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新しい生活
離縁したい私
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仕事を退職した私は精神的に落ち込み、ますます体調が悪くなるのであった。
一日のほとんどをベッドで横になって過ごす日々。
食欲もなく、ゲッソリと痩せてしまう。
「リア、食事にしようか。」
「バーネット様、今は食欲がないので後で頂きますわ。」
「ダメだ。そう言ってリアは全く食べないだろう?
ほら、私が食べさせてやろう。」
バーネット様はいつものように、ベッドに横になっている私を起こしてくれる。
この人は、私の世話を焼くことが苦にならないのかしら?ここまで長期で臥せっている私は、かなりの負担になっているはずなのに。
「食欲がなくても、我慢して食べないといつまでも元気になれないだろう?
シェフが野菜を柔らかく煮込んだスープを作ってくれたんだよ。
使用人達もみんなリアを心配しているんだ。少しでいいから食べてくれないか?」
「バーネット様…、私はこんな体では伯爵夫人は務まりませんわ。
私と離縁してくださいませ。」
「……離縁はしない。私は完璧な伯爵夫人が欲しいのではなくて、リアに側にいて欲しいと思っている。
跡取りの心配をしているのかもしれないが、跡取りなんて、親族にいくらでも子供がいるのだから、養子に迎えればいいのだ。
私はリアと2人でいれるなら、他に何も要らない。
もう離縁の話はしないでくれ。」
本当に愛しているならば、夫にこんなことを言われたら、嬉しくて涙を流していたかもしれない。
でも私はこの人を愛してないし、何を考えているのか分からないから、ゾクっとするのだ。
何よりこの男を信用出来ない…。
「そう言って、外で子供を作ってくるのでしょう?」
「違う!そんなことするはずがない。」
「離縁後の私のことを心配して下さっているのでしょうが、私は大丈夫です。今まで働いて得た蓄えがありますので、贅沢をしなければ何とかなると思いますわ。」
「リア!その話は終わりだ。」
急に声が低くなるバーネット様。怒ったのかしら?でも関係ない。
この人は私を飼い殺しにでもしたいのかもしれない。
「バーネット様、私は離縁がしたいのです。
ここまで親切にして下さったことには感謝しておりますわ。
しかし、このまま役立たずの伯爵夫人で居続けることは、私を惨めにさせているということに気付いて下さいませ。
返事は待ちますので、少し考えて頂けませんか?
よろしくお願い致します。」
「……リアはそこまで私と離縁したいのか。
私はここまで君を愛しているのに、どうして分かってくれない?」
「私はあの日に貴方への想いがなくなったと話したはずですわ。
私が貴方という婚約者に縛られ、不自由な生活を送っていた時に、貴方は色々な方とお楽しみだったのでしょう?
私も自由になりたいのです。この命が尽きる前に、私を解放して下さいませ。」
「………すまない。少し離れる。」
バーネット様は険しい表情で部屋を出て行ってしまった。
自分でもお世話になっているバーネット様に対して、酷いことを言っているのは理解している。でも私の気持ちも分かって欲しい。
体がこんな風になって、この先どれくらい生きられるのか分からないからこそ、早くここを出て行きたいと思う。
両親や友人達に手紙を出したはずなのに、返事がなかなか来ないから、今は頼りには出来ないし、この邸の使用人達はみんな親切だけど、バーネット様の使用人である以上はそこまで信用出来ない。
体は辛いけど、何とかギリギリ体を動かせるうちにこの邸を出て行きたいのに、どうしようかしら…。
バーネット様は、私があそこまで酷いことを話したのにもかかわらず、時間が経つと何事もなかったかのような態度に戻っていた。
「リア、夕飯はきちんと食べような。
明日は陛下との会食会が入っているから、リアの側にいることが出来ないが、終わったら直ぐに帰ってくるから。」
「バーネット様。陛下や他の貴族の方々との交流は大切にして下さいませ。
私は大丈夫ですから。」
夕飯を食べて少し経つと、またあの倦怠感がきて、私はまた寝込んでしまうのであった。
一日のほとんどをベッドで横になって過ごす日々。
食欲もなく、ゲッソリと痩せてしまう。
「リア、食事にしようか。」
「バーネット様、今は食欲がないので後で頂きますわ。」
「ダメだ。そう言ってリアは全く食べないだろう?
ほら、私が食べさせてやろう。」
バーネット様はいつものように、ベッドに横になっている私を起こしてくれる。
この人は、私の世話を焼くことが苦にならないのかしら?ここまで長期で臥せっている私は、かなりの負担になっているはずなのに。
「食欲がなくても、我慢して食べないといつまでも元気になれないだろう?
シェフが野菜を柔らかく煮込んだスープを作ってくれたんだよ。
使用人達もみんなリアを心配しているんだ。少しでいいから食べてくれないか?」
「バーネット様…、私はこんな体では伯爵夫人は務まりませんわ。
私と離縁してくださいませ。」
「……離縁はしない。私は完璧な伯爵夫人が欲しいのではなくて、リアに側にいて欲しいと思っている。
跡取りの心配をしているのかもしれないが、跡取りなんて、親族にいくらでも子供がいるのだから、養子に迎えればいいのだ。
私はリアと2人でいれるなら、他に何も要らない。
もう離縁の話はしないでくれ。」
本当に愛しているならば、夫にこんなことを言われたら、嬉しくて涙を流していたかもしれない。
でも私はこの人を愛してないし、何を考えているのか分からないから、ゾクっとするのだ。
何よりこの男を信用出来ない…。
「そう言って、外で子供を作ってくるのでしょう?」
「違う!そんなことするはずがない。」
「離縁後の私のことを心配して下さっているのでしょうが、私は大丈夫です。今まで働いて得た蓄えがありますので、贅沢をしなければ何とかなると思いますわ。」
「リア!その話は終わりだ。」
急に声が低くなるバーネット様。怒ったのかしら?でも関係ない。
この人は私を飼い殺しにでもしたいのかもしれない。
「バーネット様、私は離縁がしたいのです。
ここまで親切にして下さったことには感謝しておりますわ。
しかし、このまま役立たずの伯爵夫人で居続けることは、私を惨めにさせているということに気付いて下さいませ。
返事は待ちますので、少し考えて頂けませんか?
よろしくお願い致します。」
「……リアはそこまで私と離縁したいのか。
私はここまで君を愛しているのに、どうして分かってくれない?」
「私はあの日に貴方への想いがなくなったと話したはずですわ。
私が貴方という婚約者に縛られ、不自由な生活を送っていた時に、貴方は色々な方とお楽しみだったのでしょう?
私も自由になりたいのです。この命が尽きる前に、私を解放して下さいませ。」
「………すまない。少し離れる。」
バーネット様は険しい表情で部屋を出て行ってしまった。
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「リア、夕飯はきちんと食べような。
明日は陛下との会食会が入っているから、リアの側にいることが出来ないが、終わったら直ぐに帰ってくるから。」
「バーネット様。陛下や他の貴族の方々との交流は大切にして下さいませ。
私は大丈夫ですから。」
夕飯を食べて少し経つと、またあの倦怠感がきて、私はまた寝込んでしまうのであった。
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