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二人目
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大講堂に入って適当に空いている席に座る。もう大分席は埋まっていた。
「クー、式典が終わるまでいい子にしててね」
クーに言えば「キャン」と可愛く返事をしてくれる。
『ああ、もう。本当に可愛い』
咄嗟に口元を押さえる。涎、出てないよね。
そんな時、大講堂にアナウンスが流れた。もう間もなく式典が始まるので、早く席に着くようにという内容だ。
「クー、魔力いる?」
「キャン」
「ふふ、じゃあ……はい」
治療の為、魔力をクーに流し込んでいると、横に誰かが立つ気配がした。
「レディ、こちらの席に座ってもいいですか?」
ほんの微かにイントネーションが違う言葉遣いに、思わず彼の顔を見てしまう。若草のような緑の髪に深い青の瞳が印象的なイケメンだった。
「ええ、どうぞ。あ、でももしかしたらこの子が騒がしくしてしまうかもしれませんが、よろしいですか?」
気になるなら他に移ってもらった方がいい。そんな気持ちで言うと、彼は青い瞳を細めて笑った。
「そんな事は全然気にしませんので」
ニッコリと笑ってクーをジッと見つめた。
「とっても珍しい動物ですね。初めて見ます」
「そうですね。私もこの子を初めて見た時びっくりしました。ふふ、綺麗でしょ。ケガをしていた所を保護したんですけれど、今では大事な家族なのです」
クーを撫でながら思わず自分から語り出してしまう。ダメだわ、クーの事になるとお父様同様、私も親バカになるようだ。
「ごめんなさい、私ったら……」
お父様の血を完全に受け継いでいると実感して恥ずかしくなる。
「ははは、いいえ。可愛らしかったです。その子も、あなたも」
柔らかな笑みを浮かべてこちらを見るイケメン。
ダァーーー!なんだ、今のは。私の口から砂糖が零れかけた。
「そういえば、名乗っていませんでしたね。私はレンゾ・シモナーラ。隣国ダンドロッソから留学して来ました」
「ミケーリア・ティガバルディと申します」
それから式典が始まるまで、色々な話をした。同じAクラスだという事がわかって、友達第一号だねと笑い合った。
暫くして式典が始まった。学院長の話をぼおっと聞いていると、ふと本の一文が頭に浮かんできた。
【キツネがいるのでなるべく端の席を選んで座る。ケガが全然治らないからなのか、いつまでも眠っているキツネを心配するシシリー。精霊の仲間であるこの子には魔力をあげるのが一番いいのだと義父から聞いていたシシリーは、眠り続けているキツネに魔力をあげてみる。キツネに集中していたシシリーだったが、ふと隣に人の気配を感じた。
「あの、レディ。こちらの席に座ってもよろしいですか?」
シシリーとしては、キツネがいるからあまり近くに他の人が座るのは良くないと思っていたが、周囲にはもうここしか席が空いていないようだった。
「ええと、この子がいる事が不快でなければ、どうぞお座りになって下さい」
シシリーがそう言うと、彼は笑いながら言った。
「そんな事は、全然気にしませんよ」】
『マジか……』
きっと今、私は間抜けな顔になっているに違いない。一体これはどういう事なのだろう?どうして私がシシリー嬢の役をやっているのだろうか?
