まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ

文字の大きさ
90 / 104
新しい生活

閑話 王太子妃 エリザベス

しおりを挟む
 図書館で勉強する私に、娘ラブのお父様は優秀な家庭教師をつけてくれた。

「エリー。女性だって優秀ならば、それなりの役職に就くべきだとお父様は思っているんだ。
 エリーは努力家で優秀だと家庭教師達が褒めていたよ。お父様は嬉しくてね…。
 それでエリーの将来の夢は、この国初の女性君主なのかな?女王様って呼ばれるのも悪くはないと思うよ。」

 SMじゃあるまいし、女王様なんて言われたくないから。
 前世社畜だった私は、君主になってまで忙しく働きたくないし、そんな責任重大な役職になんて就きたくない。
 私はお飾りの妃として、安全な国に嫁ぎたいの。目指すはニート妻よ。


「お父様、私が王位を狙っていると知ったら、あの方達は本気で私やお母様の命を狙ってくるでしょう。もしかしたら、そのことが原因で内戦が起こるかもしれません。
 私は争いは望みませんし、平和に暮らしたいのです。しかし私が王位を狙ってなくても、もしお父様に何かがあれば、私もお母様も真っ先に命を狙われるでしょうね。」

 お父様の表情が曇る。

 まあ、10歳そこそこの少女が、こんな話を始めたら親としては複雑だよね。

「マリアは精霊の愛し子だから、何か危険があっても精霊達が勝手に守ってくれているから大丈夫だ。」

 は?ヒロインって精霊の愛し子なの?そんな設定があったなんて知らなかったよ。

「もしかして、精霊の愛し子であるお母様には直接の手出しが出来ないから、私がいつも狙われているのでしょうか?」

「………だろうな。」

 だからお母様はあんなにお人好しでも、危険な後宮で、のほほんと生きていられるのね…。
 精霊の愛し子に手を出したら、命だけじゃなくて、国まで滅びる可能性があるからね。

 もしかして…、学園に行っていた時も、精霊の愛し子であるお母様には嫌がらせや虐めが出来なかったから、悪役令嬢は断罪されずに済んだのかな…?
 愛し子の娘の私も守ってよ!精霊のドケチ!

「あの時、池に落ちたエリーは、呼吸が止まっていてとても危険な状態だった。でも、マリアが精霊達にお願いして、エリーを助けてもらったらしい。
 私には精霊の姿は見えていないから、どんなやり取りをしたのかは分からないがな…。」

「そんなことがあったのですね…。
 私も精霊の姿は見えませんから、全く分かりませんでしたわ。
 ふふ!お父様と一緒ですわね。」

「ああ。エリーは私の大切な娘だからな。
 エリー、お父様はずっとエリーと一緒にいたい。でも命には限界があるし、私がずっとエリーを守り続けることが難しいことは理解している。
 エリーを大切にしてくれそうな他の国に輿入れをするかい?エリーはそれを考えて、勉学に励んでいたんだろう?」

「よろしくお願いします。」


 ヒロインと娘に弱くても、他は有能なお父様は、それから数年後に、我が国の有り余る資源の取引をチラつかせて、軍事大国であるスペン国の王太子殿下との縁談をまとめてくれた。
 その頃には、私とライアンは恋人同士のようになっていた。
 
 そのことを知ってなのか、お父様は騎士になって活躍していたライアンを私の護衛騎士にしてくれ、私の輿入れについて行って欲しいとライアンに頼んでくれたのだ。
 お父様は、自分が愛するヒロインと結婚出来たからなのか、私の恋愛についても割と寛大に考えていてくれたのかもしれない。
 悪役令嬢に対しては酷い男だったが、私にとっては娘を可愛がってくれる優しいパパだった。


 婚約者となったスペン国の王太子殿下とは、手紙でのやり取りをすることになる。

 婚約する前にお父様の方からスペン国の王室に、私は体が弱く出産は難しいだろうから、殿下には別に側室を持ってもらいたいことは伝えておいてくれたようだった。

 私からは、夫婦にはなるが、私はお飾りの妃になるので、殿下は別に愛する人とお世継ぎを作って欲しいこと、本当の夫婦にはなれないけれど、親友にはなりたいこと、側室は私の命を狙わない人なら誰でもいいから、そのかわり私とライアンのことを認めて欲しいということを手紙でお願いしてみることにした。
 すると、殿下からはあっさりと認めてくれるような内容の手紙が返ってきた。

 殿下も別に好きな人がいるようね…。私とライアンのことを認めてくれるなら、殿下も好きな人を側室として迎えることが出来るように応援してあげよう。
 でも…、私に害を及ぼすような人物や、権力に対しての執着が強い女は認めないけどね。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。

にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。 父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。 恋に浮かれて、剣を捨た。 コールと結婚をして初夜を迎えた。 リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。 ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。 結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。 混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。 もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと…… お読みいただき、ありがとうございます。 エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。 それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

【完結】「お前とは結婚できない」と言われたので出奔したら、なぜか追いかけられています

22時完結
恋愛
「すまない、リディア。お前とは結婚できない」 そう告げたのは、長年婚約者だった王太子エドワード殿下。 理由は、「本当に愛する女性ができたから」――つまり、私以外に好きな人ができたということ。 (まあ、そんな気はしてました) 社交界では目立たない私は、王太子にとってただの「義務」でしかなかったのだろう。 未練もないし、王宮に居続ける理由もない。 だから、婚約破棄されたその日に領地に引きこもるため出奔した。 これからは自由に静かに暮らそう! そう思っていたのに―― 「……なぜ、殿下がここに?」 「お前がいなくなって、ようやく気づいた。リディア、お前が必要だ」 婚約破棄を言い渡した本人が、なぜか私を追いかけてきた!? さらに、冷酷な王国宰相や腹黒な公爵まで現れて、次々に私を手に入れようとしてくる。 「お前は王妃になるべき女性だ。逃がすわけがない」 「いいや、俺の妻になるべきだろう?」 「……私、ただ田舎で静かに暮らしたいだけなんですけど!!」

恋人に夢中な婚約者に一泡吹かせてやりたかっただけ

恋愛
伯爵令嬢ラフレーズ=ベリーシュは、王国の王太子ヒンメルの婚約者。 王家の忠臣と名高い父を持ち、更に隣国の姫を母に持つが故に結ばれた完全なる政略結婚。 長年の片思い相手であり、婚約者であるヒンメルの隣には常に恋人の公爵令嬢がいる。 婚約者には愛を示さず、恋人に夢中な彼にいつか捨てられるくらいなら、こちらも恋人を作って一泡吹かせてやろうと友達の羊の精霊メリー君の妙案を受けて実行することに。 ラフレーズが恋人役を頼んだのは、人外の魔術師・魔王公爵と名高い王国最強の男――クイーン=ホーエンハイム。 濡れた色香を放つクイーンからの、本気か嘘かも分からない行動に涙目になっていると恋人に夢中だった王太子が……。 ※小説家になろう・カクヨム様にも公開しています

すれ違う思い、私と貴方の恋の行方…

アズやっこ
恋愛
私には婚約者がいる。 婚約者には役目がある。 例え、私との時間が取れなくても、 例え、一人で夜会に行く事になっても、 例え、貴方が彼女を愛していても、 私は貴方を愛してる。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ 女性視点、男性視点があります。  ❈ ふんわりとした設定なので温かい目でお願いします。

愛すべきマリア

志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。 学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。 家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。 早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。 頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。 その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。 体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。 しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。 他サイトでも掲載しています。 表紙は写真ACより転載しました。

【完結】探さないでください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
私は、貴方と共にした一夜を後悔した事はない。 貴方は私に尊いこの子を与えてくれた。 あの一夜を境に、私の環境は正反対に変わってしまった。 冷たく厳しい人々の中から、温かく優しい人々の中へ私は飛び込んだ。 複雑で高級な物に囲まれる暮らしから、質素で簡素な物に囲まれる暮らしへ移ろいだ。 無関心で疎遠な沢山の親族を捨てて、誰よりも私を必要としてくれる尊いこの子だけを選んだ。 風の噂で貴方が私を探しているという話を聞く。 だけど、誰も私が貴方が探している人物とは思わないはず。 今、私は幸せを感じている。 貴方が側にいなくても、私はこの子と生きていける。 だから、、、 もう、、、 私を、、、 探さないでください。

白い結婚を告げようとした王子は、冷遇していた妻に恋をする

夏生 羽都
恋愛
ランゲル王国の王太子ヘンリックは結婚式を挙げた夜の寝室で、妻となったローゼリアに白い結婚を宣言する、 ……つもりだった。 夫婦の寝室に姿を見せたヘンリックを待っていたのは、妻と同じ髪と瞳の色を持った見知らぬ美しい女性だった。 「『愛するマリーナのために、私はキミとは白い結婚とする』でしたか? 早くおっしゃってくださいな」 そう言って椅子に座っていた美しい女性は悠然と立ち上がる。 「そ、その声はっ、ローゼリア……なのか?」 女性の声を聞いた事で、ヘンリックはやっと彼女が自分の妻となったローゼリアなのだと気付いたのだが、驚きのあまり白い結婚を宣言する事も出来ずに逃げるように自分の部屋へと戻ってしまうのだった。 ※こちらは「裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。」のIFストーリーです。 ヘンリック(王太子)が主役となります。 また、上記作品をお読みにならなくてもお楽しみ頂ける内容となっております。

処理中です...