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二度目の話

地獄

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 お義兄様の演奏に感動して胸が一杯になった私は、発表会が終わってすぐ帰ろうとするが…

「アナちゃん、各教室に生徒の作品が展示してあるらしいから、私達と一緒に行きましょう!」

 そんなことをしたら、関わりたくない人達に接触してしまう可能性があるから、発表会だけ見て帰るつもりでいたのに…。

「申し訳ありません。護衛を待たせておりますし、遅くなると両親が心配すると思いますので、私はそろそろ帰らせて頂きますわ。」

「護衛とコールマン侯爵家には、うちから連絡を入れておこう。
 帰りは私達が送って行くから大丈夫だ。どうせ近くを通るのだからな。」

「あら!それなら問題ないわね。」

 ブレア公爵様はすぐに従者らしき人物に指示を出してくれていた。

 え…、そこまでするの?まるで身内みたいじゃないのよ。


 学園内をブレア公爵夫妻と見て回る私。
 この組み合わせ、明らかに変だから!

 ああ、また目立っているわ…。
 学生だけでなく、学生の保護者達からも見られている。


「父上、母上!コールマン侯爵令嬢に何をさせているのです?無理やり付き合わせていますよね?」

 ああ、死神がいらっしゃったわね…。
 両親が令嬢を連れて歩いていたら、息子の立場では驚きよね。

「アナちゃんが一人で来てたから、誘ったのよ。」

「それを付き合わせていると言うのですよ。
 コールマン侯爵令嬢、うちの両親が強引で申し訳ない。」

「いえ。公爵様と夫人にはとても親切にして頂きましたの。とても感謝しておりますわ。」

 ハァー。関わりたくないのに。

「アル。コールマン侯爵令息の教室に令嬢を案内してやってくれないか?
 私達はここで作品を見て待っているから。」

「そうね。アナちゃんが戻るまで、私達はここで待っているわ。」


 私が今日、学園に来たことを本気で後悔した瞬間だった。


 これは全力で拒否させて頂くわよ!

「実は私は、義兄から学園内の見取り図を書いて見せてもらって来たのです。
 ですから、義兄の教室には私一人で行けますので大丈夫ですわ。」

「いや、君一人で行かせられない。
 この前みたいに、つまらない嫉妬で狂った女達が君に絡んでくるかもしれないから、私も付き添う。」

「そうよ!この前の王妃殿下のお茶会みたいに、身の程を知らない女狐がアナちゃんに絡んでくると困るから、アルに付き添ってもらって。」

「コールマン侯爵令嬢。この前のことは、うちから王家の方に報告してすぐに対応してもらったが、他にも酷い令嬢がいると思うから、アルと一緒に行きなさい。」

 やはりゴメス伯爵令嬢とグラント伯爵令嬢は、ブレア公爵家によって、王妃殿下のお茶会から追放されたのね…。
 助けてくれたのは有り難いけど、筆頭公爵家、怖すぎだから!


 結局、3対1であっさり負けた私は、一度目の人生での元夫であり、毒殺された原因でもある死神にエスコートされながら、校舎内を移動している。

 どうしてこうなるのよ?みんな見ないでー!!

「あの…、ブレア様。」

「どうかしたか?」

「わざわざ私ごときをエスコートして下さらなくても大丈夫ですわ。
 ブレア様が大切に想う方に勘違いされるのは嫌ですし、愛し合う二人の邪魔はしたくないのです。」

 令嬢方に大人気の筆頭公爵家の嫡男にエスコートされて歩いていたら、目立ってしまうし、何一ついいことはないのよ。
 少し離れて歩きたいのに!


 この男に近づいたら毒殺。
 二人の恋を邪魔しても毒殺。
 

 ブレア公爵令息の背後に、あの時のメイド長とバーカー子爵令嬢の姿が見えるような気がしてきた。幻覚を見るくらい私は参っているのね…。

「コールマン侯爵令嬢。またタチの悪い女狐に何かを言われてきたのかもしれないが、私にはそのような人はいない。」

 そうよね…。両親に反対されるような令嬢との恋だもの。普通ならバレないように秘密にするわよね。

「そうでしたか。
 でも私は、二人の恋を陰ながら応援しておりますわ。絶対に邪魔はしませんから。」

「え?君は何を言って…?」

 誤魔化しているようだけど、もう私は騙されないわよ。

 そんな話をしていたら、お義兄様のクラスに着いてしまった。

「あれ?君はルークの義妹君だよね?」

 この令息はお義兄様のお友達だわ!

「ご機嫌よう。義兄の作品を見に来たのですが。」

「中に入って見て行くといいよ。ルークはえっと、どこだろう?
 ルークはいるか?」

 お義兄様の友人が教室の中にいる他の友人達に聞いてくれているが…

「ルークなら、さっき校舎裏に行くって言ってたぞ。」

 校舎裏…。この学園の中でその場所を聞いて思い出すことは、恋人同士が二人で過ごす場所だということ。
 適度に花が咲いていて、木があって、ベンチがあって…、恋人同士が一緒にお昼を食べたり、読書したり、おしゃべりをしたり、手を繋いだりする場所。


 お義兄様もそんな相手がいるってことなのね…


 胸がズキンと痛む気がした。
 私のブラコンは、お義兄様に恋人がいることにショックを受けるくらい酷いってことかしら…。

「義兄が居なくても大丈夫ですわ。
 作品だけ見て帰りますので。」

「…ああ。ルークの作品まで案内するよ。
 どうぞ!」

「失礼致します。」

 お義兄様の友人達も、私がブレア公爵令息にエスコートされて来ているのを不思議そうに見ているわね…。

 サッと見て戻ろう。


 

 
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