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二度目の話
あの頃の友人達
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殿下と私が不仲な演技を二週間くらい続けた後に噂話が流れると、殿下の予想通りにフーリン子爵令嬢は徐々に私から離れていった。
そして殿下と親しくしたことで、赤ドレス軍団から目をつけられて嫌がらせをされていた、可哀想なオルグレン伯爵令嬢に、優しく助けるように振る舞って近付いていったのである。
私の他の友人達は変わらずにいてくれたから良かったけど、私の心の中では修羅場だったと思う。
殿下はフーリン子爵令嬢を試すためだけでなく、殿下との婚約解消の噂話を聞いて、私に近付こうとする令息がいないかをチェックしたかったらしい。
結果…、何人かの令息が近付いて来たが、その時の殿下は恐ろしかった。
その後、殿下はある噂話を学園内に流す。
〝王太子殿下は、溺愛する婚約者に横恋慕する者がいないかを炙り出すため、オルグレン伯爵令嬢に協力してもらい、コールマン侯爵令嬢と不仲そうに見せる演技をしていたらしい。〟
フーリン子爵令嬢は、王太子殿下や私の友人達から睨まれて、その後近づいてくることはなくなった。
オルグレン伯爵令嬢には迷惑を掛けてしまったが、あんな酷い人達(赤ドレス軍団)を相手にしているコールマン侯爵令嬢はすごいと言ってくれて、その後に仲良くなれたから良かった。
長くなったけど、これがフーリン子爵令嬢との一度目の話。
…で、今世はこの女とどう付き合おうかしら?
このフーリン子爵令嬢は、人畜無害そうな顔して、中身は計算高くて真っ黒っぽいから、今世でも親しくは出来ないわね。
学園の案内なんて必要ないし…
そんなことを考えていた時、タイミングよくチェルシーが私の所に来てくれる。
「アナ!今日の昼休みに学級委員の二人が学園内を案内してくれるそうよ。」
「それは良かったわ。
フーリン様。そういうことらしいので、今回はお気持ちだけ頂きますわ。
お気遣いありがとうございました。」
「い、いえ。何か困ったことがありましたら、私に何でも言って下さいませ。」
その日の放課後、チェルシーは、私の実家のタウンハウスに遊びに来てくれて、一緒にお茶をしている。
「ねぇ、アナ…。あのフーリン子爵令嬢って、私の勘なんだけど、いい人そうだけど、なんか性格に裏があるようにも見えてしまうのよねぇ。」
何ですって!
やっぱりチェルシーは凄いわ!この子は私とは違って人の本質を見抜く能力があるのね。
「実は私も何となくそんな気がしていたのよ。
親切そうに見えたのだけど、なんか気になってしまって…。」
おっちょこちょいである私の場合は、一度目の時の経験から警戒しているだけなのだが…
「やっぱりアナもそう感じたのね!
こういう時の勘は当たるものだから気をつけた方がいいわ。
マニー国にいた時みたいに、ただの留学生って立場ではないから、名門侯爵家の御令嬢であるアナを利用してやるって近付いてくる人はいると思うから、要注意よ。」
「チェルシーだって、代々外交官を務めている名門の歴史ある伯爵家の令嬢なのだから、注意した方がいいわね。
特に私達の学年は、爵位が高い人が少ないから。」
仲良しのチェルシーまでもフーリン子爵令嬢を警戒してくれて良かった。
チェルシーがあの女と仲良くなってしまったら、私だけ避けるのは難しいからね。
その後、何かにつけて、転校生である私達に親切の押し売りをしようとするフーリン子爵令嬢。
上手くあしらいながら日々を過ごしていると、同じクラスのオルグレン伯爵令嬢と話す機会があった。
「コールマン様とクラーク様は、昨年は留学されていましたから、知らないと思うのですが…。」
「昨年ですか。何かあったのでしょうか?」
「私から見て、フーリン子爵令嬢の行動があまりにも目に付きましたので…。
フーリン子爵令嬢は、王太子殿下の婚約者候補になっている御令嬢にばかりに関わりを持とうとしているような気がしますわ。
私も一応、殿下の婚約者候補なのですが、フーリン子爵令嬢はそんな私にやたらベッタリしてきまして。」
やっぱりね…
「昨年、王太子殿下と私の兄が三年生に在学していたのですが、私がフーリン子爵令嬢といるところを見た殿下と兄から、気を付けるようにと言われたのです。
女同士では分かりにくくても、異性の目から見て気付くこともあるとまで言われてしまいましたわ。
それで私は、フーリン子爵令嬢に正直に話しましたの。」
「えっ?何を話されたのでしょうか?」
「王太子殿下の婚約者候補になっているけれど、時期が来たら辞退すると。
私は早く婚約者候補を辞めたいし、婚約者候補は他にも沢山いるから、私は婚約者にはならないと。」
はっきりと言ったのね!
