26 / 102
二度目の話
王都へ
しおりを挟む
お義兄様とのガリ勉に心身共に疲れ切った時、私は散歩だと言って、アーサーが働いている騎士団の寮まで遊びに来るようになっていた。
「お嬢様、もうすぐ王都に行ってしまうのですよね?」
「そうなのよね…。こうやって気楽に話が出来るアーサーとしばらく会えなくなるのは寂しいけど、アーサーは騎士になれるように、これからも頑張ってね。」
「私もお嬢様に会えなくなるのは寂しいですが、次にお嬢様に会った時に、成長したと言ってもらえるように努力します!」
アーサーの休憩時間に合わせて遊びに来るようにして、二人で話をしたり、休憩室でお茶を飲んだりして過ごす時間は、私の良い息抜きになっていて、大好きな時間になっていた。
アーサーはこの二年で、侯爵家の使用人らしく、身嗜みや言葉遣いが綺麗になり、親代わりをしてくれているクライブさん夫妻がよく面倒を見てくれているのか、真面目に仕事をして、剣術の稽古も頑張っているようだった。
私の護衛騎士達から聞いた話によると、アーサーは運動神経がいいので、動きが素早く、太刀筋も良いらしい。このまま努力すれば素晴らしい騎士になれるのではないかと言っていた。
私はその騎士達の話を聞いて妙に納得してしまった。
一度目の人生の時、暗殺者になっていたアーサーは、近衛騎士が数人がかりでやっと斬りつけていたからだ。
今回は手練れの暗殺者でなく、剣帝でも目指して頑張って欲しいわね。
アーサーと話をしていると、アーサーがサッと立ち上がり礼をする。
「アナ…。いつまでも戻って来ないから、心配で迎えに来てしまったよ。」
この声は…。お迎えが来てしまったわね。
「お、お義兄様。私がここにいることがよく分かりましたわね。」
「アナがどこにいるのか、誰と仲が良いのか、何をしているのか…、それくらいのことは私は何でも知っているよ。」
仲良くなってみて気付いたことだけど、実はお義兄様は過保護らしく、私の行動をよく把握しているようだった。
一度目の人生の時のクールなお義兄様は、もういなくなってしまったらしい。
ブラコンの私としては、大好きなお義兄様が私を大切にしてくれているのが伝わってきて嬉しくはあるが、度が過ぎるのはちょっと…
「お義兄様。そこまで心配なさらなくても、敷地内にいるのですから大丈夫ですわ。」
「その敷地が広いから心配しているのだよ。
ほらアーサーの仕事の邪魔になってしまうから、そろそろ戻ろうか。」
「そうですわね…。
アーサー、失礼するわね。」
「はい。お嬢様、ありがとうございました。」
お義兄様は、私の手を取り歩き出す。
15歳になったお義兄様は、更に美少年になった気がする。私も12歳になり、前よりは背が高くなったと思うけど、お義兄様がそれ以上に伸びたので、お義兄様の隣りにいると、相変わらず私はちんちくりんのままだ。
「アナ。王都に行ったら、私は貴族学園に入学するから、アナと一緒にいる時間が減ってしまうことが、残念でならないんだ。
私が学園に行っている間、勝手に屋敷を抜け出したり、勉強をサボったりしてはいけないよ。」
お義兄様の中で、私は問題児のままなのね…。
「お義兄様がいなくても真面目にやりますわ。
それにお義兄様は、学園で沢山の出会いがあるでしょうから、きっと楽しい学園生活になると思いますわよ。」
見た目完璧。学力も剣術も何をやらせても優秀、そして名門侯爵家の跡取りである義兄は、学園でモテていたと、一度目の人生の時に、当時の婚約者であった王太子殿下が教えてくれたのよね。そして、王太子殿下と元夫であるブレア公爵は、義兄の一つ下の学年で入学して、義兄とは生徒会の先輩・後輩の関係だった。
だから義兄が二年生になったら、あの二人とは義兄を通して、何らかの関わりがあるかもしれない。注意して動かないと、また毒殺コースまっしぐらだからね。
「……アナは寂しくないのかい?」
「えっ?」
「私が学園に行っている間、寂しくないのか気になってしまってね…。いつも私達は一緒だったから。」
お義兄様もかなりのシスコンよね…
一度目の時の義兄を知っている私としては、信じられないわね。
「寂しいですわ。ですから、朝食と夕食はお義兄様と必ずご一緒したいです。」
「勿論だ。ずっと一緒に食事しような。」
「ふふっ。お義兄様に愛する人が出来るまでは、私にお付き合いして下さいね。」
義兄は殿下やブレア公爵なんかより、結婚相手として最高の相手だと思うの。
素敵な御令嬢が現れたら、お義兄様の幸せのために協力するって決めているんだから!
