戦わないRPG

捨て犬

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あんむ。

目の前に出された銀スプーンを思い切り頬張る。

あむあむあむ。

(うんめ~~~~~~~)

俺、まだ赤ちゃん。だけれどようやく少し乳離れして離乳食を始めてる。
歯もそろわないので土手(歯茎)で食べているが、柔らかいすりつぶされたニンジンなので
ほんのりあまくてうまい。

正直、異世界。食はあきらめていました。某国の噂のアレのせいでくそまずいと思っていたけど
考えればフランス料理は旨かったし、不味いというイメージは往々にして理由あってのこと
味覚そのものが変なわけじゃないから旨いという味覚は万国共通。異世界でも同じだと知れた。
その上、異世界じゃあそもそも農薬って概念がないだろう無農薬野菜。
種だって変に手を加えられてない素材重視の野菜なんだろう。その中でも俺んちは
金持ちそうなおうちなのでえりすぐりの食材を俺の離乳食にも使っていると見た。

赤子の離乳食ながらなめてました。
たぶん我が家のシェフが赤ん坊の俺のために丹精込めて手を抜かず作ってくれたものなんだろう
雑味もなく、なんならうっすら出汁の下味すらついた食事は俺を満足させるものだった。

まあ、超美人の俺のママンのミルクには叶わないけどな。

慈母の女神なんじゃないかってくらいやさし気で奇麗な姉ちゃんが俺を見下ろしながら
たんとおのみとミルクくれるんだぜ天国だ。

その後のおむつ替えは屈辱だが、俺は幸せだ。

神様が至れり尽くせりで約束通り転生させてくれたみたいで
きっとイケメンなとうちゃんと美人な母様で俺もイケメンで将来はイケメン確定。
スキル適正もいいのつけてくれるって言ってたし
今は赤ん坊でしゃべれないしはいはいしかできないが
もう少し育ったら魔法に剣で俺の異世界無双ライフを始めるぜ。

一見、愛らしい赤ん坊がこんな野望を抱いて食事をしているなど誰も予想だにせず
赤ん坊のナニーやその他のメイドたちや男性の使用人たちも
このかわいい赤ん坊の主を甲斐甲斐しくお世話していた。






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