしてやらないと時間がなくなってしまうわ」
「ですがしかし……」
まぁ普通の貴族令嬢はキッチンに立つとか、お手伝いなんてしないでしょうね。でもそんなことを気にしていたら回らないんだもの。
簡単な下ごしらえや、盛り付けなんかは私でも出来るし。身分とかそういうのは気にせず、どんどんこなしていかないと。
「気にしないで。さ、とっとと取り掛かりましょう」
「お、オリビア様~」
私に手伝わせる罪悪感からか、やや涙目になりつつある大柄な体型の料理長を連れ、私はキッチンへ急いだ。
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