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二度目の話
閑話 私が死んだ後 2
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ブレア公爵side
陛下の配慮のおかげで、私と彼女はすぐに婚約することになる。
「アルマン…、私は今でもアナを大切だと思っている。
彼女のことを絶対に幸せにしてやって欲しい。」
「殿下。必ずコールマン侯爵令嬢を幸せにするとお約束致します。」
殿下は今でも彼女のことを愛しているのだと分かった。
早くシアと夫婦になりたかった私は、婚約した後、両親や国王陛下の力を借りて、急いで婚姻の準備をし、すぐに結婚した。
シアは、まだ私を愛してはくれていないだろう。殿下に向けていたあの笑顔を私に向けてくれる日がくるまで、私はいくらでも待ち続けたいと思う。
今、私がシアに愛を伝えても信じてもらえないだろうし、重いと思われてしまうだろう。だから、シアが私に心を開いてくれる日が来たら、私がずっと前からシアを好きだったこと、心から愛しているということを伝えたいと思っていた。
この時、自分のシアへの気持ちを正直に伝えなかったことで、この先ずっと後悔することになるとは、その時の私は気付いていなかった。
隣国から急いで帰国し、公爵家のタウンハウスに帰って来た私を家令が慌てて出迎えてくれる。
シアを驚かせたかった私は、予定よりも数日早く帰国して、先触れもなく突然帰って来たのだ。
「シアはどこにいる?」
私の言葉に家令の表情が曇るのが分かった。
「お、奥様は…」
「もしかして、まだ具合が悪いのか?」
隣国に出発する日も、何となく体調が悪そうにしていた。
きっと部屋で休んでいるに違いない。
私は家令が何かを言うよりも先に、シアの部屋に向かって歩いていた。
「シア!大丈夫か?」
早くシアの顔を見たかった私は、急いでシアの部屋の扉を開けていた。
「……え?…どうして?」
一瞬、部屋を間違えて入ってしまったのかと思った。
なぜならば…、シアの部屋には彼女の姿どころか、彼女の私物すらも無くなっていたからだ。
シアの居ない部屋を見て唖然とする私。
「アナはもう居ないわよ。」
振り返ると、喪服を着た両親がいた。
別邸で生活していたはずの両親がなぜいるんだ?
「……シアは出て行ったのですか?」
「お前とコールマン侯爵令嬢の離縁が決まったからだ。」
今、父は離縁と言ったのか…?
「は…?なぜ私が同意してもいないのに、勝手に離縁させられなければならないのです?
私はシアを愛しています。離縁なんてしませんし、これは王命での結婚です。勝手に離縁だなんて……」
「その国王陛下が離縁を認めたのだ…。」
「……なぜ?」
絶望で言葉が出てこない。
「あのメイド長と小娘にやられたわ…」
あの母が涙目になり、悔しさを滲ませる表情をしている。
「お前が隣国に行っている間を狙って、メイド長がアナの毒殺を計画していたようだ。
遅延性の毒を少量ずつ盛り、少しずつ弱らせて、侍医を買収し、適当な病名をつけて死んだことにする予定だったらしい。
何かがおかしいと気づいたアナの専属メイドが、実家の侯爵家に助けを求めたようだ。侯爵は、筆頭公爵家のうちには許可がないと立ち入れないだろうと判断し、殿下に協力を求め、王宮騎士団を伴って、義妹を助けに来たようだ。」
意味が分からなかった…
隣国に行く前、体調が悪そうにしていたのは毒だったのか…?
「……なぜメイド長がシアの命を狙う必要があるのです?」
「バーカー子爵令嬢だ。あの女は、この邸に出入りを許されていた頃からずっと、メイド長や一部の使用人達に公爵夫人になれるように協力してくれたら、今の給金の倍にすると吹き込んでいたらしい。」
「そんな話を使用人達は信じたのですが?
あんなバカな女、誰も相手にするわけがない。」
「メイド長は、多額の借金で苦しんでいたらしいわ。あの女の言葉に唆されるくらい困っていたらしいのよ。
アナが妊娠しないようにと、結婚初夜からずっと隠れて避妊薬も盛っていたらしいの。アルの子供を妊娠したら面倒だからと。」
体が震えてきた……
私の大切なシアに何てことを!!
「シアはコールマン侯爵家にいるのですよね?