「そしたら、分かりやすく私から離れていきましたわ。
それで今、一部で噂になっているのですが、コールマン様が婚約者候補の筆頭と言われているようです。」
…どこからそんな噂が?迷惑だわ!
「それは全力で否定させて頂きますわ。
私もオルグレン様と一緒で、時期が来たら辞退するつもりでいますのよ。
ああいうことは、やる気がある人がなるべきことだと思いますから。」
「ふふっ!面白い方ですわ。
しかしその噂話を聞いて、フーリン子爵令嬢はコールマン様に取り入ってやろうと近づいているようにしか見えませんので、気をつけて下さいませ。」
「ご忠告、ありがとうございます。
私、オルグレン様ともっと親しく出来たら嬉しく思いますわ。」
「まあ!私もそう思っておりましたのよ。」
ということで、オルグレン伯爵令嬢とその友人達(一度目でも私が親しくしていた友人)とも仲良くなった私とチェルシー。
フーリン子爵令嬢は気不味いのか、あまり近付いては来なくなった。
そしてこの学園に慣れた頃、この国のデビュタントがやって来る。
まだ自国の社交界に正式にデビューしていなかった私とチェルシーは、デビュタントボールに参加することになるのであった。
そして殿下と親しくしたことで、赤ドレス軍団から目をつけられて嫌がらせをされていた、可哀想なオルグレン伯爵令嬢に、優しく助けるように振る舞って近付いていったのである。
私の他の友人達は変わらずにいてくれたから良かったけど、私の心の中では修羅場だったと思う。
殿下はフーリン子爵令嬢を試すためだけでなく、殿下との婚約解消の噂話を聞いて、私に近付こうとする令息がいないかをチェックしたかったらしい。
結果…、何人かの令息が近付いて来たが、その時の殿下は恐ろしかった。
その後、殿下はある噂話を学園内に流す。
〝王太子殿下は、溺愛する婚約者に横恋慕する者がいないかを炙り出すため、オルグレン伯爵令嬢に協力してもらい、コールマン侯爵令嬢と不仲そうに見せる演技をしていたらしい。〟
フーリン子爵令嬢は、王太子殿下や私の友人達から睨まれて、その後近づいてくることはなくなった。
オルグレン伯爵令嬢には迷惑を掛けてしまったが、あんな酷い人達(赤ドレス軍団)を相手にしているコールマン侯爵令嬢はすごいと言ってくれて、その後に仲良くなれたから良かった。
長くなったけど、これがフーリン子爵令嬢との一度目の話。
…で、今世はこの女とどう付き合おうかしら?
このフーリン子爵令嬢は、人畜無害そうな顔して、中身は計算高くて真っ黒っぽいから、今世でも親しくは出来ないわね。
学園の案内なんて必要ないし…
そんなことを考えていた時、タイミングよくチェルシーが私の所に来てくれる。
「アナ!今日の昼休みに学級委員の二人が学園内を案内してくれるそうよ。」
「それは良かったわ。
フーリン様。そういうことらしいので、今回はお気持ちだけ頂きますわ。
お気遣いありがとうございました。」
「い、いえ。何か困ったことがありましたら、私に何でも言って下さいませ。」
その日の放課後、チェルシーは、私の実家のタウンハウスに遊びに来てくれて、一緒にお茶をしている。
「ねぇ、アナ…。あのフーリン子爵令嬢って、私の勘なんだけど、いい人そうだけど、なんか性格に裏があるようにも見えてしまうのよねぇ。」
何ですって!
