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二度目の話
刺激的なもの
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「アーサー、今回は危険な任務を依頼してしまってごめんなさい。
そして…、助けてくれてありがとう。」
任務を終えたアーサーは、また私の護衛騎士に戻っていた。
「お嬢様をお守り出来るなら、私は何だって致します!
それより、テレンスを助けて下さってありがとうございました。
テレンスは私が孤児院で弟のように可愛がっていたのです。ですから、こうやってやり直すチャンスを下さった侯爵家の皆様には感謝しております。」
テレンス…?そういえば、孤児院にそんな子がいたかも知れない。よくアーサーの後ろを追いかけていた男の子がいたわよね。
「テレンスも暗殺組織の被害者だもの。
これから何とか頑張って欲しいと思っているわ。」
「ところでお嬢様、侯爵様やルーク様には報告したのですが、気になることがありまして…。」
アーサーが深刻な表情に変わる。
「どうしたの?」
「テレンスからは、暗殺組織のアジトにはボスとボスの右腕と言われる、凄腕の暗殺者がいると聞かされていたのです。
他の暗殺者は倒すことは出来ても、そのボスの右腕と言われる暗殺者だけは倒すのは難しいと言われていたので、私達は慎重に計画を立てて向かったのですが、アジトにはボスと下っ端の暗殺者だけがいた状態でした。
そのため、私達は簡単にボスを拘束して、暗殺の依頼主の証拠品を回収出来たのです。」
「…ボスの右腕の暗殺者はどこにいるの?」
もしかして、また暗殺者がうちに来ちゃったりするの?嫌だわ!
「それが、すでに何者かに消されてしまったらしいのです。」
「消された…?」
「ボスが言うには、毒殺されたのではないかと。
それすらもハッキリしていないようでした。」
「毒殺…?」
「はい。普通に食事に出掛けた後に、疲れたから休むと言って、眠っていると思ったらそのまま死んだらしいです。
しかもその後に、行方不明の暗殺者が続出したらしく、ボスは私達が何かしたのかと勘違いしておりました。
自白剤を飲ませてまで喋らせたので、間違いはないかと。」
「……不気味ね。別の組織とトラブルでもあったのかしら?」
「ボスは私達以外にそのような心当たりはないと言っていました。
お嬢様…、まだ油断は出来ませんよ。」
「わ、分かったわ…。
アーサー、これからもよろしくお願いするわ!」
「ええ。よろしくお願いされました。」
立派な騎士になったアーサーは余裕そうにしているけど、私は死への恐怖が半端じゃないから、そんな風に笑っていられないわよ。
見えない敵に怯える日々は、まだしばらくは続くということかしら。
早く穏やかな日々に戻りたいわ!
暗殺の依頼者の証拠を掴んだ私達は、その者達を断罪するために、お義兄様と一緒に王宮にやって来た。
その場には王太子殿下と護衛騎士のロイド卿の他に、大公殿下と妃殿下、隣国の王子殿下と王太子殿下の側近達に王宮騎士団長もいた。
王太子殿下は、断罪の証人は多い方がいいからと、沢山の人に声を掛けたらしいけど、すごい豪華メンバーだと思う。私がここにいる必要はないと思うけど、殿下から誘われてしまったのよね。
「コールマン嬢、無事で良かった…。
今日は君に少しばかり衝撃的なものを見せてしまうと思うが、まあ…、君なら大丈夫だと思う。
コールマン侯爵令息も、色々助けてもらって感謝している。
今日はよろしく頼む。」
久しぶりにお会いした殿下は、何だか元気そうだった。
「殿下、こちらこそどうぞよろしくお願い致します。」
「殿下、お元気そうで良かったですわ。
今日はよろしくお願い致します。」
簡単に挨拶を済ませた私達は、ある部屋へと足早に向かっていた。
「私は今日、会議ということになっているから、目立たないようにしたいのだ。」
…と殿下が話すので、使用人専用の裏通路を歩いて向かったのは、王宮内の客室だった。
息を潜め、部屋の中に入っていくと、予想通りの声が聞こえてくる。
す…すごいわ。私の立ち位置からは声しか聞こえてこないけど、とても激しそう…じゃなくて、盛り上がっているのが分かる。
顔が引き攣りそうになる私の耳を、隣にいたお義兄様が黙って塞いでいた。
殿下はその場にいるメンバーに視線で合図を送る。
どうやら断罪を始めるらしい。
そして…、助けてくれてありがとう。」
任務を終えたアーサーは、また私の護衛騎士に戻っていた。
「お嬢様をお守り出来るなら、私は何だって致します!