その日から二週間後、お義兄様の学園への入学準備に合わせて、私達家族は王都のタウンハウスにやって来た。
12歳で王都に来たら、義兄の学園入学の他にも沢山のイベントが待っている。
それは私のお茶会デビューだ。
お茶会はお茶会でも、気をつけなければならないお茶会は、王妃殿下が主催する王宮でのお茶会だ。
そのお茶会は、一度目の人生で私の不幸の原因になった、死神二人がいるお茶会なのだ。私としては、仮病でも使って不参加にしたいくらいだけど、そこまで甘くないわよね…。
「お嬢様、もうすぐ王都に行ってしまうのですよね?」
「そうなのよね…。こうやって気楽に話が出来るアーサーとしばらく会えなくなるのは寂しいけど、アーサーは騎士になれるように、これからも頑張ってね。」
「私もお嬢様に会えなくなるのは寂しいですが、次にお嬢様に会った時に、成長したと言ってもらえるように努力します!」
アーサーの休憩時間に合わせて遊びに来るようにして、二人で話をしたり、休憩室でお茶を飲んだりして過ごす時間は、私の良い息抜きになっていて、大好きな時間になっていた。
アーサーはこの二年で、侯爵家の使用人らしく、身嗜みや言葉遣いが綺麗になり、親代わりをしてくれているクライブさん夫妻がよく面倒を見てくれているのか、真面目に仕事をして、剣術の稽古も頑張っているようだった。
私の護衛騎士達から聞いた話によると、アーサーは運動神経がいいので、動きが素早く、太刀筋も良いらしい。このまま努力すれば素晴らしい騎士になれるのではないかと言っていた。
私はその騎士達の話を聞いて妙に納得してしまった。
一度目の人生の時、暗殺者になっていたアーサーは、近衛騎士が数人がかりでやっと斬りつけていたからだ。
今回は手練れの暗殺者でなく、剣帝でも目指して頑張って欲しいわね。
アーサーと話をしていると、アーサーがサッと立ち上がり礼をする。
「アナ…。いつまでも戻って来ないから、心配で迎えに来てしまったよ。」
この声は…。お迎えが来てしまったわね。
「お、お義兄様。私がここにいることがよく分かりましたわね。」
「アナがどこにいるのか、誰と仲が良いのか、何をしているのか…、それくらいのことは私は何でも知っているよ。」
仲良くなってみて気付いたことだけど、実はお義兄様は過保護らしく、私の行動をよく把握しているようだった。
一度目の人生の時のクールなお義兄様は、もういなくなってしまったらしい。
ブラコンの私としては、大好きなお義兄様が私を大切にしてくれているのが伝わってきて嬉しくはあるが、度が過ぎるのはちょっと…
「お義兄様。そこまで心配なさらなくても、敷地内にいるのですから大丈夫ですわ。」
「その敷地が広いから心配しているのだよ。
ほらアーサーの仕事の邪魔になってしまうから、そろそろ戻ろうか。」
「そうですわね…。
アーサー、失礼するわね。」
「はい。お嬢様、ありがとうございました。」
お義兄様は、私の手を取り歩き出す。
15歳になったお義兄様は、更に美少年になった気がする。私も12歳になり、前よりは背が高くなったと思うけど、お義兄様がそれ以上に伸びたので、お義兄様の隣りにいると、相変わらず私はちんちくりんのままだ。
「アナ。王都に行ったら、私は貴族学園に入学するから、アナと一緒にいる時間が減ってしまうことが、残念でならないんだ。
私が学園に行っている間、勝手に屋敷を抜け出したり、勉強をサボったりしてはいけないよ。」
お義兄様の中で、私は問題児のままなのね…。
「お義兄様がいなくても真面目にやりますわ。
それにお義兄様は、学園で沢山の出会いがあるでしょうから、きっと楽しい学園生活になると思いますわよ。」
見た目完璧。学力も剣術も何をやらせても優秀、そして名門侯爵家の跡取りである義兄は、学園でモテていたと、一度目の人生の時に、当時の婚約者であった王太子殿下が教えてくれたのよね。そして、王太子殿下と元夫であるブレア公爵は、義兄の一つ下の学年で入学して、義兄とは生徒会の先輩・後輩の関係だった。
だから義兄が二年生になったら、あの二人とは義兄を通して、何らかの関わりがあるかもしれない。注意して動かないと、また毒殺コースまっしぐらだからね。
「……アナは寂しくないのかい?」
「えっ?」
「私が学園に行っている間、寂しくないのか気になってしまってね…。いつも私達は一緒だったから。」
お義兄様もかなりのシスコンよね…
一度目の時の義兄を知っている私としては、信じられないわね。
「寂しいですわ。ですから、朝食と夕食はお義兄様と必ずご一緒したいです。」
「勿論だ。ずっと一緒に食事しような。」
「ふふっ。お義兄様に愛する人が出来るまでは、私にお付き合いして下さいね。」
義兄は殿下やブレア公爵なんかより、結婚相手として最高の相手だと思うの。
素敵な御令嬢が現れたら、お義兄様の幸せのために協力するって決めているんだから!
その日から二週間後、お義兄様の学園への入学準備に合わせて、私達家族は王都のタウンハウスにやって来た。
12歳で王都に来たら、義兄の学園入学の他にも沢山のイベントが待っている。
それは私のお茶会デビューだ。
お茶会はお茶会でも、気をつけなければならないお茶会は、王妃殿下が主催する王宮でのお茶会だ。
そのお茶会は、一度目の人生で私の不幸の原因になった、死神二人がいるお茶会なのだ。私としては、仮病でも使って不参加にしたいくらいだけど、そこまで甘くないわよね…。
応援ありがとうございます!
16
お気に入りに追加
8,221
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる