まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ

文字の大きさ
92 / 104
新しい生活

閑話 王太子妃 エリザベス

しおりを挟む
 殿下と私の結婚式を終えて数ヶ月経つ頃…。

 王妃殿下が、殿下の愛する人を自分の侍女として呼び戻したと聞いてホッとした私。しかし、肝心の殿下がなかなか動く様子がないのだ。
 あの腹黒殿下、腹黒らしく上手くやって、さっさと自分のモノにしてしまえばいいのに。

 我慢出来なかった私は、自分から腹黒殿下の愛する人に接触していた。
 確かに噂通りに美しくて品のある令嬢だった。殿下の側妃を狙う女狐達のような、ギラギラしたような雰囲気はなくて、控えめな印象を受けた。未亡人だということで引け目を感じているのかもしれない。そんなことは気にしなくていいのに。
 仲良くなりたくなった私は、彼女をお茶会に誘って、楽しい時間を過ごしたのだが、そのことを腹黒殿下が嫉妬してきて、2人だけでのお茶会禁止令が出てしまった。
 
 あの腹黒、アメリアの前では優しい紳士のように振る舞っているけど、女同士のお茶会に嫉妬する程、心が狭い男だったなんて知らなかったわ。

 そんな私は、腹黒殿下が側妃を決めないせいで、側妃を狙う女狐達にマウントをとられて面倒な思いをしていた。
 遠い異国から来た、体の弱い儚げな王太子妃に見える私は、女狐達から見れば簡単に引き摺り下ろせるように見えるらしい。
 まあ、そうだよね。体が弱いから側妃にお世継ぎを産んでもらうことを望んでいると、年頃の娘のいる貴族はみんな知っているみたいだからね。
 そんな女狐達の態度に私は少しイライラしていた。

 我慢の限界を迎えた私は、私の国の大使から女狐達の家門に直接警告してもらうことにした。
 お前の家の令嬢があまりにも無礼だから、この国に石油も石炭も売るのを止めるぞと。更に、殿下と王妃殿下からも抗議してくれたようだ。それで大抵の令嬢は静かになったのだが、1人だけすごい令嬢がいた。

 きな臭い感じのワイラー侯爵の娘、ワイラー侯爵令嬢だ。
 ワイラー侯爵令嬢は悪役令嬢友の会、スペン国支部長って感じの令嬢だった。あの女は、〝私が側妃になりますのでご安心下さい〟と堂々とマウントをとってくるような、礼儀知らずの女で、殿下も大嫌いだと言っていた。更にアメリアにまで暴言を吐いていたと影から報告がある。
 アメリアに絡んだことを知りキレる殿下と私で作戦会議をし、私が母国から持ってきたお香の媚薬を使って、あの女を社交界から追放することに決めた。
 今後の話がしたいと言ってワイラー侯爵令嬢を呼び出すと、すぐに来てくれたので、殿下と私とライアンと殿下の側近とで応接室に向かう。すると令嬢は、平民出身だという騎士とお楽しみ中だった。私達に見られたと知った令嬢は、一瞬にして静かになってくれたから良かった。
 巻き込まれた護衛騎士が可哀想だからと、殿下が爵位をあげることを伝えたら騎士は大喜びしてくれたようだ。
 腹黒殿下は、すぐにそのことを王宮中に噂話として広めていた。

 あとは殿下がアメリアとくっつくだけだと思っていたら、アメリアの亡くなったと思われていた旦那様が発見されてしまった…。
 腹黒が落ち込んでいたことは内緒だ。

 アメリアは離縁を望んでいるらしいが、旦那様はそれを拒否しているらしく、なかなか話が進まない。
 だから私は、腹黒殿下にアメリアを愛妾にしてしまえと言ったのだ。愛妾なら既婚者でもなれるし、愛妾として3年間を後宮で囲い、別居させた後に離縁させればいいのだと。この国では3年別居すれば、離縁が認められるらしいから。その後に側妃にすれば問題はないと思うのに。
 しかし、アメリアが大好きな殿下は、彼女を愛妾に落とすなんて出来ないとか言いだす。
 本命だから、愛人のような扱いにはしたくないって考えらしい。
 