それより、テレンスを助けて下さってありがとうございました。
テレンスは私が孤児院で弟のように可愛がっていたのです。ですから、こうやってやり直すチャンスを下さった侯爵家の皆様には感謝しております。」
テレンス…?そういえば、孤児院にそんな子がいたかも知れない。よくアーサーの後ろを追いかけていた男の子がいたわよね。
「テレンスも暗殺組織の被害者だもの。
これから何とか頑張って欲しいと思っているわ。」
「ところでお嬢様、侯爵様やルーク様には報告したのですが、気になることがありまして…。」
アーサーが深刻な表情に変わる。
「どうしたの?」
「テレンスからは、暗殺組織のアジトにはボスとボスの右腕と言われる、凄腕の暗殺者がいると聞かされていたのです。
他の暗殺者は倒すことは出来ても、そのボスの右腕と言われる暗殺者だけは倒すのは難しいと言われていたので、私達は慎重に計画を立てて向かったのですが、アジトにはボスと下っ端の暗殺者だけがいた状態でした。
そのため、私達は簡単にボスを拘束して、暗殺の依頼主の証拠品を回収出来たのです。」
「…ボスの右腕の暗殺者はどこにいるの?」
もしかして、また暗殺者がうちに来ちゃったりするの?嫌だわ!
「それが、すでに何者かに消されてしまったらしいのです。」
「消された…?」
「ボスが言うには、毒殺されたのではないかと。
それすらもハッキリしていないようでした。」
「毒殺…?」
「はい。普通に食事に出掛けた後に、疲れたから休むと言って、眠っていると思ったらそのまま死んだらしいです。
しかもその後に、行方不明の暗殺者が続出したらしく、ボスは私達が何かしたのかと勘違いしておりました。
自白剤を飲ませてまで喋らせたので、間違いはないかと。」
「……不気味ね。別の組織とトラブルでもあったのかしら?」
「ボスは私達以外にそのような心当たりはないと言っていました。
お嬢様…、まだ油断は出来ませんよ。」
「わ、分かったわ…。
アーサー、これからもよろしくお願いするわ!」
「ええ。よろしくお願いされました。」
立派な騎士になったアーサーは余裕そうにしているけど、私は死への恐怖が半端じゃないから、そんな風に笑っていられないわよ。
見えない敵に怯える日々は、まだしばらくは続くということかしら。
早く穏やかな日々に戻りたいわ!
暗殺の依頼者の証拠を掴んだ私達は、その者達を断罪するために、お義兄様と一緒に王宮にやって来た。
その場には王太子殿下と護衛騎士のロイド卿の他に、大公殿下と妃殿下、隣国の王子殿下と王太子殿下の側近達に王宮騎士団長もいた。
王太子殿下は、断罪の証人は多い方がいいからと、沢山の人に声を掛けたらしいけど、すごい豪華メンバーだと思う。私がここにいる必要はないと思うけど、殿下から誘われてしまったのよね。
「コールマン嬢、無事で良かった…。
今日は君に少しばかり衝撃的なものを見せてしまうと思うが、まあ…、君なら大丈夫だと思う。
コールマン侯爵令息も、色々助けてもらって感謝している。
今日はよろしく頼む。」
久しぶりにお会いした殿下は、何だか元気そうだった。
「殿下、こちらこそどうぞよろしくお願い致します。」
「殿下、お元気そうで良かったですわ。
今日はよろしくお願い致します。」
簡単に挨拶を済ませた私達は、ある部屋へと足早に向かっていた。
「私は今日、会議ということになっているから、目立たないようにしたいのだ。」
…と殿下が話すので、使用人専用の裏通路を歩いて向かったのは、王宮内の客室だった。
息を潜め、部屋の中に入っていくと、予想通りの声が聞こえてくる。
す…すごいわ。私の立ち位置からは声しか聞こえてこないけど、とても激しそう…じゃなくて、盛り上がっているのが分かる。
顔が引き攣りそうになる私の耳を、隣にいたお義兄様が黙って塞いでいた。
殿下はその場にいるメンバーに視線で合図を送る。
どうやら断罪を始めるらしい。
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