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二度目の話
お義兄様の発表会
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お茶会とガリ勉で忙しい日々を送っていた私は、13歳になっていた。
そんな私は、貴族学園の発表会に来ている。
これは貴族学園で三年に一度行われるもので、クラスごとに劇や音楽を発表したり、絵画や刺繍などの作品を展示して家族にお披露目する日なのである。
私の目的は勿論、お兄様の応援よ!
お義兄様のクラスは、楽器を弾くのが得意な人が多いらしく、オーケストラをやるらしいのだけど、お義兄様はバイオリンでソリストをやるらしい。
確かに義兄様の趣味はバイオリンで、上手なのは知っていたけど、ソリストをやるくらいすごいのね!
これは絶対に行かないといけないわ!
一度目の時は、お義兄様とは仲良くなかったので、発表会には行かなかったのよね。
でもブラコンの今は、躊躇なく行くことに決めた私。
しかし、ここで問題が…。
発表会の日はお父様もお母様も、予定が入っていて来れないのだ。
一度目の人生で貴族学園を卒業している私としては、学園の中はよく知っているから何の問題もない。
それに貴族学園だから、学園内には警備の騎士が配置されているし、怪しい人はいない。
会場の座席も、家族用の指定席のチケットがあるから、場所取りも必要ない。
でも一人で行くのはダメだと言われ、護衛騎士と一緒に行くことになった。まあ、しょうがない。
「お嬢様、会場はこちらです。」
護衛騎士は男爵家出身なので、貴族学園の卒業生らしく、学園のことにも詳しそうだった。
「お嬢様、お席はこちらですね。
私は出入り口付近で待機しておりますので、何かあればお呼び下さい。」
「ありがとう。」
これで誰にも邪魔されることなく、静かにお兄様の演奏を楽しめるわね。
しかし、私は大切なことを忘れていた…
座席は爵位ごとに決められており、筆頭侯爵家のうちの座席の近くには、公爵家の座席もあったのだ。
家族席に座るのが初めての私は、そんなことはすっかり忘れており、早く始まらないかなーと、気楽に座って待っていたのだが…
「あらっ?もしかして、コールマン侯爵令嬢かしら?」
この声は…!
ハッとした私は慌てて立ち上がり、カーテシーをする。
「そんなに気を遣わないでちょうだい。
今日はお一人で来ているの?」
一度目の人生の元義母が登場してきた。しかも、すぐ後ろには元義父であるブレア公爵様までいるわ…。
「ブレア公爵夫人、ご機嫌麗しゅうございます。
先日は、素敵なお茶会にご招待して下さり、ありがとうございました。
本日は、両親に予定がありまして、代わりに私が来ることになったのです。」
「そうだったのね。コールマン侯爵令息は、可愛い義妹の貴女が来てくれて、きっと喜んでくれているでしょうね。
旦那様、こちらがあのコールマン侯爵令嬢よ!」
「家庭教師達からコールマン侯爵家の義兄妹は優秀だと聞いているよ。こんなに可愛らしい御令嬢だったのか。
今日は会えて嬉しい。うちの息子が喜ぶから、また遊びに来てくれ。」
絶対に行かないわ!…と、心の中で叫ぶ私。
「過分なお褒めの言葉をいただき、痛み入ります。」
このやり取りの後、ブレア公爵夫人はとんでもないことを言い出す。
「コールマン侯爵令嬢はお一人なのよね?
公爵家の席が空いているから、こっちで一緒に座りましょう。」
「そうだな!その席よりも、こっちの席の方が見やすいだろうから、こっちに座わりなさい。」
……嘘でしょ?
この夫妻が、高すぎる身分の割には気さくな人達だということを知ってはいたけれど…、流石に人の目に付くこの場でそれは良くないわよ!
「私のような者が公爵家の席に座らせて頂くなど、畏れ多いことでございます。」
「いいのよ!空いているのだから、一緒に座りましょう。」
「遠慮はいらない。ほら、ここに座りなさい。」
ひぃー!そんな笑顔で誘わないで…
「しかし…」
「もうすぐ始まるから、早くいらっしゃい。」
ああ…。これ以上は断りきれないわね。
「……お気遣いありがとうございます。」
元義両親に負けた私。
しかし、公爵家の席は二階の最前列で目立つわね。さっきから、在校生の席の方からチクチクと視線を感じるわ。
ブレア公爵令息は一人っ子だから、両親である公爵夫妻が身内以外の令嬢と一緒に公爵家の席に座っている姿を見られたら、何を勘違いされることか…
またしくじったわ!
一人の世界に入り、お義兄様の演奏だけを楽しむつもりで来たのに……
「うちのアルは、殿下と劇をやるらしいのよ。
殿下と親友同士の役で、ヒロインを取り合うらしいわ。」
私はお義兄様以外の発表には興味はないの!…なんて言えるはずもなく、
「まあ、素敵な役ですわね」
「アナちゃんも観てあげてちょうだい。苦労してセリフを覚えたらしいから。」
「ええ、とても楽しみですわ。」
気さくな公爵夫人は、私を愛称で呼びたいなんて言い出すし。
殿下とブレア公爵令息のクラスの劇は、二人が令嬢方に大人気なこともあって、非常に盛り上がっていたようだった…。興味ないけど。
そして、ついに待ちに待ったお義兄様のクラスの出番になる。
お義兄様…、すごいカッコいい!勿論、バイオリンの演奏も素敵だわ。
あの真剣な表情が堪らないわね!
ステージのお義兄様に手を振りたいくらいだけど…、我慢ね。
やはり見に来て良かったー!
私のお義兄様が一番よ!