今すぐに会いに行ってきます!」
「無理だ!」
「何故です?私はシアに謝りたいし、離縁なんて受け入れられない!この邸に戻りたくないなら、違う邸に引っ越して、使用人も入れ替えればいい。」
「私達の服装を見て分からないの?アナは…、もういないのよ……」
シアが……
「…嘘だ!」
両親や使用人達が止めるのを無視して、単騎でコールマン侯爵家にやってきた私は、すぐにシアに会いたいと頼むのだが…
「申し訳ありませんが、旦那様はしばらく領地に行っておりますのでお会いできません。」
「侯爵ではなく、アナスタシアに会わせて欲しいのだ!」
「……何を言っておられるのか理解に苦しみます。
アナスタシア様を埋葬するために、旦那様は領地に行っておられるのです。
公爵閣下、ご理解ください。」
私に冷たく言い放つ家令が、嘘を言っているようには見えなかった。
今、埋葬って言ったのか……
陛下の配慮のおかげで、私と彼女はすぐに婚約することになる。
「アルマン…、私は今でもアナを大切だと思っている。
彼女のことを絶対に幸せにしてやって欲しい。」
「殿下。必ずコールマン侯爵令嬢を幸せにするとお約束致します。」
殿下は今でも彼女のことを愛しているのだと分かった。
早くシアと夫婦になりたかった私は、婚約した後、両親や国王陛下の力を借りて、急いで婚姻の準備をし、すぐに結婚した。
シアは、まだ私を愛してはくれていないだろう。殿下に向けていたあの笑顔を私に向けてくれる日がくるまで、私はいくらでも待ち続けたいと思う。
今、私がシアに愛を伝えても信じてもらえないだろうし、重いと思われてしまうだろう。だから、シアが私に心を開いてくれる日が来たら、私がずっと前からシアを好きだったこと、心から愛しているということを伝えたいと思っていた。
この時、自分のシアへの気持ちを正直に伝えなかったことで、この先ずっと後悔することになるとは、その時の私は気付いていなかった。
隣国から急いで帰国し、公爵家のタウンハウスに帰って来た私を家令が慌てて出迎えてくれる。
シアを驚かせたかった私は、予定よりも数日早く帰国して、先触れもなく突然帰って来たのだ。
「シアはどこにいる?」
私の言葉に家令の表情が曇るのが分かった。
「お、奥様は…」
「もしかして、まだ具合が悪いのか?」
隣国に出発する日も、何となく体調が悪そうにしていた。
きっと部屋で休んでいるに違いない。
私は家令が何かを言うよりも先に、シアの部屋に向かって歩いていた。
「シア!大丈夫か?」
早くシアの顔を見たかった私は、急いでシアの部屋の扉を開けていた。
「……え?…どうして?」
一瞬、部屋を間違えて入ってしまったのかと思った。
なぜならば…、シアの部屋には彼女の姿どころか、彼女の私物すらも無くなっていたからだ。
シアの居ない部屋を見て唖然とする私。
「アナはもう居ないわよ。」
振り返ると、喪服を着た両親がいた。
別邸で生活していたはずの両親がなぜいるんだ?
「……シアは出て行ったのですか?」
「お前とコールマン侯爵令嬢の離縁が決まったからだ。」
今、父は離縁と言ったのか…?
「は…?なぜ私が同意してもいないのに、勝手に離縁させられなければならないのです?
私はシアを愛しています。離縁なんてしませんし、これは王命での結婚です。勝手に離縁だなんて……」
「その国王陛下が離縁を認めたのだ…。」
「……なぜ?」
絶望で言葉が出てこない。
「あのメイド長と小娘にやられたわ…」
あの母が涙目になり、悔しさを滲ませる表情をしている。
「お前が隣国に行っている間を狙って、メイド長がアナの毒殺を計画していたようだ。
遅延性の毒を少量ずつ盛り、少しずつ弱らせて、侍医を買収し、適当な病名をつけて死んだことにする予定だったらしい。
何かがおかしいと気づいたアナの専属メイドが、実家の侯爵家に助けを求めたようだ。侯爵は、筆頭公爵家のうちには許可がないと立ち入れないだろうと判断し、殿下に協力を求め、王宮騎士団を伴って、義妹を助けに来たようだ。」
意味が分からなかった…
隣国に行く前、体調が悪そうにしていたのは毒だったのか…?
「……なぜメイド長がシアの命を狙う必要があるのです?」
「バーカー子爵令嬢だ。あの女は、この邸に出入りを許されていた頃からずっと、メイド長や一部の使用人達に公爵夫人になれるように協力してくれたら、今の給金の倍にすると吹き込んでいたらしい。」
「そんな話を使用人達は信じたのですが?
あんなバカな女、誰も相手にするわけがない。」
「メイド長は、多額の借金で苦しんでいたらしいわ。あの女の言葉に唆されるくらい困っていたらしいのよ。
アナが妊娠しないようにと、結婚初夜からずっと隠れて避妊薬も盛っていたらしいの。アルの子供を妊娠したら面倒だからと。」
体が震えてきた……
私の大切なシアに何てことを!!
「シアはコールマン侯爵家にいるのですよね?
今すぐに会いに行ってきます!」
「無理だ!」
「何故です?私はシアに謝りたいし、離縁なんて受け入れられない!この邸に戻りたくないなら、違う邸に引っ越して、使用人も入れ替えればいい。」
「私達の服装を見て分からないの?アナは…、もういないのよ……」
シアが……
「…嘘だ!」
両親や使用人達が止めるのを無視して、単騎でコールマン侯爵家にやってきた私は、すぐにシアに会いたいと頼むのだが…
「申し訳ありませんが、旦那様はしばらく領地に行っておりますのでお会いできません。」
「侯爵ではなく、アナスタシアに会わせて欲しいのだ!」
「……何を言っておられるのか理解に苦しみます。
アナスタシア様を埋葬するために、旦那様は領地に行っておられるのです。
公爵閣下、ご理解ください。」
私に冷たく言い放つ家令が、嘘を言っているようには見えなかった。
今、埋葬って言ったのか……
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