『これってもう詰んでるのでは?でも別に、私がそうなるように仕向けている訳じゃないよね。だったらセーフなの?それともやっぱりアウトなの?』
傍から見れば微動だにせず、背筋を伸ばして学院長の話を真剣に聞いているように見えているに違いない。でも私の脳内は軽くパニック状態だ。本の信憑性に驚く事よりも、自分がヒロインであるはずのシシリー嬢の行動を踏襲している事が怖い。
『嫌だ、嫌だ、嫌だ。私は男を侍らせて喜ぶような女じゃない。それならまだ、男を力でねじ伏せる方が何倍も嬉しいと思うような女なんだってば』
私の様子の変化に気付いたクーが、私の頬をペロペロと舐めてくれた。
『ありがとう、クー』
クーの温もりに少しだけ癒される。それでも私の頭の中は、グルグル状態だ。
『このままだとやっぱり私って死ぬの?』
「クー、式典が終わるまでいい子にしててね」
クーに言えば「キャン」と可愛く返事をしてくれる。
『ああ、もう。本当に可愛い』
咄嗟に口元を押さえる。涎、出てないよね。
そんな時、大講堂にアナウンスが流れた。もう間もなく式典が始まるので、早く席に着くようにという内容だ。
「クー、魔力いる?」
「キャン」
「ふふ、じゃあ……はい」
治療の為、魔力をクーに流し込んでいると、横に誰かが立つ気配がした。
「レディ、こちらの席に座ってもいいですか?」
ほんの微かにイントネーションが違う言葉遣いに、思わず彼の顔を見てしまう。若草のような緑の髪に深い青の瞳が印象的なイケメンだった。
「ええ、どうぞ。あ、でももしかしたらこの子が騒がしくしてしまうかもしれませんが、よろしいですか?」
気になるなら他に移ってもらった方がいい。そんな気持ちで言うと、彼は青い瞳を細めて笑った。
「そんな事は全然気にしませんので」
ニッコリと笑ってクーをジッと見つめた。
「とっても珍しい動物ですね。初めて見ます」
「そうですね。私もこの子を初めて見た時びっくりしました。ふふ、綺麗でしょ。ケガをしていた所を保護したんですけれど、今では大事な家族なのです」
クーを撫でながら思わず自分から語り出してしまう。ダメだわ、クーの事になるとお父様同様、私も親バカになるようだ。
「ごめんなさい、私ったら……」
お父様の血を完全に受け継いでいると実感して恥ずかしくなる。
「ははは、いいえ。可愛らしかったです。その子も、あなたも」
柔らかな笑みを浮かべてこちらを見るイケメン。
ダァーーー!なんだ、今のは。私の口から砂糖が零れかけた。
「そういえば、名乗っていませんでしたね。私はレンゾ・シモナーラ。隣国ダンドロッソから留学して来ました」
「ミケーリア・ティガバルディと申します」
それから式典が始まるまで、色々な話をした。同じAクラスだという事がわかって、友達第一号だねと笑い合った。
暫くして式典が始まった。学院長の話をぼおっと聞いていると、ふと本の一文が頭に浮かんできた。
【キツネがいるのでなるべく端の席を選んで座る。ケガが全然治らないからなのか、いつまでも眠っているキツネを心配するシシリー。精霊の仲間であるこの子には魔力をあげるのが一番いいのだと義父から聞いていたシシリーは、眠り続けているキツネに魔力をあげてみる。キツネに集中していたシシリーだったが、ふと隣に人の気配を感じた。
「あの、レディ。こちらの席に座ってもよろしいですか?」
シシリーとしては、キツネがいるからあまり近くに他の人が座るのは良くないと思っていたが、周囲にはもうここしか席が空いていないようだった。
「ええと、この子がいる事が不快でなければ、どうぞお座りになって下さい」
シシリーがそう言うと、彼は笑いながら言った。
「そんな事は、全然気にしませんよ」】
『マジか……』
きっと今、私は間抜けな顔になっているに違いない。一体これはどういう事なのだろう?どうして私がシシリー嬢の役をやっているのだろうか?
『これってもう詰んでるのでは?でも別に、私がそうなるように仕向けている訳じゃないよね。だったらセーフなの?それともやっぱりアウトなの?』
傍から見れば微動だにせず、背筋を伸ばして学院長の話を真剣に聞いているように見えているに違いない。でも私の脳内は軽くパニック状態だ。本の信憑性に驚く事よりも、自分がヒロインであるはずのシシリー嬢の行動を踏襲している事が怖い。
『嫌だ、嫌だ、嫌だ。私は男を侍らせて喜ぶような女じゃない。それならまだ、男を力でねじ伏せる方が何倍も嬉しいと思うような女なんだってば』
私の様子の変化に気付いたクーが、私の頬をペロペロと舐めてくれた。
『ありがとう、クー』
クーの温もりに少しだけ癒される。それでも私の頭の中は、グルグル状態だ。
『このままだとやっぱり私って死ぬの?』
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