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二度目の話

外遊

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 ミルズ先生にいいように使われる、忙しい学園生活を送っていると、あっという間に時間は過ぎていき、隣国の王子殿下と第二王女殿下が外遊に来られた。

 そして我が国の大公殿下に嫁いだ、姉である隣国の元第一王女殿下に面会したらしいが…


「最悪の雰囲気だったらしいぞ。」


 王太子殿下は紅茶を飲みながら、不敵に笑う。


「え?他国に嫁いだ、自分の姉に会えたのですから、再会を喜んだのでは?」

「あの女だけは、隣国の国王の寵妃とも言われている側妃の娘なのだ。
 側妃と第二王女は、隣国の高位貴族達からは王家の毒とも言われていて、王妃殿下や王太子殿下、他の腹違いの兄妹とは仲が悪い。」


 この殿下の話し方を見る限り、相当嫌いなんだろうなぁ。
 私が死んだ後に何があったというの?


「毒…ですか?でも、一度目の時の外遊に来られた時の記憶だと、清純な雰囲気の美女に見えましたが。
 聖女様とか出来そうだなって、当時の私は思いましたわよ。」

「清純そうに見えて、相当な阿婆擦れだ。
 少し前に調査したが、色々な男と関係を持って、何組かの婚約を破談にしたらしい。
 娘可愛さに、国王が全て揉み消しているようだが、父上も母上も、そんな阿婆擦れが我が国に来て、我が国の貴族の婚約まで破談にしたりしないかの心配をしている。
 大公は、その阿婆擦れの姉である妻から色々聞いているから、かなり警戒しているようだ。」


 嘘でしょ?そんな酷い人だったなんて知らなかったわよ。


「殿下、そのことは一度目の時に私は知りませんでしたわよ。」

「あの時は私も、父上・母上も騙されてしまったのだ。
 阿婆擦れ女をこの国の王妃にしたい者達に、上手く情報操作されてしまっていたんだよ。
 あの女が悪女だと知ったのは、婚姻する為に、あの女が我が国にやって来た後のことだった。
 私の側近を体で翻弄し協力者にしつつ、自分に甘い父の国王に頼み込んで、同盟をチラつかせて私の婚約者になったのだ。」

「殿下…。あの頃、私を暗殺しようとしていたのはもしかして……」

「ここまで話をしたから、分かったな。
 あの阿婆擦れと、阿婆擦れに協力していた家門が犯人だった。」


 今更だけど……、ショックだわー!!


「私は何も知らずに、殿下と王女殿下の幸せを祈っていたのですね…。
 私って本当にダメダメですね。」

「アナ、本当に悪かった…。
 あの女の正体を早くに暴いていれば、私達の婚約は解消にはならなかったし、アナはあんな不幸にならずに済んだのだ。
 私は、あの時にアナを守れなかったことを未だに後悔している。
 だから、今世ではあの女の好きにはさせない。」

「もう…、大丈夫ですわ。
 私はあの時よりは、おっちょこちょいではないと思うので。」


 殿下と話し込んでいると、部屋のドアがノックされる…


「来たな。
 アナ…、君は普通にしてろ。」

「……はい。」


 もしかして、噂の王女殿下でも来たのかしら?


「どうぞ!」


 殿下が入室を許可して入って来たのは、殿下の側近のフロスト卿だった。

 どういうこと…?もしかして、この男が…?


「殿下。お茶会をお楽しみ中に申し訳ありません。
 急ぎで見て頂きたい書類がありまして。」

「そうか…。今すぐ見てやる。」


 殿下は書類をさっさとチェックし、サインをしているようだ。


「コールマン侯爵令嬢。殿下とのお茶会をお邪魔してしまい申し訳ない。」


 フロスト卿は和かな表情をしていたが……、よく見ると、目が笑ってないじゃないの。
 恐ろしい…。こんな人だったの?

 ただの婚約者候補の分際で、いつまでも殿下と話し込んでないで、さっさと帰れとでも言いたそうね。


「いえ…。気になさらないで下さいませ。」


 無難に微笑み返すことしか出来ない、小物な私。


 フロスト卿は書類を受け取ると、部屋を退室して行った。



「私とアナの茶会が長いからと、どうでもいい書類を急ぎだと言って持ってきて、私達の様子でも見に来たのだろう。白々しい男だ。」

「もしかして、協力者ですか…?」

「そうだ。私は外遊でやって来た阿婆擦れを出迎えた時に、あの女から一目惚れをされたらしくてな。
 私を手に入れる為に、側近であるフロスト卿に近づいて、すでに二人で会ったりしているようだ。」

「えぇー!」

「もう二人は体の関係になっているようだから、二人の持つ避妊薬の中身を入れ替えておいた。
 子でも孕んでくれれば、フロスト卿と実家の侯爵家に責任を取ってもらおう。」

 
 なんて積極的な王女殿下なの!
 肉食じゃないの!


「二人は王家の影がすでに見張っている。
 ついでに、フロスト卿の家門とその派閥の者たちもな。
 あの阿婆擦れは、私の婚約者が誰になるのかをフロスト卿に探らせているようだ。
 すでに自分の姉が大公に嫁いで来ているから、自分が私の所に政略結婚で嫁ぐのは無理そうだからと、私と既成事実を作りたがっているようだぞ。
 フロスト卿には、私は側妃の娘で虐められているから、外国の王族に嫁がないと、将来的に命が危ないと泣いて誑かしたようだ。
 大した悪女だよ。」


 楽しそうに話をする殿下だけど…


「殿下こそ気をつけて下さいませ!」

「私にも影が付いているし、薬を盛られてもフロスト卿に内緒で中和剤を持ち歩いているからな。
 それよりも、問題はアナだ。君が私の婚約者に内定しているなんて噂になるとは思っていなかった…。」


 ああ…、暗殺者の足音が聞こえてきそうだわ。


「アナ。コールマン侯爵には伝えてはあるが、しばらくは注意してくれ。」

「ははっ…!死にたくないので頑張ります。
 私は囮になればいいのですね?」

「囮にしたくはなかったが、あの女が分かりやすくアナに牙を剥くように仕向けたい気もする。
 再来週に開かれる歓迎会を兼ねた王宮の夜会では、私とアナが仲が良く見えるように振る舞って欲しい。」


「はい…。頑張ります。」
 

 ううっ…。私は穏やかに長生きしたいのに。


 
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