巻き戻り令嬢は長生きしたい。二度目の人生はあなた達を愛しません

せいめ

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二度目の話

二人の死神

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 お義兄様の絵は、侯爵家の領地の邸から見える風景画だった。高台にある邸から見える景色は、私も好きなのよね。
 お義兄様は絵も上手いのね…。本当に何をやらせても完璧な人だわ。私とは大違い…。

「コールマン侯爵令息は、絵の才能もあるのだな。」

 隣にいたブレア公爵令息にも、お義兄様の絵の素晴らしさが分かったらしい。

「これは、領地の邸から見た風景ですわね。」

「君が領地を愛しているとは聞いていたが、こんなに美しい場所だったのか…。」

 領地は大好きだけど、そんなことをこの男に話したかしら?
 お義兄様が私が居ないところで、何か適当に話をしたのかもしれないわ。

 でも、そんなことよりも今私に大切なのは、どうすれば早く帰れるのかということなのよ。

「ブレア様、そろそろ戻りませんか?
 公爵様や夫人がお待ちになっておりますので。」

 しかし…

「うちの両親は二人きりでのんびりと見学する人達だから、気にしなくていい。
 せっかくだから、学園内を案内するよ。」

 二人きりでのんびりと見学したいなら、私を誘うべきではないわよ…

「ではあと少しだけ見たら、戻りましょうか?」

「そうだな。学園内は広いから、全部見ようとすると疲れてしまうだろう。少しだけ見たら戻るようにしよう。」

 ハァー。私は今日死ぬのかしら?
 二人で中身のない話をしながら歩いていると、後ろから声を掛けられる。

「アルマン…?」

 その声の主を見て、カーテシーをする私。

「殿下、どうされました?」

「アルマンが令嬢を連れている姿を偶然見てしまって、思わず声を掛けてしまったんだ。
 そちらは確か…、コールマン侯爵令嬢だったかな?」

 もう一人の死神に声を掛けられてしまった。

 さすが殿下ね。茶会で一度挨拶しただけの私を覚えているなんて、本当にすごいわ。

「王太子殿下にご挨拶致します。
 コールマン侯爵家、長女のアナスタシアでございます。」

「やはり、そうだったか。
 王宮での茶会で、君とは話が出来なかったから、残念に思っていたんだ。
 また茶会に来てくれたら嬉しい。」

 殿下がよく知りもしない令嬢にここまで言うなんて驚きだけど、親戚のブレア公爵令息が連れている令嬢だから気を遣ってくれているのね。
 でも、殿下を狙う令嬢達に目を付けられたくないから、ここはサラッと返そう。

「ご厚情痛み入ります。」

 …あれ?殿下を囲んでいる側近メンバーが一度目と違う。
 あっ!いつもなら、あの側近の中心にブレア公爵令息がいるはずなのに、今日は自分の両親の相手をしたり、私に付き合ったりしたから、殿下とは別行動になってしまったのかしら。


「アルマンとコールマン侯爵令嬢は、このような場に二人でいるほど仲が良かったなんて知らなかったな。」

 え…?こんな風に話す人だった?
 優しくて穏やかで大好きだった殿下が、何となく棘があるような言い方をするなんて…。

「うちの両親が、偶然一人で来ていたコールマン侯爵令嬢に会ったようでしてね。令嬢を両親の話に付き合わせたりしていたようなのですよ。
 両親からは、令嬢に学園を案内するように言われまして、私が学園内を案内していたのです。」

「そうだったのか…。
 しかし、コールマン侯爵令嬢が公爵や夫人と一緒にいたり、アルマンにエスコートされている姿を見た者たちは、二人の関係について何か勘違いするかもしれない。
 アルマンに好意を寄せる令嬢は、なかなか血気盛んな者が多いから、コールマン侯爵令嬢は気を付けた方がいいと思う。」


 あの殿下がこんなことを言うなんて…。


 確かにこの男の周りにいた女性は最悪だったし、一度、この男のせいで死んだ私としては、殿下にそこまで言われなくても、十分に気を付けているわよ!


「…殿下。コールマン侯爵令嬢にそのようなことのないよう、私は細心の注意を払うようにしておりますよ。」

「そうか。ならば問題ないな…。」


 何となく場の空気が悪くなっているような気もするわ。
 この二人は、普通に仲が良かった記憶しかなかったのに、この雰囲気は何なの?
 こんな時はこの場を離れた方がいいわね。

「王太子殿下、ご教示頂きありがとうございます。
 ブレア様、そろそろお時間かと…。」

「ああ、そうだな。そろそろ両親の所に戻ろう。
 殿下、失礼致します。」

「ああ…。」






 その後、ブレア公爵と夫人は、私を邸まで送ってくれた。
 お父様とお母様はまだ帰っていなかったから、家令が出迎えてくれたけど、かなり驚いていたように見えた。
 公爵家で送るとは聞いていたみたいだけど、まさか公爵閣下と夫人の二人が送ってくれるとは思っていなかったようだ。



 あまりに疲れ切った私は、お義兄様やお母様が帰って来る前に眠ってしまい、目覚めたのは次の日の朝だった。



「アナ!昨日は何があったの?ブレア公爵様と夫人と一緒に帰って来たって、セバスチャンが驚いていたわよ。
 ルークの発表会に行ったのに、ブレア公爵様と夫人と一緒の席で見て、ブレア公爵令息にエスコートされて学園内を歩いていたって本当なの?」

 朝食の時間、私はまだ疲れが残っていて怠いのに、お母様は朝からとても元気だった。
 お義兄様に話を聞いたのね……

「…一人で座っていたら、近くにブレア公爵様と夫人がいらっしゃって、声を掛けて下さったの。一人なら一緒に座りましょうって。
 畏れ多いからお断りしましたわ。でも、席が空いているからと言われて…。」

 昨日の出来事を全部お母様に話す私。お父様とお義兄様はそれを黙って聞いているようだった。

「まあ!すごいじゃないの。ブレア公爵家は貴族の中で一番の家門よ。
 仲良くなって損はないわ!」

 仲良くなったら毒殺されるのよ!

「いえ。私はそんなことは望んでおりませんわ。
 今回は断り切れずにこんなことになってしまっただけです。」

「アナは欲がないわね…。」

「とりあえず、ブレア公爵家には私から礼状を出しておく。」

「お父様、よろしくお願い致します。」




 
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