やっぱりチェルシーは凄いわ!この子は私とは違って人の本質を見抜く能力があるのね。
「実は私も何となくそんな気がしていたのよ。
親切そうに見えたのだけど、なんか気になってしまって…。」
おっちょこちょいである私の場合は、一度目の時の経験から警戒しているだけなのだが…
「やっぱりアナもそう感じたのね!
こういう時の勘は当たるものだから気をつけた方がいいわ。
マニー国にいた時みたいに、ただの留学生って立場ではないから、名門侯爵家の御令嬢であるアナを利用してやるって近付いてくる人はいると思うから、要注意よ。」
「チェルシーだって、代々外交官を務めている名門の歴史ある伯爵家の令嬢なのだから、注意した方がいいわね。
特に私達の学年は、爵位が高い人が少ないから。」
仲良しのチェルシーまでもフーリン子爵令嬢を警戒してくれて良かった。
チェルシーがあの女と仲良くなってしまったら、私だけ避けるのは難しいからね。
その後、何かにつけて、転校生である私達に親切の押し売りをしようとするフーリン子爵令嬢。
上手くあしらいながら日々を過ごしていると、同じクラスのオルグレン伯爵令嬢と話す機会があった。
「コールマン様とクラーク様は、昨年は留学されていましたから、知らないと思うのですが…。」
「昨年ですか。何かあったのでしょうか?」
「私から見て、フーリン子爵令嬢の行動があまりにも目に付きましたので…。
フーリン子爵令嬢は、王太子殿下の婚約者候補になっている御令嬢にばかりに関わりを持とうとしているような気がしますわ。
私も一応、殿下の婚約者候補なのですが、フーリン子爵令嬢はそんな私にやたらベッタリしてきまして。」
やっぱりね…
「昨年、王太子殿下と私の兄が三年生に在学していたのですが、私がフーリン子爵令嬢といるところを見た殿下と兄から、気を付けるようにと言われたのです。
女同士では分かりにくくても、異性の目から見て気付くこともあるとまで言われてしまいましたわ。
それで私は、フーリン子爵令嬢に正直に話しましたの。」
「えっ?何を話されたのでしょうか?」
「王太子殿下の婚約者候補になっているけれど、時期が来たら辞退すると。
私は早く婚約者候補を辞めたいし、婚約者候補は他にも沢山いるから、私は婚約者にはならないと。」
はっきりと言ったのね!
「そしたら、分かりやすく私から離れていきましたわ。
それで今、一部で噂になっているのですが、コールマン様が婚約者候補の筆頭と言われているようです。」
…どこからそんな噂が?迷惑だわ!
「それは全力で否定させて頂きますわ。
私もオルグレン様と一緒で、時期が来たら辞退するつもりでいますのよ。
ああいうことは、やる気がある人がなるべきことだと思いますから。」
「ふふっ!面白い方ですわ。
しかしその噂話を聞いて、フーリン子爵令嬢はコールマン様に取り入ってやろうと近づいているようにしか見えませんので、気をつけて下さいませ。」
「ご忠告、ありがとうございます。
私、オルグレン様ともっと親しく出来たら嬉しく思いますわ。」
「まあ!私もそう思っておりましたのよ。」
ということで、オルグレン伯爵令嬢とその友人達(一度目でも私が親しくしていた友人)とも仲良くなった私とチェルシー。
フーリン子爵令嬢は気不味いのか、あまり近付いては来なくなった。
そしてこの学園に慣れた頃、この国のデビュタントがやって来る。
まだ自国の社交界に正式にデビューしていなかった私とチェルシーは、デビュタントボールに参加することになるのであった。
応援ありがとうございます!
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