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二度目の話
14歳
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一度目の時、ハンナは私が15歳の頃に亡くなったけど、一年くらい前にはすでに病に侵されていたってことだったのね。
体調が良くないのを我慢して仕事をして、気付いた時には手遅れだったのよ…。
「ハンナは大丈夫なのかしら?本当に治る病気なの?」
「ええ。スミス先生が言うには、きちんと薬を飲んで、栄養のあるものを食べて、安静にしていればすぐに治ると話されておりましたわ。」
「ハンナは今どこに?」
「寮で安静にしていますわ。
…お嬢様、お見舞いはご遠慮して下さいませ。」
メイド長には、私の考えはバレているらしい。
「分かったわ。そのかわり、ハンナには栄養満点の美味しい食事を食べさせてあげて欲しいの。
幾らかかっても構わないわ。早く元気になって欲しいのよ。」
「ふふっ。分かりました。寮の料理人には、お嬢様命令としてお伝えしておきますわ。
きっとハンナも喜ぶでしょう。」
ハンナは仕事を休んで安静にしていたようだが、20日後には仕事に復帰してきた。
「お嬢様。お休みの間、美味しいお食事を沢山食べさせて頂きまして、ありがとうございました。
すっかり体が重くなってしまいましたが、また頑張りますので、どうぞよろしくお願い致します。」
元気になったのね…
安心したら、涙がポロポロと流れてきてしまった。
「……っ!良かったー!ハンナが元気になってくれて…。死ななくて良かった…。」
「お、お嬢様!そんなに泣くほど心配して下さったのですか?
ありがとうございます。お嬢様のようなお優しい方にお仕え出来て、私は本当に幸せですわ。」
スミス先生は初期に発見して、薬が良く効いたようだから大丈夫だと話していたし、ハンナ自身も普通に元気そうだから、今回は助かったってことなのかしらね。
一度目の時は確か…
『お嬢様、ハンナは実家に帰ることになりました。
どうか最後は笑顔で見送ってくださいませんか?
お嬢様が涙を流していては、ハンナも辛いでしょうから…。』
『メイド長。私は毎日ハンナの側にいて、何も気付けなかったのよ。笑顔なんて出来ないわ…』
ハンナが侯爵家を辞めて出て行く日、私は涙がとまらなくなっていた。
『お嬢様。未来の国母になるお方が、使用人ごときのために涙を流してはいけませんわ。
辛い時ほど笑顔を忘れてはいけません。私はお嬢様の笑った顔が大好きなのです。
お嬢様の今後の幸せをずっとお祈りしておりますわ。』
体調が悪いはずのハンナは、最後まで凛として見えた。
でも私は気付いてしまった。邸を去っていくハンナの背中が震えていたことに。
ハンナは私の前で、必死に涙を堪えていたのだ。
もう、あんなお別れはしたくないのよ…。
そして、14歳になった私を待っていたのは、王太子殿下の婚約者を選ぶために行われる、王妃様主催のお茶会だった。
王太子殿下が学生でいる間に、婚約者を決めておきたいという王家の意向があって、この頃からお茶会が頻繁に開かれるようになるのは、一度目と一緒ね。
行きたくないけど、このお茶会は伯爵家より上の家門の令嬢は強制参加なのよ。
心配症のお義兄様も、今日は令嬢だけの招待で一緒に来ることは出来ないから、私一人で王宮に行かなければならないのよね。
ハァー。憂鬱だわ…。
そういえば少し前に、ブレア公爵家のお茶会に単独で招待されたことがあったわね。
婚約者ではないし、周りに勘違いされたくないということを、お母様からやんわりとブレア公爵家に伝えてもらって、お義兄様同伴で渋々、参加してきたのだけど、義兄様は、私の隣から一瞬も離れることなく付いていてくれたから、本当に心強かった。
ブレア公爵令息とは、お義兄様が沢山会話してくれたから、私はほとんど喋らずに終わったのよね。
今振り返ると、お義兄様とブレア公爵令息の交流を深めるお茶会になっていたと思うわ。
だけど、一人でお茶会に行くことは、こんなにも心細いのね。
一度目は、一人が当たり前になっていたから平気だったけど、今はお義兄様に甘やかされてしまって、二人でいることに慣れてしまった。こんな私で、この先は大丈夫なのかと不安になる。
