私も貴方を愛さない〜今更愛していたと言われても困ります

せいめ

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閑話 シールズ公爵

「公爵閣下、診察の結果を報告します。
 夫人は妊娠しておりません。あの出血は純潔の証かと思われます」

 初夜の後、アリエルは体調を崩してしまい侍医を呼んで欲しいと言われる。
 そこで私は、公爵家の侍医の弟子で女性を専門に診ているという女医に診察を頼むことにしたのだが、女医からの報告は、アリエルの身の潔白を証明するものだった。

「……そうか」

「公爵閣下、発言をお許しください。なぜ夫人が妊娠していると思ったのでしょう?
 私は夫人に初めてお会いしましたが、結婚前に妊娠されるような女性には見えませんでした。
 夫人は誰かに根も葉もない噂でも立てられたのでしょうか? そうだとしたら噂を流した人物は相当な悪ですね。公爵夫人を陥れたのですから……
 夫人は過労から体調を崩しているようですので、栄養を取って安静にするようにしてください。女性の体は繊細ですから、夫である閣下が配慮してあげて下さい」

「分かった。今日は世話になったな」

 私は大きな過ちをしてしまったようだ……

 女医が帰った後、私はすぐに側近を呼び、バトラー侯爵家とヴィオラ・バトラー、侯爵家にいた使用人を調査するように命じる。

「金はいくらかかっても構わないし、場合によっては厳しく対応してもいい。ヴィオラ・バトラーのメイドと、アリエルのメイドだった者たちに接触しろ」

「畏まりました」

 そして私は臥せっているアリエルが気になり、彼女の部屋に行くことにした。
 部屋に入ると、顔色の悪いアリエルが立ったまま私を出迎えてくれる。
 安静にしなくてはいけないのになぜ……?
 慌てて安静にして欲しいことを伝えるが、彼女は大したことはないというような反応をする。
 そんな彼女が私に聞いてきたのは、

「ところで旦那様、体調が戻りましたらすぐに領地に行かせていただいてもよろしいでしょうか?」

 その言葉を聞いて、私は頭を鈍器で殴られたような気分になった。
 私が初夜にあんなことを言ってしまったから、アリエルはすぐにここを出て行くつもりでいる。

「……急いでいく必要はない。
 今は体を大切にすることを優先してくれ。」

 もっとマシな言い方があったと思う……
 私が初夜に酷い扱いをして体調を崩してしまったアリエルに、すぐ謝罪すればよかったのだ。
 残念なことにその時の私は頭が回らず、冷たい言い方しか出来なかった。

 アリエルとの関係を何とかしたいと思った私は、贈り物をしたり、食事を一緒に食べようと誘うことにした。
 彼女は受け入れてくれたから、少しずつ関係は改善出来るだろうと思った……
 だが後で気付いたことだが、アリエルは妻として夫の私に合わせてくれていただけだった。
 もっと夫婦の仲を深めたいと思い、二人で一緒に過ごす時間を増やしたかったのに、彼女は必要以上に私と一緒にいることを避けているように見える。
 そして彼女からは領地に行くのはいつになるのかと聞かれるようになり、領地に行って欲しくない私は必死に誤魔化す。
 全て私が悪い。婚約中、彼女に寄り添うことはしなかったし、話すらまともにしなかった。
 そして初夜すらも冷たく扱って彼女を傷つけた結果、彼女は私を見てくれなくなった。

 そんな彼女が唯一望んだことが、教会に行きたいということだった。
 あの死んだ男のことを思っているのかもしれない。しかしダメだとは言えず、護衛をたくさん付けて認めることにした。

 アリエルが公爵家の生活に慣れてきた頃だと思う。
 メイド長からある報告を受ける。

「旦那様。本日、先触れもなく突然、奥様の義妹君のバトラー侯爵令嬢がいらっしゃいました」

「……あの女がアリエルに会いにきたのか?」

「会いに来たというより、奥様が公爵家でどのような生活をなさっているのかを見に来たかのような態度でした。
 私は部屋の外に控えておりましたので、どんな会話をなさっていたのかは分かりませんが、奥様を怒鳴っているかのような声が聞こえてきました。
 いくら奥様の義妹とはいえ、公爵夫人にあのような態度を取るなんてあり得ませんわ」

「メイド長。これはアリエル一人の問題ではない。シールズ公爵家から抗議する」

 私はすぐにバトラー侯爵家に抗議文を出すことにした。
 公爵家に突然やって来て公爵夫人に無礼な態度を取ったという内容で、今後はバトラー侯爵令嬢の訪問は断るということを書いておいた。
 まだあの女の調査は終わっていないが、あの女は何かあるに違いない。アリエルのことを守らねば……

 それから数日後、あの女が私に接触してくる。


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