しかしこの後に、地獄が私を待っているのであった…。
そんな私は、貴族学園の発表会に来ている。
これは貴族学園で三年に一度行われるもので、クラスごとに劇や音楽を発表したり、絵画や刺繍などの作品を展示して家族にお披露目する日なのである。
私の目的は勿論、お兄様の応援よ!
お義兄様のクラスは、楽器を弾くのが得意な人が多いらしく、オーケストラをやるらしいのだけど、お義兄様はバイオリンでソリストをやるらしい。
確かに義兄様の趣味はバイオリンで、上手なのは知っていたけど、ソリストをやるくらいすごいのね!
これは絶対に行かないといけないわ!
一度目の時は、お義兄様とは仲良くなかったので、発表会には行かなかったのよね。
でもブラコンの今は、躊躇なく行くことに決めた私。
しかし、ここで問題が…。
発表会の日はお父様もお母様も、予定が入っていて来れないのだ。
一度目の人生で貴族学園を卒業している私としては、学園の中はよく知っているから何の問題もない。
それに貴族学園だから、学園内には警備の騎士が配置されているし、怪しい人はいない。
会場の座席も、家族用の指定席のチケットがあるから、場所取りも必要ない。
でも一人で行くのはダメだと言われ、護衛騎士と一緒に行くことになった。まあ、しょうがない。
「お嬢様、会場はこちらです。」
護衛騎士は男爵家出身なので、貴族学園の卒業生らしく、学園のことにも詳しそうだった。
「お嬢様、お席はこちらですね。
私は出入り口付近で待機しておりますので、何かあればお呼び下さい。」
「ありがとう。」
これで誰にも邪魔されることなく、静かにお兄様の演奏を楽しめるわね。
しかし、私は大切なことを忘れていた…
座席は爵位ごとに決められており、筆頭侯爵家のうちの座席の近くには、公爵家の座席もあったのだ。
家族席に座るのが初めての私は、そんなことはすっかり忘れており、早く始まらないかなーと、気楽に座って待っていたのだが…
「あらっ?もしかして、コールマン侯爵令嬢かしら?」
この声は…!
ハッとした私は慌てて立ち上がり、カーテシーをする。
「そんなに気を遣わないでちょうだい。
今日はお一人で来ているの?」
一度目の人生の元義母が登場してきた。しかも、すぐ後ろには元義父であるブレア公爵様までいるわ…。
「ブレア公爵夫人、ご機嫌麗しゅうございます。
先日は、素敵なお茶会にご招待して下さり、ありがとうございました。
本日は、両親に予定がありまして、代わりに私が来ることになったのです。」
「そうだったのね。コールマン侯爵令息は、可愛い義妹の貴女が来てくれて、きっと喜んでくれているでしょうね。
旦那様、こちらがあのコールマン侯爵令嬢よ!」
「家庭教師達からコールマン侯爵家の義兄妹は優秀だと聞いているよ。こんなに可愛らしい御令嬢だったのか。
今日は会えて嬉しい。うちの息子が喜ぶから、また遊びに来てくれ。」
絶対に行かないわ!…と、心の中で叫ぶ私。
「過分なお褒めの言葉をいただき、痛み入ります。」
このやり取りの後、ブレア公爵夫人はとんでもないことを言い出す。
「コールマン侯爵令嬢はお一人なのよね?
公爵家の席が空いているから、こっちで一緒に座りましょう。」
「そうだな!その席よりも、こっちの席の方が見やすいだろうから、こっちに座わりなさい。」
……嘘でしょ?
この夫妻が、高すぎる身分の割には気さくな人達だということを知ってはいたけれど…、流石に人の目に付くこの場でそれは良くないわよ!
「私のような者が公爵家の席に座らせて頂くなど、畏れ多いことでございます。」
「いいのよ!空いているのだから、一緒に座りましょう。」
「遠慮はいらない。ほら、ここに座りなさい。」
ひぃー!そんな笑顔で誘わないで…
「しかし…」
「もうすぐ始まるから、早くいらっしゃい。」
ああ…。これ以上は断りきれないわね。
「……お気遣いありがとうございます。」
元義両親に負けた私。
しかし、公爵家の席は二階の最前列で目立つわね。さっきから、在校生の席の方からチクチクと視線を感じるわ。
ブレア公爵令息は一人っ子だから、両親である公爵夫妻が身内以外の令嬢と一緒に公爵家の席に座っている姿を見られたら、何を勘違いされることか…
またしくじったわ!
一人の世界に入り、お義兄様の演奏だけを楽しむつもりで来たのに……
「うちのアルは、殿下と劇をやるらしいのよ。
殿下と親友同士の役で、ヒロインを取り合うらしいわ。」
私はお義兄様以外の発表には興味はないの!…なんて言えるはずもなく、
「まあ、素敵な役ですわね」
「アナちゃんも観てあげてちょうだい。苦労してセリフを覚えたらしいから。」
「ええ、とても楽しみですわ。」
気さくな公爵夫人は、私を愛称で呼びたいなんて言い出すし。
殿下とブレア公爵令息のクラスの劇は、二人が令嬢方に大人気なこともあって、非常に盛り上がっていたようだった…。興味ないけど。
そして、ついに待ちに待ったお義兄様のクラスの出番になる。
お義兄様…、すごいカッコいい!勿論、バイオリンの演奏も素敵だわ。
あの真剣な表情が堪らないわね!
ステージのお義兄様に手を振りたいくらいだけど…、我慢ね。
やはり見に来て良かったー!
私のお義兄様が一番よ!
しかしこの後に、地獄が私を待っているのであった…。
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