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「そ、それよりもうちの娘に婚約を申し込むというのは本当なのですか? うちはしがない男爵ですし、公爵家に嫁げるような身分ではないと思うのです」
身分と言うよりも結婚の支度金が払えないって、顔にはしっかり書いてある。まぁそうでしょうね。元々あるのは借金ばかりだし、いくら後からお金になるかもしれないと思ったって、私のためには借金なんてしないと思っていたわよ。
でもこの婚約が私ではなくシーラだったら。きっとお父様たちは何をしてでもお金をかき集めてきたんでしょうね。
「オリビアにはその身一つで来てくれればいいと思っている」
「そうですか、そうですか……。でも本当によろしいのですか? 親の自分が言うのもなんですが、この子は器量も要領も良くなく、はたして公爵夫人として勤めあげることが出来るのか……。その点下の娘でしたら美しく、公爵家のためにもなったと思うのですが……」
「下の娘はすでに身ごもっていて、オリビアの婚約者と婚約しなおしたのではなかったのですか?」
「ああ、そうなのです。惜しいことをしました。オリビアがこんなんだったばかりに、元婚約者にまで愛想を尽かされてしまって」
「……」
お父様たちの中では、そんな風に思っていたのね。なんとなくは分かっていたけど、言葉に出されるとでは全然違う。
お父様たちにとっては、全部私が悪いんだ。婚約者も寝取られたのも、アレンがシーラに婚約を乗り換えたのも。私が美しくもなく、要領が悪かったから……。びっくりするほどの意見よね。酷すぎて、さすがに笑えないわ。
「それはあまりにも、実の娘に対する言い様ではないですね」
マルクの顔色が変わっているのにも気づかず、父はただ饒舌に話し続ける。いかにシーラが優れていて、シーラをマルクの元に嫁に行かせたかったのかを。
ずっとシーラの本命はマルクだったし、お父様たちがシーラを玉の輿にしたかったのは知っていた。でも現にシーラはすでにアレンと婚約したというのに。
まったくどうしようもない人ね。ビックリするほど、頭が悪いと言うかなんというか。もう恥さらしのレベル超えちゃっているし。
私の方が、むしろこんな親ですみませんと言いたいぐらいだわ。
「いや本当に、それぐらいオリビアはダメなのですよ。こんなのを公爵家に入れてご迷惑がかかったらと、妻とも心配しているんです」
「それは本心で、ということですか?」
「もちろんです、もちろんです。次期公爵であるグラン宰相には後悔などして欲しくなくてですね……」
「だとしたら、あなたは自分の娘すら見る目がないということだ」
「へ?」
素っとん狂な父の声に、マルクの怒りが加速しているように思えた。表面上は怒ってはいないものの、確かにブリザードが吹き荒れてるって感じね。
明らかに声のトーンが一つ低いし、びっくりするほど目つきも悪い。アレンと対峙してた時もひどかったけど、今日の方がかなり怒っている気がする。
「オリビアは誰にでも分け隔てなく優しく、ここの領地経営もとても上手くやっています。それに何よりこんなに美しいというのに、全く見る目がない。陛下すら、オリビアのことはとても褒めていたのですよ」
「へ、陛下がオリビアを!」
「そうです。挙式にも参列すると言っていたぐらいです」
「そ、それはそれは」
けなされることは慣れているのに、褒められるのはまったくといって慣れていない。
だって今までの貴族たちの評価だって、良くて節約令嬢だし。ひどいものは貧乏令嬢とか……守銭奴とか……。
褒められてなさ過ぎて、でもやっぱりどこか嬉しくて……。なんだかいろんなとこがむず痒く、私は隣にいるマルクの服の裾をちょんっと掴んだ。
身分と言うよりも結婚の支度金が払えないって、顔にはしっかり書いてある。まぁそうでしょうね。元々あるのは借金ばかりだし、いくら後からお金になるかもしれないと思ったって、私のためには借金なんてしないと思っていたわよ。
でもこの婚約が私ではなくシーラだったら。きっとお父様たちは何をしてでもお金をかき集めてきたんでしょうね。
「オリビアにはその身一つで来てくれればいいと思っている」
「そうですか、そうですか……。でも本当によろしいのですか? 親の自分が言うのもなんですが、この子は器量も要領も良くなく、はたして公爵夫人として勤めあげることが出来るのか……。その点下の娘でしたら美しく、公爵家のためにもなったと思うのですが……」
「下の娘はすでに身ごもっていて、オリビアの婚約者と婚約しなおしたのではなかったのですか?」
「ああ、そうなのです。惜しいことをしました。オリビアがこんなんだったばかりに、元婚約者にまで愛想を尽かされてしまって」
「……」
お父様たちの中では、そんな風に思っていたのね。なんとなくは分かっていたけど、言葉に出されるとでは全然違う。
お父様たちにとっては、全部私が悪いんだ。婚約者も寝取られたのも、アレンがシーラに婚約を乗り換えたのも。私が美しくもなく、要領が悪かったから……。びっくりするほどの意見よね。酷すぎて、さすがに笑えないわ。
「それはあまりにも、実の娘に対する言い様ではないですね」
マルクの顔色が変わっているのにも気づかず、父はただ饒舌に話し続ける。いかにシーラが優れていて、シーラをマルクの元に嫁に行かせたかったのかを。
ずっとシーラの本命はマルクだったし、お父様たちがシーラを玉の輿にしたかったのは知っていた。でも現にシーラはすでにアレンと婚約したというのに。
まったくどうしようもない人ね。ビックリするほど、頭が悪いと言うかなんというか。もう恥さらしのレベル超えちゃっているし。
私の方が、むしろこんな親ですみませんと言いたいぐらいだわ。
「いや本当に、それぐらいオリビアはダメなのですよ。こんなのを公爵家に入れてご迷惑がかかったらと、妻とも心配しているんです」
「それは本心で、ということですか?」
「もちろんです、もちろんです。次期公爵であるグラン宰相には後悔などして欲しくなくてですね……」
「だとしたら、あなたは自分の娘すら見る目がないということだ」
「へ?」
素っとん狂な父の声に、マルクの怒りが加速しているように思えた。表面上は怒ってはいないものの、確かにブリザードが吹き荒れてるって感じね。
明らかに声のトーンが一つ低いし、びっくりするほど目つきも悪い。アレンと対峙してた時もひどかったけど、今日の方がかなり怒っている気がする。
「オリビアは誰にでも分け隔てなく優しく、ここの領地経営もとても上手くやっています。それに何よりこんなに美しいというのに、全く見る目がない。陛下すら、オリビアのことはとても褒めていたのですよ」
「へ、陛下がオリビアを!」
「そうです。挙式にも参列すると言っていたぐらいです」
「そ、それはそれは」
けなされることは慣れているのに、褒められるのはまったくといって慣れていない。
だって今までの貴族たちの評価だって、良くて節約令嬢だし。ひどいものは貧乏令嬢とか……守銭奴とか……。
褒められてなさ過ぎて、でもやっぱりどこか嬉しくて……。なんだかいろんなとこがむず痒く、私は隣にいるマルクの服の裾をちょんっと掴んだ。
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