 そんなことで、グダグダしていたら、アメリアは尻軽で有名な男爵令嬢と近衛騎士をしている子爵令息に襲われそうになっているし、助け出した後に、旦那様と伯爵家に一度帰宅した後に、具合が悪くなったと言って、仕事を休み続け連絡が取れなくなる。しばらくして、仕事の退職願いを旦那様が届けに来たらしい。
 その時に、優秀な王宮医を派遣したいことを話に行くのだが、やんわりと断られてしまった。

 アメリアの旦那様は元騎士団長って言ってたっけ?確かにカッコいいよね。綺麗な顔していて、優しそうな雰囲気もあって。
 でも…、目が怖いと思った。一緒にいたライアンも、あれは厄介そうな人間に見えるとか言っているし。
 アメリアが気になった私達は影に調べさせようとしたのだが、邸ではアメリアの旦那様が付きっきりで面倒を見ているようで、あまり近くには行けないらしい。アメリアの旦那様は元騎士団長だけあって、影の気配にも敏感らしいのだ。
 でも付きっきりで面倒を見なければならないほど弱っているってこと?危険な状態なのでは?

 我慢出来なくなった私は、アメリアの旦那様が陛下主催の会食会で留守になる日に、アメリアに会いに行くことに決めたのだった。
 同性の友人であり王太子妃という身分である私の見舞いは、伯爵家の使用人達では断れないだろうと判断したのだ。

 見舞いに行ったのは正解だった。
 アメリアはガリガリに痩せ細り、意識を失っていたのだから。このままここには置いていけないと判断した私は、治療をするからと強引にアメリアを連れて帰ってきた。

 そして分かったのは、アメリアは薬物らしきものを摂取させられていたということだった。
 
 やはり、アメリアの旦那様ってやばい人だった?あの怖い目と、アメリアを手放せない執着心。ヤンデレじゃないの?怖いんだけど…

 でも私はここまで頑張ったんだから、あとは腹黒殿下に頼もう。

 私の楽しいニートライフのためにも早く2人には幸せになって欲しいのよ!

 
 


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

愛すべきマリア

志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。 学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。 家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。 早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。 頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。 その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。 体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。 しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。 他サイトでも掲載しています。 表紙は写真ACより転載しました。

恋人に夢中な婚約者に一泡吹かせてやりたかっただけ

恋愛
伯爵令嬢ラフレーズ=ベリーシュは、王国の王太子ヒンメルの婚約者。 王家の忠臣と名高い父を持ち、更に隣国の姫を母に持つが故に結ばれた完全なる政略結婚。 長年の片思い相手であり、婚約者であるヒンメルの隣には常に恋人の公爵令嬢がいる。 婚約者には愛を示さず、恋人に夢中な彼にいつか捨てられるくらいなら、こちらも恋人を作って一泡吹かせてやろうと友達の羊の精霊メリー君の妙案を受けて実行することに。 ラフレーズが恋人役を頼んだのは、人外の魔術師・魔王公爵と名高い王国最強の男――クイーン=ホーエンハイム。 濡れた色香を放つクイーンからの、本気か嘘かも分からない行動に涙目になっていると恋人に夢中だった王太子が……。 ※小説家になろう・カクヨム様にも公開しています

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめる事にしました 〜once again〜

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
【アゼリア亡き後、残された人々のその後の物語】 白血病で僅か20歳でこの世を去った前作のヒロイン、アゼリア。彼女を大切に思っていた人々のその後の物語 ※他サイトでも投稿中

