何度倒れても救けるから

相楽まふゆ 

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6.17歳 ⅳ

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 翌日。
 試験がどうにか終わり、あとは結果を待つだけ。
 俺が受けた補習は物理と数学で、1時間目と2時間目になっていたのでその教科以外の補習組が終わるのを待つ。
 同クラの男と2人で空き教室で昼まで時間を潰しながら何味のピザを頼もうかと相談していた。
 女子3人、八宵入れて男4人の7人だからMサイズ4枚くらいか?
 いや、八宵が来るなら5枚は頼んだほうがいいかもしれない。
 凄い量になりそうなので、メニューは適当に決め、早めに注文しておく。

 12時10分前、一緒にいた男子には空き教室確保と他のメンバー待ち合わせのためにここに居てくれと伝えて校門に向かった。
 八宵はまだ来ていない。
 12時になると授業の終わりを告げるチャイムが校門にも響く。
 冬の寒空の中、白い息を吐きながらスマホをいじっていると出前のバイクのほうが先に来た。
 結局全部で6枚頼んだピザは食欲を誘う匂いを撒き散らしている。
 サイドメニューやドリンクも頼んでいたので物凄い量を1人で持つことになり、出前の人に心配されつつ代金を支払う。
 俺はポテトなどが入った紙袋を乗せたピザの箱を抱え弟を待った。
 しかし校門にいると、帰る生徒の目に留まるので恥ずかしい。
 ヨタヨタしながら歩いていると「ナオ!」と焦る声が聞こえた。
「おせーよ」
「ごめん、授業が長引いて・・・」
 八宵は俺の腕から4箱とってくれたのでかなり楽になった。
 そして八宵の横にはショートカットの女子がひょっこり付いてきていて、ポテトの入った袋を持ってくれる。
 あれ。この子、終業日に八宵と一緒に帰ってた子じゃないか?
「あ~・・・やよいの彼女?」
「え・・・」
 女の子ははにかみながらチラッと八宵を上目遣いで見たが、
「いや、クラスメート。お前らと昼にピザ食べるって言ったら付いてきた。同クラの白河。白河、これが兄貴のナオト」
 彼女ではないとバッサリと否定され、白河さんはムッとしている。
 なんとなく甘える雰囲気を醸し出しているので身体の関係はあるのかもしれない。
 それにしてもコイツの好みって一貫している。
 黒髪・ショートカット・長身。
 それ以外のタイプと付き合っているのを俺は見たことがないのだ。
 白河さんは黒縁眼鏡の地味で成績もパッとしない冴えないβ男の俺なんか眼中にないようで、八宵の隣にピッタリと寄り添って俺には見向きもしなかった。
 特進科だしαの女子だろう。
「人数増えたんなら連絡くらいしろよ。足りないかもしれないだろ」
「こんだけあれば充分だろ。お前はどれだけ食べる気なんだ?」
 それは俺の台詞だ。
 お前が食べると思ってるからたくさん頼んでやったのに。
 3人で食材を持って空き教室に向かった。
 教室確保のため置いてきたクラスメートと試験が終わって合流したメンバーの話し声が聞こえる。

「なんか葛城の弟も参加するらしいよ。知ってた?」
「うっそ!特進にいる葛城八宵君⁉ αなのに威張ってないから人気あるんだよ~」
「そうなの?俺が聞いた話だとすげーヤリチンで、付き合っても長続きしないらしいけど」
「付き合いたいとかじゃないけど、話しはしてみたいかな。葛城兄と同じクラスでラッキー」
「なんだそれ。葛城がオマケみたいじゃんww」
「兄の方もβの割に背高いし運動も勉強もそこそこ出来るから優良物件なんだけど、弟にくらべちゃうとね~」
「えー!あんたαと付き合えると思ってるの!? ムリムリ!早めに諦めて兄のほうにアタックしたほうが現実的だよ~」
「近くに比較対象が居るって可哀想だよな。しかも双子で弟がαって!俺だったらグレるかな」
 みな散々なことをゲラゲラ笑いながら言い合っていた。
 これは悪口になるのだろうか。
 全部真実だしそう思われているのは仕様がないが、この場に八宵と白河さんも居て、2人にも聞かれてしまっていることが恥ずかしかった。

 この会話のどこで中に入れば良いか悩んでいると、八宵が思い切り勢い良くドアを開けた。
 引き戸の「ダン!」という音に、喋っていたメンバーはビクリと身体を震わせ入口にいる俺たちを凝視する。
 八宵はその視線を無視しピザの箱を机に置き、俺が持っていた2箱を代わりに持ってくれる。
「ナオ、1人いくら?」
「え?・・・あ、1500円くらい、かな」
「じゃあみんな1500円ナオに払って」
 メンバーは顔を見合わせ狼狽える。
 話しを聞かれていたことが分かって気まずさもあるのだろう。
 静かに財布からお金を取り出し渡してくれた。
 みんなが払い終えたのを見計らった八宵は
「俺たちは他で食べるから。これだけもらってく」
 そう言うとピザの箱を持ったまま俺の腕を掴み教室を後にしたのだった。
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