いつかお義兄様は誰かと結婚するのに…
体調が良くないのを我慢して仕事をして、気付いた時には手遅れだったのよ…。
「ハンナは大丈夫なのかしら?本当に治る病気なの?」
「ええ。スミス先生が言うには、きちんと薬を飲んで、栄養のあるものを食べて、安静にしていればすぐに治ると話されておりましたわ。」
「ハンナは今どこに?」
「寮で安静にしていますわ。
…お嬢様、お見舞いはご遠慮して下さいませ。」
メイド長には、私の考えはバレているらしい。
「分かったわ。そのかわり、ハンナには栄養満点の美味しい食事を食べさせてあげて欲しいの。
幾らかかっても構わないわ。早く元気になって欲しいのよ。」
「ふふっ。分かりました。寮の料理人には、お嬢様命令としてお伝えしておきますわ。
きっとハンナも喜ぶでしょう。」
ハンナは仕事を休んで安静にしていたようだが、20日後には仕事に復帰してきた。
「お嬢様。お休みの間、美味しいお食事を沢山食べさせて頂きまして、ありがとうございました。
すっかり体が重くなってしまいましたが、また頑張りますので、どうぞよろしくお願い致します。」
元気になったのね…
安心したら、涙がポロポロと流れてきてしまった。
「……っ!良かったー!ハンナが元気になってくれて…。死ななくて良かった…。」
「お、お嬢様!そんなに泣くほど心配して下さったのですか?
ありがとうございます。お嬢様のようなお優しい方にお仕え出来て、私は本当に幸せですわ。」
スミス先生は初期に発見して、薬が良く効いたようだから大丈夫だと話していたし、ハンナ自身も普通に元気そうだから、今回は助かったってことなのかしらね。
一度目の時は確か…
『お嬢様、ハンナは実家に帰ることになりました。
どうか最後は笑顔で見送ってくださいませんか?
お嬢様が涙を流していては、ハンナも辛いでしょうから…。』
『メイド長。私は毎日ハンナの側にいて、何も気付けなかったのよ。笑顔なんて出来ないわ…』
ハンナが侯爵家を辞めて出て行く日、私は涙がとまらなくなっていた。
『お嬢様。未来の国母になるお方が、使用人ごときのために涙を流してはいけませんわ。
辛い時ほど笑顔を忘れてはいけません。私はお嬢様の笑った顔が大好きなのです。
お嬢様の今後の幸せをずっとお祈りしておりますわ。』
体調が悪いはずのハンナは、最後まで凛として見えた。
でも私は気付いてしまった。邸を去っていくハンナの背中が震えていたことに。
ハンナは私の前で、必死に涙を堪えていたのだ。
もう、あんなお別れはしたくないのよ…。
そして、14歳になった私を待っていたのは、王太子殿下の婚約者を選ぶために行われる、王妃様主催のお茶会だった。
王太子殿下が学生でいる間に、婚約者を決めておきたいという王家の意向があって、この頃からお茶会が頻繁に開かれるようになるのは、一度目と一緒ね。
行きたくないけど、このお茶会は伯爵家より上の家門の令嬢は強制参加なのよ。
心配症のお義兄様も、今日は令嬢だけの招待で一緒に来ることは出来ないから、私一人で王宮に行かなければならないのよね。
ハァー。憂鬱だわ…。
そういえば少し前に、ブレア公爵家のお茶会に単独で招待されたことがあったわね。
婚約者ではないし、周りに勘違いされたくないということを、お母様からやんわりとブレア公爵家に伝えてもらって、お義兄様同伴で渋々、参加してきたのだけど、義兄様は、私の隣から一瞬も離れることなく付いていてくれたから、本当に心強かった。
ブレア公爵令息とは、お義兄様が沢山会話してくれたから、私はほとんど喋らずに終わったのよね。
今振り返ると、お義兄様とブレア公爵令息の交流を深めるお茶会になっていたと思うわ。
だけど、一人でお茶会に行くことは、こんなにも心細いのね。
一度目は、一人が当たり前になっていたから平気だったけど、今はお義兄様に甘やかされてしまって、二人でいることに慣れてしまった。こんな私で、この先は大丈夫なのかと不安になる。
いつかお義兄様は誰かと結婚するのに…
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