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二度目の話

暗殺者にはさせない

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 一度目の人生を思い出して、気持ちが沈みそうになっていると、横から話しかけられる。

「お嬢様…?俺を探していたって聞いたけど。」

 この声はアーサーだわ!
 振り向いた先にいたのは、一度目の人生ぶりのアーサーだった。
 今はまだ私と同じくらいの身長だけど、私を暗殺しに来た時のアーサーは、そこそこの長身で、サラサラの栗色の髪が魅力的な男性になっていた。
 暗殺者よりも騎士様の方がアーサーには絶対に似合っているわ!

「……お、お嬢様?涙が流れてるよ!大丈夫か?」

 アーサーに再会出来て嬉しかった私は、無意識に涙を流していたようだ。巻き戻った私は、どうやら涙脆い女の子になってしまったみたい。
 涙を流すと鼻水も止まらなくなってしまうから、気を付けないと。

「あ、ごめんなさい。ちょっと目にゴミが入ってしまったみたいなの。
 アーサー、大切な話があるんだけど、ちょっといいかしら?」

「大切な話?いいけど…。」

 孤児院の裏庭に移動して、真面目で運動神経のいいアーサーは、騎士の仕事が向いているような気がすると話をして、もし騎士の仕事に興味があって、頑張りたいと思えるなら、うちの侯爵家で見習い騎士として働いてみないかと言ってみた。

「え?俺が侯爵家の騎士?」

「見習いだから、給金は安いし、掃除や洗濯とかの下働きもしなくてはいけないわ。
 下働きの合間に先輩の騎士達に稽古をつけてもらうことになるから、決して楽な仕事ではないし、むしろ厳しいと感じるかもしれない。
 でも、アーサーの努力次第で、見習い騎士から正騎士になれる可能性があるし、正騎士になれば給金も上がるわ。住む場所は寮があるし、食事も出るわよ。」

「本当か?俺でも雇ってもらえるの?」

 アーサーの顔がパァーッと明るくなるのが分かった。
 孤児院は15歳までしかいれないから、それまでにどこかの家に引き取られるか、仕事を探さなくてはならない。だから、私からのこの提案は魅力的ではあると思う。

「真面目に頑張れると約束出来るならね。
 どうする?」

「俺、仕事が辛くても頑張る!
 だから、侯爵家で雇ってください!」

 交渉成立ね!



 アーサーはまだ11歳だから、騎士団の寮の管理人をしているクライブさん夫妻にお願いすることにした。
 40代くらいの、面倒見の良さそうな夫妻で、寮に住む騎士達の親代わりみたいな存在でもある。
 夫妻の仕事の手伝いでもしながら、先輩騎士達に剣術を教えてもらえればいいかと考えたのだ。
 一度目の人生で暗殺者になるくらいの実力があったのだから、今回はぜひ騎士になって欲しいと思う。

 あの時の、アーサーの悲しい目はもう二度と見たくないのよ。


 後日…


「アナ。孤児院の友人の将来を真剣に考えられるくらい、慈悲深い人になってくれたのは、お父様はとても嬉しいと思っている。
 しかし、アーサーの仕事の適性を知っていたり、アーサーを所属させる部署まで指定してくるなんて、アナはいつの間に、侯爵家のことについて詳しくなったんだい?
 アナはお転婆だから、侯爵家の色々な所に顔を出して遊んでいたのは知っていたが、そこまで物知りだとは思っていなかったよ。」

「…偶々ですわ。私だって、ただ遊んでいるように見えて、色々と見て歩いているのです。
 それよりも、孤児院から出た後の子供達が、悪い人達に騙されたり、危険な仕事をさせられたりしないように、何かいい方法はないのでしょうか?
 孤児院から離れた後も、定期的に孤児院の先生と面会をして近況報告をする体制を作るとか、養子に迎えたいと言ってくる人物の職業や家族構成などを、きちんと申請させるとか。
 でも…、いくらでも抜け道はありますし、悪い人達ほど上手くやるから難しいのでしょうね。」

「アナ…、最近のアナは急に大人になってしまったようで、本当にお父様は驚いているよ。
 でも、アナのその考えは素晴らしいと思っている。確かに、孤児達が犯罪者に騙されたり、人身売買の被害者になったりと問題は沢山あるからな。ここからは、大人が考えなくてはならない問題だな。」

「はい。よろしくお願いします。」

 今回はアーサーが暗殺者集団に入らないように、上手く保護出来たと思っているが、アーサーの代わりに別の孤児が犠牲になる可能性がある。
 お父様から孤児院の院長先生に、怪しそうな人物には養子に出さないようにと話はしてくれたらしいが、根本的な解決にはならないだろうから、お父様や大人達にはぜひ頑張って欲しいわ。

 私はもう限界。二度目の人生は、義兄のこと以外は頑張るつもりはないし、のんびりと楽しく生きていくつもりでいるからね。
 一度目の人生みたいに、バカ真面目にやるのはもうやめたの。
 
 
 
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