あなたの言うことが、すべて正しかったです

Mag_Mel
恋愛
「私に愛されるなどと勘違いしないでもらいたい。なにせ君は……そうだな。在庫処分間近の見切り品、というやつなのだから」  名ばかりの政略結婚の初夜、リディアは夫ナーシェン・トラヴィスにそう言い放たれた。しかも彼が愛しているのは、まだ十一歳の少女。彼女が成人する五年後には離縁するつもりだと、当然のように言い放たれる。  絶望と屈辱の中、病に倒れたことをきっかけにリディアは目を覚ます。放漫経営で傾いたトラヴィス商会の惨状を知り、持ち前の商才で立て直しに挑んだのだ。執事長ベネディクトの力を借りた彼女はやがて商会を支える柱となる。  そして、運命の五年後。  リディアに離縁を突きつけられたナーシェンは――かつて自らが吐いた「見切り品」という言葉に相応しい、哀れな姿となっていた。 *小説家になろうでも投稿中です

【完結】愛しき冷血宰相へ別れの挨拶を

川上桃園
恋愛
「どうかもう私のことはお忘れください。閣下の幸せを、遠くから見守っております」  とある国で、宰相閣下が結婚するという新聞記事が出た。  これを見た地方官吏のコーデリアは突如、王都へ旅立った。亡き兄の友人であり、年上の想い人でもある「彼」に別れを告げるために。  だが目当ての宰相邸では使用人に追い返されて途方に暮れる。そこに出くわしたのは、彼と結婚するという噂の美しき令嬢の姿だった――。 新聞と涙 それでも恋をする  あなたの照らす道は祝福《コーデリア》 君のため道に灯りを点けておく 話したいことがある 会いたい《クローヴィス》  これは、冷血宰相と呼ばれた彼の結婚を巡る、恋のから騒ぎ。最後はハッピーエンドで終わるめでたしめでたしのお話です。 第22回書き出し祭り参加作品 2025.1.26 女性向けホトラン1位ありがとうございます 2025.2.14 後日談を投稿しました

【完結】妖精姫と忘れられた恋~好きな人が結婚するみたいなので解放してあげようと思います~

塩羽間つづり
恋愛
お気に入り登録やエールいつもありがとうございます! 2.23完結しました! ファルメリア王国の姫、メルティア・P・ファルメリアは、幼いころから恋をしていた。 相手は幼馴染ジーク・フォン・ランスト。 ローズの称号を賜る名門一族の次男だった。 幼いころの約束を信じ、いつかジークと結ばれると思っていたメルティアだが、ジークが結婚すると知り、メルティアの生活は一変する。 好きになってもらえるように慣れないお化粧をしたり、着飾ったりしてみたけれど反応はいまいち。 そしてだんだんと、メルティアは恋の邪魔をしているのは自分なのではないかと思いあたる。 それに気づいてから、メルティアはジークの幸せのためにジーク離れをはじめるのだが、思っていたようにはいかなくて……? 妖精が見えるお姫様と近衛騎士のすれ違う恋のお話 切なめ恋愛ファンタジー

いくら政略結婚だからって、そこまで嫌わなくてもいいんじゃないですか?いい加減、腹が立ってきたんですけど!

夢呼
恋愛
伯爵令嬢のローゼは大好きな婚約者アーサー・レイモンド侯爵令息との結婚式を今か今かと待ち望んでいた。 しかし、結婚式の僅か10日前、その大好きなアーサーから「私から愛されたいという思いがあったら捨ててくれ。それに応えることは出来ない」と告げられる。 ローゼはその言葉にショックを受け、熱を出し寝込んでしまう。数日間うなされ続け、やっと目を覚ました。前世の記憶と共に・・・。 愛されることは無いと分かっていても、覆すことが出来ないのが貴族間の政略結婚。日本で生きたアラサー女子の「私」が八割心を占めているローゼが、この政略結婚に臨むことになる。 いくら政略結婚といえども、親に孫を見せてあげて親孝行をしたいという願いを持つローゼは、何とかアーサーに振り向いてもらおうと頑張るが、鉄壁のアーサーには敵わず。それどころか益々嫌われる始末。 一体私の何が気に入らないんだか。そこまで嫌わなくてもいいんじゃないんですかね!いい加減腹立つわっ! 世界観はゆるいです! カクヨム様にも投稿しております。 ※10万文字を超えたので長編に変更しました。

処理中です...